解説

ラックマウント型サーバ選びの意外な落とし穴

デジタルアドバンテージ
2003/10/31

解説タイトル


 サーバ・ベンダ各社が薄型のラックマウント型サーバをラインアップするようになったのは、1998年ごろからだ。それまでも、通信事業者向けやファクトリ・オートメーション(FA)用として、ラックマウント型サーバは販売されていたが、どちらかというとニッチ市場向けであった。しかし、インターネットの普及により、データセンターなどでもラックマウント型の特に薄型のサーバに対する需要が増え、その結果、ほとんどのサーバ・ベンダがラインアップするようになった。

 最近では、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)だけでなく、企業の基幹サーバとしてもラックマウント型が導入されるケースが増えてきているという。また初期出荷状態ではペデスタル型(タワー型)であっても、専用のレールを取り付けることでラックマウント型としても利用可能なサーバやラックマウント可能なUPS(無停電電源装置)が登場するなど、ラックマウント型サーバが主流になりつつあるほどだ。そこで、ここではラックマウント型サーバを選ぶ場合の注意点について解説する。

ラックマウント型サーバの選択時のチェック・ポイント

 サーバを選ぶ場合、用途によって必要となる性能や拡張性が決まってくる。これまでのペデスタル型サーバでは、性能や拡張性が決まると、必然的に本体の大きさが決まる傾向にあった。しかし、ペデスタル型サーバでは、本体サイズに規格はなく、上位モデルと本体ケースを共用するために、性能や拡張性に比べて大きなサイズを使うものもある。

 一方、ラックマウント型サーバの場合、本体サイズに業界標準という規格制限があるため、逆に本体サイズによって性能や拡張性が決まってくる。例えば、高さが1U(44.45mm)サイズのラックマウント型サーバでは、Intel Xeon-3.06GHzのデュアルプロセッサ構成で、ハードディスクが最大3台、PCIが2スロットというのが原稿執筆時点の最高スペックである。これ以上の性能や拡張性が必要な場合には、2Uや4Uといった、より大きなサイズを選択しなければならない。このようにラックに収めるという制限から、ラックマウント型サーバでは、ペデスタル型ではあまり気にすることのなった選択ポイントが存在する。

摂津金属工業のサーバ・ラック「KDCシリーズ」
EIA規格のサーバ・ラック。高さ(42Uと46U)と奥行き(900mmと1000mm)の違いにより、6製品がラインアップされている。

■本体サイズ
 前述のようにラックマウント型サーバでは、ラックに収めることから本体サイズの制限がある。ラックの規格は、EIA(米国電子工業会)によって標準化されており、ほとんどのサーバ・ラックがこの規格に準拠している。EIAの規格では、幅19インチ(482.6mm)で、1U単位で高さが決められている。薄型のラックマウント型サーバの高さを示す「1U」や「2U」というのも、「ラックのこの高さに入る」という意味である。日本のJIS規格にも「電子機器用ラック」として規格化されているが、EIA規格とは幅と高さの単位が異なっている(JIS規格は幅480mm、高さ50mm)。しかし、JIS規格は、サーバ用としてはほとんど使われていないので気にする必要はない。

 EIA規格の19インチ幅には、サーバをラックに取り付けるための専用金具(通常は引き出し可能なレールとなっているものもある)のスペースが含まれる。幅については、あまり問題になることはないようだが、高さには注意が必要だ。特に1Uや2Uサイズの薄型サーバの中には、高さがギリギリのため、レールや取付金具が干渉するなどして、ラック内に隙間なく搭載できないものがある。こうした場合、ラックの取り付け部分の1つ置きに搭載することになり、せっかくの薄型のメリットが半減してしまう。

 また、取り付け用のネジ穴にも注意が必要だ。EIA規格では、ユニバーサル・ピッチ(15.875mm−15.875mm−12.700mmの繰り返し)とワイド・ピッチ(31.750mm−12.700mmの繰り返し)の2種類のネジ位置が定められている。サーバの取付金具によっては、ラック側とのピッチが合わないこともあるので注意したい。

 本体サイズでもう1つ気を付けたいのが、奥行きだ。幅と高さについては、業界標準があるものの、奥行きについては明確な規格がない。特に、最近ではサーバの高性能化・高機能化に伴いケース内の体積を増やす必要が生じ、その結果奥行きが長くなる傾向にある。1998年ごろの平均的なラックマウント型サーバと比較して、最近のサーバは5cm以上長くなっているようだ。つまり、1998年当時導入したラックに現在のラックマウント型サーバを搭載すると、最悪の場合、ラック背面の壁などにサーバが当たってしまう可能性がある。壁に干渉しないまでも、以前のラックに搭載した場合、背面の作業スペースやケーブル配線のためのスペースが少なくなるのは間違いない。忘れがちだが、購入前にサーバの奥行きの長さは確認しておきたい。

■空気取り入れ口の位置
 ラックマウント型サーバの場合、上下がほかのサーバにふさがれる可能性があるため、冷却用の空気取り入れ口は前面もしくは背面にあることが多い。しかし、サーバの高密度化に伴い、前面だけの取り入れでは十分な冷却風量が得られないため、上面に取り入れ口を設けるサーバも出てきている。このようなタイプの場合、サーバをラックに隙間なく搭載してしまうと、上面の取り入れ口がふさがれて、十分な冷却効果が得られない可能性もある。サーバ内部の温度上昇は、熱暴走や故障の原因になる。空気取り入れ口の位置を確認し、ラックに搭載した場合に問題がないかどうか購入前に検証しておいた方がよい。

■重量
 ラックに新たなサーバを追加する場合、サーバ本体の重量もチェックしておきたい。特に、42U(高さ180cm以上)といった縦長ラックの上部にサーバを追加する場合、あまり重いサーバを搭載すると地震などでラックが倒壊する危険性もある。新規に導入する場合は、下から重いサーバを搭載するのはもちろんのこと、上部にはなるべく軽いサーバを搭載しよう。もちろん、ラック自体の搭載可能な最大重量やラックの倒壊防止策を確認することも忘れないようにしたい。

■稼働音
 データセンターやコンピュータ・ルームなどの専用スペースにサーバを置く場合、稼働音はそれほど気にならないかもしれない。しかし、小型のラックを用いて、ラックマウント型サーバを部署内などに設置するような場合は注意が必要だ。特に薄型のラックマウント型サーバの場合、小型の冷却ファンで十分な冷却能力を得るため、かなり高い回転数でファンが回るため、そのノイズ音量は非常に大きい。また、サーバ内の隙間が狭いこともあり、風切り音もかなり耳障りとなる。

 あるサーバ・ベンダに稼働音について聞いたところ「ラックマウント型サーバは、データセンターやコンピュータ・ルームなどに置くことを前提に設計しているため、稼働音についてはまったく配慮していない」とのことだ。薄型のラックマウント型サーバの高性能化に伴い、内部の温度は上昇する傾向にある。ますます冷却ファンの能力を高めなければならず、必然的に稼働音は大きくなりがちだ。設置場所によっては、稼働音の静かなサーバを選びたい。

■消費電力
 サーバの高性能化にともない消費電力も大きくなる傾向にある。データセンターによっては、ラック当たりの供給電力容量が制限されているところもある。データセンターの多くは、1ラック当たり2kVAを基本サービスとしているようだ。供給電源容量がギリギリの場合、サーバの負荷が上昇したとたんに不安定になるなど、原因がつかみにくい障害を発生しがちである。事前にサーバ単体とラック全体の消費電力を確認しておくべきだろう。

■KVM切替器との互換性
 ラックマウント型サーバでは、複数のサーバを1台のコンソールで切り替えて管理できるようにKVM(キーボード、ビデオ、マウス)切替器を利用するケースが多い。サーバ・ベンダがオプションとして提供しているKVM切替器の場合、サーバ側のインターフェイスやキーボード、マウスなどとの「相性」が発生することは少ないと思われる。しかし、複数のサーバ・ベンダのサーバが混在しているような環境や、KVM切替器がサードパーティ製である場合などでは、KVM切替器がうまく動作せず、再起動時にBIOSでエラーが発生してOSがブートしないといったケースもある。コンソールを使うのは、障害発生時など、緊急事態の場合が多い。そうした緊急事態に慌てずに済むように、事前にサーバおよびキーボードなどとKVM切替器との互換性を確認しておきたい。

KVM切替器内蔵のコンソールドロア「LCM-1U151J/K」
19インチ・ラックに搭載可能な液晶ディスプレイとキーボード、タッチパッド(マウス)を一体化したコンソール。液晶ディスプレイを閉じることで、19インチ・ラックの1Uサイズに収めることが可能だ。KVM切替器機能を内蔵しており、最大42台のサーバを一括管理できる。

■メンテナンス性とセキュリティの両立
 故障時など、部品の交換が容易なようにメンテナンス性が高いラックマウント型サーバを選ぶのも重要だ。データセンターなどでは、狭い場所でメンテナンスを行う必要が生じるため、ラックに固定した状態でメモリやハードディスクの交換が容易なように工夫されているサーバを選びたい。さらに、セキュリティ面に配慮した設計になっていることも重要だ。ハードディスクは正面から簡単に抜き差しできるものが望ましいが、鍵でロックできる構造になっている方がセキュリティ的には安心できる。できれば、USBポートなどを含む前面部分は、鍵が掛けられるフロント・パネルなどで保護されている方がよい。

■管理モニタ機能
 プロセッサの温度や冷却ファンの回転数、ハードディスクの書き込み/読み出しエラーなど、ハードウェアの障害をモニタ可能な管理モニタ機能をサーバが装備していると便利だ。管理モニタ機能は、ラックマウント型に限らず、ペデスタル型においても便利な機能だが、特にデータセンターなどの離れた場所に設置されることの多いラックマウント型サーバでは必須ともいえる機能だ。最近の管理モニタ機能では、サーバ本体とは物理的に別系統のネットワーク・ポートを装備しており、ネットワーク経由でサーバの状態をモニタしたり、再起動を実行したりできるものが多い。こうした機能があれば、OSの再起動で復帰可能なソフトウェア障害によるハングアップならば、わざわざデータセンターに出掛けけなくても対処可能になるからだ。

 性能や拡張性以外のラックマウント型サーバを選ぶ際に気を付けるポイントを紹介した。ラックマウント型サーバは、ペデスタル型サーバとは違い、ラックに搭載するという制限がある点は忘れないようにしたい。データセンターなどでラックに搭載するときに困らないように、上述の点などに注意して選択していただきたい。記事の終わり

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