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光ディスクとテープ・バックアップ規格が分かるキーワード

2.高性能化が進むテープ・バックアップ規格

デジタルアドバンテージ
2002/09/11


バックアップ装置関連

 数年前まで、サーバにはテープを利用するバックアップ・デバイスを搭載するのが一般的であった。ところが、最近ではハードディスクの容量が急激に増えて、手軽にテープ・バックアップ可能な容量を超えてしまったことから、テープ・バックアップは現実的ではなくなってしまった。エントリ・クラスのサーバでも、数百Gbytesといった容量のデータを持つことが珍しくない一方で、そのデータをバックアップできるバックアップ・デバイスは、サーバ本体と同じかそれ以上の価格となってしまったからだ。テープ・バックアップ・デバイスを搭載するのは、基幹業務などを稼働させるエンタープライズ・サーバだけ、といった状況になりつつある。

 それでも重要なデータは、災害時などでも安全な場所に容易に移動可能なテープなどに保存しておいた方がよい。テープ・バックアップ・デバイスに対する要望は高まっているが、それに製品が追い付いていないというのが実情だろう。今回は、記録容量が大きい、比較的新しい規格を中心にまとめてみた。

■LTO(Linear Tape-Open)
 IBM、Hewlett-Packard、Seagate Technologyの3社が共同開発したテープ・ストレージ規格。テープ・フォーマットとして「Ultrium(ウルトリウム)」が規定されている。
 
LTOでは、リニア記録方式(データ・トラックをテープの走行方向と平行な方向に設けて記録する方式)を採用し、384トラックの1/2インチ幅もしくは768トラックの1インチ幅のテープに記録を行う。96トラックを1組とした4つのデータ・バンドに分け、その間にサーボ・バンドが設けられている。磁気ヘッドは、そのサーボ・バンドを検知して、データ・バンドの位置合わせを行うようになっている。データの書き込みは、まずBOT(Beginning Of Tape)からEOT(End Of Tape)へ8トラックずつ行われ、EOTに到達すると、次に記録ヘッドをずらして次の8トラックをEOTからBOTへ記録する。これを繰り返すことで、1本のテープに大容量のデータが記録可能となる。なお、磁気ヘッドはMRヘッドを採用する。
 
1998年4月7日より、LTOの第1世代のUltriumフォーマットである「Ultrium format Generation 1(Ultrium 1)」のライセンス提供が開始されており、現在IBMやHewlett-Packard、日立製作所などから対応ドライブが販売されている。また、2002年4月9日には第2世代のUltriumフォーマットである「Ultrium format Generation 2(Ultrium 2)」のライセンス提供が始まった。
 
関連リンク:LTOの技術情報ページ英語
 
■LTO Ultrium
 テープ・ストレージ技術の規格「LTO」におけるテープ・フォーマット規格。384トラックを持つ1/2インチ幅のテープを採用する。テープは、105.4(W)×102.0(D)×21.5(H)mmのシングル・リール(テープの巻き取りが1つのもの)のカートリッジに収められる。カートリッジには、テープとは別に4Kbytesの半導体メモリが搭載されており、データの位置やメディアのエラーなどの情報が保存されるようになっている。
 
Ultrium 1では、圧縮時200Gbytesのデータ記録が可能で、20M〜40Mbytes/sのデータ転送レートを実現する。Ultrium 2では、それぞれ400Gbytes、20M〜40Mbytes/sに向上する。Ultriumのロードマップとして以下の4世代がすでに規定されているが、2002年9月現在、製品の出荷が行われているのはUltrium 1だけである(Ultrium 2は、2002年4月にライセンス提供が開始された)。
世代 第1世代 第2世代 第3世代 第4世代
容量(2:1圧縮時) 200Gbytes 400Gbytes 800Gbytes 1.6Tbytes
転送速度(2:1圧縮時) 20M〜40Mbytes/s 40M〜80Mbytes/s 80M〜160Mbytes/s 160M〜320Mbytes/s
メディアの素材 メタル・パーティクル メタル・パーティクル メタル・パーティクル 薄膜
表区切り
Ultriumフォーマットのロードマップ
 
関連リンク:Ultriumフォーマットの技術情報ページ英語
 
■DLTtape(Digital Linear Tape)
  1984年にDECが同社のミニコンピュータ「MicroVAX II」用として開発したテープ・ストレージ規格。Quantumが、1994年にDECのストレージ事業を買収したことから、その後はQuantumによって開発が続けられている。1990年のデータ記録容量は2.6Gbytes(2:1圧縮時)、データ転送レートは1.6Mbytes/sであったが、1999年には容量80Gbytes、データ転送レート12Mbytes/sにまで引き上げられている。なおDLTtapeの後継として、圧縮時220Gbytesの記録容量を持つ「Super DLTtape」が規格化されている。
 
DLTtapeは、リニア記録方式(データ・トラックをテープの走行方向と平行な方向に設けて記録する方式)を採用しており、1/2インチ幅のテープに記録を行う。DLT4000(圧縮時の記録容量40Gbytes)までの記録パターンは、トラック方向に対して垂直であった。しかし、DLT7000(圧縮時の記録容量70Gbytes)とDLT8000(同80Gbytes)ではトラック間の干渉を防ぐため、隣接するトラック間の記録パターンを逆方向に傾斜させるSPR(Symmetric Phase Recording)と呼ばれる技術が採用されている。
 
DLTの歴史
日本クアンタム ストレージの「DLTtapeテクノロジ ガイドブック」より
 
■Super DLTtape
 QuantumがDLTtapeの上位互換規格として1998年4月に発表したテープ・ストレージ規格。
 Super DLTtapeでは、テープの裏側にレーザー・サーボ用のトラッキング情報を記録しており、この情報を使って光学的にトラックの位置決めを行うようになっている。これにより、テープの表側がすべてデータの記録に利用できるようになり、データ・トラック数を増やすことを可能にしている。また、磁気サーボ用のトラックを記録するためのプリ・フォーマットが不要になる。
 現在、圧縮時の記録容量が220Gbytes、データ転送レート22Mbytesを実現する規格「SDLT220」に対応した製品が販売されている。Super DLTtapeでは、以下の図のように第4世代となるSDLT2400までロードマップが示されている。
 
DLTの歴史
日本クアンタム ストレージのニュースリリース「Super DLTの最新ロードマップに関するニュースリリース」より
 
■AIT(Advanced Intelligent Tape)
 1996年にソニーが開発した8mmテープ技術を応用したテープ・ストレージ規格。
 
データの記録には、回転ドラム上のヘッドによって、テープにデータを記録/再生するヘリカルスキャン方式を採用するため、データ・トラックはテープの走行方向に対して斜めに記録される。現在AITには、記録容量とデータ転送レートの違いにより、下表のような規格が規定されている。また、AIT-2規格をベースに1回だけの書き込みが可能な「AIT-2 WORM」もある。
 
規格 記録容量 データ転送レート
2.6:1圧縮時 非圧縮時 圧縮時 非圧縮時
AIT-1 25Gbytes 65Gbytes 10Mbytes/s 3Mbytes/s
AIT-1 35Gbytes 91Gbytes 10Mbytes/s 3Mbytes/s
AIT-1 35Gbytes 91Gbytes 12Mbytes/s 4Mbytes/s
AIT-2 50Gbytes 130Gbytes 15Mbytes/s 6Mbytes/s
AIT-2 260Gbytes 100Gbytes 31Mbytes/s 31Mbytes/s
 
AITのロードマップ
AITの規格化を行っているATI Froumのロードマップ情報ページより
 
■S-AIT
 AITをベースにテープ幅を1/2インチとすることで記録容量の拡大を実現したテープ・ストレージ規格。
 データの記録には、AITと同様、回転ドラム上のヘッドによって、テープにデータを記録/再生するヘリカルスキャン方式を採用するため、データ・トラックはテープの進行方向に対して斜めに記録される。記録容量は、2.6:1圧縮時1.3Tbytes(非圧縮時500Gbytes)、圧縮時のデータ転送レート78Mbytes(非圧縮時30Mbytes)を実現する。なお2008年の第4世代(非圧縮時の記録容量4Tbytes、データ転送レート240Mbytes/s)までのロードマップが発表されている。

 
S-AITのロードマップ
ソニーのS-AITに関する情報ページより
 
■VXA
 Ecrix(2001年11月にExabyteと合併)が開発した8mm幅のテープを利用するテープ・ストレージ規格。
 データの記録には、回転ドラム上のヘッドによって、テープにデータを記録/再生するヘリカルスキャン方式を採用するため、データ・トラックはテープの進行方向に対して斜めに記録される。ヘリカルスキャン方式は、VHSやDVなどのビデオ・テープでも採用されている方式である。ヘリカルス
キャン方式では、記録ヘッドの角度がずれてしまうと、トラッキング・ミスが生じ、データの読み出しが行えなくなるという欠点があり、そのため複雑なテープ・ガイドやテンション制御などの機能が必要不可欠であった。そこでVXAでは、ディスクリート・パケット・フォーマット(DPF)と呼ぶ、64bytesのユーザー・データを含むパケット単位で記録/再生を行うことで、たとえ歪んだトラック上に記録されたデータであっても、何回かスキャンを行うことでデータの読み出しを可能とした。これにより、複雑な機構が不要になり、ドライブ構造の簡略化を実現している。
 現在、VXAには、 記録容量が最大66Gbytes(2:1圧縮時)のVXA-1と、160Gbytes(2:1圧縮時)のVXA-2の2種類が規格化されている。VXA-1対応のテープ・ドライブは700ドル程度、VXA-2対応では1000ドル程度と、ほかのテープ・ストレージ規格の製品に比べて安価となっている。
 
関連リンク:VAXの技術解説VAXの技術情報ページ英語

 このように一見地味な存在のテープ・バックアップ規格も着実に進化している。それでもサーバに搭載されるハードディスクの容量に追い付かないのが現実だ。バックアップ・デバイスは必要不可欠なものだけに、今後どういったものが登場してくるのか、新しい技術にも注目していきたい。記事の終わり

  関連リンク 
LTOの技術情報ページ
Ultriumフォーマットの技術情報ページ
DLTtapeテクノロジ ガイドブック
Super DLTの最新ロードマップに関するニュースリリース
AITのロードマップ
S-AITに関する情報ページ
VAXの技術情報ページ
VAXの技術解説
 
  更新履歴
【2002/11/23】AITの表において、一部で圧縮時と非圧縮時の記録容量が入れ替わっておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 
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