解説

AMDはサーバ向けデュアルコア・プロセッサでIntelに先行できるか?

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2005/03/26
解説タイトル

 2005年2月17日に日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、ワークステーションとブレード・サーバラックマウント型サーバにそれぞれAMD Opteronを搭載したモデルの追加を発表した(日本HPのニュースリリース「AMD Opteronプロセッサ搭載製品のラインアップを拡充」)。特に2Uラックマウント型サーバ「DL300シリーズ」は同社の主力で、ここにAMD Opteron搭載モデルを追加した意味は大きい。

 これまで、IBMやSun MicrosystemsなどもAMD Opteron搭載サーバをラインアップしてきたが、主にHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)向けやアプライアンス・サーバに近い製品のみで、メインストリームのサーバに対してAMD Opteronを採用したのは初めてだ。日本HPでも、それまでAMD Opteron搭載のサーバは1Uラックマウント型のDL145に限定されており、どちらかというとHPC向けという位置付けであった。今回のモデル追加で、ペディスタイル(タワー)型を除けば、各セグメントにAMD Opteron搭載モデルが揃ったことになる。特に、日本HPが2005年に力を入れると宣言しているブレード・サーバに対してもAMD Opteron搭載モデルを追加したことからも、AMD Opteronに対する期待が感じられる。

搭載プロセッサ ワークステーション ペディスタル型サーバ ラックマウント型サーバ ブレード・サーバ
AMD Opteron xw9300 DL145
DL385
DL585
BL25p
BL35p
Intel Xeon xw6200
xw8200
ML150
ML330
ML350
ML370
ML570
DL140
DL360
DL380
DL560
DL585
DL760
DL740
BL20p
BL30p
BL40p
Pentium 4 xw4200 ML110
ML310
DL320
Celeron ML110
ML310
表区切り
日本HPのサーバ・ラインアップ
ペディスタル型サーバを除けば、すべてのセグメントにAMD Opteron搭載モデルが用意されたことになる。
 
日本HPのサーバ・ブレード「ProLiant BL35p」
日本HPは、市場の拡大が期待されるブレード・サーバに対してもAMD Opteron搭載モデルを追加した。性能と消費電力の両面で、Intel Xeonと十分に対抗できるものに仕上がっていると、日本HPでは述べている。

 こうしたAMD Opteron採用拡大の動きは、徐々にではあるがサーバ・ベンダに広がりそうだ。背景には、AMD Opteronの性能が高いことはもちろんだが、Intelの製品ロードマップが大きく揺れていることがありそうだ。2004年は、EM64TによってIA-32の64ビット拡張を行ったものの、完全にAMDの後追いになってしまった。さらに動作クロックの引き上げからデュアルコア化による性能向上へと方針を転換したことなど、製品ロードマップが不安定であった。そうしたIntelに対する「保険」の意味合いから、AMD Opteronが選択されているようだ。

 また、Microsoftからx64版Windows XP/Windows Server 2003が提供されることも、AMD Opteronの採用が増える要因となりそうだ。64ビット化でIntelに先行したAMDは、AMD Opteron/AMD Athlon 64を「64ビット・プロセッサ」と大きくうたった。この結果、AMD Opteron/AMD Athlon 64を「64ビット環境で利用するのに最適化されたプロセッサ」ととらえたユーザーも少なくなかった。サーバ・ベンダも、AMD Opteron/AMD Athlon 64を64ビット・プロセッサとして販売した方が、Intel製プロセッサとの差別化ができてメリットがあると考えたようだ。

 ある意味でAMDの宣伝戦略は成功したのだが、これが裏目に出てしまった。一部のユーザーは、「64ビット環境(OS、アプリケーションともに64ビット化された環境)でなければ、AMD Opteron/AMD Athlon 64の性能は発揮されない」という印象を受けてしまったからだ。ベンダにしても、AMD Opteronを投入するのは、64ビット環境が整ってから、と判断した。それでも、予定どおりにx64版Windows XP/Windows Server 2003が提供されれば、AMDにとっては64ビット環境への移行で先行逃げ切りを実現し、サーバ市場で優位に立てるはずであった。誤算だったのは、x64版Windows XP/Windows Server 2003の提供が大幅に遅れてしまったことだ。Microsoftの「信頼できるコンピュータ環境(Trustworthy Computing)」の推進から、x64版Windows XP/Windows Server 2003のリリースは、当初の予定の2004年第2四半期から2005年第2四半期まで1年も遅れることになった。

 すでにIntelもEM64Tによって、64ビット環境への対応が済んでいることから、AMDが目論んだ先行逃げ切りはできなくなってしまった。とはいえ、x64版Windows XP/Windows Server 2003の提供開始によって、AMD Opteron/AMD Athlon 64に対する誤解(?)は解消される。これにより、当初から64ビット環境が整った時点での採用を検討していたベンダが、実際に採用を開始する可能性がある。

デュアルコア化で引き離しが図れるか?

 x64版Windows XP/Windows Server 2003がリリースされることで、AMDが望んでいた本格的な64ビット時代がやってくることになる。次は、デュアルコア化による性能向上競争が始まる。

 AMDは、AMD Opteron/AMD Athlon 64の設計において、デュアルコア化を前提にしていたと述べている(この点については、「頭脳放談:第39回 AMD Opteronのダイを眺めてみれば」でMassa POP Izumida氏が予想していた)。すでにAMD Opteronのデュアルコア版をデモするなど開発は順調に進んでいるようだ。AMDによれば、サーバ/ワークステーション向けのデュアルコア・プロセッサを2005年中ごろ、クライアント向けを2005年後半からそれぞれ出荷するとしている(AMDの「AMD、最初のマルチコア・プロセッサ製品を2005年半ばに投入」)。

AMDのプロセッサ・ロードマップ
AMDが公表しているプロセッサ・ロードマップ。これを見ると、2005年後半にはサーバ向けプロセッサがいっせいにデュアルコア化される。

 デュアルコア化も、Intelに先駆けての採用となるはずであった、しかしIntelは大幅なスケジュールの前倒しを行い、2005年前半にデスクトップPC向けのデュアルコア・プロセッサ「Pentium D」を投入する予定だ。ただ、サーバ向けのIntel Xeonは2005年後半から2006年前半になるため、サーバ向けとしてはAMDのデュアルコアが先行することになる。しかも、IDF Spring 2005で公開したPentium D(開発コード名:Smithfield)は、Pentium 4をほぼ単純に2つつなげただけの間に合わせ感の強いものである。次期Intel Xeonとなるデュアルコアの「Dempsey(開発コード名:デンプシー)」は、2つのダイをパッケージに同梱したもので、やはり間に合わせの印象を受ける。

 当初よりデュアルコア化を考えて設計していたAMD Opteronと、間に合わせ感の強いDempseyと、どちらのデュアルコア・プロセッサの性能が高いのか気になるところだ。AMD Opteronのデュアルコアが、Dempseyの性能を大きく引き離せたとしたら、AMDにとってはシェアを大幅に拡大できるチャンスとなる。

 これまでAMDは、Intelの後追いで性能や機能を向上させてきた。しかし64ビット化では先行し、性能的にもIntel製プロセッサに負けない魅力を持ち始めている。今後は、両社の競争によってプロセッサの性能/機能向上が実現することになるだろう。ユーザーにとっては選択肢が広がり、IntelとAMDの激しい競争により、プロセッサの大幅な性能向上や低価格化が期待できる。一方で、競争が激しくなると、購入時期が数カ月ずれただけで、大幅な性能/機能の違いが生じる可能性もある。今後、サーバの導入担当者は、プロセッサのトレンドにもっと敏感になる必要があるかもしれない。記事の終わり

  関連記事 
第39回 AMD Opteronのダイを眺めてみれば

  関連リンク 
AMD Opteronプロセッサ搭載製品のラインアップを拡充
AMD、最初のマルチコア・プロセッサ製品を2005年半ばに投入
 
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