帳票ベンダ・インタビュー
第8回:株式会社日立製作所

吉田育代
2005/12/10



オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第8回は、日立製作所(以下、日立)を訪ねた。同社は、幅広い業種で48万ライセンスの販売実績を誇る帳票システム構築ツール「EUR」を提供。そのソリューションには揺るぎない自信があるようだ。

   帳票システム開発には時間が用意されていない

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 ビジネス目的で開発されるアプリケーションは、結果を可視化するために最終的に帳票出力を求めることが多い。しかし、そのための開発期間があらかじめ設定されていることはあまりない。大規模な業務アプリケーションともなれば、数百から千種類単位の帳票が必要になることもあるが、これまではその1つ1つをプログラミングによって作成しなければならず、最後の最後に技術者が大変な開発負荷を背負わされることもままあった。

 この問題を根本から解決すべく開発されたのが、日立製作所の帳票システム構築ツール「EUR(イーユーアール) Professional Edition Version 5 以下、EUR」である(図1)、日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第1アプリケーションソフト設計部 主任技師 高橋信雄氏はこう語る。

図1 日立の帳票ソリューション

「業務アプリケーション開発のラストスパート段階に必ず登場して、しかも開発負荷の高い帳票設計と帳票出力フェイズについて、ノンプログラミングで実行できるソフトウェアを提供し、技術者を支援したいと考えたのがそもそものきっかけです」(高橋氏)。

 では、それぞれの機能を順に見ていこう。

   ノンプログラミングを徹底させた帳票設計機能

 まずは帳票設計だ。帳票を新規に作成する場合、既存の帳票を利用する場合のそれぞれに特長がある。

 前者についていえば、プログラミングが不要であるという点が最も大きい。帳票デザイン画面で帳票レイアウトを作成した後、実際のデータの入力は、CSVデータとしてあらかじめツール上に読み込んでおいたものを、ドラッグ&ドロップ操作で帳票レイアウトの上に配置していく。入力データがリレーショナルデータベースに格納されている場合も、リレーショナルデータベースとの接続からデータの選択/抽出までGUI操作のみで行える。抽出後はCSVデータと同様に帳票レイアウト上に配置でき、設計者が帳票設計上でSQL言語を扱う必要もない。

 また、作成した帳票レイアウトの中で後々再利用したいものはアイテムとして部品化し、登録しておくことができる。

 明細帳票など、何度も同じ形式のデータを列挙させる帳票は、EURの繰り返し自動化機能が便利だ。1レコード目を定義すれば、2レコード目以降は、けい線と実データとともに自動配置することができる(画面1)。可変帳票の作成に強いというわけだ。

画面1 データを縦横に繰り返し、帳票作成時間を短縮

 次に、既存の帳票を利用する場合だが、ここでの大きな特長は、WordやExcelで作成された文書を変換する機能だ。帳票という形で確立されていなくても、これらのOfficeツールを使って定型文書が作成され、配布されたり、回覧されたりといったことは企業ではよくあることだ。これまでは、あらためて帳票として作成するとなると、スクラッチから設計する必要があったが、EURであればWord/Excel文書を内部で同ツールで扱える帳票定義ファイルに変換するため、開発生産性が高くなる。

 すでに紙の帳票が存在するときは、スキャナなどで読み込んでそれを下敷きとして設計に活用する。あくまで下敷きとするのは、高性能スキャナを使ったとしても、読み込まれた画像データというのはけい線がゆがんだり、漢字がつぶれたりと帳票としての正確性に欠けるからだそうだ。

 EURはまた、電子入力フォームの設計機能にも力を入れており、これをオプション製品であるEUR Form Optionで実現する。

 これは当然といえば当然かもしれないが、作成したい入力フォームがすでに帳票定義ファイルとしてEUR上に存在するなら、それを背景として利用できる。既存のWord/Excel文書を変換して利用できたり、リレーショナルデータベース上のデータを展開できたりする機能もEURと同様だ。作成した電子フォームをサーバに送る際には、XMLデータとして送信する。

 JavaScriptなどの言語を利用して、固有のデータチェック処理や四則演算処理能を組み込んだり、埋め込みスクリプトによりサブウィンドウを表示させたり、外部プログラムを参照できるように作り込むこともできる。

 加えて、セキュリティ対応機能として、フォームにデータを入力し終えたユーザーが、電子署名を付与できるようにすることもできる。これはWindows OSのXML署名機能を利用したもので、ICカードなどほかの認証プログラムとの連動も可能だ(画面2)。

画面2 EUR Form Client実行時の画面(電子署名)

 “ページめくり”という機能もある。例えば、企業や組織によっては、作成された電子フォームを大量に精査するという作業が生じるケースがある。通常はサーバ上に格納されたXMLデータを電子フォームに展開して1枚1枚取り出して見ていくことになるが、あまり効率的ではない。そこでEUR Form Optionは、こうした課題に対してクライアントプログラムから帳票操作が可能なAPIを提供することで解決を図っている。日立のWebアプリケーションサーバであるCosminexus Application Serverの利用が前提とはなるが、JavaScript、Visual Basic、Visual C++などで開発したクライアントアプリケーション上から、電子フォームをファイルとしてダウンロードできる。その後は、ユーザーの操作スピードで次々とページめくりを行って入力データをチェックできるため、操作性は飛躍的に向上する。

   主流であるWeb環境での帳票出力に2つの解決策を用意

 次は帳票出力である。日立はこのフェイズについて、いまや企業ではWeb環境における帳票運用が主流になっているとして、大きく2つのソリューションを用意している。

日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第1アプリケーションソフト設計部 主任技師 高橋信雄氏

 1つ目はEUR Print Service-Portable Document Format reportと呼ばれるPDF形式ファイルを利用したものだ。こちらはクライアント側の構築になるべくコストを掛けたくないというニーズに対して提供されるソリューションで、エンドユーザーはAdobe Readerを利用して帳票の閲覧/印刷を行うため、特別なソフトウェアを必要としない。Cipher Optionというオプション製品を利用すれば、PDF形式ファイルを暗号化することもできる。

 その一方で、PDF形式ファイルはファイルサイズが大きく、時にPCモニタ上で見えているとおりに印刷できないという難点もある。帳票レイアウトにこだわりがあり、できるだけ精密に印刷したいというニーズに応えるのが、EUR Print Service-EUR Reportと呼ばれるEUR方式による帳票ソリューションだ。帳票をEURの独自フォーマットであるEUR形式ファイルで出力するというもので、これはPDF形式よりもファイルサイズが小さくなるという利点がある。また、帳票定義そのままの出力が可能で、印刷位置の補正やファイルをプレビューせずに直接印刷することなどもできる。ただし、これらの機能を実現するために、専用ビューアである「EUR Viewer」および「EUR Viewer-EUR report」をクライアントPCに配布する必要がある。

「どちらを選択するかは企業の帳票運用スタイル次第で、われわれからどちらが推奨と申し上げることはありません」(高橋氏)。

 もちろん、同社はクライアント/サーバシステム向けの帳票出力ソリューションも提供しており、帳票設計そのものはWindows環境に統一しているが、実行環境に関しては、Windows、UNIX、メインフレームまで、出力帳票の規模に合わせた柔軟な構築が行えるという。

   拡張性は他のソフトウェアとの連携で実現

 冒頭でも触れたように、EUR自身は帳票システム構築を支援するために、帳票設計と帳票出力フェイズに特化している。しかし、企業向けソフトウェアを幅広くラインアップしている日立の強みを生かして、さまざまな連携ソリューションを提供している。

 例えば、総合システム運用管理ツール「JP1」と連携したサーバ大量帳票出力対応。印刷ジョブのバッチ処理を、毎日、毎週、毎月などのサイクルで実行可能になるとともに、帳票出力時のエラーリカバリなども実現する。また、電子帳票管理ツール「HOPSS3/AS REV(ホップススリー エーエスアールイーブイ)」と連携させれば、文書管理システムとして機能させることができる。EURで出力したPDF形式ファイルをHOPSSの電子帳票サーバに登録することで、帳票の階層管理、世代管理、帳票検索、詳細なセキュリティ設定などが行える。

 一方、EUR Form Optionを中核とした電子フォームワークフローセットを採用すれば、ワークフローを組み込んだ電子帳票システムを容易に構築できるようだ。
 

   電子印鑑を利用したワークフロー対応が話題
日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第1アプリケーションソフト設計部 主任技師 谷口尚子氏

 EUR Form Optionには、近々もう1つ機能が加わるようだ。それは電子印鑑との連携だ。「Security Solution 2005」に参考出品して話題を呼んだこの機能は、電子フォームワークフローセットに関心を寄せる顧客の声を反映したものだそうだ。日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第1アプリケーションソフト設計部 主任技師 谷口尚子氏は、この機能を企画した背景を次のように語る。

「電子フォームワークフローセットでも、決裁状況を表示する部分はかなり工夫していたのですが、『もう少し臨場感を盛り込めないか』というリクエストがあったことも事実でした。それなら日本ならではの商習慣をそのまま生かしてしまおうと電子印鑑との連携を考えました」

 シヤチハタ株式会社の電子印鑑をベースに構築された株式会社ワコムの電子印鑑システム「パソコン決裁 inpplet」と連携させており、紙帳票で行っていた決裁業務をそっくり電子化できる。2006年1月ぐらいには商品化を予定しているという。

 自らは帳票設計と帳票出力に専念、あくまでシンプルさを保ちながらも、多彩なソフトウェアとの連携でシステムとしての広がりも確保。EURなら“Think big, Start small”の帳票システムが構築できそうだ。


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