特集
ブレード・サーバの真実と未来

6. 現在のブレード・サーバが抱える課題とは?

デジタルアドバンテージ
2002/06/28


サーバ・ブレードとエンクロージャの仕様の標準化が最大の課題

 前のページで解説したとおり、現時点のブレード・サーバ製品が志向している用途は、必ずしもフロントエンドだけではなく、そのほかの用途も想定している製品がある。そのため、各ベンダがラインアップしているサーバ・ブレードも、それぞれ性能や耐障害性、消費電力などが意外に大きく異なっている。

 そこで思いつくのが、それぞれの用途に適したサーバ・ブレードを組み合わせて運用する、という解決策だ。しかし、これを阻む大きな問題がある。それは、サーバ・ブレードやエンクロージャに関する仕様がまったく標準化されておらず、ベンダが異なると互換性がないことだ。特にサーバ・ブレードとエンクロージャ間のインターフェイス仕様は、電気的仕様から物理寸法までまったくバラバラで*1、同じベンダの同じシリーズに含まれる製品同士でしか組み合わせて利用できない。

*1 産業界向けバス規格のCompactPCI(PICMG 2.16)をエンクロージャとサーバ・ブレード間の接続に採用したHewlett-Packardは、これを業界標準にしようとしているが、ほかのベンダは賛同していない。一方、Intelは通信事業者向けにサーバを含む各種ブレード(モジュール)の標準化を推進しており、対応製品の発表も行っている(インテルのモジュラー型通信サーバ製品群の発表に関するニュース・リリース)。

 たいていのエンクロージャには、リモート管理用ボードやイーサネット・スイッチのボード(あるいはパッチパネル)も組み込まれている。これらの仕様もベンダごとに異なっており互換性はない。仮に、イーサネット・スイッチはサードパーティのネットワーク専業ベンダ製を使いたいとユーザーが考えても、業界標準が存在しない現状では、量産効果が期待できず、サードパーティが開発するとは思えない。19インチ・ラックマウント対応製品なら、異なるベンダの製品でもラックに集中設置して運用できるのに比べると、現在のブレード・サーバのシステムは、自由度が低いといわざるを得ない。

標準化されていないことによるもう1つの弊害

 ブレード・サーバにおける業界標準の仕様の欠如は、ブレード・サーバ導入後にシステムを拡張する際にも問題となりかねない。導入したブレード・サーバとは異なる仕様が業界標準となった場合、拡張時に利用できるサーバ・ブレードなどのコンポーネントの選択肢が狭まってしまうことが予想されるからだ。

 IAサーバの世界では、これまで新しい技術が登場すると、

  1. 複数の独自仕様が勃興
  2. ベンダ間で競争が始まる
  3. シェアを確保して競争に勝ち残ったものが業界標準と認められる
  4. 本格的な普及が始まる

という過程を経て標準化されることが多かった(最近では、いきなり標準規格が先行する例も増えているが)。ブレード・サーバも同じ展開になると仮定すると、現在の製品に採用されているほとんどの独自仕様は、非主流となるので、対応製品の数も先細りになることが予想される。ブレード・サーバの導入後しばらくしてシステムを拡張する場合、利用できるコンポーネントの種類が非常に少ないか、あるいはまったくないという事態すら考えられる。業界標準品で代替するにしても、拡張をあきらめるにしても、投資効率がよくないことは変わりない。

導入コストが高くなりやすいブレード・サーバ

 もう1つ、ブレード・サーバで気になるデメリットは、同程度の性能や機能を持つペデスタル(タワー)型またはラックマウント型サーバと比べ、初期導入コストが高くなることだ。サーバ・ブレードの単価は10万円台前半〜40万円前後で、エンクロージャは20万円台から100万円以上することもある。これだと、サーバ・ブレード1枚+エンクロージャの価格は、エントリ・サーバはもちろんワークグループ・サーバより高価になる。

 この理由としては、サーバ・ブレードにノートPC向けの高価な部品(プロセッサやハードディスク、層数の多い多層基板)が使われていることが挙げられる。また、現時点ではデータセンターなど利用されている範囲が限られているため、出荷台数が少なく量産効果が望めないこと、さらには各種仕様が標準化されておらず設計などに汎用性がなく開発費がかかること、などが考えられる。

 もちろん、ブレード・サーバの方が設置面積は非常に小さいため、場所のコストは小さくなるはずだ。しかし、それは大量のサーバが導入されることを前提としたメリットであり、汎用的な用途を前提とした場合、サーバ自体のコストが問題になる。それでも、標準化が進んで量産効果につながれば、ブレード・サーバのコストも下がり、汎用的な用途であっても設置面積の効果が現れてくることが期待できる。

ブレード・サーバの性能の低さは改善される!?

 また、汎用的な用途でブレード・サーバを使う場合、性能の低さも問題になるかもしれない。高密度実装が至上命題のブレード・サーバでは、発熱量(消費電力)の大きい高性能なパーツを多用できないため、ペデスタル(タワー)型/ラックマウント型サーバよりもシステム性能が低くなりがちだ。プロセッサに注目すると、サーバ・ブレードには現時点でモバイルPentium III-M-700MHz相当からPentium III-S-1.40GHz程度が実装されているが、すでにペデスタル(タワー)型/ラックマウント型では、より高性能なIntel Xeon-2GHz以上が実装され始めている。またハードディスクでも、狭いブレード上に搭載するため、一般的な3.5インチではなく小型だが低速なノートPC向け2.5インチ・タイプを採用している例が多い。メイン・メモリについてはソケット数が少ないせいで、最大容量が512M〜1Gbytesに限られる製品が多く、性能向上の足かせになりかねない。

最新のサーバ向けプロセッサ「Intel Xeon」
デュアルプロセッサ構成に対応したNetBurstマイクロアーキテクチャのプロセッサ。これを搭載するサーバも急速に増えている。

 もちろん単なるWebページを送出するためのフロントエンドという位置付けで利用するならば、それほど単体の性能が求められないため、現状でも十分だろう。しかし、ストリーミングやWebサービスなど、新たなインターネットの利用方法も広がりつつある。そうした新しい時代のニーズにこたえるには、やはりスケール・アウトだけではなく、ある程度のスケール・アップ志向もサーバには必要になるだろう。

 プロセッサに関しては、Intelが2003年中の出荷を予定している開発コード名「Banias(バニアス)」が、少ない発熱量で高い性能を実現するとのことで、サーバ・ブレードには絶好の製品となる。ハードディスクでも、回転速度を現在の4200RPMから高めた2.5インチ・ハードディスクを出荷予定しているベンダもある。それに、ブレード上のハードディスクはOSのロード専用とし、データは外付けのNASやSANに保存するという具合に、運用でもハードディスクの性能の低さは回避できる(ただし、ギガビット・イーサネットが必須になるかもしれない)。メモリについては、さらに容量の大きなメモリ・チップ(DRAM)の登場が待たれる。

 ブレード・サーバは、本格的に市場に投入されてから1年しか経っていない若い製品である。そのため、これまで述べてきたように各サーバ・ベンダによって製品の方向性が大きく異なっていたり、ブレードとエンクロージャ間のインターフェイスなどに標準がなかったり、と導入しにくい面が多い。しかし、このフェイズを乗り越え、より使いやすいものになれば、ブレード・サーバはペデスタル(タワー)型、ラックマント型に続く第3のフォームファクタとして普及することになるだろう。逆に第3のフォーム・ファクタとなるには、早急な標準化とそれに伴う低価格化が必要になる。また、ブレード型のアプライアンス・サーバといったものが幅広く登場することで、市場が大きく変わる可能性もある(すでにその兆候は見られる)。今後ともブレード・サーバの動向を注視していく必要があるだろう。記事の終わり

  関連記事 
高密度サーバはどこに向かうのか?
基礎から学ぶIAサーバ 2002年度版
ブレード・サーバに見る信頼性と冗長性の関係
Dellが考える高密度サーバの世界
IAサーバ製品カタログ
 
  関連リンク 
ProLiant BL e-Classの製品情報ページ
TrustGuard/HiServerの製品情報ページ
hp blade serverシリーズの製品情報ページ
モジュラー型通信サーバ製品群の発表に関するニュース・リリース
 
 
 

 INDEX
  [特集]ブレード・サーバの真実と未来
    1.高密度最優先のブレード・サーバ「ProLiant BL」
    2.OSセットアップまでリモートから行うProLiant BL
    3.2種類のブレードをラインアップするTrustGuard/HiServer
    4.コンソールからフロッピーまで共有可能なTrustGuard/HiServer
    5.2タイプに分かれてきた最新ブレード・サーバ
  6.現在のブレード・サーバが抱える課題とは?
 
 「System Insiderの特集」


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