解説

2006年のインテルのサーバ・プロセッサはどうなる?

デジタルアドバンテージ 小林 章彦
2005/09/10
解説タイトル

 2005年8月23日から米国カリフォルニア州サンフランシスコでインテルの開発者向けの会議「Intel Developer Forum Fall 2005(IDF Fall 2005)」が開催された(概要は「NewsInsight:10倍の低電力化を実現しつつ、10倍のパフォーマンスを」参照のこと)。IDF Fall 2005では、サーバ向けプロセッサのロードマップが更新されている。本稿では、このIDF Fall 2005の開催前に、日本国内で記者向けに開催されたインテルのエンタープライズ戦略に関する説明会の内容から、主に2005年末から2006年のサーバ・プロセッサのロードマップについて解説していく。

プロセッサ・ナンバをサーバにも適用?

 Intelは、ノートPC向けやデスクトップPC向けプロセッサに対して、性能や機能を3けたの番号で示す「プロセッサ・ナンバ」を採用している。例えば、Pentium Dは下表のようなプロセッサ・ナンバが付けられている。

プロセッサ・ナンバ 製造プロセス/ソケット 2次キャッシュ容量 動作クロック FSB デュアルコア HTテクノロジ 拡張版Intel SpeedStepテクノロジ EM64T NX bit
Pentium D 840 90nm/LGA775 1Mbytes×2 3.20GHz 800MHz ×
Pentium D 830 90nm/LGA775 1Mbytes×2 3.00GHz 800MHz ×
Pentium D 820 90nm/LGA775 1Mbytes×2 2.80GHz 800MHz × ×
表区切り
Pentium Dのプロセッサ・ナンバと機能

 サーバ向けプロセッサにおいても同様に、デュアルコア採用プロセッサから動作クロックや機能を表す4けたの番号を採用する。ただしサーバ向けでは、単にプロセッサだけの動作クロックと機能だけでなく、チップセットなどを含めたプラットフォームとしての性能・機能を表すことになるようだ。現時点では、どのような表記がなされるか明らかにされていないが、以下のとおりプラットフォームごとに4けたの番号が与えられることが明らかになっている。インテルのプレゼンテーション資料では、3000番が「ユニプロセッサ、チップセットのみ」とされていることから、プロセッサとチップセットのそれぞれに対して番号が付けられるようだ。

 「ナンバ」制に移行しても、プロセッサの製品名(ブランド)の扱いに変更はないとしている。「ナンバ」の命名ルールなどは、「ナンバ」を初採用することになる後述の2005年末に出荷予定のデュアルコア版Intel Xeon/Intel Xeon MPの発表時に明らかになるだろう。

プラットフォーム ナンバ
Itanium 2 9000
Intel Xeon MP 7000
Intel Xeon 5000
ユニプロセッサ(チップセットのみ) 3000
表区切り
サーバ向けプラットフォームの「ナンバ」

 Intelは、チップセットなどを含めたプラットフォームの性能・機能向上を目指す「プラットフォーム指向」を強めている。「ナンバ」の導入により、対応するプロセッサとチップセットが同じ番号で表されるため、組み合わせが明確になるという効果もある。

 2006年以降、Intelのサーバ・プラットフォームには、仮想化支援機能の「インテル バーチャライゼーション・テクノロジ (VTテクノロジ)」、I/O(特にTCP/IP)のスループットを向上させる「インテル I/Oアクセラレーション・タクノロジ(I/OAT)」、遠隔地管理を容易にする「インテル アクティブ・マネジメント・テクノロジ(iAMT)」、FB-DIMMメモリ、FoxtonテクノロジPellstonテクノロジなど、次々と新しい技術が投入される。これらの機能は、プロセッサ単体では実現できないものがほとんどである。むしろ、iAMTやI/OAT、FB-DIMMメモリなどは、チップセットの機能ともいえる。Intelでは、このようにプロセッサとチップセットを含めたプラットフォームでの機能を強化することで、基本的にチップセットをサードパーティ製に依存するAMDとの差別化を図るということのようだ。

2005年後半からのサーバ・プロセッサのロードマップ

 さて、では2005年末からのIntelのサーバ向けプロセッサはどのように展開されるのだろうか。

IDF Fall 2005で公開されたサーバ向けプロセッサのロードマップ
2006年には、高密度サーバ向けにノートPC向けを流用した開発コード名「Sossaman(ソッサマン)」で呼ばれるプロセッサが投入される。チップセットとしては、現行のIntel Xeon向けのIntel E7520/E7320が組み合わされる。

■2005年末にデュアルコア版が投入されるItanium 2
 Itanium 2は、2005年7月19日にFSBを400MHzから667MHzに引き上げたバージョンを追加している(インテルのニュースリリース「インテル Itanium 2プロセッサの新製品を発表」)。2005年末には、開発コード名「Montecito(モンテシト)」で呼ばれているデュアルコア版Itaniumがリリースされる予定となっている。2007年ごろに予定されているIntel Xeon MPとのチップセット共通化まで、Intelから新しいチップセットが提供される予定はなく、当面はIntel E8870もしくはサーバ・ベンダ独自のチップセットが使われる。

■前倒しされるデュアルコア版Intel Xeon MP
 Intel Xeon MPは、2005年3月30日にIntel E8500チップセットとともにリリースされたIntel Xeon MP-3.33GHz/3次キャッシュ8Mbytes、3.66GHz/2次キャッシュ1Mbytes以降、性能の向上は行われていない(インテルのニュースリリース「64ビット・エンタープライズ・プラットフォームの製品ラインナップを拡充」)。すでに半年経ち、そろそろ動作クロックの引き上げが望まれる時期に入っている。ところが以前のロードマップでは、2006年前半のデュアルコア版まで動作クロックの向上などは予定されていなかった。

 しかし、開発コード名「Paxville(パックスビル)」で呼ばれるデュアルコア版Intel Xeon MPを前倒しで出荷することを発表した(インテルのニュースリリース「インテル ハイパースレッディング・テクノロジ対応サーバ/ワークステーション向けデュアルコア・プロセッサの出荷計画を繰り上げ」)。このニュースリリースでは、具体的なラインアップを明らかにしていないが、海外メディアなどは以下のような製品が提供されると、新たに導入される「ナンバ」も含めて報じている。

ナンバ 動作クロック 2次キャッシュ容量 FSB
Intel Xeon MP 7041 3.00GHz 2Mbytes×2 800MHz
Intel Xeon MP 7040 3.00GHz 2Mbytes×2 667MHz
Intel Xeon MP 7030 2.80GHz 1Mbytes×2 800MHz
Intel Xeon MP 7020 2.67GHz 1Mbytes×2 667MHz
表区切り
デュアルコア版Intel Xeon MPのラインアップ予想

 Paxville(デュアルコア版Intel Xeon MP)は、3次キャッシュが搭載されていない上、動作クロックも現行に比べて低くなっている。それでも、インテルのニュースリリースによれば、60%以上の性能向上が見込めるとしている。プロセッサの価格は明らかになっていないが、デスクトップPC向けのPentium DがPentium 4とそれほど変わらない価格であったことを考えると、Paxvilleもそれほど高価になることはないだろう。なおPaxvilleは、現行のIntel E8500に搭載することが可能である。ただし、消費電力などが異なる(現行のIntel Xeon MPの110Wに対して、Paxvilleは130W)ため、電源や冷却ファンなどの仕様によっては、現行のIntel Xeon MPを差し替えて使えない可能性もあるということだ。4ウェイ以上のサーバの導入を検討している場合、Paxvilleのリリースを待つか、サーバ・ベンダに対応可能かどうかを確認してから決めた方がよいだろう。

 Paxvilleに続き、2006年後半には開発コード名「Tulsa(タルサ)」で呼ばれるデュアルコア・プロセッサがリリースされる。65nmプロセスで製造され、1Mbytesの2次キャッシュと16Mbytesの3次キャッシュ(2つのコアで共有)が実装される。Tulsaも、Intel E8500のプラットフォームに搭載可能だ。

IDF Fall 2005で公開されたTulsaの概要
65nmプロセスで製造されるTulsaは16Mbytesの3次キャッシュを搭載する。VTテクノロジやPellstonテクノロジもサポートされることが明らかにされた。

■中継ぎにPaxville DPを投入するIntel Xeon
 サーバ向けプロセッサとして主力ともいえるデュアルプロセッサ向けのIntel Xeonは、2005年2月15日にリリースされたIntel Xeon-3.60GHz/2次キャッシュ2Mbytes以降、性能向上がなされていない。当初の予定では、2006年第1四半期にリリース予定のBensley(ベンスレイ)プラットフォームまで約1年間、性能向上がないということであった。Bensleyプラットフォームは、開発コード名「Dempsey(デンプシー)」で呼ばれるデュアルコア・プロセッサと開発コード名「Blackford(ブラックフォード)」で呼ばれる新しいチップセットの組み合わせである。Blackfordでは、メモリにFB-DIMMが初めて採用される予定だ。FB-DIMMは、DIMM基板上にAMB(Advanced Memory Buffer)と呼ばれるインターフェイス・チップを搭載することでチップセットとの間をシリアル・インターフェイスで接続可能とするものだ。すでにMicron Technologyなど、多くのメモリ・ベンダがFB-DIMMの開発を行っている(IDF Fall 2005では、Micron TechnologyのFB-DIMMを採用したBensleyプラットフォームでデモが行われた)。

 このようにBensleyプラットフォームでは、プロセッサとチップセットの両方が変更になる。また1年近く性能向上がないままとなってしまうなど、サーバ・ベンダにはあまりうれしくないロードマップとなっていた。そのためかIntelは、当初予定されていなかったPaxvilleのデュアルプロセッサ版(Paxville DP)を、現行のIntel E7520/E7320に対応させ、2005年末に提供することにした。Bensleyプラットフォームは、2006年第1四半期の出荷予定であるため、Paxville DPは数カ月間のリリーフとなるが、サーバ・ベンダはBensleyプラットフォームの開発中に何らかの障害が発生し、スケジュールが遅れてもPaxville DPでしのぐことが可能になった。Paxville DPは、2Mbytesの2次キャッシュを搭載し、800MHz FSBで、動作クロックは2.80GHz/3.00GHz/3.20GHzの3種類が提供されるようだ。やはりPaxvilleでは、消費電力などが異なるため、電源や冷却ファンなどの仕様によっては、現行のIntel Xeonを差し替えて使うことはできないとのことだ。特に1Uサーバやブレード・サーバなどの高密度サーバでは、サーバ・ベンダによる対応が必要となりそうだ。

■高いコストパフォーマンスを示すユニプロセッサ・サーバ
 2005年7月12日にユニプロセッサ(シングルプロセッサ)・サーバ向けとして、正式にPentium Dの投入が開始された。チップセットとしては、これまでIntel Xeon向けとして提供されていたIntel E7230が組み合わされることとなった。

 プロセッサ自体の管理機能などはIntel Xeonの方が優れているが、性能的にはデュアルプロセッサ状態のIntel Xeonとほぼ同等である(Pentium DはHTテクノロジがサポートされないなど、同じ動作クロックでも若干性能が低い)。その一方、価格面ではプロセッサの価格がデスクトップPC向けと変わらないためPentium Dが有利で、デルのPowerEdge SC1420(Intel Xeon-3.00GHz)とPowerEdge 830(Pentium D 830)をほぼ同等の仕様で比較したところ、PowerEdge 830の方が7万円以上安価であった。もちろん、サーバ自体の仕様が異なる部分があるため単純な比較はできないが、これまでのミッドレンジ・サーバの性能が安価に手に入るようになったのは確かだ。今後ともユニプロセッサ・サーバ向けプロセッサは、デスクトップPC向けが流用される形で提供され続けることになる。

消費電力がキーワードに

 IDF Fall 2005では、プロセッサの性能と消費電力の関係も大きなテーマとなっていた。プロセッサの消費電力が100Wを大きく超えたことから、多くのコンピュータが設置されているデータセンターなどでは、電力供給や冷却などの面で大きな投資が必要となっている。また一般の企業においても、古いビルでは電力供給が足りない、といった問題が起きている。

 そのIntelの回答が、動作クロックを引き上げずに性能を向上させるデュアルコア/マルチコアの採用である。さらに高密度サーバ向けには、ノートPC向けを流用した消費電力が31W程度となる「Sossaman(開発コード名:ソッサマン)」を2006年前半に投入することを明らかにしている。2007年以降にリリースされるプロセッサは、Itaniumプロセッサ・ファミリを除き、ノートPC向けとして企画されていたコアをベースに、デスクトップPC、サーバに展開することになっている。これは、消費電力がプロセッサの重要な要素となっている表れだろう。

 またディアルコア/マルチコア化による性能向上に加え、プラットフォーム指向により、新しい機能がサーバに次々と投入されることになることから、サーバの導入タイミングを見極めるのが難しくなっている。特にデュアルプロセッサ・サーバは、現行のIntel XeonからPaxville DP、Bensleyプラットフォーム(Dempsey)へと短期間でモデルチェンジが行われる。さらに2006年後半には、新しいマイクロアーキテクチャを採用する「Woodcrest(開発コード名:ウッドクレスト)」が投入されることから、購入時期の判断が難しい。これまで以上に慎重に、プロセッサ/チップセットのロードマップを確認しながらの導入計画策定が必要となる。記事の終わり

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