解説

2005年のIntelのプロセッサ戦略が明らかに

1. デュアルコアと5つのTを推進するIntel

元麻布春男
2004/12/28
解説タイトル

 2004年も残りわずかとなったが、2004年もさまざまな「事件」があった。つい先日もIBMがPC事業を中国の聯想集団有限公司(Lenovo)へ売却するという発表があったばかりだ(IBMのニュースリリース「LenovoへPC事業を売却」)。マイクロプロセッサの分野での最大の事件は、Intelが開発中だった次世代のプロセッサ計画をキャンセルし、デュアルコア/マルチコア路線に大きく舵を切ったことだろう。2004年という年は、この事実で後世に語り継がれる年になるのかもしれない。またIA-32の64bit拡張として、IntelがAMDとの互換路線を採用した点も話題となった。

 ここでは2004年12月8日に開かれたIntelの投資アナリスト向け説明会「2004 Intel fall Analyst Meeting(以下、アナリスト・ミーティング)」での話題を中心に、2004年の動向をまとめてみることにする。Tejas(開発コード名:テジャス)Jayhawk(同:ジェイフォーク)のキャンセルとItaniumの位置付けの変更、おそらくこれらと無関係ではないであろう、エンタープライズ・プラットフォーム事業部のマイク・フィスター(Mike Fister)事業部長の辞任と、激動の春のアナリスト・ミーティングに比べれば、今回のアナリスト・ミーティングはおとなしいものだったが、それでも多くの興味深い話題が語られた。2005年のIT業界の動向を予測する上でも重要なアナリスト・ミーティングであった。

次世代プロセッサのキーワードはデュアルコアと5つのT

 2004年5月13日に開催されたアナリスト・ミーティグ「2004 Intel Spring Analyst Meeting」をIntelにとっての転換点とするなら、今回のアナリスト・ミーティングは転換後のIntelの方向性を示したものといえる。2004年では、IA-32の64bit拡張でAMDに先行されたことで、Hewlett-PackardやIBM、Sun Microsystemsなど、ほとんどのサーバ・ベンダにAMD Opteronの採用を許してしまった(解説:IA-32の64bit拡張がもたらすもの)。AMDもAMD Opteronのデュアルコア化を進めており、再びIntelがAMDの先行を許してしまう可能性も高い。そのような状況下で、Intelがどのようにデュアルコア/マルチコアを推進するのか、具体的に踏み込んだ発言があった。

 Intelが路線変更を余儀なくされたのは、いよいよ消費電力とそれによる熱が、プロセッサの性能向上を抑制する要因として、無視できなくなってきたことと無縁ではない(解説:AMDとIntelはなぜデュアルコア化を急ぐのか?)。ポール・オッテリーニ(Paul Otellini)社長は、「黎明期から1980年代までをただひたすら性能を追求していればよかった時代、1990年代を爆発的なPCの普及の推進役としてコスト・パフォーマンスを追求していればよかった時代」と位置付けた。そして、「2000年代を消費電力1W当たりのコスト・パフォーマンスが問われる時代」と位置付けた(図1)。もはや消費電力の問題は、ハンドヘルド(PDA)からサーバまで、すべてのセグメントで無視できない問題となっており、これまでのようにプロセッサの動作クロックを単純に引き上げていくことはできない、ということだ。

図1 価値の進化
2000年代は、消費電力が重要になることを強調した。すでにPentium 4-3.60F GHzの熱設計時消費電力は115Wと、100Wを超えている。一般的なPCに搭載するには、125Wが限界だとされている。つまり現在の状態では、さらなる動作クロックの引き上げは難しくなりつつあるわけだ。

 動作クロックの引き上げによる性能向上に代わってIntelが打ち出しているのが5つのT(技術)に代表される技術と、プロセッサのデュアルコア化/マルチコア化である(図2)。5つのTとは、1つのプロセッサ・コアで2つのスレッドを処理するHyper-Threading Technology(HT)、64bitメモリ拡張技術であるIntel Extended Memory 64 Technology(EM64T)、セキュリティ機能であるLaGrande Technology(LT)、システムの仮想化技術であるVanderpool Technologies(VT)、遠隔地からのシステム管理を容易にするIntel Active Management Technology(iAMT)の5つを指す。VTだけが複数形(Technologies)になっているのは、これまでサーバ向けの仮想化技術を「Silvervale Technology」、クライアント向けの仮想化技術を「Vanderpool Technology」と別々に称していたのに対し、今後は仮想化技術の開発コード名を「Vanderpool Technologies」に統一したことを意味しているものと思われる。つまり、Silvervale Technologyと呼ばれてきたサーバ向けの仮想化技術そのものが消えてしまったのではなく、単に名称が変更になった、と理解すればよい。

図2 Intelが推進する新しいテクノロジ(T)
デュアルコア/マルチコアに加え、HT、EM64T、LT、VT、iAMTの5つのTが今後の革新で重要になるとしている。

 デュアルコア化したプロセッサについては、デスクトップ向け、サーバ向け、モバイル向けのすべてが2005年中に出荷が開始される。そして2006年には各セグメントのかなりの割合をデュアルコア、あるいはマルチコアのプロセッサで占めるとされている(図3)。デュアルコア化、マルチコア化による並列処理性能の向上により、今後もムーアの法則にのっとった性能向上を実現していく、というのがIntelの説明だ。

図3 デュアルコア化のロードマップ
2005年には、デスクトップ、サーバ、ノートのすべての領域に対してデュアルコアを採用したプロセッサが投入される。2006年には、それぞれ70%、85%、70%以上となる。ここでデスクトップ/ノートにパフォーマンスと但し書きが付いているのは、Celeronがデュアルコア化されないことを示していると思われる。

 このプロセッサのデュアルコア化によるマイナス要因として、ダイ・サイズが大きくなることによる生産効率の悪化から、出荷量の減少が懸念されるが、Intelによるとその心配はないという(頭脳放談:第13回 300mmウエハは2倍お得)。図4はオッテリーニ社長による生産キャパシティの見通しだが、開発コード名「Smithfield(スミスフィールド)」と名付けられた90nmプロセス製造による最初のデスクトップ向けデュアルコア・プロセッサのダイ・サイズは、予定されていたTejasよりわずかだが小さい。そのため、Smithfieldに切り替わっても生産数量的な影響はないということだ。なお、Smithfieldという開発コード名が「公式に」登場したのは今回のアナリスト・ミーティングが初めてだ。

図4 世代ごとのダイ・サイズの比較
デュアルコア化によるダイ・サイズの拡大が気になるところだが、Smithfieldは、キャンセルされたTejasよりも小さい。

 ちなみに図4で用いられているダイの写真は、必ずしも現実のプロセッサではない。これは180nmプロセスで製造された初代Pentium 4(開発コード名:Willamette)とTejasが同じ写真であることからも明らかだ。ただし、ダイ・サイズの相対的な関係は正しいとのことである。また、ここでTejasについて、シングルコアでHyper-Threadingをサポートした大容量キャッシュを持つプロセッサであったことが明らかにされた。ただいくら大容量のキャッシュを搭載するとはいえ、同じ90nmプロセスで製造されているPrescott(開発コード名:プレスコット)の約3.5倍の面積というのは不自然だ。何らかの新機能が盛り込まれたに違いない。これだけダイ・サイズが大きくなる予定であったことを考えると、このプロセッサにIntelがどんな機能を盛り込もうとしていたのか、かえって気になってしまう。なお、2005年第1四半期までにIntelのマイクロプロセッサの生産は全量300mmウエハに移行し、200mmウエハのファブはフラッシュメモリやチップセット、通信用半導体などの生産に移行することになる。また、マイクロプロセッサでは90nmプロセスはすべて300mmウエハを用いるが、フラッシュや通信用半導体では200mmウエハで90nmプロセスが利用される。

 次ページでは、更新されたモバイル向け、デスクトップ向け、サーバ向けの各プロセッサのロードマップを見ていくことにしよう。

  関連記事 
IA-32の64bit拡張がもたらすもの
AMDとIntelはなぜデュアルコア化を急ぐのか?
第13回 300mmウエハは2倍お得

  関連リンク 
「LenovoへPC事業を売却」のニュースリリース
 
 

 INDEX
  [解説]2005年のIntelのプロセッサ戦略が明らかに
  1.デュアルコアと5つのTを推進するIntel
    2.明らかになる2005年のロードマップ
 
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