特集
1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能(後編)

2. 1000BASE-Tの実力を計測する

デジタルアドバンテージ
2003/04/03


 前編では、10BASE-Tから100BASE-TXへの移行時を振り返り、100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行シナリオを考えた。その上で、1000BASE-Tの移行にかかるコストを概算してみた。

 ところが、前編で2003年末と想定していた100BASE-TXから1000BASE-Tへの本格的な移行時期が、ここ1カ月ほどで、もっと早まりそうな状況になってきた。まず、IntelがIDF Spring 2003で1000BASE-T対応のスケジュールなどを更新した。それによれば、2003年第2四半期中に発表予定のPentium 4向けチップセット「Canterwood(開発コード名:キャンターウッド)」や 「Springdale(開発コード名:スプリングディール)」で、ギガビット・イーサネット専用のリンク「CSA(Communications Streaming Architecture)」を設けることを明らかにした(「解説:IDF Spring 2003レポート(2)見え始めた変貌する2004年のクライアントPCの姿」)。3月18日には、CSAに対応した1000BASE-Tコントローラ「82547EI」も発表している。このチップは、Canterwood/Springdaleと合わせてPCベンダに供給されることから、予想よりも早くクライアントPCの1000BASE-T対応が進むと考えられる。また、ノートPCにおいても日本IBMが「ThinkPad T40シリーズ」に1000BASE-T対応モデルを用意するなど、1000BASE-T対応に積極的な姿勢を見せている。こうした状況を踏まえつつ、今回は、1000BASE-Tの性能ならびに移行のメリットについて考察していくことにする。

サーバ環境における1000BASE-Tの性能を計測する

 前編でも、クライアントPC間における100BASE-TXと1000BASE-Tとの性能差について触れたが、ここでは主にサーバに1000BASE-Tを導入した場合の性能について見ていくことにする。

 まず、2台のサーバ間を1000BASE-Tで接続した場合の効果を計測してみよう。計測に用いたシステム(NEC Express5800/12Ee×2台)の仕様は下表のとおりである。性能計測は、64bit/66MHz PCIスロットに64bit PCI対応の1000BASE-Tカード「Intel PRO/1000 MT Server Adapter」、32bit/33MHz PCIスロットに32bit対応の「Intel PRO/1000 MT Desktop Adapter」、サーバにオンボード実装されていた100BASE-TXの3種類で行った。計測は、前編でのテストと同様、Windows 2000 Professional Service Pack 3のシステム・ディレクトリ(%SystemRoot%)の下をTMPフォルダにコピーしたもの(フォルダ数は157、ファイル数は6578ファイル、総容量は約680Mbytes)を、Explorerを用いてコピーしている。

項目 仕様
型番 NEC Express5800/120Ee
プロセッサ Pentium III-1.13GHz-S
チップセット ServerWorks製ServerSet III LE-T
メモリ 512Mbytes(PC133)
ハードディスク(送信側) IBM製Deskstar 120GXP(7200RPM、容量120Gbytes)×2/ハードウェアIDE RAIDによるRAID 0(ストライピング)
ハードディスク(受信側) IBM製Deskstar 120GXP(7200RPM、容量120Gbytes)×1
OS Windows 2000 Server SP3
イーサネット 100BASE-TX:オンボード(Intel 82559)
32bit PCI 1000BASE-T:Intel PRO/1000 MT Desktop Adapter
64bit PCI 1000BASE-T:Intel PRO/1000 MT Server Adapter
デバイス・ドライバ・バージョン 1000BASE-T:製品付属(Software Release 6.2)を使用
表区切り
計測に用いたサーバの主な仕様
 
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テストの用いたIntel製1000BASE-Tカード
左が32bit/33MHz PCI対応の「Intel Pro/1000 MT Desktop Adapter」、右が64bit/66MHz PCI対応の「Intel Pro/1000 MT Server Adapter」。Intel Pro/1000 MT Desktop Adapterの実売価格が6000円程度なのに対して、Intel Pro/1000 MT Server Adapterは1万6000円程度と2倍以上の価格となっている。

 結果は、以下のグラフのとおりだ。1000BASE-Tの64bitと32bitの性能差はそれほど大きくないが、100BASE-TXと1000BASE-Tの差は明らかである。次に、前編でのテスト結果(クライアントPC間の転送速度)と照らし合わせてみよう。100BASE-TXでは、クライアントPC間とサーバ間で同じ性能を示しているが、1000BASE-TではクライアントPC間の41Mbits/sに対し、サーバ間では52Mbits/s(32bit PCI)と高いデータ転送性能を示している。これは、サーバのハードディスクやI/Oの性能がクライアントPCに比べて高いことが要因として考えられる。特に送信側のサーバは、ハードウェアIDE RAIDを用いてストライピング(RAID 0)構成とすることで、ハードディスク性能を高めている。逆にこの結果から、クライアントPCとサーバで差がない100BASE-TXは、32Mbits/sという転送性能が、OSやデバイス・ドライバの性能などを含む今回のテスト環境における限界値と考えられる。一方で1000BASE-Tは、サーバのデータ転送速度がクライアントPCに比べて高いことや、32bit PCIに対し64bit PCIが若干ながら高い。このことから、さらにハードディスクやI/Oの性能を高めることでデータ転送性能は向上するものと予想される。

サーバ間における1000BASE-Tの性能

 次に、複数のクライアントPCからサーバにアクセスした場合のデータ転送性能を計測してみた。サーバに対して、3台のクライアントPCを1000BASE-T対応のスイッチング・ハブを介して接続し、ファイルのコピーを実施した。サーバ間のデータ転送性能を計測したのと同じファイル構成のフォルダを3つ用意し、これをそれぞれのクライアントPCのExplorerでドラック&ドロップで同時にコピーする方法で計測した。グラフは、サーバとスイッチング・ハブ間のデータ転送性能を示している(つまり、3台のクライアントPCから転送される全データの転送速度を意味する)。

サーバとクライアントPC(3台)間の1000BASE-Tの性能

 この結果を見ると、100BASE-TXと1000BASE-Tの差は、サーバ−サーバ間の場合よりも小さくなっている。データ転送速度も100BASE-TXで75Mbits/sと非常に高い値となっている(100BASE-TXの実効データ転送速度の限界値に、より近づいている)。サーバ−サーバ間で計測した値の2倍以上の性能を発揮しているが、これは複数のクライアントPCへデータを転送しているため、サーバ側での処理がオーバーラップし、全体として待ち時間が減少したためと考えられる。つまり、あるクライアントPCのためのディスク読み出し待ちの間にも、ほかのクライアントへ転送するためのプロトコル変換などの準備を行うことで、サーバ側の待ち時間が減少したということだ。一方で1000BASE-Tは、32bit PCIと64bit PCIでの差はなく、データ転送速度も83Mbits/sとそれほど高くない。これは、1000BASE-Tではサーバ性能(ハードディスクやSMBプロトコルの性能)がボトルネックになっている可能性が高い。

 以上のことから、サーバにおける1000BASE-Tは、理論値から期待するほどの効果はないものの、明らかに100BASE-TXよりも高いデータ転送性能を実現することが分かった。また、1000BASE-Tにおける32bit PCIと64bit PCIの差は、テストに用いたエントリ・サーバではほとんど違いがなかった。ただ、この結果から64bit PCIの効果はないと判断するのは早計だろう。今回のテストでは、1000BASE-Tのデータ転送性能を計測することを目的に、3台のクライアントPCを用いたシンプルなシステム構成を採用した。そのためI/Oにかかる負荷は、それほど高くなく、32bit PCIでも何とかボトルネックにならずに済んだものと思われる。また、サーバ自体の性能がそれほど高くなかったために、PCIバス以前にハードディスクを始めとするディスク・サブシステムがデータ転送のボトルネックになっていたことも考えられる。今回のテストに使用したサーバより、システム性能が高いサーバに対して32bit PCIの1000BASE-Tを実装すると、PCIバスがボトルネックになる可能性もあるかもしれない。

 次ページでは、1000BASE-Tへの移行のメリットについて考えていこう。


 INDEX
  [特集]1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能
    1.100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行を考える
  2.1000BASE-Tの実力を計測する
    3.1000BASE-Tへの移行のメリット
 
 「System Insiderの特集」


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