解説

バラ色ばかりとはいえないサーバ・プロセッサのデュアルコア化

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2005/06/11
解説タイトル

 2005年6月8日、インテルは「Interop Tokyo 2005」の「インテル テクノロジ・ショーケース」の会場で記者向けの説明会を開催した。この席上、インテル株式会社エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部プラットフォーム&ソリューション統括部長の平野浩介氏は、開発コード名「Dempsey(デンプシー)で呼ばれているデュアルコア採用の次期Intel Xeon搭載サーバを利用してプレゼンテーションを行った。途中、Windowsタスクマネージャを開き、デュアルコアとHyper-Threadingテクノロジ(HTテクノロジ)を実装したデュアルプロセッサによって、OSからは合計8プロセッサ構成に見えていることを示した。インテルが公開しているロードマップによれば、Dempseyは2006年第1四半期に出荷が開始される。半年前の段階でDempseyのデモを行ったのは、先行しているデュアルコアAMD Opteronを意識したものと思われる。

Dempsey
公開された次期Intel Xeon「Dempsey」
写真を見ても分かるように、Dempseyは2つのダイを基板上に実装することでデュアルコアを実現している。

 ショーケースの会場では、開発コード名「Montecito(モンテシト)」で呼ばれる次期Itanium 2もサーバに実装された状態でデモが行われていた。Montecitoもデュアルコアを採用している。Montecitoでは、単に既存のItanium 2(Madison-9M)のコアを2つ並べたものではなく、完全に2つのコアが融合しており、チップ内の配線などの最適化が行われている。24Mbytesの3次キャッシュを実装することから、トランジスタ数は17億2000万個にもなり、ダイは非常に大きい。Montecitoは、300mmウエハ/90nmプロセスで製造されるが、それでも1枚のウエハから90個程度しか取れない。これだけダイ・サイズが大きくなると、歩留まりも悪化すると思われるので、製造原価は高くなりそうだ。

 Montecitoでは、VRM(Voltage Regulator Module:プロセッサ向けの電源回路モジュール)の形状が変更になり、電源はかなり小さくなる。プロセッサ部との接続方法も、既存のカード・エッジに対し、ピン接触型に変更になるという。この変更により、既存のItanium 2プラットフォームでは、VRMの取り付け位置に専用のスペーサを挟まないと、Montecitoが実装できなくなった(VRMの取り付けネジ位置などが変更になっているため)。一方でMadison専用に設計すればプロセッサ部分を小型化できるので、ブレード・サーバなどの高密度サーバでは実装が容易になる。

Montecito
デュアルコアを採用するItaniumプロセッサ・ファミリ「Montecito」
Dempseyと比べるとコアのサイズが巨大であることが分かる。VRMとの接続は、従来のカード・エッジからピン接触型に変更になっていることが分かる(写真左側の接点)。

 またMontecitoには、新たにマルチスレッド・テクノロジが採用される。Dempseyと同様、1つの物理プロセッサがOS上からは4つの論理プロセッサに見えることになる。ただPentium 4やIntel Xeonなどは、命令の充填率(パイプライン上で実際に命令が実行されている比率)が低かったため、HTテクノロジが有効に機能するという事情があった。だがMontecitoが採用するEPIC(Explicitly Parallel Instruction Computing)は、プログラムのコンパイル時点で実行ユニットの組み合わせを考慮した最適化が行われることから、命令の充填率が高い。従って別のスレッドが実行できるのは、キャッシュのヒット・ミスなどが発生したときに限られるため、マルチスレッド・テクノロジによる性能向上は限定的だ。マルチスレッド・テクノロジの有効性は、アプリケーションや利用環境によって大きく異なってくる。場合によっては、マルチスレッド化による多重度の向上より、スレッドの切り替えによるペナルティの方が高くつき、性能が低下する可能性もある。そのため、マルチスレッド・テクノロジは、ファームウェアによって有効化/無効化が行えるようになっているということだ。ちなみに、デュアルコアの片側を無効にする機能もある。ソフトウェア・ライセンスの関係から、デュアルコアが利用できないような環境では、片側のコアを無効化して、シングルコアのプロセッサとしても利用できるようになっている。

2005年 2006年 2007年
Intel Xeon
プラットフォーム名 Bensley(ベンスレー)
プロセッサ Irwindale(アーウィンデール) Dempsey(デンプシー)
チップセット Intel E7520/E7320 Blackford(ブラックフォード)
そのほか デュアルコアの採用
Intel Xeon MP
プラットフォーム名 Truland(トゥルーランド) Truland(トゥルーランド) Reidland(レイドランド)
プロセッサ Potomac(ポトマック)/Cranford(クランフォード) Paxville(パークスビル)〜Tulsa(タルサ) Whitefield(ホワイトフィールド)
チップセット Intel E8500 Intel E8500
そのほか 物理アドレス空間を1Tbytesに拡張 デュアルコアの採用IPFとの共通プラットフォーム
Itaniumプロセッサ・ファミリ
プラットフォーム名 Richford(リッチフォード)
プロセッサ Montecito(モンテシト) Montvale(モントベール) Tukwila(ツクウィラ)
チップセット Intel E8870/サードパーティ Intel E8870/サードパーティ
そのほか デュアルコアの採用 デュアルコアの採用 Intel Xeon MPとの共通プラットフォーム
表区切り
インテルのサーバ・プロセッサのロードマップ

デュアルコアとソフウェア・ライセンス料

 このようにインテルでは、サーバ・プロセッサのデュアルコア化に向けて着々と準備を進めている。デュアルコアになれば、これまでの2ウェイ・サーバが4ウェイ・サーバと同等の性能を発揮できるようになることから、サーバの導入コストを大きく下げられる可能性がある。その一方で、ソフトウェアのライセンス料は増大する可能性もあるので注意が必要だ。Oracleでは、プロセッサのコアの数でラインセス料を課す方針を決めており、デュアルコアのプロセッサを搭載するサーバでは、従来のデュアルプロセッサと同じラインセンス料になる。もちろん、デュアルプロセッサ・サーバ(コア数=2)をデュアルコアのシングルプロセッサ・サーバ(コア数=2)に置き換えるような場合は問題ないが、デュアルコアのデュアルプロセッサ・サーバに置き換えるとコア数が4となり、2プロセッサのライセンスから4プロセッサのライセンスに変更しなければならなくなる。従来の動作クロックによる性能向上であれば、こうしたラインセンス料の問題は生じなかった。しかしこれからのプロセッサは、動作クロックの向上のみによる大幅な性能向上は期待できない。Intel、AMDとも、「動作クロックとともに、プロセッサ・コアを増やす方向でプロセッサの性能を向上させる」としていることから、性能を求めると、必然的にコア数が増え、高いソフトウェアのライセンス料が課せられる、という構図が生まれそうだ。なお、Microsoftはプロセッサ・コアの数に関係なく、プロセッサ数(プロセッサ・ソケット数)に応じたライセンス料を課すとしている。IBMは、製品によってプロセッサ数とプロセッサ・コア数を選択する方針だ。

 以上のことから分かるとおり、単にデュアルコアがリリースされたからといって、単純に飛びつくのは危険である。用途や利用アプリケーションによっては、デュアルコア・プロセッサを搭載しない現行のサーバを購入した方が、コストパフォーマンスの面で有利になる可能性もあるからだ。

 クライアント向けのデュアルコア・プロセッサPentium D(動作クロック3.2GHz)と従来のシングルコア・プロセッサPentium 4(動作クロック3.80GHz)を、1つのプロセッサ・コアの性能で比較すると、動作クロックが低い分、Pentium Dの方が遅い。同様のことは、Dempseyでも起きる可能性がある。既存のIntel Xeon-3.66GHzのデュアルプロセッサ構成の方が、Dempseyのシングルプロセッサ構成(OS上はデュアルプロセッサと同等)よりも性能が高い可能性があるわけだ。先のソフトウェア・ライセンス料を考慮してシステムを導入すると、既存のIntel Xeon-3.66GHz搭載サーバを購入した方が安価で性能が高くなる。もちろん、Microsoftのようにプロセッサ・ソケットでライセンス料を課す方針のソフトウェアだけを使用しているなら、Dempseyのデュアルプロセッサ構成を導入した方が、大幅なコストパフォーマンスの向上が得られるので「お徳」ということになる。

 ソフトウェア・ライセンス料の方針は将来変更される可能性もあるが、当面Oracleなどの方針に変更はないだろう。今後は、プロセッサの性能だけでなく、プロセッサ・コアの数とソフトウェア・ライセンス料の方針を考慮したサーバ選びが必要になる。サーバの導入担当者にとっては、悩ましい要素が増えることになる。とはいえデュアルコア化によって、比較的安価なサーバでも既存のサーバ以上の性能が得られるようになることは歓迎すべきだ。その能力を生かして、多数のサーバを少数に統合できれば、ソフトウェアのライセンス・コスト(CALなど)やバックアップ作業などの運用コストを圧縮できる可能性がある。また新たなアプリケーションを導入することで、サーバの活用範囲を広げることもできるだろう。記事の終わり 

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