特集
Rambusは終えんを迎えてしまうのか?

2. 家電やネットワーク機器で生き残るRambus

元麻布春男
2002/07/20


 さて、もし仮にDirect RDRAMがPC用メイン・メモリとして普及する見込みがなくなってしまった場合、Rambusはどうなってしまうのか。まず間違いないと思われるのは、会社としてのRambusは、PC用メイン・メモリの動向にかかわらず、簡単に消え去ったりはしない、ということだ。

PC以外の市場では人気の高いRDRAM

 2002年7月2〜3日の2日間、東京・渋谷で「Rambus Developer Forum(RDF) Japan 2002」が開催されたが、会場は大勢の立ち見客も出る盛況ぶりだった。来場者の多くは、PC関連というよりは、日本が得意とする家電製品などのコンシューマ関連企業からの参加者のようであった。

 バス幅やチップ数などに関する制約が少ないPCに比べて、これからの成長が期待されるデジタル家電の世界では、本体サイズをなるべく小さくするよう強いられる場合が多く、基板面積を左右するバス幅やチップ数に関する制約が多い。それでいて高性能化が進んでいるため、メモリ・チップには高い性能(広い帯域幅)が求められる。RDRAMなら、8〜16bitの狭いバス幅と1個からのチップ数で、広い帯域幅を実現できるので、こうしたニーズに応えやすい。一方、SDRAM系メモリ・チップで広い帯域幅を得るには、複数個のチップを幅の広いバスに並列接続する必要がある。例えば、あの小さなデジタル・ビデオ・カメラの中に、データ幅128bitで4つないしは8つのDDR SDRAMチップを実装することなど不可能であることは明らかだ。またデジタル家電は、コストに対する要求もPCより厳しく、その点でもチップ数の制約は厳しい。

 ソニーの家庭用ゲーム機であるPlayStation 2がRDRAMを採用していることはよく知られた事実だが、RDFの会場ではTexas Instrumentsの映像光学系である「DLP(Digital Light Processing)」が、次世代機にRDRAMを採用する計画であることを明らかにした。DLPは現在、プロジェクタや映画館でのデジタル上映などに採用されているが、Texas Instrumentsは今後DLPのコストダウンを図り、リア・プロジェクション方式の大型テレビとしてCRT(ブラウン管)を置き換えたい、という意欲を示している*5。こうした分野で今後ますますRDRAMが使われるであろうことは、まず間違いないところだ。

*5 余談だが、次世代テレビの映像表示デバイスは液晶やPDP(Plasma Display Panel)だけではないということだ。

ネットワーク機器の分野にも食い込み始めたRDRAM

 家電分野に加え、RDRAMの採用が増えると期待されている市場の1つがネットワーク機器の分野だ。下表はRDRAMを採用したネットワーク関連製品の一部だが、今後もハイエンドからRDRAMの採用が増えるものと思われる。また、当初はノートPC用のメモリ・モジュールと思われていたSO-RIMM(RDRAM搭載の小型メモリ・モジュール)だが、現在はネットワーク機器にメモリを実装する手段として実用化が始まっている。Rambusが発表した将来の高速シリアル・インターフェイス技術「RaSer(ラザー)」も含め、通信分野でも着実な普及が期待できる。

ベンダ 製品
Cisco Systems CSS 11500(コンテント・サービス・スイッチ)
Intel IXP 2800(ネットワーク・プロセッサ)
Juniper Networks T640(インターネット・ルーティング・ノード)
SwitchCore CXE-16(16ポート・ギガビット・イーサネット・スイッチ)
VITESSE Semiconductor IQ2200(ネットワーク・プロセッサ)
VITESSE Semiconductor PaceMaker 2.5(OC-48トラフィック・マネージャ・エンジン)
表区切り
RDRAMを採用もしくはRDRAMに対応しているネットワーク関連製品
 

市場に信を問うRambus
 
2002年7月に開催されたRambus Developer Forum Japanに際して、複数のRambus社幹部が来日した。ここでは、同社ワールドワイドマーケティング担当上級副社長であるスティーブ・トバック氏に、PC用メイン・メモリとしてのRambusの現状と将来展望について話をうかがった(以下、敬称略)。

Rambusのワールドワイドマーケティング担当上級副社長のスティーブ・トバック氏

元麻布: Intel 850Eチップセットが、すでに流通しているPC800-45メモリをサポートできなかったことについてどうお考えですか。
トバック:
 PC800-45メモリがFSB 533MHzでサポートされなかったのは不幸なことですが、それほど悲観していません。というのは、PC800-40メモリのイールド(歩留まり)はすでに高い水準に達しており、供給に問題がないからです。むしろ、Intel 850Eチップセットについては、PC1066メモリがサポートされたことを嬉しく思っています。PC1066メモリは海外のメディアなどで、その優れた性能が高く評価されており、Rambusが考えていた以上の成功を収めています。

元麻布: とはいえ、PC1066メモリにはIntelのバリデーション(検証)がありません。
トバック:
 確かにIntelはバリデーションしていませんが、ASUSTeKをはじめとするマザーボード・ベンダのバリデーションがあります。これでは不足ですか? 現在、Rambusとしても、(Intelのバリデーションがないことから採用のない)大手PCベンダに対しても、PC1066メモリの採用を呼び掛けているところです。

元麻布: 現時点で明らかになっている限り、IntelにはIntel 850Eの後継となるDirect RDRAM対応チップセットの予定がありません。現在のIntel 850EがIntel最後のDirect RDRAM対応チップセットではないか、といわれていることをどうお考えでしょう。
トバック:
 私は必ずしもそうは思っていません。Intelがどのようなメモリをサポートするか、その決め手になるのは市場ではないでしょうか。Intelは市場が望んだからこそ、DDR SDRAMへの対応を決めたわけです。市場がDirect RDRAMを望めば、Intelも、それ以外のチップセット・ベンダも、今度はDirect RDRAMをサポートしたチップセットをリリースするハズです。Rambusとしては、PC1066メモリに引き続き、高性能メモリ技術を提供し続けることで、性能による差別化を図り、チップセット・ベンダに再考を促したいと思っています。Direct RDRAMを採用したシステムがベンチマーク・テストで優秀な結果を出し続けていれば、(現在はRDRAMをサポートしていないチップセット・ベンダである)VIA Technologiesだって考えを変えるでしょう。

元麻布: PC1066メモリでは、これまでと同じデータ幅16bitのRIMMと32bitのRIMMの両方が登場しそうです。どちらが主流になるのでしょうか?
トバック:
 それを決めるのは顧客であり、最終的には市場が決めることです。Rambusとしては、どちらでも構いません。個人的には、32bit RIMMのエレガントなデザインが気に入っているのですが、メモリの最大実装量が512Mbytes 16bit RIMM×4本の2Gbytesから1Gbytes(256Mbytes 32bit RIMM×2本)へ半減することを気にする人もいるかもしれません。

元麻布: 以前、RDRAMのロードマップには、PCなどコンピュータ用途の多チップ接続を前提に、コストダウンを図る4i構成のRDRAMがありましたが、どうなったのでしょうか。
トバック:
 以前は、RDRAMのコストを下げるという観点から4i構成のDirect RDRAMをロードマップに載せていましたが、既存の(32d構成の)RDRAMのコストが十分下がったと判断したため、Rambusのロードマップから消えることになりました。

元麻布: Samsung Electronicsのロードマップには、いまも4i構成のDirect RDRAMが残っていますが。
トバック:
 彼らは特別な顧客を持っているのかもしれませんね。

元麻布: 次世代技術のYellowstoneは非常に高いデータ転送レートを実現していますが、これに競合するような技術はあるのでしょうか。
トバック:
 技術というのは常に進歩するものであり、絶対に不可能ということなどありません。しかし、現時点でYellowstoneに匹敵するような技術が他社から登場する可能性があるかといわれると、まだ気配も感じない、というのが正直なところです。Yellowstoneではその特性から、メイン・メモリだけでなく、グラフィックス・メモリとしても可能性があるのではないかと思っています。

 次のページでは、新しいDirect RDRAMのベンチマーク・テストを行い、その結果から、PC用メイン・メモリとしてのRDRAMの将来性について考察してみる。


 INDEX
  [特集]Rambusは終えんを迎えてしまうのか?
    1.RDRAMの高速化に将来を託す
  2.家電やネットワーク機器で生き残るRambus
    3.RDRAMの将来性を検証する
    4.ベンチマーク・テストの詳細結果
 
 「System Insiderの特集」


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