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IDF Spring 2006で公開されたIntelの開発コード名

元麻布春男
2006/04/18

 年に2回、春と秋に開催されるIntelの開発者向けのカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」では、プロセッサのロードマップが更新されたり、新しい技術の詳細が公開されたりする(日本で開催されるIDFは年に1回になっている)。それに伴い新たな開発コード名が数多く公開される。2006年3月上旬に開催されたIDF Spring 2006でも、プロセッサのロードマップが更新され、新しい開発コード名が追加されている。

IDF Japan 2006で公開されたマルチコア・プロセッサのロードマップ
2007年以降のプロセッサ・ロードマップが公開され、新しい開発コード名が追加となっている。

 ここでは、新たに追加された開発コード名を中心に、2006年後半以降に登場する製品の開発コード名を中心に解説する。また、過去の開発コード名については、以下の記事を参照していただきたい。

Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)
Tukwila(ツクウィラ) Dimona(ディモナ) Richford(リッチフォード) Rosehill(ローズヒル)
Poulson(ポウルソン)      
サーバ/ワークステーション向けのプロセッサ/プラットフォーム
Dempsey(デンプシー) Clovertown(クローバータウン) Dunnington(ドニントン) Bensley(ベンスレイ)
Tigerton(タイガートン) Glidewell(グライドウエル) Greencreek(グリーンクリーク) Wyloway(ウィロウェイ)
Kaylo(ケイロ) Caneland(カネランド) Clarksboro(クラークスボロ)  
クライアント向けプロセッサ/プラットフォームなど
Broadwater(ブロードウォータ) Averill(アベリル) Bridge Creek(ブリッジ・クリーク) Kentsfield(ケンツフィールド)
Santa Rosa(サンタ・ローサ) Crestine(クレスティン) Robson(ロブソン) Kedron(ケドロン)
Nineveh(ニネベ) Gilgal(ギルガル)    
 

Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)

 
■Tukwila(ツクウィラ)
 Montvale(モントベール)の次の世代のIPF。買収した旧Alphaプロセッサの開発チームが開発に加わったといわれる。65nmプロセスにより量産されるクアッドコア・プロセッサ。以前はTanglewood(タングルウッド)という開発コード名で呼ばれていたが、商標の問題を回避するため改められた。性能面での強化に加え、一定の自己診断、自己修復機能が実装される見込みだ。デュアルプロセッサ対応版はDimona(ディモナ)と呼ばれ、低電圧版も用意される。最大の変更は、プロセッサ・インターフェイスがNext Generation Interconnectに改められることで、IA-32系プロセッサとの将来のプラットフォーム統合を見据えたものとなる。対応プラットフォームはRichford(リッチフォード)となる。
 
■Dimona(ディモナ)
 Tukwila(ツクウィラ)と同世代のデュアルプロセッサ対応サーバ向けIPFプロセッサ。65nmプロセスで量産される。主要な機能はTukwilaと同等と考えられるが、キャッシュ容量などは抑えられるものと思われる。通常電圧版に加え、低電圧版が提供される見込み。
 
■Richford(リッチフォード)
 Tukwila(ツクウィラ)向けに提供される次世代IPFプラットフォーム。Next Generation Interconnectに対応するほか、PCI ExpressやFB-DIMMといった新しい技術をサポートするものになると見られる。
 
■Rosehill(ローズヒル)
 Richford(リッチフォード)プラットフォームで使われるIPF対応チップセット。
 
■Poulson(ポウルソン)
 Tukwila(ツクウィラ)の次の世代に位置付けられるIPFプロセッサ。4つ以上のコアを持つこと、Richford(リッチフォード)プラットフォームを採用することが明らかにされている。2009年以降に登場する見込み。
 

サーバ/ワークステーション向けのプロセッサ/プラットフォーム

 
■Dempsey(デンプシー)
 65nmプロセスで量産される第2世代のデュアルプロセッサ対応サーバ向けデュアルコア・プロセッサ。NetBurstマイクロアーキテクチャを採用する。第1世代のPaxville DP(パックスビル・ディーピー)と異なり、パッケージ内部にシングルコア・ダイを2つ同梱する。デスクトップPC向けのPresler(プレスラー)と同等の構成だが、デスクトップPC向けにあるシングル・ダイ・バージョン(Cedar Mill:セダーミル)は存在しない。また、Hyper-Threadingが標準的にサポートされる。FSBのクロック周波数は1066MHzで、対応するBlackford(ブラックフォード)チップセットとBensley(ベンスレイ)プラットフォームを構成する。新しいメモリ(FB-DIMM)の準備に時間がかかり、2006年第1四半期のリリースが、2006年第2四半期に延期となった。
 
■Clovertown(クローバータウン)
 2007年第1四半期に登場する見込みのデュアルプロセッサ対応サーバ向けクワッドコア・プロセッサ。1つのプロセッサ・パッケージにWoodcrest(ウッドクレスト)相当のデュアルコアのダイを2つ同梱する。1つの物理プロセッサでありながら、バス・ロード(バスに対する負荷)が2つになる関係で、FSBのクロック周波数はWoodcrestの1333MHzから1066MHzへと引き下げられる。デスクトップPC向けのKentsfield(ケンツフィールド)に相当する。
 
■Dunnington(ドニントン)
 2008年にリリースが予定されているTigerton(タイガートン)の次世代のマルチプロセッサ対応サーバ向けプロセッサ。4つ以上のコアを持ち、プロセッサ・インターフェイスとしてHigh Speed Interconnectを採用すること、Caneland(カネランド)プラットフォームを継承することが明らかにされている。詳細は明らかにされていないものの、Intel Coreマイクロアーキテクチャを採用した2世代目のマルチプロセッサ対応サーバ向けプロセッサとして、キャッシュ容量の拡大などが図られるものと思われる。
 
■Bensley(ベンスレイ)
 FB-DIMMをサポートしたデュアルプロセッサ対応サーバ向けのプラットフォーム。Dempsey(デンプシー)と同時に導入され、Woodcrest(ウッドクレスト)、さらにもう1世代先のClovertown(クローバータウン)まで3世代にわたって利用される予定だ。2本のFSBにそれぞれ1個ずつのプロセッサ・ソケット(新たにLGA771を採用)を接続するDIB(Dual Independent Bus)を採用し、最大1333MHzのFSBのクロック周波数に対応する見込みである。I/OAT(Intel I/O Acceleration Technology)、iAMT(Intel Active Management Technology)、EM64T(Extended Memory 64 Technology)、VT(Intel Virtualization Technology)といったプラットフォーム技術(*Ts)をサポートする。
 
■Tigerton(タイガートン)
 Intel Coreマイクロアーキテクチャを採用する初のマルチプロッサ対応サーバ向けプロセッサ。外部バスに「High Speed Interconnect」を採用する。2007年前半に登場する見込み。クワッドコアのプロセッサだが、内部はデュアルコアのダイ(Woodcrest相当と思われる)を2つ同梱する構成となる。デュアルプロセッサ対応サーバ向けのClovertown(クローバータウン)と同じ構成で、Clovertown MPと呼ばれたこともあるようだ。そのためか、マルチプロセッサ対応サーバ向けプロセッサとしては、キャッシュ容量が小さいようだ。
 
■Glidewell(グライドウエル)
 2006年第2四半期に提供が開始されるデュアルプロセッサ対応ワークステーション・プラットフォーム。チップセットにはGreencreek(グリーンクリーク)を用いる。デュアルプロセッサ対応サーバ・プラットフォームのBensley(ベンスレイ)に相当し、Dempsey(デンプシー)Woodcrest(ウッドクレスト)Clovertown(クローバータウン)の3世代のプロセッサに対応する。
 
■Greencreek(グリーンクリーク)
 2006年第2四半期に投入される見込みのGlidewell(グライドウエル)プラットフォームの中核となるチップセット。最大1333MHzのFSBに対応する。デュアルプロセッサ対応サーバ向けのBlackford(ブラックフォード)と同時期にリリースされるチップセットだが、ワークステーション向けにPCI Express x16をサポートする。
 
■Wyloway(ウィロウェイ)
 2006年第3四半期に提供が開始されるユニプロセッサ対応ワークステーション・プラットフォーム。Intel Coreマイクロアーキテクチャのデュアルコア・プロセッサであるConroe(コンロー)、同クワッドコア・プロセッサであるKentsfield(ケンツフィールド)に対応する。
 
■Kaylo(ケイロ)
 2006年第3四半期に提供が開始されるユニプロセッサ対応サーバ・プラットフォーム。Intel Coreマイクロアーキテクチャのデュアルコア・プロセッサであるConroe(コンロー)、同クワッドコア・プロセッサであるKentsfield(ケンツフィールド)に対応する。
 
■Caneland(カネランド)
 2007年前半にTigerton(タイガートン)用に提供されるマルチプロセッサ対応サーバ対応プラットフォーム。プロセッサ・インターフェイスとしてHigh Speed Interconnectをサポートし、メモリにFB-DIMMを採用する。チップセットはClarksboro(クラークスボロ)を採用する。少なくともTigertonの次のDunnington(ダニング トン)までは使われる見込み。
 
■Clarksboro(クラークスボロ)
 2007年前半に登場する見込みのマルチプロセッサ対応サーバ向けプラットフォームのCaneland(カネランド)の中核となるチップセット。プロセッサ・インターフェイスとしてHigh Speed Interconnectをサポート、メモリ・モジュールとしてFB-DIMMをサポートする。
 

クライアント向けプロセッサ/プラットフォームなど

 
■Broadwater(ブロードウォータ)
 Intel CoreマイクロアーキテクチャによるデスクトップPC向けプロセッサConroe(コンロー)に対応したチップセット。エンタープライズ(企業向け)プラットフォームであるAverill(アベリル)プラットフォームと、コンシューマ・プラットフォームであるBridge Creek(ブリッジ・クリーク)プラットフォームの双方で用いられる。Averillプラットフォーム向けはIntel Q965、Bridge Creekプラットフォーム向けはIntel P965(内蔵グラフィックスなし)、あるいはIntel G965(内蔵グラフィックスあり)と呼ばれる。プラットフォーム技術(*Ts)をサポートし、DDR2-800メモリに対応する。
 
■Averill(アベリル)
 2006年後半に提供される企業向けプラットフォーム。Conroe(コンロー)プロセッサ、Broadwater(ブロードウォータ)チップセット(Q965)、Nineveh(ニネベ)イーサネット・コントローラ(Intel 82566DM)で構成される上位版のAverill Professionalと、Pentium Dプロセッサ、Q963チップセット、82566DMで構成される下位版のAverill Fundamentalの2種類が想定されている。Lyndon(リンドン)プラットフォームの後継。当初はクワッドコア・プロセッサへの対応は述べられていなかったが、IDF Japan 2006 Springで、企業向けプラットフォームでのデモが行われた。
 
■Bridge Creek(ブリッジ・クリーク)
 Anchor Creek(アンカー・クリーク)の後継となるコンシューマ向けプラットフォーム。2006年後半に提供される予定だ。当初はConroe(コンロー)プロセッサ、Broadwater(ブロードウォータ)チップセット(Intel P965/G965チップセット)、Nineveh(ニネベ)イーサネット・コントローラで構成されるが、2007年第1四半期に登場するクワッドコア・プロセッサのKentsfield(ケンツフィールド)もサポートする予定。
 
■Kentsfield(ケンツフィールド)
 2007年第1四半期に登場する見込みのデスクトップPC向けクワッドコア・プロセッサ。1つのプロセッサ・パッケージにConroe(コンロー)相当のデュアルコアのダイを2つ同梱する。
 
■Santa Rosa(サンタ・ローサ)
 2007年に提供されるモバイル向けプラットフォーム。Crestine(クレスティン)チップセット、Kedron(ケドロン)無線LANモジュールで構成され、オプションとしてiAMT 2.0対応のギガビット・イーサネット・コントローラであるNineveh(ニネベ)イーサネット・コントローラ、NANDフラッシュを用いたディスク・キャッシュ技術であるRobson(ロブソン)が提供される。当初のプロセッサはMerom(メロム)だが、次世代のプロセッサまで継続されるものと思われる。
 
■Crestine(クレスティン)
 Santa Rosa(サンタ・ローサ)プラットフォームのチップセット。USBポートの拡張増加(10ポート)、シリアルATAポートの増加(3ポート)に加え、統合グラフィックス性能の強化が行われる。
 
■Robson(ロブソン)
 Santa Rosa(サンタ・ローサ)プラットフォームのオプションになると見られる、不揮発メモリ(NANDフラッシュ)を用いたディスク・キャッシュ技術。PCI Express接続のMiniCardモジュールの形で実装される。モジュール上にはキャッシュ・コントローラとNANDフラッシュメモリ・チップが実装されるが、現時点では、提供形態がチップ・レベルかモジュールになるのかは不明である。ディスク・アクセス性能の向上、アプリケーション起動時間の短縮に加え、データ保護、省電力といった効果が見込まれる。
 
■Kedron(ケドロン)
 IEEE 802.11nに対応したPCI Expressベースの無線LANモジュール。最大で既存の5倍の帯域を提供するといわれている。Wireless Intel AMTに対応し、Kedron(ケドロン)を搭載したプラットフォームはiAMT 2.5互換となる。
 
■Nineveh(ニネベ)
 iAMT 2.0に対応したクライアント向けのギガビット・イーサネット・コントローラ。Intel 82566DMという型番になる。
 
■Gilgal(ギルガル)
 Bensley(ベンスレイ)プラットフォームなどで用いられるサーバ向けのギガビット・イーサネット・コントローラ。
 
 
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