帳票ベンダ・インタビュー 第10回

「帳票部品」という発想。
製品ではなく、自社組み立てがお得です

吉田育代
2006/9/15


 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。

 今回は、名古屋を拠点に活躍するエイチ・オー・エスだ。同社は、企業の帳票ニーズのライフサイクルをカバーする帳票ソリューション「シーオーリポーツ Suite」を展開している。しかし、Suiteとはいうものの、販売しているのはコンポーネント製品だという。ユニークなビジネスの実態を取材した。

   機能が確立したコンポーネントを“調達”する企業が増えている

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 日本版SOX法の出現が、企業のシステム構築の在り方に大きな変化をもたらしているようだ。これまでは、コスト抑制の観点から可能なものはできる限りアウトソーシングするという企業も多かった気がするのだが、内部統制の強化という課題が降ってきたことによって、“自社のシステムがどういう仕組みで動いているのか分かりません”とはいえない状況になってきた。いきおい自社で内製という場面は増えている。しかし、どんなに優秀な情報システム部門であっても、必要なシステムをすべてゼロベースから手作りするのは無理である。

 そこで登場した考え方が、製造業でいうところの汎用部品の調達だ。開発効率を上げるために、汎用性があって、機能がすでに確立している部分については、ソフトウェアを“調達”して使おうというのである。

 それで注目を集めているのが、帳票ソリューション 「シーオーリポーツ Suite」を提供する名古屋のパッケージプロバイダのエイチ・オー・エスである。

エイチ・オー・エス 代表取締役 服部達郎氏

 普通、Suiteと名が付いた製品には、“こちらは全部ご購入いただくことになっております”という暗黙のメッセージが込められているように思う。しかし、シーオーリポーツの場合は違う。エイチ・オー・エス 代表取締役 服部達郎氏は次のように語る。

「帳票ライフサイクル全体をカバーする製品をそろえているため、Suiteという名称を付けましたが、中身は帳票機能を提供するコンポーネント群です。当社では『帳票部品』という言葉を使っていて、顧客が必要とするコンポーネントを選び、それをアプリケーションの中に組み込んで使っていただくことを想定して開発しています。決してすべて購入していただく必要はありません(笑)」

 その顧客というのも、エンドユーザー企業というよりは、システムインテグレータやERPシステムや会計システムなどを開発販売しているパッケージアプリケーションベンダを対象にしているため、いわゆる帳票ベンダといわれる他社とはあまりビジネスでバッティングすることはないそうだ。

   帳票ソリューション「シーオーリポーツ Suite」の製品体系

 そのシーオーリポーツ Suiteは、帳票の設計と生成、それを電子帳票として出力した後の帳票管理機能を提供する一連の帳票ソリューションである。

 具体的に次のような製品体系になっている。大きく、帳票フォームを設計するための「シーオーリポーツ」、出力形態を設定するための「シーオーリポーツ 帳票クリエータ」、Webインターフェイスを通じて、ユーザーが電子帳票の閲覧、印刷を行うためのサーバ機能で「シーオーリポーツ 帳票管理サーバ」の3つの製品から成っている。

図1 シーオーリポーツ Suite 製品体系と全体イメージ

 これらの中にそれぞれコンポーネント製品が含まれていて、シーオーリポーツの中には、再利用に備え、あらかじめ複数の階層に分けて設計が行える「フォームエディタ」、印刷処理を行い、プログラムや帳票クリエータから呼び出して使用する「描画クラス」、PDF形式以外の電子帳票の閲覧、検索を行う「ビュアー」といったコンポーネントがある。

製品名と代表的なコンポーネント
備考
シーオーリポーツ
フォームエディタ 既存帳票をイメージで取り込むなど、柔軟に効率よく帳票設計ができる
描画クラス 印刷処理を行うモジュール。プログラムや帳票クリエータから呼び出して使用する
ビュアー、ビューコントロール 電子帳票(PDF形式を除く)の閲覧、検索を行う。ビューコントロールは、ActiveXとしてクライアントで動作
シーオーリポーツ 帳票クリエータ
データバインディングツール 帳票の項目とデータソースとのマッピング定義を行う
帳票クリエータ 帳票処理を行うサーバ機能。RDB(ODBC経由)、XML、CSV、固定長のデータに対応。四則演算やページ関数、日付関数、合計関数を用いて計算処理を定義可能
シーオーリポーツ 帳票管理サーバ
  Webインタフェースを通じて、ユーザが電子帳票の閲覧、印刷を行うためのサーバ機能。ユーザ認証と権限設定によるセキュリティ機能など、電子帳票の管理に必要な基本的機能のほか、他のアプリケーションとの連携など柔軟なカスタマイズが可能
表1 シーオーリポーツ Suite 製品概要

 またシーオーリポーツ 帳票クリエータの中には、帳票の項目とデータソースのマッピング定義を行う「データバインディングツール」、帳票処理を行うサーバ機能であり、RDB、XML、CSV、固定長のデータに対応して、四則演算やページ関数、日付関数、合計関数を用いて計算処理も定義可能な「帳票クリエータ」がある。

   かゆいところに手が届く機能が光る各コンポーネント

 各コンポーネントの中で特徴的な機能を持ったものをいくつか紹介しよう。

 フォームエディタは前述のとおり、例えばけい線と出力項目を異なる階層に置ける複数階層設計が可能だ。また、既存帳票をイメージスキャナで取り込み、そのイメージをそのまま定番書式としたり、イメージを下書きとして別にフォームを設計することもできる。

 社内帳票なら前者で十分だが、なかなかそれを許す製品は見当たらない。さらに、ラインプリンタエミュレートモードでは、CPI/LPIで設定したグリッドに合わせて文字を印字することができる。既存のプリント用紙であっても、印字位置の調整が簡単・正確にできる。これはシーオーリポーツの大きな利点となっており、EAN-128対応コンビニエンスストア用代金収納用紙印刷などをはじめ、常に高い引き合いがあるという。

 データバインディングツールは、帳票上の出力項目とデータソースの関連付けをノンプログラミングで行える。帳票クリエータとともに利用すれば、既存のデータソースを元に高度なデータ処理を伴った帳票を出力することができる。

 こうした特徴から、さまざまある帳票の中でも、シーオーリポーツは一定書式の帳票を大量に出力するようなケースに強みを誇る。大量出力を効率より速く処理するため、出力もPDF形式ばかりではなく、HOS独自形式やXML形式も備えている。同社の計測では、1000ページの文書出力でPDF形式が約5分を要したのに対して、HOS独自形式では1分かからなかったらしい。

 またこの製品は、Webシステムとしてブラウザで入力したデータを基に、サーバで帳票を生成し、クライアントのプリンタで印刷することもできる。ビューコントロールはActiveXコントロールとして実装されているため配布の手間が要らず、プレビューせずに直接印刷を行うといったことも可能だ。同社がユーザー向けに公開している見積書作成機能を見たが、ストレスを感じないレスポンスで、ネットワークを介して作業をしているようには思えないほどだった。

エイチ・オー・エス 取締役 事業企画室長 中西佐登司氏

 さらに、個人情報保護法、e文書法など、企業の文書管理変革ニーズの高まりを受けて開発したのが、帳票管理サーバである。ユーザー認証と権限設定によるセキュリティ機能や、検索機能など、電子帳票を管理するうえで求められる機能を備えている。

 ただ、ユーザーのアクセスを監視して万一のときにはアラートを上げるといったような込み入ったことを実現したいときは、個別にカスタマイズが必要なようだ。また、文書管理という観点では、ワークフローや電子署名などの機能も欲しくなってくるが、ここはパートナー企業製品との連携ソリューションで対応しているという。

 せっかく帳票管理サーバを開発したのなら、いっそそこまでカバーした方がいいのではないかと思ったのだが、エイチ・オー・エスの考え方は違うようだ。エイチ・オー・エス 取締役 事業企画室長 中西佐登司氏は次のように語る。

「そのように機能を広げていくと、もろもろの手間が一気に増え、結局何を本当にやりたいのか分からなくなってしまうのが怖いんです。“うちは八百屋です。八百屋は魚は売りません。しかし、良い魚を売っている魚屋を推薦して一緒に配達するようなことはしたいと思います”というスタンスで行こうかなと考えています」

   パッケージ開発と受託を両立させる技術者集団

 エイチ・オー・エスは、もともと受託開発をメインとする技術者集団企業で、この製品が生まれたのも、ある受託開発の中で、MS-DOSやUNIXといった環境でレーザープリンタへの出力を実現するにはどうしたらいいかという課題がきっかけだった。

 その中でいろいろライブラリを作り、せっかく作ったものだからと希望者に分けているうち、Windows 3.1が出てきた。「これは使える」と思ったものの、やはり帳票出力が弱かったため、既存のライブラリを強化。また帳票レイアウトはもう少しスマートに行えるようにしようとフォームエディタを作り、といったことを繰り返しているうちに帳票関連製品の開発が主たる業務になってしまったのだという。

 しかし現在も、シーオーリポーツに関する受託開発を行っている。コンポーネント製品として提供してはいるが、シュリンクパッケージで流通市場に流すというのは本意ではない。できる限り顧客と接触し、どういう用途で利用するのかヒヤリングをかけたうえで、カスタマイズが必要ならそれを手伝うのだという。

 ソフトウェアベンダと受託開発事業者という立場は両立しにくいのではと、こちらは邪推するのだが、受託開発を行うことによって顧客のニーズをくみ上げることができ、それを製品にフィードバックできるから2つの事業は車の両輪なのだそうだ。この製品が1996年という早い時点でインターネット対応を果たし、2002年にJava対応版、2003年にActiveX対応版、2005年に.NET対応版をリリースしたのも、実際に顧客に接して実需を見ながら開発を進めた結果だ。

 また、コンポーネント製品とはいっても、インストールしてすぐ利用できるわけではないため、その点で誤解を招かないためでもある。

 営業部隊を持たない技術者集団ということもあるのか、ビジネスも寛容で製品の価格は開発ライセンスのみで、ランタイムライセンスはフリーとなっている。しかし、受託開発や大手ベンダへのOEM供給がかなりあり、収益基盤は安定しているようだ。物価の高い東京に上陸することをあえて避け、名古屋に拠点を置いて活動していることも、エイチ・オー・エスにとってプラスに働いているのかもしれない。


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