解説

ATI買収で動き出したAMDの新プロセッサ戦略

1. 新プロセッサのRevision Fコアで何が変わったのか

元麻布春男
2006/09/01
解説タイトル

 2006年8月15日、AMDは同社のサーバ向け製品であるAMD Opteronの新製品「AMD Opteron モデル8218」など6モデルを発表した。5月に発表されたクライアントPC向けプロセッサ(デスクトップおよびモバイル)と同じ、Revision Fコアと呼ばれる改良型のプロセッサ・コアを採用したもので、これですべての製品ラインに新コアが投入されたことになる。ここでは、Revision Fコアを採用したプロセッサの概要と、AMDの将来展開について紹介することにする。

Revision Fコアの新機能

 Revision Fコアで新たに加えられた機能は2つある。1つ目はハードウェアによる仮想化支援機能「AMD Virtualization(AMD-V)」だ。バリュー・セグメント向けのAMD Sempronを除くプロセッサでサポートされるAMD-Vは、仮想化を支援すると同時に、ハードウェアによるセキュリティ強化もサポートしたものである。ライバルであるIntelは、x86プロセッサ向け仮想化支援機能であるVT-xを搭載したプロセッサを2005年11月にリリースしており、9カ月あまり遅れたことになるが、機能的にはIntelのVT-xを上回る(両社の仮想化支援技術間で、命令セット・レベルの互換性はない)。

 なお一部の資料では、Revision Fコアを搭載したプロセッサを「AMD NPT 0Fh Family」プロセッサと呼んでいる。ここでいうNPTはNested Page Tablesの略で、当初AMD-Vに盛り込まれる予定だった仮想化支援技術の1つだと思われる。しかし、Revision Fコアの仮想化支援技術を説明した資料にはNPTに関する記述がなく、2007年半ばにリリースされるRevision Gコア(後述)に先送りされたものと考えられる。

 Revision Fコアで追加されたもう1つの機能は、内蔵メモリ・コントローラのDDR2 SDRAMの対応だ。サポートするクロック(667MHz/800MHz)とメモリの種類(Unbuffered DIMM/Registered DIMM)についてはモデルにより違いがあるため、下表を参照してほしい。このメモリ変更に合わせて、ソケットが変更されたことが、従来のAMD64プロセッサ・ファミリと大きく異なる部分だ。

デスクトップPC向け
製品名 コア数 モデルナンバー 動作クロック TDP ソケット
AMD Athlon 64 FX デュアル 62 2.8GHz 125W AM2
AMD Athlon 64 X2 デュアル 4000+/4400+/4800+ 2.0GHz/2.2GHz/
2.4GHz
89W/65W AM2
AMD Athlon 64 X2 デュアル 3800+/4200+/4600+/
5000+
2.0GHz/2.2GHz/2.4GHz/
2.6GHz
89W/65W *1 AM2
AMD Athlon 64 X2 デュアル 3600+ 2.0GHz 65W AM2
AMD Athlon 64 シングル 3000+/3200+/3500+/
3800+
1.8GHz/2.0GHz/2.2GHz/
2.4GHz
62W *2 AM2
Sempron シングル 2800+/3000+/3200+/
3400+/3500+/3600+
1.6GHz/1.8GHz/2.0GHz 62W/35W *3 AM2
モバイルPC向け
AMD Turion 64 X2 デュアル TL-50/TL-52/TL-56/
TL-60
1.6GHz/1.8GHz/2.0GHz 31W/33W/35W S1
モバイルAMD Sempron シングル 3200+/3400+/3500+ 1.6GHz/1.8GHz 25W S1
サーバ向け
AMD Opteron 1000 デュアル 1210/1212/1214/
1216/1218
1.8GHz/2.0GHz/2.2GHz/
2.4GHz/2.6GHz
103W AM2
AMD Opteron 1000 SE デュアル 1220 SE 2.8GHz 125W AM2
AMD Opteron 2000 デュアル 2210/2212/2214/
2216/2218
1.8GHz/2.0GHz/2.2GHz/
2.4GHz/2.6GHz
95W *4 F (1207)
AMD Opteron 2000 SE デュアル 2220 SE 2.8GHz 120W F (1207)
AMD Opteron 8000 デュアル 8212/8214/8216/
8218
2.0GHz/2.2GHz/2.4GHz/
2.6GHz
95W *4 F (1207)
AMD Opteron 8000 SE デュアル 8220 SE 2.8GHz 120W F (1207)
表区切り
AMDのプロセッサ・ラインアップ(詳細な比較表
*1 3800+には省スペースPC向けのTDP 35W版も用意される
*2 3500+には省スペースPC向けのTDP 35W版も用意される
*3 3600+はTDP 62Wのみ
*4 TDPを68Wに抑えたHE版(モデルナンバー末尾がHE)もある(2.6GHzを除く)

 これまでデスクトップPC向けのプロセッサでは、ハイエンドの一部モデルにRegistered DIMMに対応したSocket 940が使われていたのを除き、Socket 939とSocket 754が使われていた。Socket 939とSocket 754の違いは、メモリ・コントローラがデュアルチャネル対応かシングルチャネル対応か、というものである。初期にはAMD Athlon 64にもSocket 754の設定があったが、最近は主にバリュー・セグメント向けのAMD SempronにSocket 754が使われている。今回のモデル・チェンジで、デスクトップPC向けプロセッサのソケットは、デュアルチャネルDDR2(Unbuffered)対応で、939ピンの新しいSocket AM2に統一される。AMD SempronとAMD Athlon 64系でプラットフォームが統一されるわけだ。

 デスクトップPC向けプロセッサは品種が多く、コア数、動作クロック、2次キャッシュ・サイズなどにより、さまざまなバリエーションがある。だが、全体的な流れとしては、2次キャッシュ・サイズを小さくし、その代わりにデュアルコア・プロセッサの最低価格を引き下げて入手しやすくするというものだ。これに伴いシングルコアのAMD Athlon 64は縮小傾向で、シングルコア・プロセッサはAMD Sempronに集約される方向性にあるようだ。これは、一番最近追加されたデュアルコア・プロセッサであるAMD Athlon 64 X2 モデル3600+において、2次キャッシュ・サイズを256Kbytesに抑える代わりに1万円台で提供していることからもうかがえる。現行製品にある1Mbytesの2次キャッシュは消えていくか、残ったとしてもハイエンド製品のみになるだろう。

 モバイル向けのプロセッサに使われるソケットは、638ピンのSocket S1となる。こちらもデュアルチャネルDDR2メモリのUnbuffered DIMMに対応する。従来モバイルPC向けプロセッサに使われてきたSocket 754がシングルチャネル・メモリ対応だったため、クロックアップした分と合わせて、プラットフォームのメモリ帯域は約3倍に拡大される。しかも、Socket S1はソケットとして小型で、パッケージも小型化されるため、これまで以上に小型/薄型のノートPCに対応しやすくなる。

 モバイル向けでは、上述したデスクトップPCの傾向を先取りするように、Revision Fコアを搭載したプロセッサが、AMD Turion 64 X2とAMD Sempronの2種類に絞られている。もちろん前者がデュアルコア、後者がシングルコアだ。2次キャッシュ・サイズはともに、コア当たり256Kbytesまたは512Kbytes(モデルによって異なる)で、差がなくなりつつある。2次キャッシュ・サイズは、これまでパフォーマンス・セグメントとバリュー・セグメントの差別化の最も大きな要素となっていたが、これからはコア数が差別化の要因となる。

 次ページからは、AMDのプロセッサ/プラットフォーム戦略を見ていこう。

 

 INDEX
  [解説]ATI買収で動き出したAMDの新プロセッサ戦略
  1.新プロセッサのRevision Fコアで何が変わったのか
    2.AMDのサーバ向けプロセッサの戦略
    3.AMDのプラットフォームの未来図
 
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