解説

2005年のIntelのプロセッサ戦略が明らかに

2. 明らかになる2005年のロードマップ

元麻布春男
2004/12/28
解説タイトル

モバイル向けとデスクトップ向けの2005年のロードマップ

 モバイル分野のプラットフォームでは、2005年早々に、新しいSonoma(ソノマ)プラットフォームが登場することになっている(図5)。その中核となるAlviso(アルビソ)チップセットは、すでにデスクトップPC向けにリリースされているGrantsdale(グランツデール)のモバイル版といったもので、これによりモバイルPCにPCI Express、DDR2メモリといった技術がもたらされる。2006年に登場するNapa(ナパ)プラットフォームは、65nmプロセスによるデュアルコア・プロセッサであるYonah(ヨナ)と、Calistoga(カリストガ)チップセットを中核としたものだ。デスクトップとサーバでは90nm世代でデュアルコア化がスタートするが、モバイルではこのYonahが最初のデュアルコア・プロセッサとなる。Yonahの出荷が2005年内で、Napaが2006年のプラットフォームとされていることから考えると、YonahのデビューはCalistogaチップセットではなく、その前のAlvisoで行われると考えた方がよいのだろう。

図5 SonomaとNapaの概要
Napaでは、無線LANがミニカードで提供されるように変更され、WiMAXと3G(携帯電話)がオプションでサポートされる。

 Napaの機能的な特徴について詳細は明らかにされていないが、グラフィックス機能の強化、無線LANをPCI Expressベースのミニカードにすること、などが明らかにされている。また、パワーマネージメントの強化(特にチップセットの平均消費電力の削減)により、Sonomaに対して1時間程度バッテリ駆動時間を延ばしながら、最大50%の性能向上を図る、という目標も明らかにされた。このYonahについて、今回のアナリスト・ミーティングでは初めてウエハが示されたほか、その1週間前に初めてWindows XPがブートしたという評価システムを用いて動画を再生するデモが公開されるなど、スケジュールが順調であることが強調されていた。もちろん、これはDothan(ドーサン)やSonomaがさんざん遅れたことと無縁ではないだろう。Yonahに対する不安を払拭するのには、これくらいは見せておく必要があると考えたに違いない。

 一方デスクトップでは、2005年のプラットフォームとしてLyndon(リンドン)が、2006年のプラットフォームとしてBridge Creek(ブリッジ・クリーク)とAverill(アベリル)の2つが示された(図6)。まずLyndonだが、当初は2Mbytesの2次キャッシュを搭載したPentium 4(開発コード名不明)、そしてSmithfieldが用いられる。2Mbytesの2次キャッシュのPentium 4は、EM64TとiAMTをサポートし、省電力機能としてモバイル向けのプロセッサに搭載されてきたSpeedStep(Enhanced Intel SpeedStep Technology)を実装する。おそらくFSBは800MHzで、FSB 1066MHzはExtreme Editionの差別化ポイントとなるだろう。

図6 デスクトップの次世代プラットフォーム
デスクトップ向けの次世代プラットフォームの概要が示された。2005年にはLyndon、2006年にはBridge CreekとAverillが提供される。

 このSmithfieldの性能についてオッテリーニ社長は、「3.8GHzの2Mbytesキャッシュは、4GHzの1Mbytesキャッシュより少し高速」と述べている。デモでは2種類のPrescott(HTテクノロジあり/なし)とSmithfieldを比較する形で、Adobe Premiere ElementsによるDVDオーサリング(DV素材)と、RoxioのEasy Media Creator 7によるスライドショー作成を同時に行い、その高速性をアピールした。

 2006年に登場するプラットフォームは、Bridge Creekが企業向け、Averillがコンシューマー向けとされているが、詳細は明らかにされていない。ただ、次期WindowsのLonghorn(ロングホーン)の登場に合わせてVTとLTがついに実装される。また、iAMTが2世代目になるのに加え、プロセッサも65nmプロセスによるデュアルコア・プロセッサが登場する。このプロセッサについて、今回のアナリスト・ミーティングで、デバッグ作業中のウエハと開発コード名「Cedar Mill(シダー・ミル)」が公開されている。

Itanium 2の位置付けがポイントとなるサーバ・プラットフォーム

 サーバ・プラットフォームでは、Itanium 2の位置付けが、はっきりとRISCプロセッサの置き換えであることが示された(図7)。実は筆者は、2004年2月のIDFでフィスター前事業部長に、「Intelあるいはエンタープライズ・プラットフォーム事業部は、Itanium 2をどうしたいと思っているのか」「RISCプロセッサの置き換えだけできればいいのか」とたずねたことがある。その答えは、「サーバ向けプロセッサの中核になってほしい」というものだったのだが、その後の路線変更でRISCプロセッサの置き換え、という位置付けになってしまったようだ。

図7 サーバ向けプロセッサの位置付け
ItaniumはRISCプロセッサの置き換え、Intel Xeonはコスト/パフォーマンス/消費電力をリードするものという位置付けが定義された。

 このことはサーバのプラットフォーム技術のロードマップ(図8)にもはっきりと現れている。Intel Xeonベースのサーバ・プラットフォームが、毎年着実に新しい技術が投入されているのに対し、Itanium 2のプラットフォームは2005年と2006年で変わりがない。本来2005年に登場するデュアルコアのMontecito(モンテシト)には、開発コード名「Bayshore(ベイショア)」で呼ばれていた新しいチップセットが提供される予定だったのだが、春のアナリスト・ミーティングの時点でキャンセルされてしまった(「解説:64bitへ動き出したIAサーバの胎動 2. 更新されたItaniumプロセッサのロードマップ」)。確かにItanium 2を用いてメインフレーム級のサーバを構築できるベンダは、すべて社内に自前のチップセットを用意するくらいの技術を持っており、その点では心配は要らない。だが、Intelによるチップセットの更新がなくなると、事実上Itanium 2を用いたホワイトボックス系のサーバは終焉を迎えることになるだろう。

図8 サーバ向けプロセッサのロードマップ
Intel Xeonには毎年新しい技術が投入される一方、Itanium 2は安定したプラットフォームが提供される。これも位置付けの違いを表していると思われる。

 一方、Intel Xeonベースのサーバは、デュアルコア化こそ2006年に持ち越されるものの、デスクトップ同様2Mbytesのキャッシュを搭載したプロセッサ(開発コード名:Irwindale)など、新製品の投入が予定されている。デュアルコア化が行われる2006年には、新しいメモリ(Fully Buffered DIMM)をサポートしたチップセットも投入される。「FUTURE」の項では、Intel XeonとItanium 2で同じ内容が並んでいるが、これは現時点において両者を共通プラットフォームにする計画がまだ生きていることを示している。予定では、このタイミングで両プロセッサの外部バスを、現在のシェアード・バスからポイント・ツー・ポイント接続技術を用いたものにすることになっている。ただ、Itanium 2については、「OEMベンダ次第」ということになるかもしれない。

BRICsのIT化が2005年以降の注力点

 経済発展の著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、IT業界にとっても魅力的な市場となっている。そのためかアナリスト・ミーティングの最後に、現在急速な経済発展の途上にある中国向けのプラットフォームが紹介された。中国では11万カ所以上のインターネット・カフェに、1000万台以上のPCが導入されているが、これらのPCを管理できない状況にあるという。こうしたインターネット・カフェにはちゃんとした管理者がいないことが少なくないのに加え、ソフトウェアの修正プログラム、ユーザーによるソフトウェア・インストールのロールバック、備品(マウス、メモリ・モジュールなど)の盗難など、問題が山積である。Intelはこうした市場向けに、Christea(クリスティア)と呼ばれるリファレンス・プラットフォームを2005年にリリースする(図9)。iAMTをベースにした管理機能により、遠隔地からのシステム管理が可能となる。AMDは同様なマーケット向けにWindows CEベースのPIC(パーソナル・インターネット・コミュニケータ)を投入する方針だが、果たしてどちらが広く受け入れられるのか、あるいは両者は共存するのか注目される。

図9 中国のインターネット・カフェ向けに提供を予定しているChristea
中国のインターネット・カフェ向けにChristeaと呼ぶ新しいリファレンス・プラットフォームをリリースする。管理機能などを充実させることで、遠隔地からのシステム管理などを実現可能とする。

 2004年は、Intelにとって製品開発の遅れやキャンセルなどによって停滞感の漂う1年であったように感じる。2005年は、アナリスト・ミーティングで示したとおりの製品出荷が行えるのかが、IT業界全体の景気を左右するといってもよいだろう。記事の終わり

  関連記事 
64bitへ動き出したIAサーバの胎動 2. 更新されたItaniumプロセッサのロードマップ

 

 INDEX
  [解説]2005年のIntelのプロセッサ戦略が明らかに
    1.デュアルコアと5つのTを推進するIntel
  2.明らかになる2005年のロードマップ
 
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