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2003年注目の無線LAN技術を理解するためのキーワード

デジタルアドバンテージ
2003/02/13


 Intelは、2003年3月にモバイルPC向けプラットフォーム「Centrino(セントリーノ)」を発表する。このCentrinoは、プロセッサのブランド名ではなく、無線LAN機能を含む持ち運びを前提としたノートPC、すなわちモバイルPCのプラットフォームに対して付けられるものだ。当初Centrinoは、IEEE 802.11bとIEEE 802.11aの両対応になるとされていたが、IEEE 802.11aへの対応が間に合わず、当面はIEEE 802.11bのみの対応となるようだ。将来的には、IEEE 802.11a/bの両対応となることが表明されている。このCentrinoの出荷に合わせ、Intelは総額3億ドルともいわれるプロモーションを展開し、Centrinoならびに無線LANの普及を図る計画であるという。

 IntelがモバイルPCならびに無線LANを推進する理由として、企業内における作業効率ならびに投資効率の向上を挙げている(Intelの「無線LAN導入によるROIの向上について」)。無線LANの導入により、企業内におけるイーサネット・ケーブルの敷設が不要になる上、会議中などの意思決定が早まることで、1人当たりの生産性が向上するとしている。もちろん、すべての場合においてモバイルPCと無線LANの導入で生産性が向上するわけではない。しかし、部署変更などにともなうイーサネット・ケーブルの増設や敷設し直しがなくなるだけでもコスト削減になることから、企業においても無線LANが普及し始めている。さらに2003年は、Intelが無線LANの後押しをすることで、加速度的に普及する可能性がある。もちろん、Intelとしては単価の高いノートPCがより多く売れることで、収益率が向上するという思惑もあるのだろう。

 なおCentrinoでは、無線LAN規格としてIEEE 802.11bならびにIEEE 802.11aを採用する予定だが、AppleはPowerBook G4にIEEE 802.11gの採用を決めている。IEEE 802.11gは、現在普及しているIEEE 802.11bと互換性を持ち、チップセットがIEEE 802.11a対応のものに比べて安価なことから、特に家庭向けでは次世代無線LAN規格の本命になるのではないかと見られている。一方で、IEEE 802.11aもIEEE 802.11bと両対応のチップセットが登場し、普及に伴い安価になりつつあることから、次世代として先行するIEEE 802.11aこそが本命であるという見方もある。将来的には、IEEE 802.11a/b/gの3規格に対応したものになりそうだが、当面は複数の規格がシェア争いをすることになる。

 ここでは、2003年注目の無線LANについて関連用語などを含めて解説しよう。

■IEEE 802.11b
 2.4GHz帯の無線周波数を利用し、最大11Mbits/sの転送レートを実現する無線LAN規格。現在、最も普及している無線LAN規格である。
 
IEEE 802.11bが利用する2.4GHz帯は、ISM(Industry Science Medical)バンドと呼ばれ、利用者が無線免許を取得しなくても使える周波数となっている。屋内だけではなく屋外でも利用でき、公衆無線LANインターネット・アクセス・サービス(詳細は後述)や無線LANインターネット・サービスなどでも使われている。一方で2.4GHz帯は、Bluetoothやコードレス電話といった無線機器のほか、電子レンジや医療機器などでも使われており、こうした機器との電波干渉により通信が途絶することもある。
■IEEE 802.11g
 2.4GHz帯の無線周波数を利用し、最大54Mbits/sの転送レートを実現する無線LAN規格。現在、IEEEが規格を策定中であり、ドラフトが公開されている。すでに一部ベンダからは対応製品が出荷されているが、まだ規格が正式に策定されていないため、互換性などで問題が生じる可能性が残っているので注意したい。なお、すでにIEEE 802.11g対応製品を出荷しているメルコでは、正式規格がリリース後にファームウェアのアップデートなどにより、正式規格に対応するとしている。
 IEEE 802.11gは、IEEE 802.11bの上位互換となっており、11Mbits/sまでのデータ転送レートは互換性を持っている。利用する周波数帯やチャネルの制限などもIEEE 802.11bと同じである。ただし、変調方式が変更されており、IEEE 802.11gでは2次変調として、IEEE 802.11aで採用されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)とすることでデータ転送レートを向上させている。
 
■IEEE 802.11a
 5GHz帯を利用して、最大54Mbits/sの転送レートを実現する無線LAN規格。変調方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)を採用することで、データ転送レートを向上させているのが特徴である。
 すでにIntelやソニー、アイ・オー・データ機器、NECなどからIEEE 802.11aに対応した製品が発売されている。また、Wi-Fi Allianceによる相互接続性の検証も開始されており、Wi-Fiロゴの付いた製品同士の接続性が保証されるようになった。
■WEP(Wired Equivalent Privacy)
 IEEE 802.11a/b/gで採用されている暗号化機能。64bitまたは128bitのキー(任意の文字列)を、アクセス・ポイントとクライアントの両方に指定しておくことで、通信相手を認証しつつ、通信内容の暗号化と復号化を行おうというもの。これによって、通信が傍受されてもデータを解読できなくし、かつWEPを知らないクライアントがネットワークにアクセスするのを防ぐことも可能になる。ただし、WEPは常に同じ暗号キーが使われるため、長期間にわたる通信傍受により、WEPのキーを推測できる可能性がある。WEPは、無線LANのセキュリティ機能として十分なものではない点は認識しておきたい。
 
■IEEE 802.1x
 ユーザー認証とデータ暗号化(オプション)の仕組みを提供する規格。IEEE 802.1xは、無線LANに限定されたものではないが、無線LANのセキュリティを強化する仕組みとして注目を集めている。
 IEEE 802.1xでは、一般にRADIUSサーバと呼ばれるユーザー認証システムと組み合わせて使われる。ユーザー認証とWEPキーを組み合わせ、一定時間でWEPキーを変更するなどの操作を行うことで、セキュリティの向上を実現している。なおWindows XPは、すでにIEEE 802.1xに対応している。
 
■Wi-Fi(ワイ・ファイ)
 Wireless Fidelity(ワイヤレスの忠実度)の略。IEEE 802.11a/b規格に対応する無線LAN製品の相互接続性の検証などを行っている「Wi-Fi Alliance」の略称、もしくは相互接続性の検証済み製品に付けられるロゴ。
 Wi-Fiロゴが付いた製品では、同じ規格であればベンダが異なるアクセス・ポイントと無線LANカードでも相互接続性が保証される。当初は、IEEE 802.11b対応製品のみをWi-Fiロゴの対象としていたが、2002年よりIEEE 802.11a対応製品の検証も開始している。
 

■Remote Authentication Dial-In User Service(RADIUS)

 ダイアルアップでサーバに接続するときに使用する認証システム、ならびにその認証システムで利用されるプロトコルのこと。無線LANのユーザー認証などにも利用されている。
 ダイヤルアップ・ルータや無線LANアクセス・ポイントは、クライアントPCが接続されると、アカウント名とパスワードなどを受け取り、それをRADIUSの認証システム(RADIUSサーバ)に送る。RADIUSサーバにより、認証されると、始めてクライアントPCとの接続を行うという仕組みとなっている。RADIUSサーバを用いることで、ユーザー認証を一元管理できる上、IEEE 802.1xとの組み合わせにより無線LANのセキュリティを向上させることが可能となる。
 

■公衆無線LANインターネット・アクセス・サービス

 駅や空港、喫茶店などにおいて、無線LANを利用して提供されるインターネット・アクセス・サービスのこと。「公衆無線LANアクセス・サービス」とも呼ばれる。日本以外では、一般的に「HotSpot(ホットスポット)」と呼ばれる。日本では「ホットスポット」が、NTTコミュニケーションズの提供する公衆無線LANインターネット・アクセス・サービスの登録商標となっていることから、「公衆無線LANインターネット・アクセス・サービス」と呼ぶことが増えている。
 現在、公衆無線LANインターネット・アクセス・サービスはIEEE 802.11bによるサービスが一般的であるが、IEEE 802.11aによるサービスも一部で提供が始まりつつある。
 
  関連リンク 
無線LAN導入によるROIの向上について
Wi-Fi検証済みのIEEE 802.11a対応製品について

 
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