解説

2007年に向けたIntelのプロセッサ・ロードマップを整理する

1.Intel Coreマイクロアーキテクチャへの移行で攻勢をかけるIntel

元麻布春男
2006/05/27
解説タイトル

 2006年4月27日に開催された金融関係者向けのアナリスト・ミーティングで、Intelは今後のプロセッサ開発戦略に変更を加えたことを明らかにした。従来、プロセッサのマイクロアーキテクチャは、3〜4年を単位に変更されてきたが、それを半導体の製造プロセスの更新サイクルと同じ2年に短縮するという。説明を行ったポール・オッテリーニ(Paul Otellini)社長によると、2000年に発表されたNetBurstマイクロアーキテクチャ(Pentium 4やIntel Xeonが採用)が6年あまりの寿命を保っているのは長すぎたのだという。

 そのNetBurstマイクロアーキテクチャを置き換えるものとして間もなくリリースされるのがIntel Coreマイクロアーキテクチャだ(「解説:Intel Coreマイクロアーキテクチャの目指す世界」参照のこと)。リリース順に2006年6月のWoodcrest(ウッドクレスト:デュアルプロセッサ対応サーバ向け)を先頭に、7月にConroe(コンロー:デスクトップPC向け)、8月にMerom(メロム:モバイル向け)と提供が始まる。これらのプロセッサは、2005年末から利用開始された65nmプロセス(高速型のP1264)で製造される2世代目でもある(1世代目はPentium 4とPentium D)。ConroeとMeromに関しては「Intel Core 2 Duo」という共通の新ブランドが冠せられることが明らかにされている。最も提供時期の早いWoodcrestは、現時点でもブランドが明らかにされていないことを考えると、現行のIntel Xeonブランドを用いるものと思われる。

 Woodcrest/Conroe/Meromの次の世代は、2007年末に利用が始まる45nmプロセス(P1266)によりシュリンク(マイクロアーキテクチャに大幅な変更を加えず、プロセス・ルールの微細化によるダイ面積の縮小を図ること)したPenryn(ペンリン)が提供される見込みだ。Penrynがどのプラットフォーム向けプロセッサなのかは不明だが、従来の慣例からするとデスクトップPC向けのプロセッサではないかと思われる(Penrynという地名はカリフォルニアとイギリスで簡単に見つかる。Intelのプロセッサ開発チームの1つが存在するイスラエルの近郊にあるのかどうかは不明)。

2006年後半
2007年
2008年
Itanium Montecito Montvale Tukwila
マルチプロセッサ対応サーバ向け Tulsa Tigerton Dunnington
デュアルプロセッサ対応サーバ向け Dempsey/Woodcrest 低電圧版Woodcrest Clovertown
デスクトップPC向け Conroe Kentsfield Penryn
モバイル向け Merom
表区切り
Intelのプロセッサ・ロードマップ

 2008年に登場するNehalem(ネハレム)は、次世代のマイクロアーキテクチャを採用する45nmプロセスのプロセッサで、これもどのプラットフォーム向けなのかは不明だ。Nehalem(ネハレム)という地名は米国のオレゴン州に実在するが、イスラエルには極めて音の似たNaharayim(ナハライム)という地名がある。米国のチームとイスラエルのチームが共同で開発していることを象徴しているのかもしれない。

 2009年のNehalem-Cは、その名前でも想像できるようにNehalemを32nmプロセス(P1268)にシュリンクしたもの。つまり新しいマイクロアーキテクチャのプロセッサは、こなれた製造プロセスでリリースし、その翌年に新しい製造プロセスでシュリンクする、というルールが適用される。これは新しいプロセッサとチップセットの同時開発は極力避ける、という手堅いIntelのポリシーにも合致する。

 Nehalem-Cで実証されたP1268を使って、次のマイクロアーキテクチャのプロセッサとなるGesher(ゲッシャー)が2010年に登場する見込みだ。Gesherを検索エンジンで調べると、イスラエルの地名や教育機関の名称がヒットしてくる。対応するプラットフォームは分からないが、モバイル向けプロセッサを手がけてきたイスラエルの開発チームの関与を伺わせる開発コード名だ。

 これらx86/x64系プロセッサとは別に、Itaniumプロセッサの開発も進められている。2006年夏のリリースが予定されているMontecito(モンテシト)は、Itaniumで初のデュアルコア・プロセッサとなる。2005年末リリース予定が半年ほど延びてしまったが、ようやくリリースされる。当初予定されていた動作クロック2GHzの実現が先送りされたほか、FSBクロックの引き上げ幅が縮小(400MHzを667MHzへ引き上げる予定が533MHzへ)され、消費電力に応じて動作クロックを引き上げる「Foxtonテクノロジー」の有効化も見送られている。しかし、これらの機能も2007年にリリースされる65nmプロセスへのシュリンク版、Montvale(モントベール)では実現されることになるだろう。

 Montvaleの後継となるTukwila(ツクウィラ)は、いまのところ2008年のリリースが予定されている。恐らくクワッドコアのプロセッサとなるTukwilaの開発には、DECのAlphaプロセッサの開発を担っていたチームが参加しているとされており、これまでのFSBアーキテクチャに代わり、シリアル・バス技術をベースにしたNext Generation Interconnectが採用されるといわれている。Next Generation Interconnectは、将来のサーバ向けx86プロセッサにも使われ、プラットフォームを共通化する構想がある。またAlphaがRambus対応のメモリ・コントローラを内蔵する構想を持っていたこともあることから、似た技術を採用するFB-DIMMのインターフェイスを内蔵する可能性も考えられる(FB-DIMMについては「解説:FB-DIMMがサーバのメモリを変える?」を参照)。

 こうしたプロセッサのロードマップに合わせて、それぞれのプラットフォームも更新されていく。プラットフォームのロードマップについては、プロセッサほど長期的なビジョンは明らかにされていない。これは、メモリやI/OなどIntelだけで自由にならない技術が多く含まれていることもその理由の1つだろう。ここでは、2006年の後半以降に登場するものについて、分野ごとに見ていくことにしよう。

計画が前倒しされているサーバ向けプロセッサ

 Intel Coreマイクロアーキテクチャのプロセッサが最初に投入されるのが、このサーバ向けの分野だ。しかし、その理由はIntelにとって必ずしも好ましいことばかりではない。冒頭でも触れたアナリスト・ミーティングにおいてIntelのセールスおよびマーケティングの責任者であるアナンド・チャンドラシーカ(Anand Chandrasekher)副社長は、サーバ市場でシェアを失った理由として「不適切なロードマップ(Inadequate roadmap)」を挙げている。いい換えれば、現在最も厳しい状況にあり、一刻も早く手を打つ必要があるのがサーバ分野であるということだ。Intel Coreマイクロアーキテクチャの投入順は、それを必要としている順番だと考えられる。

 その具体的な例が、DellによるAMD製プロセッサの採用だ。これまでほぼ独占的にIntel製プロセッサのみを採用してきた同社が、AMD Opteronプロセッサを搭載したマルチプロセッサ対応サーバを2006年内にもリリースすると発表したことに、Intelの苦しい状況が現れている。デュアルプロセッサ対応サーバ向けのWoodcrestは、従来予想されていたリリース時期から1四半期近く前倒しされて6月にリリースされるが、この前倒しによりDellによるデュアルプロセッサ対応サーバへのAMD Opteron採用を何とか阻止できたのかもしれない。

 一方、DellがAMD Opteronの採用を決めたマルチプロセッサ対応サーバ向けは、当面苦しい状況が続くことになる。Intel Coreマイクロアーキテクチャの製品が投入されるのは、2007年のTigerton(タイガートン)を待たねばならないからだ。Tigertonは、2個のWoodcrest世代のデュアルコア・ダイを1つのパッケージに封入したプロセッサである(ほぼ同じ構成のプロセッサがデュアルプロセッサ対応サーバ向けにはClovertown(クローバータウン)という開発コード名で、デスクトップPC向けにはKentsfield(ケンツフィールド)という開発コード名で、それぞれ開発が進められている)。以前はWhitefield(ホワイトフィールド)という開発コード名のプロセッサが予定されていたが、Whitefieldでは開発に時間がかかり、提供時期がさらに遅れることになるため、前倒し可能なTigertonの提供となったようだ。ただ、Tigertonの投入によっても、DellのAMD Opteron採用は阻めなかったことになる。それだけ、AMD Opteronの勢いが強いということなのかもしれない。

■短命に終わるDempsey
 現在Intelは、次のサーバ向けプロセッサとしてマーケティングの主軸をWoodcrestに置いている。だが、現行のPaxville DP(パックスビル・ディーピー)の次に提供されるプロセッサは、NetBurstマイクロアーキテクチャに基づくDempsey(デンプシー)だ。5月23日にやっとDempsey(Intel Xeon 5000番台)がリリースされたが、6月にはWoodcrestがリリースされることが明らかになっているので、Dempseyはかつてないほど短命なプロセッサということになる。

 DempseyはデスクトップPC向けのPentium D(Presler)と同様に、1つのパッケージに2個のシングルコアのダイを封入したデュアルコア・プロセッサだ。いまやDempseyの主な役割は、Bensleyプラットフォームの導入にあると考えられる。Bensleyプラットフォームは、Dempsey、Woodcrest、Clovertownの3世代にわたって使われるプラットフォームで、Intelのデュアルプロセッサ対応サーバ・プラットフォームに多くの変革をもたらす。それを列挙すると次のようになる。

  1. 新しいLGAパッケージ(LGA771)の採用
  2. FB-DIMMの導入
  3. Intel I/O Acceleration Technology(I/OAT)を始めとする新しいプラットフォーム技術の導入

 本来Dempseyには、こうした新しい技術のパス・ファインダーとなり、Woodcrestへの橋渡しをするという重要な役割があったハズだが、FB-DIMMの遅れ(JEDECによる承認、FB-DIMMのキーコンポーネントであるAMBチップの熱問題など)と、Woodcrestのスケジュール前倒しの挟撃に遭い、存在感が薄くなってしまった。Dempseyのリリースからほとんど間をおかずにリリースされることになるWoodcrestは、Intel Coreマイクロアーキテクチャを採用した最初の製品となる。

  関連記事 
Intel Coreマイクロアーキテクチャの目指す世界
FB-DIMMがサーバのメモリを変える?
 

 INDEX
  [解説]2007年に向けたIntelのプロセッサ・ロードマップを整理する
  1.Intel Coreマイクロアーキテクチャへの移行で攻勢をかけるIntel
    2.2007年はデュアルコアからクワッドコアへ
 
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