解説

知っておきたいIAサーバ導入のBTO術

デジタルアドバンテージ
2004/08/05
解説タイトル

 以前はサーバの導入といえば、必要要件を決めて、システム・インテグレータ(SIer)や販売会社の営業担当者に見積りを依頼するのが一般的であった。サーバ・ベンダのカタログには、販売価格が掲載されておらず、見積りを依頼しなければ予算も決められなかったからだ。しかし最近では各サーバ・ベンダとも、インターネットを利用した直販を開始しており、Webサイト上でBTO(Built To Order)による変更が可能なプロセッサやオプションなどを選択・変更しながら見積りが得られるようになっている。いろいろな構成を気兼ねなく試して、要件と予算のバランスを試すことができる。

 ただ、これまでは要件を営業担当者に伝えるだけで、サーバの知識がそれほどなくても何パターンかの見積りが得られた。ところがWebサイトによる見積りでは、サーバの導入担当者にある程度の知識が必要になる。製品によっては、RAIDコントローラとRAIDの組み合わせが限定されるなど、サーバの知識がある程度ないと正しい見積もりが表示されない場合がある。またプロセッサの選び方など、経験的なノウハウもあるので、ここでは直販サイトを利用した見積りのポイントを紹介する。

 ただし直販サイトで見積りが可能なのは、4ウェイのIAサーバまでである。8ウェイ(8プロセッサ)以上となると、構成が複雑になり、直販サイトでの見積りは不可能だ。8ウェイ・クラスとなると、ハードウェアだけでなく、データベースのチューニングなど開発案件を含む見積りとなることが多いので、直販サイトでハードウェアだけを購入したいという要望は少ないだろう。

まずは用途を決めよう

 サーバの導入において最も重要なのは、利用目的を明確にすることだ。どのような目的で利用するかによって、プロセッサやハードディスクの選択の方向性が異なってくる。ファイル・サーバにしても、接続されるクライアント数によって、プロセッサ性能や搭載するハードディスク容量が異なる。逆に利用目的が明確になれば、シングルプロセッサ/デュアルプロセッサ/マルチプロセッサ構成が選択できるし、求められる機能なども明確になるはずだ。

 例えば、iDCにホスティングする会社紹介用のWebサーバという目的ならば、必然的にラックマウント型サーバから選択することになる。さらに想定されるアクセス数やコンテンツの内容から、求められるプロセッサ性能とディスク容量が決まる。例えば、1日1万アクセス程度の静的なWebページならば、経験的にCeleron-2GHzのシングルプロセッサ構成で十分対応できる。

 このように性能の見積りは、経験的な勘で行われることが多い。しかし、しっかりと性能を見積もるには、負荷テスト・ツールなどを利用して事前に検証しておく。IIS(Internet Information Services)向けにはマイクロソフトからWebサーバの負荷テスト・ツールが提供されている(マイクロソフト「サポート技術情報:Webサーバーの負荷テスト ツール」)。こうしたツールを利用すれば、想定するユーザー数のアクセスをシミュレートし、どの程度のプロセッサ能力が必要なのか判断することができる。データベース・サーバやアプリケーション・サーバの場合でも同様に、負荷テスト・ツールを利用し、求められるプロセッサ性能などを事前に調べておきたい。

 ここで重要なのは、デュアルプロセッサ構成を選択するのならば、プロセッサは最初から2個搭載することを前提に性能を検討することだ。4ウェイ構成でも同様に、最初から4個搭載することを前提に考える。デュアルプロセッサ構成を選択するのに、「将来、シングルプロセッサ構成で性能が足りなくなった場合、プロセッサを追加することで、サーバの延命が可能である」という理由がよく挙げられる。しかし多くの場合、デュアルプロセッサ構成のサーバにプロセッサが追加されることはまずない。これは、サーバの性能が足りなくなったころには、ディスク容量なども足りなくなり、サーバを置き換えた方が安上がりという状態になるからだ。保守部品として入手可能な当時のプロセッサは、販売時と同じ価格であるため、性能に対して割高になることも一因だ。

 つまり、性能の余力(マージン)としてデュアルプロセッサ構成のサーバを導入しても、その余力が使われることは少ない。むしろ、シングルプロセッサ構成で済むにもかかわらず、システム価格が高いデュアルプロセッサ構成を導入するのは、結果として無駄な出費に終わる可能性が高いわけだ。

 求められるプロセッサ構成とディスク容量が決まれば、ほぼサーバのクラスが決まる。ただしミッションクリティカルな用途の場合、性能的にはシングルプロセッサ構成で十分でも、管理機能や信頼性に関する機能(メモリや拡張カードのホットスワップ機能など)を重視すると上位モデルを選択しなければならなくなることもある。一般的に性能が高いサーバは、信頼性に関する機能も充実する傾向にあるからだ。

IAサーバのラインアップと拡張性/性能のイメージ
各サーバ・ベンダのラインアップはおおよそ図のようになっている。ベンダによっては、8ウェイ(8プロセッサ)以上のサーバをラインアップしていないところもある。また、実際にはタワー型サーバでも、ラックマウント可能なものもある。

 またラックマウント型の場合、性能と機能が決まると本体のサイズ(厚さ)もほぼ決まる。ラックマウント型サーバは、約4.4cmを1Uとして、この整数倍の厚さになっている。つまり、厚さが8.8cmならば2Uサイズのサーバというわけだ。データセンター(iDC)にサーバを置くハウジング・サービスを利用する場合、確保するラックの領域(ラックの高さ)によって料金が異なることが多い(ホスティング料金は、ラックの占有領域で決まるため)。ラック全体ならばいくら、6Uサイズならばいくらといった具合だ。1Uや2Uの薄型サーバならば、領域が狭くて済むため、ハウジング料金が安価になるわけだ。ただ、薄型になればなるほど、性能や拡張性は制約を受けることになるため、利用目的となる性能や拡張性を満たさない場合がある。本来ならば、利用目的 → 性能と拡張性 → 本体サイズ という順番で決めていくのがよいが、場合によっては本体サイズを優先しなければならないこともあるだろう。こうした場合は、「性能と拡張性」と「本体サイズ」の両方を優先した見積もりをそれぞれ作り、予算を検討すればよい。

 機種が決まったら、具体的な構成を選択することにしよう。もちろん、複数機種や同等の他ベンダのサーバでも見積りを取ることも重要だ。構成によっては、上位モデルの方が安価になるといったケースもある。この点、直販サイトによる見積りは、気兼ねなくいろいろな構成を試せるので楽だろう。

構成を変更しながら見積りを作成する

 一般的な直販サイトでは、機種を選択すると、その機種で可能となるプロセッサやメモリ容量、ハードディスク構成などが選択できるページに移る。ここでは、オプションが豊富なデルのPowerEdge 2600(デュアルプロセッサ構成)の見積り画面を参考に話を進めることにする。

 まずプロセッサを選択しよう。デュアルプロセッサ構成が可能なサーバの場合、1つ目のプロセッサを選択し、同じものを2つ目のプロセッサとして追加する。必ず同じ動作クロックである必要がある。あとから追加する場合も、同じプロセッサで同じ動作クロックである必要があるので、取りあえず予算がないので、遅い動作クロックのプロセッサを選択しておき、後から速いものを追加すればよい、ということはできない。また、同じステップ(製造上の仕様)でなければデュアルプロセッサ構成時に障害が発生する場合もある。前述のように、特別な理由がない限り、デュアルプロセッサ構成をシングルプロセッサで導入するのは面倒なだけなので、同時に2つ目のプロセッサも発注したい。

プロセッサ選択画面
見積り画面のプロセッサ選択部分。2つ目()は、1つ目()で選んだプロセッサと同じものを選択する。

 次にメモリ容量を決める。サーバのメモリは、レジスタ付きECCメモリが一般的だ。クライアントPCとよく似たPentium 4のシングルプロセッサ構成のサーバであっても、レジスタ付きECCメモリが採用されている場合が多いので注意が必要だ。クライアントPCの場合は、量販店などでメモリを購入して追加した方が安価になるケースが多いが、サーバの場合は微妙だ。サーバ製品を扱う秋葉原などのショップでは、通販でサーバ用メモリを販売しているところもあるので、価格を比べて搭載メモリ容量を決めてもよい。ただし、相性などの問題が生じる可能性があるので、多少の価格差ならば必要な容量を最初から搭載して購入したい。

ハードディスクのRAID構成を決める

 最も選択が難しいのがハードディスクの構成だ。RAID構成を選択した場合は、RAIDコントローラも選択する。オンボードでRAIDコントローラを搭載する機種が増えているが、選択するRAID構成によってはオプションのRAIDコントローラが必要になる場合がある。オプションのRAIDコントローラは、オンボードのRAIDコントローラに比べてキャッシュの容量が大きかったり、バックアップ・バッテリが装備されていたりと、性能や機能が強化されている(バックアップ・バッテリ機能があると、突然の電源ダウンの際にもしばらくはオンボード・キャッシュ内のデータが失われない)。オプションのRAIDコントローラも、SCSIのチャネル数などで複数用意されている場合があるので、用途に合わせて選択する必要がある。

RAIDコントローラ選択画面
見積り画面のRAIDコントローラ選択部分。2種類のRAIDコントローラが用意されている。オンボードのRAIDコントローラでは機能や性能が不足している場合は、Ultra320対応デュアルチャネルSCSI RAIDコントローラかUltra320対応4チャネルSCSI RAIDコントローラのどちらかを選択する。

 またRAID構成も、RAID 1(ミラーリング)とRAID 5(分散データ・ガーディング)のどちらのRAIDレベルを採用するのか決める(またはその組み合わせ)。RAID 1は、2台以上のハードディスクでまったく同じデータを持つことで耐障害性を高める方法だ。仕組みが容易であるため、専用のRAIDコントローラがなくても、ソフトウェアで実現できる。ただし、1台分の容量しかデータが保存できないため、ディスクの利用効率は低い。RAID 5は、最低3台のハードディスクが必要になるが、耐障害性が高い割には、比較的ディスクの利用効率が高い。RAID 5は、構成するディスク台数が多いほど容量の利用効率が向上する。そのため、一般にデータ領域として利用されることが多い。

 以前は、サーバに求められるディスク容量を確保しつつ、耐障害性を確保するにはSCSIでRAID 5を採用する、というの常識であった。しかし、単体のディスク容量が大きくなってきた現在、RAID 5にこだわる理由はなくなりつつある。例えば、400GbytesのIDEディスクでRAID 1を構成した方が、200GbytesのSCCSIディスク3台でRAID 5を構成するよりも安価で済む。RAID 1とすることで、IDEディスクでも、SCSIのRAID 5と信頼性の面で遜色がない。ディスク単体での性能や信頼性の面ではSCSIディスクの方が高い傾向にあるが、価格もその分高い。ディスクの故障時に30分程度の停止が可能な社内のファイル・サーバ用途ならば、安価なIDE(シリアルATA)ディスクを検討してもいいだろう。

 逆にミッションクリティカルな用途では、ディスクが故障してもサーバを止めることなく、ディスクの交換が可能なホットスワップに対応したディスクを選択する必要がある。多くのサーバでは、ホットスワップに対応させるためには、オプションのバックプレーンが必要になる(標準装備の機種もあるが)。バックプレーンとは、ハードディスクの着脱を可能にするインターフェイス・コネクタが付けられたインターフェイス・ボードのことだ。接続可能なディスク台数や、複数のSCSIチャネルに分割できるかどうかなどによって、数種類の選択が可能な場合がある。ディスクを選択する際に一番困惑するのが、RAID構成とバックプレーンの組み合わせだろう。バックプレーンの違いなどが分からない場合、サーバ・ベンダの営業窓口に問い合わせてみるとよい。

バックプレーン選択画面
見積り画面のバックプレーン選択部分。ハードディスク6台をSCSI 1チャネルで接続する「1x6 バックプレーン」と、ハードディスク6台をSCSI 2チャネル(3台ずつ)で接続する「2x3 分割バックプレーン」が選択可能だ。「2x3 分割バックプレーン」を選択し、RAID構成とする場合は、デュアルチャネル以上のSCSI RAIDコントローラを選んでおく必要がある(オンボードのRAIDコントローラではサポートできない)。

 なお現在のところ、IDE(シリアルATA)ディスクでホットスワップに対応可能なサーバはほとんどない。2005年にも対応製品が登場するといわれているシリアルATA IIになれば、規格上はホットスワップが可能になるので、比較的ローエンドのサーバでもホットスワップに対応するようになるかもしれない。

 このようにディスクを選択する際は、どの程度の信頼性が必要なのか、また故障時に何分くらいの停止が可能なのか、といった条件によってRAIDレベルやディスクの種類を決める必要がある。またそれに合わせて、ハードディスクのバックプレーンの種類も選択する。また内蔵にこだわらず、用途によっては外付け型RAIDやSANを選択するという選択肢もあるので、いろいろなパターンで見積もりを試してみるとよい(外付け型RAIDやSANを利用する場合、別途SCSIホスト・アダプタやファイバチャネル・インターフェイス・カードが必要になる)。

そのほかのポイント

 デュアルプロセッサ構成以上のサーバでは、冗長化電源に対応しているものが多い。冗長化電源は2つの電源ユニットを搭載し、1つの電源ユニットが故障した場合でも、もう1つの電源ユニットでサーバの稼働が継続できるというものだ。故障した電源ユニットは、稼働中でも交換可能になっているので、サーバのダウンタイムを大幅に減らすことが可能になる。

 ただサーバをiDCにホスティングする場合、冗長化電源の対応がオプションになっていることがあるので注意したい。せっかくサーバ自体に冗長化電源を搭載していも、iDC側の対応を忘れて使わないというのでは無駄になってしまう。iDCが冗長化電源をオプションにしているのは、別系統の電源ラインを割り当てるためコストがかかるからだ。電源ラインも二重化できれば電源ユニットの故障だけでなく、電源ラインの不具合によるサーバの停止も予防できる。

 またラックマウント型サーバは、取付金具にも注意が必要だ。サーバ・ラックによって取付金具が異なるため、サーバ・ベンダとラック・ベンダの両方に金具形状を確認してから購入したい。サーバ・ベンダの標準ラックを利用していない場合は、取付金具はラック・ベンダから購入した方が無難かもしれない。

 最後に選択することが多い保守サポートは、一種の保険なので、用途や許容できるダウンタイムによって、ベンダが用意したメニューから選択すればよい。ここで予算をケチると、大事なときにサーバが故障して慌てることになる。サーバは負荷が高いときに故障する傾向にあるので、多くの場合、業務が忙しいときに故障するだろう。こんなとき、翌営業日対応のサポートを申し込んでいたら、故障当日と翌日の業務がほぼ止まってしまうことになる。サーバの見積もりを取る場合は、ハードウェアだけでなく、サポートのコストも最初から考慮しておくことが重要だ。

サポート・サービス選択画面
見積り画面のサポート・サービス選択部分。翌営業日対応なのか、当日なのかなど、サポート・サービスを選択する。故障した際に、どの程度の業務が影響を受けるのかを考慮して、サポート・サービスは選択する。

 直販サイトでのサーバの選び方について解説したが、分からない点はサーバ・ベンダの問い合わせ窓口に聞くとよい。最近では、電子メールによる問い合わせ窓口も用意されているので、気楽に質問できるだろう。記事の終わり

  関連リンク
サポート技術情報:Webサーバーの負荷テスト ツール
 
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