解説

ATI買収で動き出したAMDの新プロセッサ戦略

2. AMDのサーバ向けプロセッサの戦略

元麻布春男
2006/09/01
解説タイトル

AMD Opteronはクワッドコア化へ

 クライアントPC向けプロセッサが、デスクトップPC、モバイルPCでそれぞれ統一されたソケットを採用するのに対し、サーバ向けのAMD Opteronは、2種類のソケットを採用する。ユニプロセッサ・サーバ向けのAMD Opteron 1000シリーズが採用するのがデスクトップPC向けと同じSocket AM2である。メモリもデスクトップPCと同じ、Unbuffered DIMMを用いる。このクラスのプロセッサはエントリ・クラスのサーバに使われることが多く、プラットフォーム・コストを下げてほしい、という要望が多かったようだ。

 これに対しデュアルプロセッサおよびマルチプロセッサ構成に対応したAMD Opteron 2000シリーズとAMD Opteron 8000シリーズでは、新しく1207ピンのSocket Fが用いられる。これらのプロセッサでは、クライアントPC向けプロセッサおよびAMD Opteron 1000シリーズと異なり、HyperTransportのリンク数が拡張されており、これを反映したものだろう(後述のように、さらに強化される見込み)。用いるメモリもRegistered DIMMとなっている。

 Revision Fコアは、AMD-Vのサポートという特徴はあるものの、性能面での強化ポイントはメモリ帯域の拡大にとどまる。どちらかというと、新しいソケットへの切り替えという側面が強いように思う。それもあってか、AMDはRevision Fコアのプロセッサを発表する時点において、新しいプラットフォームが次世代のクワッドコア・プロセッサと完全な互換性を持つと発表している。

 2007年半ばに登場するとされているクワッドコア・プロセッサは、AMD初の65nm SOIプロセスによる製品となる。Revision G、あるいは開発コード名をとってHound(ハウンド)コアと呼ばれる新コアを採用する。命令フェッチ・サイズの拡大、分岐予測の拡張、128bitの浮動小数点演算機能およびSSEを強化するなど、IPC(Instructions Per Clock:クロック当たりの実行命令数)を高めることで効率をさらに高めている。現時点での予定では、開発コード名「Deerhound(ディアハウンド)」で呼ばれるサーバ向けと「Greyhound(グレイハウンド)」で呼ばれるハイエンド・デスクトップPC向けにクワッドコア構成が採用され、メインストリーム・デスクトップPC向けにはデュアルコア構成が採用される見込みだ。

次世代のAMD64の注力点
2007年中ごろにリリースされる次世代プロセッサでは、サーバとハイエンド・デスクトップPC向けにクワッドコアが採用される予定だ。消費電力の面でも考慮された設計になる。

 Revision Gコアの特徴の1つは、モジュラ構造になっていることで、プロセッサ・コア、キャッシュ・メモリ、HyperTransportインターフェイス、メモリ・コントローラといった要素を必要に応じて組み合わせることが可能だとされている。また、AMD-Vの強化(前述したNPTもサポートされる見込み)に加え、外部インターコネクトにHyperTransport 3.0が採用される。

モジュラ構造を採用する次世代コア
次世代のRevision Gコアでは、プロセッサ・コア、キャッシュ・メモリ、HyperTransportインターフェイス、メモリ・コントローラなどをモジュラ化し、それを組み合わせることでプロセッサを構成することになる。これにより、多様な製品を短期間で開発可能になるとしている。

 HyperTransport 3.0は、HyperTransport 2.0の完全上位互換であるため、HyperTransport 3.0で導入される新機能は利用できないという制約はあるものの、既存のシステムに対するピン互換性を維持することができる。特にサーバでは、HyperTransportのリンク数が4に拡張され、プロセッサ内蔵のHyperTransportリンクだけで8プロセッサ(8ソケット)が構成可能になる見込みだ。これにより、Revision Gコアを採用したAMD Opteronは、すべてのメモリ・コントローラに対して1ホップでアクセス可能になる。このRevision Gコアを採用したクワッドコア・プロセッサだが、1つのダイに4つのプロセッサ・コアを集積する。大きな特徴は、新たに追加される3次キャッシュ・メモリで、4つのコアで共有されることになる。

HyperTransport 3.0の16bitリンクと8bit×2リンクの接続構成
HyperTransport 3.0では、16bit×1のリンクに加え、8bit×2の「Link-Splitting」がオプションでサポートされる。これにより、16bitリンクによる4ソケット/16コアと、Link-Splitting(8bit×2)による8ソケット/32コアの対応が可能になる。
 
次世代のサーバ/デスクトップPC向けアーキテクチャ
次世代のサーバ/デスクトップPC向けプロセッサでは、クワッドコアが採用される。この世代では、DDR2メモリからDDR3、FB-DIMMまで順次サポートされることになる。
 
次世代プロセッサで採用されるキャッシュ・メモリの構成
次世代プロセッサでは、1次キャッシュ64Kbytes、2次キャッシュ512Kbytes、3次キャッシュは全コア共有で2Mbytes以上になる予定だ。

 これに対しモバイルPC向けプロセッサは、HyperTransport 3.0を採用するものの、モバイル用途に最適化された、異なるコアを採用するといわれている。しかし、IntelがPentium M(Banias)で採用したような、モバイル向けにまったく異なるマイクロアーキテクチャを採用するのではなく、既存のK8コアの発展型になる。デスクトップ/サーバも含め、AMDも次世代コアの開発を行っているのではないかと思われるが、それに関する情報はまだ伝えられていない。

 では、次ページでATI Technologiesを買収したAMDのプラットフォーム戦略を解説する。


 INDEX
  [解説]ATI買収で動き出したAMDの新プロセッサ戦略
    1.新プロセッサのRevision Fコアで何が変わったのか
  2.AMDのサーバ向けプロセッサの戦略
    3.AMDのプラットフォームの未来図
 
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