解説

久しぶり登場のローエンド向けテープ・ドライブを試す

元麻布春男
2005/08/12
解説タイトル

 正直にいってここ数年、テープ・ドライブ市場の環境は決して良好ではなかった。ハードディスクの急激な記録密度の向上と大容量化、低価格化によって、ハイエンド向けを除いてテープ・ドライブは次々に陳腐化してしまった。テープ・ドライブの初期コスト(ドライブおよびバックアップ・ソフトウェア)とランニング・コストが、安くて大容量になったハードディスクに見合わなくなってしまったのである。ハイエンド向けだけは、長期保存も含めた信頼性と、オートローダー(テープ・ライブラリ)を含めた大容量化により、生き残ったものの、そのほかの領域では魅力を維持できたとはいい難い。それを示すように、ローエンド市場を中心にハードディスクをバックアップにも利用することが普及し、DriveImageやNorton Ghostなど、それに対応したアプリケーションが広まった。またストレージ・ベンダも、「ニアライン」と呼ぶハードディスクを利用したバックアップ装置を次々と提供し始めている。ニアラインとは、テープのオフラインよりもサーバのストレージ(オンライン)に近いバックアップ・ストレージという意味である。

 だがハードディスクを用いたバックアップは、バックアップの世代管理や保存性といった点で、必ずしも理想的ではない。また、1年間で2倍以上などという非常に激しかったハードディスクの記録密度向上も、ここにきて一服している。本来、記録密度向上が一定のペースで進行していれば、同じ磁気記録デバイスであるテープ・デバイスは、ハードディスクの大容量化にキャッチアップしていけるはずだ。

 そうした状況に呼応するかのように、2005年7月7日、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、テープ関連製品の値下げと、テープ・ドライブの新製品発表を行った。中でも注目されるのは、プラグ・アンド・プレイをサポートしたUSB 2.0対応のテープ・ドライブ・ユニット「HP StorageWorks DAT40-USB(以下、DAT40-USB)」の存在だ。同製品は、ブリッジ・チップを用いることなく、ネイティブUSBに対応したDDS/DATユニットを搭載している点もさることながら、価格が6万3000円(税込み)とこれまでのテープ・ドライブと比較して、極めてリーズナブルに設定されている。実は米国でのオンライン価格は599ドル(税別)に設定されており、それに比べても割安感がある。価格と使い勝手に配慮されたDAT40-USBは、ハードディスクの大容量化により一時はカバーできなくなってしまったローエンド・サーバ向けのバックアップ・ソリューションとなるのではないか。そう考えて、発売前のDAT40-USBを試用してみた。

DDS-4対応の外付け型テープ・ドライブ「DAT40-USB」

 外付け型ドライブであるDAT40-USBは、CD-ROMドライブを一回り大きくしたようなサイズである。前面パネルから見えるドライブ・ユニットは3.5インチ・ハーフハイトだ。背面には電源プラグ、電源スイッチ、冷却ファンと並んでUSBケーブル(直出し)が用意されている。サポートする規格は1本のメディアに40Gbytes(データ圧縮時、非圧縮時は20Gbytes)のデータを記録可能なDDS-4(第4世代のDDS)で、最新のDAT72(データ圧縮時72Gbytesの記録が可能)ではない。米国ではDAT72対応のUSB外付けドライブも販売されているが、当然価格は高い(SCSI接続の内蔵型DAT72対応ドライブは日本でも販売されている)。DDS-4ドライブは、DDS-3およびDDS-2メディアの読み書きをサポートする。

DAT40-USBの前面パネル
DAT40-USBのドライブ・ユニット自体は、3.5インチ・ハーフハイトである。電源やUSBインターフェイスが内蔵されているため、本体は少々大きめとなっている。
 
DAT40-USBの背面
USBケーブルが直出しとなっているため、サーバと少し離して設置したいような場合は、USB延長ケーブルなどが必要になる。

 添付されているCD-ROMは、ドライバ/ユーティリティ・ディスクとYosemite Technologies製のバックアップ・ソフトウェア「TapeWare Backup」の2枚である。ドライバ・ディスクに含まれているドライバは、Windows 2000/Windows Server 2003/Windows XPをサポートしており、Windows Server 2003についてはx86(32bit)、IA64(IPF)、x64(64bit拡張)の3種類、Windows XPについてはx86とx64をそれぞれサポートしている。ただし、サポートおよび検証の中心はWindows Server 2003であり、あくまでもサーバ向けのバックアップ装置という位置付けのようだ。実際にDAT40-USBを稼働させてみると、冷却ファンの動作音もかなり大きく、デスクトップ用途をあまり意識していないことが、このあたりからもうかがえる。

 利用に際しては、まず付属のCD-ROMからデバイス・ドライバを組み込み、次にデバイスを接続、必要に応じてバックアップ・ソフトウェアのインストールへと進む。ただし、現状では、USB接続のテープ・デバイスをサポートしたバックアップ・ソフトウェアはそれほど多くないと思われる。また、前述のようにローエンド向けテープ・デバイスの衰退により、オートローダーやネットワークをサポートしたハイエンド向けのものがバックアップ・ソフトウェアの主流となっている。DAT40-USBの価格に見合うバックアップ・ソフトウェアの選択肢はあまり豊富ではない上、サードパーティ製バックアップ・ソフトウェアの多くは2006年対応予定となっている。恐らく大半のユーザーが付属のTapeWareを利用することになるだろう。なお、Windows標準のNT Backupで本機を利用できないことはないが、その場合はRemovable Storageサービス(標準)の動作を確認しておく必要がある。

Removable Storageサービスが起動していない状態の[コンピュータの管理]画面
システム起動時にRemovable Storageサービスが起動されていないと、テープ・デバイスは[コンピュータの管理]上利用不可となる。この状態でもTapeWareの利用には何の問題もないが、NT Backupはテープ・デバイスを認識しない。

付属のバックアップ・ソフトウェア「TapeWare」の使い勝手は?

 TapeWareは、一応簡単なネットワーク機能も備えたバックアップ・ソフトウェアで、ウィザードによるバックアップ設定も可能だ。基本的にはこのウィザードで日常的な作業(フル・バックアップ、増分バックアップ、バックアップ・データの検証、データ・リカバリ)の大半はカバー可能だと思われる。しかし、一部の作業(例えばテープ・メディアの消去などの管理)は標準メニューには含まれておらず、オブジェクト上で右クリックして呼び出すメニューを利用する必要がある。

TapeWareのオブジェクトのメニュー
TapeWareの作業の大半は、ウィザードとメニューで実行できる。一部、オブジェクトを右クリックしたメニューで行わなければならない。
 
TapeWareのウィザード
日常作業のほとんどは、このウィザードでカバーされる。
 
TapeWareの[高度なオプション]ダイアログ
[高度なオプション]ダイアログの「自動イジェクト」をチェックしておくと、複数メディアに継ぎ書きする際の障害を回避できる。
 
バックアップ中のTapeWareの画面
バックアップ中は、簡単なパフォーマンス・モニタでバックアップ速度を確認することもできる。

 TapeWareは基本的には堅実に動作するアプリケーションだが、日本語版には若干問題がある。バックアップが複数のメディアにまたがる場合(データを継ぎ書きする場合)、1本目のメディアをクローズする際、アプリケーション・エラーでTapeWare自身が異常終了してしまう。この問題は既知のもので、日本HPのWebサイトにも対処法が掲載されている(日本HP「メディア要求のアラートメッセージを開くと TapeWare サービスがダウンする」)。

 これによると、このエラーは日本語メッセージを出力する際に生じるもののようで、メディアの交換を促すメッセージを出力させる代わりに、自動的にイジェクトするように設定することで回避可能だ。障害としては決して深刻なものではないが、日本HP自身がテープ・バックアップを「データ保護の最後の砦」と呼んでいることを考えると、もっと絶大な安心感が欲しい。早期の修正が望まれるところだ。

 このTapeWareのもう1つの問題は、リカバリにある。基本的にTapeWareによって作成したバックアップ・データは、Windows上のTapeWareでリカバリ可能なほか、CD-Rなどに作成した災害修復ディスクを起動してリカバリを行うことが可能だ。つまりハードディスクにOSとTapeWareを再インストールせずにリカバリが行える。しかし、現在添付されているTapeWare 7.0およびベータテスト中のTapeWare 8.1では、災害修復ディスクからの起動時に、USB上のテープ・デバイスが利用できない。結局、OSも含めた完全リカバリが必要な際は、OSとTapeWareをまず再インストールしなければならない。このあたり、USBのテープ・デバイスがまだ新しく、アプリケーションの対応が十分でないことがうかがえる。

 なお、日本HPのProLiant DL480G4などのサーバで、2005年6月1日付以降のSystem ROMであれば、災害修復デバイスも不要のOBDR(One Button Disaster Recovery)が利用できる。これは、テープ・ドライブの起動時にOBDRモードに入れること(起動時にイジェクトボタンを押しておく)で、テープを仮想CD-ROMに見立て、そこからブート/リカバリを行うというものだ。残念ながら、これはHP独自の技術であり、ほかのサーバでは利用できない。DAT40-USBの位置付けがProLiantの純正周辺機器ではなく、汎用のストレージ・デバイスということなのであれば、やはりOSの再インストールなしにリカバリ可能なソフトウェア環境の提供が望まれる。

ローエンド向けテープ・バックアップ・デバイス市場の盛り上がりに期待

 さて、実際にデータのバックアップをしてみた結果だが、Windows Server 2003 SP1をインストールしたC:ドライブのイメージ(約3.8Gbytes)のバックアップに要した時間は17分であった。データのベリファイを行う場合は、別途ほぼ同じ時間が必要になる。所要時間は、バックアップするデータがハードウェア圧縮に適しているかどうかで変動するため、一概にはいえない。あくまでも目安と考えてほしいが、20G〜30Gbytesのデータのバックアップであれば、十分有効な速度だろう。

 DAT40-USBは、久しぶりに低価格帯に投入されたテープ・バックアップ・デバイスだ。価格が安いだけでなく、インターフェイスにUSB 2.0を採用するなど、使い勝手にも配慮されている。アプリケーション環境が十分USBに対応しているとはいえないのが残念だが、この価格帯にほかにとって代わるインターフェイスがあるわけではなく(シリアルATAはその可能性があるが、外付け用としてはまだ普及していない)、ソフトウェア・サポートは時間が解決してくれる問題だと思われる。そうなれば、ローエンド・サーバにとってますます魅力的なバックアップ・ソリューションとなるハズだ(OBDRが利用可能なProLiantであれば、いまでも十分魅力的だが)。

 ここしばらく低価格帯のテープ・デバイスが事実上姿を消していたことで、テープ・デバイス自体の存在感が薄くなっていたように思う。いくらハイエンド向けが健在でも、あまりにもハイエンドに偏重することは、テープ・デバイス全体のエコシステムとして、決して望ましいことではない。実際、ローエンド向けテープ・デバイスに対応したバックアップ・ソフトウェアは事実上、市場から消えてしまっている。情報保護の観点からも、ハードディスクへのバックアップだけでなく、信頼性や耐障害性の高いテープへバックアップし、遠隔地でも保存しておく、といった対策が望ましい。DAT40-USBがきっかけになって、ローエンド向けテープ・デバイスの活性化、あるいはバックアップ・デバイスそのものが活性化することを願ってやまない。記事の終わり

  関連リンク 
メディア要求のアラートメッセージを開くと TapeWare サービスがダウンする
 
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