解説

新サーバ・プラットフォーム「Intel E7520」の光と影

デジタルアドバンテージ
2004/10/13
解説タイトル

 2004年8月2日、インテルからIA-32の64bit拡張であるEM64T(エクステンデッド・メモリ64テクノロジ)採用のサーバ向けプロセッサ「Intel Xeon」と、同プロセッサの800MHzのプロセッサ・バスをサポートするチップセット「Intel E7520(開発コード名:Lindenhurst)」「Intel E7320(Lindenhurst VS)」が発表された。同日にデルはIntel Xeon/Intel E7520を搭載したサーバ4機種を、3日後の8月5日には日本HPがサーバ5シリーズをそれぞれ発表した。デルのラック型サーバ「PowerEdge 2850/1850」は即日出荷の一方、タワー型サーバ「PowerEdge 2800/1800」は10月の出荷予定となっていた。また日本HPの「HP ProLiant ML350 G4/ML370 G4/DL360 G4/DL380 G4」は構成によって一部制限を付けた上で出荷を開始している(日本HPの「PCI Expressの利用に関してのお知らせ」)。

 このように出荷が遅れたり、一部の制限が生じたりしたのは、チップセットのIntel E7520/E7320のPCI Expressに高い負荷が生じた際に不具合が生じることが判明したためだ。日本HPでは、BIOSでPCI Expressの帯域制限を行うことで障害が発生しないようにしたため、問題は生じないとしている。しかし、こうしたIntel E7520/E7320の問題も10月中旬から出荷されるサーバからは解消されるという。ここでは、障害が解消されたバージョンのIntel E7520を搭載して出荷されるデルのタワー型サーバ「PowerEdge 1800」を取り上げ、新しいサーバ・プラットフォームについて考察してみることにする。

デルのIntel E7520搭載サーバ「PowerEdge 1800」
Intel Xeonのデュアルプロセッサ構成が可能なタワー型サーバ。価格は、最低構成で17万4300円である。

次世代ミッドレンジ・クラスの平均像は?

 PowerEdge 1800は、デルのタワー型サーバの中ではミッドレンジ・クラスとなる。オプションのラックマウント金具を用いることで、5Uのラックマウント型サーバとしても利用できる。最近のタワー型サーバは、このようにラックマウント型としても利用できるものが多い。データセンターなどのように高密度実装が望まれる用途には向かないが、企業内で複数のサーバを効率よく設置する際には便利だ。

 プロセッサは、EM64TをサポートしたIntel Xeon-3.40GHz/3.20GHz/2.80GHzをデュアルプロセッサ構成で搭載可能である(Intel Xeon-3.60GHzは、供給が間に合わないのか、現時点ではラインアップされていない)。残念ながらEM64Tを正式にサポートするOSは、一部のLinuxに限られており、提供されているデバイス・ドライバも限定的であるためか、デルのサポートOSにEM64Tをサポートしたものはない。EM64Tの利用を前提にPowerEdge 1800を導入するのは、少し待った方がよいだろう。ただEM64TとともにIntel Xeonは、プロセッサ・バスが800MHzに引き上げられている。これにより、以前の533MHzのプロセッサ・バスに対して、同じ動作クロックのプロセッサでも若干の性能向上が期待できるとしている。

タスクマネージャの画面
評価機は、シングルプロセッサ構成であったが、HTテクノロジによりWindows上ではプロセッサが2個に見えている。デュアルプロセッサ構成にすれば、HTテクノロジとの組み合わせでプロセッサは4個に見えることになる。

 メモリは、ECC付きPC3200(DDR2-400MHz)対応で最大12Gbytesまで搭載できる(DIMMソケットは6本)。ハードディスク・ベイは6基あるので、OS用に2台のハードディスクでミラーリング、データ用に残り4台でRAID 5といった構成が実現できる。オプションとして、シリアルATA RAIDカードやSCSI RAIDカードも用意されているので、用途によって比較的自由な構成が実現できる(標準でオンボードのシリアルATAとSCSIインターフェイスを搭載するが、RAID構成はオプションとなる)。ただし注意が必要なのは、オンボードのシリアルATAを利用したミラーリング「CERC SATA 2S」と、シリアルATA RAIDカード「CERC SATA 6Ch(PCIカード)」の両方を組み合わせることができない点だ。オンボードのCERC SATA 2SでOS用ミラーリング、CERC SATA 6Chでデータ用RAID 5といったようにシリアルATAのチャネルを分けるような構成は実現できない。

PowerEdge 1800の正面
PowerEdge 1800の前面カバーを外したところ。前面カバーは、ロックすることが可能なので、データセンターに設置した場合でもディスクの盗難などを防ぐことができる。
  フロッピー・ドライブ用の3.5インチ・ベイ。注文時に実装しない選択も可能となっている。
  フロント・アクセス可能な5インチ・ベイが2つ装備されている。評価機はテープ・ドライブが搭載されていた。
  ハードディスク・ベイは6つあり、3.5インチ・ディスクが最大6台まで内蔵可能だ。
  USBポート。キーボードやUSBフロッピー・ドライブを接続するためのUSBポートが前面にも実装されている。
 
オプションのシリアルATA RAIDカード「CERC SATA 6Ch」
シリアルATA 6ポートのRAIDカード。カード上の印刷を見るとAdaptecからのOEMであることが分かる(Adaptecの型番では2610SA)。しかし、Adaptecには該当する製品はラインアップされておらず詳細は不明だ。

 ハードディスクは、36G/73G/146GbytesのUltra 320 SCSIディスク(1万回転)、36G/73GbytesのUltra 320 SCSIディスク(1万5000回転)、40G/80G/160G/250GbytesのシリアルATAディスク(7200回転)から選択できる。コストと最大搭載容量を重視するのならばシリアルATAディスク、性能を重視するのならば1万5000回転のUltra 320 SCSIディスク、ということになる。オンボードにSCSIコントローラも搭載されているので、RAIDを必要としないのならば、SCSIディスクだけの購入で済む。

 拡張スロットは、サーバとしては初めてIntel E7520でサポートされたPCI Expressを装備する。PCI Express x8が1スロット、PCI Express x4が1スロットの合計2スロットが用意されている。PCI Expressは、ポイント・ツー・ポイントのシリアル伝送を採用しており、物理層は一方向あたり2本の信号線で構成される。双方向のデータ転送には最小構成(1bitシリアル転送)で4本の信号線が必要となり、この最小構成を1レーン(x1)と呼ぶ。つまり、x8は8レーン、x4は4レーンということだ。PCI Express x8では、x1、x2、x4、x8の各PCI Expressカードを差すことができる。ただ、現時点ではクライアントPC向けにPCI Express x16のグラフィックス・カードが販売されている程度で、そのほかのインターフェイス・カードなどはサンプル出荷や製品発表に留まっている。PCI Expressを採用したサーバやPCが市場に豊富に出回り、互換性が十分に検証できるまでは、本格的な製品出荷とはならないだろう。

 またPowerEdge 1800のPCI Expressスロットで注意が必要なのは、2スロットともなぜかPCI Express x8用が使われていたことだ。この仕様は、日本HPのProLiant ML350 G4も同様で、PCI Express x4用スロットにx8用スロットが使われていた。この件について、両社に確認したが、明確な回答を得ることはできなかった。現在の仕様では、PCI Express x4用スロットにPCI Express x8用カードが差せるので、ユーザーが混乱する可能性がある(帯域が足りずに正しく動作しない可能性が高い)。両社のサーバが同じ仕様であることから、何らかの理由から、本来2スロットともx8をサポートする予定が、x8とx4の各1スロットずつというように変更になったのではないかと推測する。

 このようにPCI Expressは、やっと製品が登場したという段階であり、製品としては少々不安な部分もある。となると拡張性は、従来からのPCIやPCI-Xが重要になってくる。PowerEdge 1800では、64bit/100MHzのPCI-Xが2スロット、32bit/33MHzと64bit/66MHzのPCIが各1スロットを用意している。PCI Expressが搭載されているだけ、拡張スロットの数は制限を受けてしまっているが、このクラスのサーバならば4スロットもあれば十分だろう。

PowerEdge 1800の拡張スロット部分
上から64bit/66MHzのPCI()、PCI Express x4()、PCI Express x8()、32bit/33MHzのPCI()、64bit/100MHzのPCI-Xが2スロット()となっている。写真を見ると分かるように、PCI Expressは、x4()とx8()とレーン数が異なるにもかかわらず、同じスロット(PCI Express x8用)が使われている。

 電源ユニットは、650Wでホットスワップに対応している。オプションにより電源ユニットを1基追加して、冗長構成とすることも可能だ。残念なことに、本体の冷却ファンは大型のものが採用されており静かなのに、電源ユニットに内蔵されているファンが少々うるさい。部署内や机の横に設置するような場合は、稼働音が気になるかもしれない。クライアントPCならば、静音型の電源ユニットに交換も可能だが、サーバとなると独自形状ということもあり、そういうわけにはいかない。オプションでもいいので、狭い日本のオフィスを考慮した静音型の電源ユニットを用意してもらいたい。

メンテナンス性は良好

 運用面で気になるメンテナンス性について見ていこう。PowerEdge 1800は、同時期に発表となったPowerEdge 2800/1850/2850とドライバの共通化を実現しており、これらのサーバ間でOSイメージの共有が行える。これらのサーバでシステムを構築していれば、デバイス・ドライバや修正プログラムなどの管理が容易になるため、TCOが削減できるわけだ。

 ハードウェアのメンテナンス面でも、従来機種と同様、工具を必要とせずに本体を開けることができるなど工夫されている。本体前面パネルは、カギによってロックすることも可能なので、セキュリティ面は考慮されている。本体カバーを開けると、メモリ・ソケット部は空冷ファンによる冷却のためにカバーされているものの、拡張スロット部はディスク・ベイなどとの重なりがなく、アクセスは容易となっている。

PowerEdge 1800のマザーボード部分
メモリ・ソケット部の冷却ファンと一体化されたカバーは外してある。拡張スロット部は、ドライブ・ベイなどの重なりがなく、メンテナンスは容易だ。

 また標準でオンボードにBMC(Base Management Controller)と呼ぶ管理コントローラを搭載しており、やはり付属のユーティリティ「Dell OpenManage」でサーバ上の各コンポーネントの監視が行える。さらにオプションの管理コントローラ「DRAC 4/P」を追加することで、OSの起動の有無にかかわらず、リモートでの監視・管理が可能になる。データセンターや管理者のいない支社などにPowerEdge 1800を設置するような場合は、DRAC 4/Pを搭載しておくと、ハードウェア・トラブル以外はリモートで管理できるわけだ。

EM64TとPCI Expressは付加機能か?

 このようにPowerEdge 1800は、PCI Expressをサポートしていることを除けば、ミッドレンジ・クラスのタワー型サーバとしては比較的オーソドックスな構成となっている。PCI Expressは、前述のように現時点では拡張カード類がそろっておらず、利用価値はあまり高くない。また、まったく新しいインターフェイスは、常に互換性問題が発生しがちだ。PCIやUSBが登場した当初も、数多くの製品がリリースされ規格が安定するまでは、製品の組み合わせによって不具合などが発生していた。PCI Expressも、しばらくは互換性の問題が生じるだろう。同様にEM64Tも、x64版Windows Server 2003のリリースが2005年中ごろとなることから、本格的な普及は2005年末からになりそうだ。数年後には、EM64TとPCI Expressがサーバの標準となるのは間違いない。しかし現時点では、EM64TとPCI Expressともほとんどメリットがない。Intel E7520のEM64TやPCI Expressは、付加機能程度に考えた方がよいかもしれない。

 ではPowerEdge 1800に限らず、チップセットにIntel E7520を採用したサーバにはメリットがないのだろうか。PCI Expressを利用しなくても、800MHzのプロセッサ・バスやDDR2-400MHzメモリのサポートにより、同じ動作クロックのプロセッサを搭載しても、10%以上の性能向上が実現するとしている。つまり、EM64TやPCI Expressを利用しなくても、性能面で大きなメリットがあることが分かる。

 EM64TやPCI Expressといった新しいプラットフォームに期待しているのであれば、64bitアプリケーションやPCI Express対応カードがそろってから導入すべきだ。だが、従来機種の延長としてIntel E7520搭載サーバを捉えれば、コストパフォーマンスの高いミッドレンジ・サーバということができるだろう。記事の終わり

  関連リンク
PCI Expressの利用に関してのお知らせ
Intel E7520/7320の製品情報ページ
PowerEdge 1800の製品情報ページ
 
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