解説

2005年は64bitとデュアルコア、PCI Expressがサーバを変える

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2005/01/28
解説タイトル

 2004年は、Intel Xeon/Pentium 4の64bit化(EM64Tの採用)やPCI Expressの登場など、サーバ・プラットフォームの変革が始まった年となった。2005年後半には、Itanium 2にデュアルコアが採用され、順次、Intel Xeon/Pentium 4のデュアルコア化が進められることが明らかになっている。AMD Opteronも、ほぼ同時期にデュアルコア化が行われる。つまり、2005年から2006年にかけて、多くのサーバが、64bit化されたデュアルコア・プロセッサを搭載し、拡張インターフェイスはPCI Expressとなる。これらの変化が、ユーザーにどのような影響を及ぼすのかを考えてみた。

64bitへの移行は始まるのか?

 インテルと日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、それぞれ2004年後半の2ウェイ向けサーバ用プロセッサの90%以上が、すでにEM64Tに対応していたと述べている。このことから、すでにハードウェアとしての64bit対応は確実に進んでいるといえる。しかし2005年1月の時点では、ハイパフォーマンス・コンピューティング用途(HPC)を除けば、そのほとんどは32bit OSで動作しており、64bitプロセッサとしては稼働していない。多くのユーザーはEM64Tの実装すら意識しておらず、既存のIA-32のIntel Xeonと同じプロセッサとして利用しているのが実態である。

 この背景には、Windows Serverのx64版(EM64TとAMD64)の実装が遅れていることが影響している。x64版Windows Server 2003は、Windows Server 2003 SP1の機能が取り込まれる。つまりx64版Windows Server 2003の発表は、現在、RC1が公開され、テスト段階にあるWindows Server 2003 SP1がリリースされた後ということになる。x64版Windows Server 2003のリリースは、早くても2005年中ごろになりそうだ。

 しかし、64bit対応のデバイス・ドライバが揃っていないため、x64版Windows Server 2003がリリースされても、64bit化は進まない可能性がある。現在、公開されているx64版Windows Server 2003のベータ版では、ネットワーク・インターフェイスやRAIDなど、主要なデバイスに対してもドライバが含まれていない状態だ。各デバイス・ベンダとも、64bit版ドライバの開発は進めているという話だが、提供開始は、x64版Windows Server 2003がリリースされてから、というところも多いと聞く。

 このようにユーザーの関心が低く、デバイス・ベンダの対応が鈍いのは、大規模なデータベース・サーバや計算サーバを除けば、64bitの必要性がそれほど高くないためと思われる。実際、一般的なファイル/プリント・サーバでは64bit化による恩恵はほとんどない。アプリケーション・サーバにおいても、64bit化による恩恵に浴せるのは一部の大規模なものに限られる。そういったメリットがあるアプリケーションにおいても、64bit化によるメリットより移行にかかるコスト(新たなソフトウェア・ライセンスや作成した社内アプリケーションなどの改変費用)の方が大きいと考えれば、ユーザーはなかなか64bitへの移行は行わないだろう。x64版Windows Server 2003のユーザーが増えなければ、必然的にデバイス・ベンダの対応は鈍くなる。こうした悪循環から抜け出すには、64bit環境を生かしたアプリケーションの存在が不可欠だが、現時点では大規模なデータベースやHPC程度しかないのが現状だ。

 2005年後半には、サーバ・ベンダやソフトウェア・ベンダが64bitへの移行メリットを強調したキャンペーンを実施すると思われる。しかし実際にユーザー・システムの64bit化が進むには、乗り越えなければならないハードルは少なくない。

PCI Express対応カードの状況は?

 2004年8月2日にリリースされたIntel E7520/E7320によって、サーバ向けチップセットにおいてもPCI Expressのサポートが開始された(インテルのニュースリリース「インテル Xeonプロセッサ・ベースのサーバ・プラットフォームを発表」)。これにより、従来のパラレル・バス方式のPCI/PCI-Xから新しいシリアル・バス方式のPCI Expressへの拡張インターフェイスの移行が始まったことになる。しかし現時点で入手可能なPCI Express対応カードの種類はまだ少ない。しかもそのほとんどがグラフィックス・カードで、ようやくPCI Express対応のRAIDカードがいくつか販売になったという状態だ。ファイバ・チャネルや10Gbイーサネットなど、PCI Expressのx4やx8の幅広い帯域が生かせそうなサーバ向け拡張カードは、いまだ販売されていない(開発表明はあるものの、実際の製品出荷には至っていない)。

 これにはいくつか理由が考えられる。ひとつには、PCI Express搭載のサーバは出荷されたばかりであり、現時点ではPCI Expressの拡張カード市場がそれほど大きくないことだ。またサーバ分野では、互換性に対する要求が厳しいため、実際に出荷されたサーバでの互換性テストに時間がかかっているという面もあるだろう。さらに前述のようにx64版Windows Server 2003のリリースによって、サーバの64bit環境への移行が本格的に始まる可能性があるため、その時点でPCI Express対応と64bit対応を同時に行いたい、というベンダの思惑もありそうだ。

 このような理由から、2005年前半までは、PCI Express対応の拡張カードが各社から積極的に市場投入されることはないと思われる。PCI Express搭載のサーバであっても、PCIやPCI-Xはサポートされているので、当面はこれまでと同様、PCIやPCI-Xの拡張カードを利用すればよい。

 製品の選択肢が少ないという外部要因だけでなく、純粋なPCI Expressの仕様という意味でも、現時点で多くを期待するのは避けた方がよいだろう。というのも、過去の経験からいって、この種のインターフェイス規格は、本格的な普及期を迎えた段階で、互換性問題などを解消するために、規格のリビジョンアップが行われることが往々にしてあるからだ。そうした場合、初期の規格に合わせて実装されたPCI Expressプラットフォームでは、正しく動作しない(新リビジョン対応の)拡張カードの方が多く販売される可能性もある。実際、PCIでも同様のことがあったので、PCI Expressでもリビジョンアップの可能性は否定できない。

 2004年後半に発表となった2ウェイ・サーバの多くはPCI Expressを採用しているが、これらのサーバを購入する場合でも、拡張性についてはPCIとPCI-Xの拡張スロットをベースに考えたい。PCI Expressコネクタは、「おまけ」として考え、将来使える可能性があるもの程度に思った方がよいだろう。

デュアルコアはサーバの利用形態を変える?

 2005年後半には、サーバにデュアルコア・プロセッサが投入される。デュアルコア化によって、2ウェイ・サーバであってもシングルコアの4ウェイ・サーバと同等の性能を得ることができるようになる。一方でマイクロソフトは、デュアルコアでも物理的なプロセッサ数に対してソフトウェア・ライセンスを適用するとしている。そのほかのソフトウェア・ベンダも、マイクロソフトに追従するものと思われる。つまり、既存の2ウェイ・サーバをデュアルコア・プロセッサを搭載した1ウェイ・サーバに置き換えることで、性能を維持したままソフトウェア・ライセンス料を引き下げることが可能になる。

 またデュアルコア化による性能向上をサーバ統合に生かすことも可能だ。これまで複数台のサーバに分散していたサーバ・アプリケーションを、1台で稼働させることによって、OSのライセンス料、CALの費用、メンテナンス費用などを低減することが可能になる。例えば、3台のWindows Server 2003搭載サーバを1台にまとめることができれば、単純には2台分のOSライセンスと2台分のWindows Server 2003搭載サーバに対するCALを削減できる。

 このようにプロセッサのデュアルコア化は、情報システムの初期コストおよびTCO削減の動きとあいまって、サーバの統合を加速させる可能性がある。またデュアルコアが普及すれば、従来以上にスケール・アウトを重視し、プロセッサ性能を十分に引き出すアプリケーションも登場してくるものと思われる。

2005年後半はサーバ市場が大きく動く

 以上のように2005年後半には、x64版Windows Server 2003やデュアルコア・プロセッサなど、サーバ市場に大きな影響を与える製品がリリースされる。さらにサーバの性能向上は、TCO削減を目的としたサーバの統合や、プロセッサのマルチコア化を活かした分散処理のさらなる普及につながる可能性がある。また各サーバ・ベンダは、再びブレード・サーバに力を入れ始めており、2005年後半には新たな高密度サーバの利用提案もありそうだ。

 ユーザーとしては、こうしたシステムのトレンドを把握し、情報システムの中長期戦略を練る必要があるだろう。サーバ・プラットフォームに大きな変更が加わったり、プロセッサ・アーキテクチャが変わったりするこの時期にシステムの導入戦略を誤ると、情報システムの実質的な寿命が短縮させられたり、計画外に大規模な変更を余儀なくされるなど、無駄な情報投資が発生しやすいからだ。これまで何度となく繰り返されてきたこととはいえ、システム導入担当者にとって2005年は、気が気ではない1年となりそうだ。記事の終わり

  関連リンク 
ニュースリリース「インテル Xeonプロセッサ・ベースのサーバ・プラットフォームを発表」
 
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