第12回 読者調査結果

サーバ機器の使用実態と、2004年の導入見込みは?

アットマーク・アイティ マーケティングサービス
小柴 豊
2004/06/16

 2004年前半のサーバ動向を振り返り、重要なトピックを選ぶとすれば、多くの人が2004年2月のIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF) 2004 Spring」で発表された“64-bit Extension Technology”を挙げるだろう(その後、64-bit Extension Technologyは、「Extended Memory 64 Technology(EM64T)」と名称変更されている)。Intelの戦略転換は、企業のサーバ機器導入にどのようなインパクトを与えるのだろうか? @IT System Insiderフォーラムが実施した第12回読者調査の結果から、その状況をレポートしよう。

情報システムの共通課題とは?

 サーバ機器導入の背景として、読者がかかわる情報システムで、現在どのような課題が重視されているのか聞いた結果がグラフ1だ。相次ぐ情報漏えい問題を反映してか「情報セキュリティ管理の強化」にもっとも多くのポイントが集まったほか、「システム・トラブル発生時の障害の切り分けと迅速な復旧」、「重要な業務データのバックアップ/リカバリ体制の確立」といった項目が、上位に挙げられた。現在システム業務に携わるエンジニアの共通課題は、「リスク管理」にあるといえそうだ。

グラフ1 情報システムの課題(複数回答 N=370)

システム課題の解決方法は?

 では、このような課題を解決するために、読者のかかわるシステムで採用を予定/検討している方法をたずねたところ、「安価なサーバによるクラスタリング構成」および「ストレージのRAID構成」の2点が、ほぼ同率でトップとなった(グラフ2)。Dellを起点としたIAサーバの低価格化は、いまや業界全体に波及している。またストレージの世界でも、安価なIDEハードディスクを用いたRAID製品が増えている。ミドルレンジのストレージ製品(SANNAS)においても、シリアルATAハードディスクを採用する例が増えてきており、今後、このクラスにも低価格化の流れが波及するのは間違いないだろう。上述した「リスク管理」の課題に対し、「機器の低価格化」という環境要因を活かしたソリューションとして、「サーバ/ストレージの冗長化」が普及していきそうだ。

グラフ2 予定/検討しているシステム課題の解決方法(複数回答 N=370)

システム機器の使用状況は?

 こうした状況の中、読者のかかわるシステムにおけるサーバ/ストレージ機器の使用状況と、2004年度の導入見込みを聞いた。まず現在の使用率を見ると、サーバ機器では「32bit IAサーバ」がRISC/UNIXサーバや汎用機を大きく上回ったほか、ストレージ機器では「IDE RAIDサブシステム」の使用率が23%に上っている(グラフ3 橙色の棒)。

 一方、2004年度のサーバ導入見込み率に目を転じると、現在主流の32bit IAサーバに、「Intel Itaniumサーバ」や「AMD Opteronサーバ」「Intel Xeon(EM64T対応)サーバ」といった「64bit IAサーバ」勢が、ほぼ同率で並ぶ結果となった(グラフ3 黄棒)。

グラフ3 システム機器の使用状況/導入見込み(複数回答 N=370)

64bit IAサーバの導入用途は?

 AMD Opteronや2004年出荷予定の次期Intel Xeon(EM64T対応)は、32bitアプリケーションとの高い互換性を特徴としており、新たな64bitサーバ用途の拡大も期待される。そこで64bit IAサーバの使用者/導入見込み者に、その導入(想定)用途をたずねたところ、該当者の70%前後が「データベース・サーバ」と「アプリケーション・サーバ」を挙げた(グラフ4)。64bitサーバ市場は、いままで科学技術計算やシミュレーションなどの限定された分野で語られることが多かったが、AMD Opteron/Intel Xeon(EM64T対応)の登場により、業務システムの中間層/バックエンド層への適用機会も増えていきそうだ。

グラフ4 64bit IAサーバの導入用途(64bit IAサーバ利用者/予定者 複数回答 N=98)

64bit時代のIAサーバOSの主役は?

 読者のかかわるシステムで、導入/検討している64bit IAサーバ用OSを聞いた結果が、グラフ5だ。現在さまざまなOSがItaniumやAMD Opteron/Intel Xeon(EM64T対応)対応を進めているが、現時点では「Windows Server 2003」と「Red Hat Enterprise Linux」の2製品に、大きな期待がかかっていることが分かる。このうちAMD Opteron/Intel Xeonに対応する「Windows Server 2003 For 64-bit Extended Systems」は現在ベータ・テスト中であり、その出荷開始はいまのところ2004年後半といわれている。64bit IAサーバ市場が本格化するタイミングは、同OSの出荷時期にも左右されそうだ。

グラフ5 64bit IAサーバの導入/検討OS(64bit IAサーバ利用者/予定者 複数回答 N=98)

64bit IAサーバ選択時の重視点とは?

 最後に、今後読者が64bit IAサーバ機を選択する際の重視ポイントをたずねたところ、「ほかのサーバ機と比べたコストパフォーマンス」がトップに挙げられ、「プロセッサの実行性能/ベンチマーク」「主要なOS/業務アプリケーションの64bit対応」「既存の32bitアプリケーション資産との互換性」がそれに続く結果となった(グラフ6)。低価格化が進む32bit IAサーバと実績あるRISC/UNIXサーバの狭間で、64bit IAサーバが市場を確立するためには、まず性能+コストによるポジショニングの明確化が必要となるだろう。記事の終わり

グラフ6 64bit IAサーバ選択時の重視点(64bit IAサーバ利用者/予定者 複数回答 N=98)
 
  調査概要
調査方法
System InsiderフォーラムからリンクしたWebアンケート
調査期間
2004年3月9日〜4月2日
回答件数
370件
  
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「System Insider 資料」


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