解説

アナリスト・ミーティングに見るAMDとIntelの2004年戦略(後編)

―― 90nmプロセスの急速な立ち上げを目指すIntel ――

元麻布春男
2003/12/05

解説タイトル


 前編では、AMDが開催したアナリスト・デイからAMDの戦略について解説した。後編では、Intelのアナリスト・ミーティングを取り上げることにする。

PCの世界市場に成長余力がある点を強調したバレット最高経営責任者

 AMDから遅れること2週間、11月20日(日本時間21日)にIntelも、米国ニューヨークでアナリスト向けの説明会を開催した。年に1回のAMDと異なり、基本的にIntelは春と秋の2回、この種の説明会を開催している。ただ、秋は春に比べて規模が小さく、出席するIntelエグゼクティブの人数も少ない。インターネットの普及や経費節減の意味もあってか、秋についてはこのところWebキャストのみでの実施となることも珍しくなかった。今回、クレイグ・バレット(Craig Barrett)最高経営責任者(CEO)とポール・オッテリーニ(Paul Otellini)社長が実際にニューヨークに出向いて説明会を開催したのは、米国の経済が復調しつつあり、それに伴う業績の向上を実感しているからかもしれない。Q&Aセッションにはアンディ・ブライアント(Andy Bryant)最高財務責任者(CFO)も参加したが、説明内容には新味が乏しく、若干物足りないものであった。

 最初に登壇したクレイグ・バレット最高経営責任者のスピーチは、主に市場環境全体をふかんするもので、Intel自身の活動や戦略については、それほど多く語られることはなかった。バレット氏のスピーチで力点が置かれたのは、今後の成長を担うのが主にアジア太平洋地区の新興国であり、Intelはそこに積極的に投資していく、という点である。北米、西ヨーロッパ、日本といった先進国においてPC市場がすでに飽和しつつあり、ポストPCが叫ばれているのはよく知られたことだが、世界にはまだこれからPC革命が起こる国がたくさん残っており、PCの世界市場に成長余力はまだある、というわけだ。実際Intelは、2003年8月に中国で2番目となる工場(フラッシュメモリの組み立てを行うといわれている)を四川省成都市に建設すると表明している。中国やインド、あるいは東ヨーロッパや南米を成長の舞台と見込んでいるのだろう。

新興市場への戦略
成長の著しい中国を含むアジア太平洋地区の売り上げが高いことが分かる。そのほか、EMEA(ヨーロッパ/中東/アフリカ)と南米が次の成長の舞台となりそうだ。

2004年は90nmプロセス製造へ急激に移行

 一方、Intelの具体的な事業の説明に登壇したオッテリーニ社長だが、語られた内容のほとんどは秋のIDF(IDF Fall 2003)を踏襲したものであった。肝心の90nmプロセスによる開発コード名「Prescott(プレスコット)」「Dothan(ドーサン)」で呼ばれる新プロセッサの出荷時期についても、ユーザー向け最終製品の出荷が2004年になることを認めながらも、これまでの説明どおり2003年第4四半期にPCベンダ向けの出荷を開始すると繰り返した。と同時に、新たに採用される90nmの製造プロセスについても問題はなく、2004年は90nmプロセスを採用したプロセッサを普及させる年であると位置付けていたほどだ。

 それならなぜ90nmプロセス製造によるプロセッサ(PrescottおよびDothan)の出荷が実質的に遅れたのか、という当然の疑問が生まれる。残念ながら、この回答は今回の説明会で得られることがなかった。ただし、10月に開かれた2003年第3四半期決算報告会のQ&Aにおいて、アナリストからの質問に答える形でオッテリーニ社長は、プロセッサの製品寿命を確保するためシステム・レベルのサーマル・エンベロープ(熱設計範囲)に若干の修正を施していると述べている。Intelによる、90nmプロセス製造によるプロセッサの出荷遅れの公式見解は、このまま変わっていないのだろう。

 では、まったく新しい情報がなかったのかというと、デスクトップPC向けプロセッサに関して、若干ではあるが新しい話もあった。まずその1つは、2004年の第2四半期末までにパフォーマンス・デスクトップPC向けに出荷されるプロセッサの60%がPrescottコア・ベースに、バリューセグメントPC向けプロセッサ(Celeron)の40%がPrescottコア・ベースになることが明らかになった。どうやらIntelはこの急激な立ち上げ計画を述べることで、90nmプロセス自体には問題がないことと、90nmプロセス製造への積極的な移行によるコスト削減をアピールしたかったようだ。バリューセグメント向けプロセッサへの90nmプロセス製造の適用が公式に語られたのは、恐らくこれが初めてではないかと思われる。

製造プロセスの違いによるダイ・コスト
製造プロセスの微細化により、ダイ・コストは約25%安くできると述べた。プロセッサ自体の性能の向上などにより、一時的にダイ・コストが上がることもあるが、全体としては微細化が低価格につながる。

 将来に向けたロードマップの点では、2004年に到達する動作クロックの目標が公式に4GHzであると述べられた。また、2005年にデュアル・コアを内蔵したプロセッサをデスクトップPC向けにリリースすることも明らかにしている。これまでデュアル・コアのプロセッサについては、Itaniumプロセッサ・ファミリでは2005年の「Montecito(開発コード名:モンテシト)」で採用されることが明言されていたものの、IA-32プロセッサに関しては時期が明らかにされることはなかった。

デジタル・ホーム実現のビジョン
2004年に4GHzに到達し、2005年にデュアル・コアが採用されることを明らかにした。PCI Expressの搭載も始まることから、2004年から2005年にかけてPCは大きく変貌することになりそうだ。

 プラットフォーム技術で注目されたのは、2004年半ばに登場するGrantsdale(開発コード名:グランデール)チップセットを用いたプラットフォームが、無線LANのアクセスポイント機能をソフトウェアで実装する、とされたことだ。これは家庭におけるデスクトップPCが、ホーム・サーバの色彩を強めていることを反映したものだと考えられる。日本に比べてデスクトップPCの強かった米国のコンシューマ市場においても、ノートPCの占める割合が40%を超えるまでになる一方、デスクトップPCは家庭内でサーバとして利用される傾向が生まれつつある。つまり、デスクトップPCに音楽やビデオを貯め、それを無線LANなどを用いて、ノートPCで見るという使い方だ。こうした使い方の普及が、無線LANのアクセスポイント機能の標準化の背景にありそうだ。これまでGrantsdaleチップセットは、PCI ExpressとDDR-IIメモリ、Azaliaオーディオをサポートするプラットフォームとして知られてきたが、ここにもう1つ要素が加わったことになる。

 なお、無線LANの物理層をどのような形で実装するのかについては、まだ何も述べられていない。Centrinoモバイル・テクノロジのように拡張カード(CentrinoはMini PCIカードを採用)による実装なのか、それともイーサネット・コントローラのようにオンボードに実装されるのか、現在のところ不明だ。ノートPC向けのCentrinoモバイル・テクノロジが内蔵する無線LAN機能(PRO/Wireless 2100A)については、現在出荷が始まったIEEE 802.11a/bタイプに続き、IEEE 802.11b/g両対応タイプが2003年第4四半期に、IEEE 802.11a/b/g対応が2004年中ごろにリリースされるというロードマップが示された。

AMDが新工場建設を発表

 というわけで、久しぶりにニューヨークで開かれたアナリスト向け説明会だったが、具体的な事業計画の面では目新しい話に乏しい印象が否めない。特に2週間前に開かれたAMDの説明会がプロセッサ・ロードマップの更新を伴う大規模なもの(登壇したエグゼクティブの数も多い)だったため、なおさらそう感じてしまう。

 そのAMDだが、11月20日付でドイツのドレスデンにあるFab 30の隣接地に、300mmウエハの工場となるFab 36を建設することを公式に明らかにした。すでに着工したFab 36の建設に必要な資金は約24億ドルとなる。この費用はAMD自身が調達する資金に加え、ドイツおよびドイツのザクセン州が80%の残余保証を行う銀行借款7億ドルと、ドイツおよびザクセン州からの補助金約5億ドルを含む約15億ドルの外部資金で賄われる。ただし外部資金が導入されるといっても、Fab 36の生産キャパシティは100%AMDの裁量権の元におかれることになっている。

 このFab 36は2006年の量産開始を目指しているが、Fab 36稼働後のFab 30の将来については、まだ明らかにされていない。Fab 36が稼働することで、Fab 30を改修したり増強したりする余力が生まれると思われるが、フラッシュメモリの工場に転用されたFab 25の例もあり、現時点では判断がつきにくい。200mmウエハを用いるFab 30では65nmプロセス以上の微細化は難しいことを考えると、Fab 36の完成後長期に渡ってメインストリーム・プロセッサ(AMD AthlonやAMD Opteron)の生産を継続することは難しいものと思われる。300mmウエハを用いた工場への大改修、組み込み用プロセッサ(AlchemyやGeode)の量産用への転換、フラッシュメモリ用への転換など、いくつかの選択肢(これには閉鎖や売却も含まれる)から選ばれることになるのだろう。

 2004年、AMDは特にサーバ向けプロセッサに対して積極的な製品展開を行う予定だが、一方ではIntelに遅れをとっている90nmプロセス製造への移行などの問題を抱えている。先行するIntelにしても、前述のように90nmプロセス製造による新プロセッサの投入は当初の予定よりも1四半期ほど遅れている。90nmプロセス自体は、順調であることをアピールしているものの、実際に最終製品であるPCの販売が始まるまで予断は許せない。両社とも、90nmプロセス製造の導入により、プロセッサの性能向上と低価格化が実現できるとしていることから、2004年の90nmプロセスへの移行は気になるところだ。記事の終わり

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アナリスト・ミーティングに見るAMDとIntelの2004年戦略
  1.リストラから反攻へと向かうAMD
  2.90nmプロセスの急速な立ち上げを目指すIntel
 
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