特集
基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版

10. 意外に多彩なIAサーバの電源ユニットの機能とケースの形状

デジタルアドバンテージ
2002/05/22


 前ページまでで、IAサーバの概要からディスク・サブシステムまで解説してきた。最後となる本ページでは、一見目立たないが重要なコンポーネントである電源ユニットとケースに注目する。

IAサーバならでは電源ユニットの機能とは?

 「PCメンテナンス&リペア:第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎 」でも触れているが、電源ユニットは意外に故障しやすい部品だ。また、故障したときのダメージも大きく、プロセッサやメモリ、ハードディスクと同様、システムの停止に直結する甚大なものだ。

 そのため、IAサーバでは電源ユニットにも耐障害性を高める仕組みが用意されている。それは電源ユニットの二重化(冗長構成)だ。1台の電源ユニットだけでIAサーバ全体の全消費電力をまかなえる出力を持つものを2台装着し、片方が故障して電力供給が止まっても、残る一方が電力を供給し続けることで、システムの停止を回避できるというものだ。原理的には「8. ギガビット化が始まったIAサーバのネットワーク・インターフェイス」に記したネットワーク・インターフェイスの障害対策と同じだ。IAサーバのカタログ・スペックでは、よく「リダンダント(redundant)電源」と記されている。

冗長構成に対応している電源ユニットの例
これは日本IBM製eserver xSeries 360の電源ユニット(左)とその装着部分(右)。電源ユニットは最大3台まで装着可能で、ホットスワップもできる。

 電源ユニットの二重化と切っても切り離せないのが、ホットスワップ対応だ。片方の電源ユニットが故障すると、その時点で冗長性はなくなるので、残る一方の電源ユニットが稼働している間に一刻も早く故障した方を交換して正常な状態に戻す必要がある。それには電源をオフにすることなく交換が行えるホットスワップ機能が欠かせない。二重化電源に対応しているIAサーバなら、たいていはホットスワップにも対応しているはずだ。

 多数のハードディスクや拡張カードを増設できるIAサーバには、以上の機能に加えて、複数台の電源ユニットで電力供給を分担する負荷分散機能も実装されていることがある。オプションを追加して消費電力が増えたら電源ユニットも増やすことで総電力供給量も上げるという、電源容量のスケーラビリティを確保する仕組みだ。単純に電源ユニットを二重化するのと比べて、各電源ユニットの能力を無駄なく利用できる。ここで注意が必要なのは、電源ユニットが複数台装備されているからといって、一概に冗長構成であるとはいえない点だ。例えば2台の電源ユニットが装備されていても、それは電源ユニット2台分の電力をIAサーバが必要としているだけで、冗長分が含まれていない場合もある。この場合は3台目の電源ユニットを装着して、初めて冗長性が確保されるので注意が必要だ。

■ワークグループ以上のIAサーバなら二重化電源などに対応
 電源ユニットの二重化(ホットスワップ対応を含む)は、ワークグループ以上のIAサーバにとって標準の装備となりつつある。電源ユニットの占有体積が増えるため、ケース・サイズの小さいサーバでは非対応の場合もあるが、最近では1Uラックマウント型サーバでも対応製品が登場し始めている(「特集:高密度サーバはどこに向かうのか? 2. 第2世代の1Uサーバ『PowerEdge 1650』」参照)。またミッドレンジ以上のサーバでは、3台以上の電源ユニットによる負荷分散機能にも対応していることが多い。

 現在のIAサーバの電源ユニットは、基本的に製品ごとの専用品である(後述するように標準化の動きはあるが)。つまり純正品以外の代替が効かないので、IAサーバの選択時に二重化などの機能をよく確認すべきだ。

IAサーバにおける3種類のケース形状のメリット/デメリットとは?

 電源ユニットと同様、ケースもまたIAサーバではメーカーごとの独自性が強い部品だ。またデスクトップPCと比べると、その形状も多彩である。ここでは、3種類のケース「タワー型」「ラックマウント型」「ブレード型」を取り上げ、それぞれのメリット/デメリットなどを解説しよう。

タワー型 ラックマウント型 ブレード型
縦置き型のケース全般を指す。フロア型、ペデスタル(pedestal)*15とも呼ばれる。IAサーバ誕生当初からあるケース形状だが、サイズや形状の規定は特になく、実際の製品のサイズも多彩。オプションで19インチ・ラックにも装着できるようになるタイプもある 標準規格の19インチ・ラックに装着できるケース。厚みは「1U」=約4.4cmが基準で、2U、3U、4U…のケースが存在する。タワー型より高密度に実装しやすいほか、ディスク・エンクロージャやネットワーク機器など、同じラックマウント型ケースの機器を集中配置して管理できる。データセンターや通信事業者などを中心に普及し始め、企業での採用も増えている サーバの機能を、ブレード(刀身)のように細長い基板に実装し、別のエンクロージャに多数組み込むという形態。ラックマウント型より高密度にサーバを実装するために考案された。3Uラックマウント型ケースに20枚以上ものサーバ・ブレードを装着できる製品もある。製品登場は2001年からと、非常に新しいものだ
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コンパック ProLiant ML530 (上)デルコンピュータ PowerEdge 1650、(下)日本IBM eserver xSeries 360 (上)コンパック ProLiant BL eシリーズ・エンクロージャ、(下)ProLiant BL10e
IAサーバの3種類のケース形状

*15 ペデスタル(Pedestal)とは台、台座という意味。タワー型ケースは、床などの上に置かれる形状のため、このように呼ばれることが多くなってきている。

■タワー型(ペデスタル型)
 最もよく見かけるIAサーバのケースは、タワー型(最近ではペデスタル型とも呼ばれる)だろう。そのサイズは拡張性に大きく依存しており、エントリ・クラスではデスクトップPCとほぼ同じ大きさだが、ワークグループになるとデスクトップPCより1〜2回りほど大きくなる。ミッドレンジでは多数のドライブを内蔵するために幅広(40cm以上)のケースが採用されることが多い。エンタープライズになると、高さ約2mの冷蔵庫と見間違うような大型ケースの製品も存在する。

 タワー型のメリットの1つは、どこにでも配置しやすいという点だ。もちろんケースの大きさにもよるが、管理者の机の下に入れたり、(19インチ・ラックではない)一般的なラックに並べたりしやすい。デメリットは、複数のタワー型ケースを集中配置すると設置面積が増えることだ。ケースのサイズに標準がなく、不揃いになりがちなので、各ケースを隙間なく高密度に詰め込むのが難しい。そのため最近は、いざというときはオプション・パーツを装着してタワー型ケースをラックマウント型に変換できるよう、ラックマウント型とタワー型を共通化したケースを開発してラインアップしているIAサーバ・ベンダが増えてきている。

■ラックマウント型
 IAサーバにラックマウント型ケースが広く採用されるようになったのは、インターネットの普及により、ISPなどのデータセンターや企業などでサーバの需要が増え、狭い面積に多数のサーバを設置するニーズが高まったためだ。メーカーによっては、IAサーバの総出荷台数のうちラックマウント型が半分近くまで達しているという。

 ラックマウント型のメリットは、IAサーバやネットワーク機器などラック対応機器を集中配置できることだ。一般的な背の高いサーバ・ラック(40Uサイズ)の場合、1Uサイズのラックマウント・サーバならば40台の設置が可能だ。特に3階層モデルのフロントエンド・サーバのように多数のIAサーバが必要となる場合は、ラックマウント型の方が効率良く設置できる。これにより貴重な面積を有効に利用できるし、また相互に関連する機器を集中配置することで、管理・運用がしやすくなる場合もある(ケーブルを短くして整理しやすいなど)。

 デメリットは、どうしてもラックが必要になる分、機材のコストはタワー型よりラックマウント型の方が高くなりがちな点だ。もう1つ、ケースが小さい分、内部の冷却のために高出力の空冷ファンが必要になるため、空冷ファンの騒音が大きいことも挙げられる。特に1Uラックマウント型の場合、4cm程度の小口径ファンを非常に高い回転速度で駆動するため、耳障りな音が発生する。サーバ・ルームに配置してオフィス・ルームとは隔離する、といった対策が必要になる場合もあるだろう。

■ブレード型
 1Uラックマウント型より、さらに高密度にIAサーバを集積させる目的で考案・開発されたのが、このブレード型だ。すでに多くのサーバ・ベンダがブレード型IAサーバを手がけており、このジャンルの認知度は日本でも高まってきている。

 しかし、そのコンセプトは一様ではない。2002年前半の時点で、ブレード型サーバは実装密度最優先タイプと性能/実装密度バランス・タイプの2つに大別できる。前者は、性能は低いが発熱や消費電力も低いノートPC向け部品を多く用いてサーバ・ブレードを実現し、例えば3Uラックマウント型エンクロージャに20枚程度のサーバ・ブレードを装着できるようにしたもの。1枚のサーバ・ブレードの性能は低くてもよいから、高密度に多数のサーバを実装したいというスケール・アウト指向の強いものだ。コンパックのProLiant BLシリーズ(製品情報)や富士通が開発中のブレード型サーバは、このタイプに該当する。

 一方、後者はデュアルプロセッサ構成やSCSIハードディスクなどサーバ向けの部品を使用しつつ、ブレード型にして密度を高めるというものだ。3Uのエンクロージャにブレードは6枚程度と、それほど高密度ではない(とはいえ1Uサーバの2倍のサーバ数を実現できる)。Dell ComputerのPowerEdge 1655MC(製品情報)や日本電気のExpress5800/BladeServer(製品情報)は、こちらのタイプに該当する。

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性能/実装密度バランス・タイプのブレード型サーバの例
これはDell ComputerのPowerEdge 1655MC。「ブレード」と表現するのが難しいほど、サーバ・ブレードは厚みがある。

 どちらがブレード型サーバの主流になるか、実際に出荷されている製品は少なく、まだ見極めは難しい。そもそも、IAサーバの実装密度を向上させる方法としては、ブレード型以外も提案されている。その1つは、サーバの各コンポーネントをモジュール化して自由に組み合わせ可能にし、必要な機能だけ実装することで高密度化を図るというものだ。例としては、Dell Computer提唱の「ブリック・サーバ」がある(詳細は「元麻布春男の視点:Dellが考える高密度サーバの世界」参照)。またIntelも下図のようなモジュール組立型サーバを提唱している。

Intelが提唱しているサーバ・ケース
IAサーバの部品をプロセッサ/メモリ、ストレージ、I/Oといった具合に分割してモジュール化し、それぞれを自由に組み合わせて1台のIAサーバにする、という発想である。実装密度の向上よりは、モジュールの仕様を標準化することでコストダウンを図り、IAサーバの価格競争力をさらに高めることが、Intelの主要な目的のようだ。

IAサーバのケースや電源ユニットが標準化される?
 
 メモリ、ハードディスクなどIAサーバの部品の多くは、何らかの規格により標準化されていて、複数のメーカーが生産する水平分業体制になっている。その一方で、ケースと電源ユニットだけは特に標準化されておらず、ベンダや製品ごとにその仕様はまちまちだ。もちろん、異なるIAサーバに使い回わすといったことはできない。マザーボードやホットスワップ対応ファンなどもケース形状に依存しているから同じことがいえる。こうした標準のない部品については量産効果が望めず、コストダウンも難しい。またユーザーとしても、デスクトップPCのように複数のマシン間で部品を使い回してメンテナンスすることができない、といったデメリットがある。

 この問題を解決するため、Intelや大手サーバ・ベンダは、SSI initiative(SSI:Server System Infrastructure)という団体を設立し、IAサーバのケースや電源ユニットの各種仕様の標準化を推進している(SSI initiativeのホームページ)。具体的には、IAサーバのケースに関する物理サイズ(マザーボードのフォームファクタも含まれる)や電源ユニットのサイズ、電気的特性などが、エントリ/ミッドレンジ/ハイエンド、あるいは1U/2Uといったセグメントごとに規定されている。デスクトップPCでいえば、ATXやmicroATXといったフォームファクタの規格と方向性は同じだ。

 SSIの標準規格はまだ策定中のものが多いが、それでもIntel Xeon対応マザーボードやIAサーバ用電源ユニットでは、すでにSSIに準拠した製品が市場で流通している。価格競争力が重要なエントリ・クラスやワークグループのIAサーバについては、SSI対応部品が普及することが十分考えられるが、ミッドレンジ以上については大手ベンダが差別化を重視して従来どおり独自開発していくこともあるだろう。しばらくするとSSIの普及により、IAサーバの選択ポイントとしてSSI対応の度合いが挙げられるようになるかもしれない。

 一般的な企業内システムにおいて、2002年度にIAサーバを導入するなら、ケース形状はタワー型かラックマウント型のどちらかから選ぶことになるだろう。ブレード型は現状では製品数が少なく、しかもハードウェア仕様の標準化がまったくなされていないため、データセンターなど特定用途以外では採用しにくいからだ。まだ19インチ・ラックを導入していない場合はタワー型を選ばざるを得ないが、その場合でもラックマウント型に転用できる製品を選ぶとよいだろう。

2002年度のIAサーバ選びは意外に困難!?

 水平分業型のビジネス・モデルを採用するIAサーバは、RISC/UNIXサーバなどに比べ、もともと製品の性能や機能、信頼性が向上するといった「進歩」のペースが早い。しかし、それでも2002年度のIAサーバの進歩は近年になく著しい。本稿で記したように、IAサーバの主要コンポーネントの多くは、2002年になって新技術が投入された新世代のものに移行しつつあり、性能や機能の向上が期待される。コストパフォーマンスもさらに向上するだろう。単純に考えると、IAサーバを導入するには最適な時期に思える。

 しかし、その選定には、より念入りな検討が必要とも考えられる。まず新旧それぞれの製品がラインアップに入り乱れるので、どちらを選ぶか明確にしておく必要がある。新製品の方が望ましい場合が多いだろうが、既存のシステムとの互換性を考慮すると旧製品の方が無難ということもある。

 新技術だからといってメリットばかりではない点にも留意したい。基本的にIAサーバの市場では、各メーカーが開発した新技術は自社製品に投入されたあと、市場での競争を経て1つに収束して業界標準となる。2002年度は、まさにその競争の段階にある技術が比較的多い。ある新技術を採用した製品を選定したとして、それがのちに主流から外れてしまった場合、後継の製品がなくなったりオプションのラインアップが少なくなったりといった弊害が生じる。こうしたデメリットを享受してしまわないよう、IAサーバに関する動向には引き続き注意しながら、その選定に望みたいものだ。記事の終わり

  関連記事 
第6回 意外に故障の多いパーツ『電源ユニット』の基礎
高密度サーバはどこに向かうのか? 2. 第2世代の1Uサーバ「PowerEdge 1650」
Dellが考える高密度サーバの世界

  関連リンク 
ProLiant BLシリーズの製品情報ページ
PowerEdge 1650MCの製品情報ページENGLISH
Express5800/BladeServerの製品情報ページ
IAサーバのケースや電源ユニットの標準化を推進する団体ENGLISH
 

 

 INDEX
  [特集]基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
    1.IAサーバとは何か?
    2.多様なIAサーバ向けプロセッサを把握する(1)
    3.多様なIAサーバ向けプロセッサを把握する(2)
    4.大容量化するメイン・メモリを支える技術(1)
    5.大容量化するメイン・メモリを支える技術(2)
    6.互換性重視で高速化された拡張バス/スロット(1)
    7.互換性重視で高速化された拡張バス/スロット(2)
    8.ギガビット化が始まったIAサーバのネットワーク・インターフェイス
    9.ディスク・インターフェイスの基礎「SCSI」「IDE」を知る
  10.意外に多彩なIAサーバの電源ユニットの機能とケースの形状
 
 「System Insiderの特集」


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