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注目のHPCを理解するためのキーワード

デジタルアドバンテージ
2003/09/03


 これまでハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)というと、自然現象のシミュレーションやDNA解析、原子力開発など、大量の数値計算を伴う研究分野で利用されるという印象が強かった。しかし、コンピュータの高性能化と低価格化、分散コンピューティング技術の発達などにより、より実用的な領域でハイパフォーマンス・コンピューティングが利用されるようになってきている。

 例えば自動車の開発現場では、これまでは試作車を製作して衝突実験や風洞実験などを行っていたが、ハイパフォーマンス・コンピューティングによって、コンピュータを使って開発中の自動車の挙動をシミュレーションできるようになってきている。これにより、開発期間の短縮やコストの削減を実現している。こうしたニーズ自体は古くからあったが、従来のハイパフォーマンス・コンピューティングの主役だったスーパーコンピュータは高価な上、性能も必ずしも期待に添うものではなく、妥当な時間内にシミュレーション結果が得られないなどの理由から実用化できないでいた。しかし、RISCプロセッサやx86プロセッサなど、コストパフォーマンスの高いマイクロプロセッサを大量に搭載したコンピュータが開発されるなどしたことにより、状況は変わりつつある。

 また、複数台のIAサーバをネットワークで接続し、分散処理することでシステム全体の性能向上を図るグリッド・コンピューティングは、医薬品や金融商品の開発などに応用され始めている。さらに今後はデータマイニング(ビジネス活動などに伴って生み出される膨大な量のデータの中から、特徴や意味、相関関係などを見つけ出し、抽出する技術)など、製造業や流通業など、より一般に応用されるものと期待されている。このようにこれまで特殊な分野であったハイパフォーマンス・コンピューティングが、より身近なものとなりつつある。そこで、今回はハイパフォーマンス・コンピューティングを理解するためのキーワードを取り上げることにする。記事の終わり

■ハイパフォーマンス・コンピューティング(High-Performance Computing)
 大量のコンピューティング・リソースを活用して、複雑な計算問題を解くためのコンピューティング・モデルのこと。当初は主に自然現象のシミュレーションやDNA解析など、大量の計算処理を伴う研究分野での利用が対象であったが、最近では自動車の設計や医薬品の開発、金融分野などで幅広く応用されるようになっている。

 ハイパフォーマンス・コンピューティングでは、これまでは高価なスーパーコンピュータが利用されてきたが、最近では大量のRISCプロセッサなどを搭載するマルチプロセッサ・システムや、廉価なIAサーバを数百台接続して分散処理させるグリッド・コンピュータの利用が主流になりつつある。RISCプロセッサやIAサーバでは、大量生産の技術が確立されており、それらの製造技術やノウハウなどを利用できるため、低コストで高性能のシステムを設計できるという利点がある。
 
■分散コンピューティング
 ネットワーク上に分散する複数の場所(ノード)で処理を行うコンピューティング・モデルのこと。最近では、グリッド・コンピューティングと同義で使われることも多いが、広義にはマルチプロセッサ・システムやクラスタリングなども含む。
 
マルチプロセッサ・システム (multi-processor system)
 複数のプロセッサを並列的に使用して、システム全体の処理能力を向上させたり、耐障害性を高めたりしたコンピュータ・システムのこと。複数のプロセッサで処理を分散して実行することにより、単一のプロセッサだけでは得られないような処理性能を実現できる。また、あるプロセッサに障害が発生しても、ほかのプロセッサでその処理を受け継いで実行することにより、処理を停止せずに続行するなどが可能になる。
 
■クラスタリング
 複数のサーバを接続(クラスタリング)して、システムやアプリケーションの耐障害性や性能を向上させるシステム構成のこと。クラスタリング・システムは、複数台の独立したサーバによって構成され、それが全体として1つのサーバのように機能する。こうした構成を採用することで、1台のサーバに障害が発生した場合でも、クラスタリングを構成するほかのサーバが処理を代わりに実行することで、システム全体の耐障害性を向上させられる。またクラスタリングを使用することで、分散処理が可能となり、性能向上も実現できる。

 最近では、IAサーバを数百台接続した大規模なクラスタリングを、ハイパフォーマンス・コンピューティングに活用する例が増えている。こうしたクラスタリングでは、各サーバ同士の接続方法にギガビット・イーサネットや10ギガ・イーサネット、またはMyrinet(ミリネット)といったクラスタリング向けのインターフェイスが利用される。
 
グリッド・コンピューティング (grid computing)
 インターネットを介して遠隔地に存在するコンピュータを接続し、プロセッシング・パワーやデータ・ストレージなどのコンピュータ資源をそれらのコンピュータ同士で共有して、処理を進められるようにしたコンピューティング基盤のこと。大量の計算処理が必要なときには、複数のコンピュータが持つプロッセシング・パワーを統合するなど、用途や目的などに応じ、コンピュータの処理能力を柔軟かつ効率的に管理・運用することを目的としている。
 
■データマイニング
 企業内に蓄積したデータから、意味のある相関関係や有効なビジネス・パターンを発見する技術。マイニングとは、「採鉱」という意味。データマイニングによって、顧客の購買データと顧客情報を関連付け、相関関係などを導き出すことにより、例えば潜在的な顧客ニーズを発見したり、クレジット・カードの不正使用パターンの発見したりできる。

 ただ、データマイニングを行い有効なビジネス・パターンを発見するためには、膨大なデータを統計解析処理などする必要があり、高速なコンピュータが不可欠となっている。
 
■Itaniumプロセッサ・ファミリ
 Intelの64bitプロセッサ「Itanium」シリーズならびにマイクロアーキテクチャを意味する。Intel Processor Familyを略してIPFと呼ばれることもある。IPFはハイパフォーマンス・コンピューティングのシステムによく採用されるプロセッサの1つ。2003年8月の時点でIPFにラインアップされているのは初代プロセッサの「Itanium(開発コード名:Merced)」と、第2世代のItaniumプロセッサ「Itanium 2(開発コード名:McKinley)」、第3世代の「Itanium 2(開発コード名:Madison)」である。近く、デュアルプロセッサ版の「Itanium 2(開発コード名:Deerfield」が、また2004年にはMadisonの3次キャッシュを9Mbytesに増量した開発コード名「Madison 9M(マディソン 9エム)」が、2005年にはデュアル・コアを採用した開発コード名「Montecito(モンテシト)」と呼ばれるプロセッサが加わることが公表されている。
 
■AMD Opteron
 AMDのサーバ/ワークステーション向け64bitプロセッサに名付けられたブランド名。開発コード名は「SledgeHammer(スレッジハマー)」である。AMD64テクノロジを採用しているほか、メイン・メモリを直接プロセッサ・コアに接続して高速化を図っている。また、高速I/Oインターフェイスの「HyperTransport(ハイパートランスポート)」を内蔵しており、これでプロセッサ間を接続することで、4〜8プロセッサ構成のマルチプロセッサ・システムを構築できるという。

 2003年8月末現在、AMD Opteronには、シングルプロセッサ版の100シリーズ、ディアルプロセッサ版の200シリーズ、4ウェイ/8ウェイ版の800シリーズがラインアップされている。すでに日本IBMが、独立行政法人産業技術総合研究所に対して、1058台のAMD Opteron搭載サーバ「eserver 325」を中核とするハイパフォーマンス・コンピューティングのシステムを納入することを明らかにしている。このようにAMD Opteronは、ハイパフォーマンス・コンピューティング分野での採用が多い。

日本IBMのAMD Opteron搭載サーバ「eserver 325」
1Uサイズのラックマウント型を採用しており、デュアルプロセッサ構成に対応する。
 
 
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