帳票ベンダ・インタビュー 第17回

Eclipse BIRTとスプレッドシートで
BIレポーティング


吉田育代
2007/8/21

Eclipseのレポート生成エンジンであるBIRTやExcel互換のスプレッドシートデータなどを使った製品はデータ分析業務の“壁”を崩せるのか?
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 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第17回は、アクチュエイトジャパンを取り上げる。

 同社は、エンタープライズ・BI・レポーティング・アプリケーションを提供するベンダとして、米国で14年、日本でも11年の活動実績を誇る。データ分析業務に関して企業で発生しがちな問題に対して解決策を提供すべく、「Actuate 9」で多彩な製品をラインアップしている。

図1 Actuate9の製品体系図
図1 Actuate 9の製品体系図 出典:アクチュエイトジャパン

 

 データ分析業務で企業が直面する“壁”

 例えば、食品メーカーが時間をかけたマーケティングの末に新商品を出したとしよう。当然、製品の担当者としては市場動向が気になるところである。

製品担当者からの“依頼”

 発売後1週間、まず、売れているのかどうか。売れているとしたら、どのサイズが一番人気が高いのか。どこの食品卸からの引き合いが高く、どの地域でより売れているのか。中心購買層は誰なのか。それは狙いどおりか。そうした売り上げは、広告展開と相関性を持っているかどうか。発売後1カ月、1週間ごとの売り上げの推移はどうか。同じジャンルの商品があるとしたら、それとの比較で見てどうなのか。量販、一般小売、コンビニ、どの販売チャネルでの売れゆきが高いか。担当者ならデータを手に入れて調べてみたいことは山ほどある。

IT部門の“苦悩”

 そうしたとき、一般的には、現場はこれこれこういうデータが欲しいとIT部門に提供を依頼する。それを受けてIT部門は、メインフレームやERPパッケージなどしかるべきデータソースからしかるべきデータを抽出し、現場が望む粒度にデータを整形して、CSV形式か何かで渡すことになる。それを受け取った現場はExcelに読み込み、自分の見たいようにデータをセットして、ドリルダウンしたり、ドリルスルーしたりしながらあれこれ分析するのである。

 この一連の業務フローが円滑に進むなら何もいうことはないのだが、実際には常に問題をはらんでいる。IT部門は基本的に忙しい。次期基幹システムの構想立案や、サーバやPCの管理などにどうしても人手を割かれるので、現場からデータ提供の依頼があってもすぐには対応できない。少なくとも1週間、時には数週間も現場を待たせてしまうことがあり、しかも、せっかく用意したデータがヒヤリングのミスで現場の求めていたものではなかったりする。

 それでは現場に申し訳ないからと、データ提供に関しては業務委託先に依頼を出すこともある。こうすればIT部門は部内での工数を削減することはできるが、今度はそのたびコストが掛かることになる。外に出すことで、これまたスピード対応は難しく、情報漏えいのリスクも背負うことになる。

情報漏えいの“危険”

 情報漏えいといえば、データをCSV形式で提供すること自体にリスクがある。いったんExcelに取り込まれてしまえば、そこからはもう管理不能で、数字の変更も可能なら、データのコピーも可能になってしまう。似ているけれど細部が微妙に違うデータファイルが、現場のあちらこちらに広まっていくことに対して、IT部門はどうすることもできない。現場は単に必要だからそうしているのであって、お互いを信頼していることもあり罪悪感はないのだが、内部統制上からいえば、実はかなりまずい事態である。

“壁”を崩すために

 こうしたことから、データ管理を徹底させつつ、IT部門の工数削減も実現しようとする企業もある。現場からのニーズの高いデータを見極めて、データを改変できない定型レポートの形にし、夜間バッチなどで自動生成、自動配信する仕組みを構築するのだ。これはいい考えに見える。しかし、事実は違うと、アクチュエイトジャパン株式会社 代表取締役 三浦大洋氏は語る。

アクチュエイトジャパン株式会社 代表取締役 三浦大洋氏
アクチュエイトジャパン株式会社 代表取締役 三浦大洋氏

 「最初は定型レポートの参照で満足していたはずの現場からは『もっとこういう形で見たい』『このデータを自分でデータ加工したい』という要望が寄せられるようになります。“求められるデータ”というものは、常に一定ではなく事業環境に応じて移りゆくもの。BI環境は、IT部門の工数を削減しつつも、現場で自由にデータ分析できるように構築されるべきなのです」

 

 BI実践で起こりがちな問題を解決すべくActuate 9を開発

 エンタープライズ・BI・レポーティング・アプリケーションを提供するアクチュエイトジャパンは、こうした、データ分析業務に関して企業で発生しがちな問題に対して解決策を提供すべく、「Actuate 9」でさまざまな製品をラインアップしている。

Eclipse BIRTで帳票を開発するBIRT Report

 多くの会社にとって、データ分析システムを導入する際のネックは、その開発環境だ。ベンダが提供する独自の開発スタイルを習得しなければならないからである。BIRT Reportは、実質的なデファクト・スタンダードであるオープンソース統合開発環境Eclipseを採用しているため、新たな開発環境を構築するリスクが低く、導入が容易である。

 BIRTとは、Business Intelligence and Reportting Toolsの頭文字を取ったもので、オープンソースの統合開発環境であるEclipse上で利用できるレポート開発環境である。Eclipseをダウンロードすれば、すでにそこに入っており、Webアプリケーションを開発するのと同じ感覚で、グラフや表の入ったWebレポートを開発できる。米国アクチュエイトが開発し、同社がEclipse Foundationにソースを寄与した。BIRTはEclipseから無償でダウンロードできる。

画面1 BIRTを使ったEclipseでの開発画面
画面1 BIRTを使ったEclipseでの開発画面 (クリックして拡大表示)

 また、アクチュエイトでは、アクチュエイトが提供する追加機能(後述のInteractiveViwerやBusinessReport)との連携やテクニカルサポートを付加した商用版を提供している。

AjaxでBIRT Reportの帳票をカスタマイズするInteractive Viewer

 BIRT Reportで作成したレポートの利用がデータ分析の第一歩だとしたら、いろいろな見方をしたくなったエンドユーザーを支援するのが、Interactive Viewerである。これは、BIRT Reportをエンドユーザー自身の手でカスタマイズできるツールである。

 データのソートやグルーピング、フィルタリング、計算式の付加、集計などといった操作を、ほとんどマウスのドラッグ&ドロップだけで実行できるという。自分が担当している商品だけ見たい、売上金額が高い順にデータを並べ替えたい、売上目標額に達していないものだけをハイライトしたい、などといったレポート加工ニーズに応えるツールだ。Ajaxテクノロジー採用により、画面の操作性は良好だ。もし、作成したレポートに汎用性があるものなら、サーバにアップロードして部門や企業全体で共有することもできる。

画面2 Interactive Viewerでのカスタマイズの例
画面2 Interactive Viewerでのカスタマイズの例 (クリックして拡大表示)

Webブラウザ上のマウス操作だけで帳票をデザインする
  BusinessReport

 だが、Interactive ViewerができるのはあくまでBIRT Reportsのカスタマイズで、そこにないデータを加工することはできない。まったく一からレポートをデザインしたいなら、BusinessReportだ。

 これもエンドユーザーのために用意されたツールで、テンプレートやアクセスデータへの接続定義はあらかじめIT部門で準備しておく必要があるが、後は、見たいデータを選んで、テンプレートにセットし、それを任意の順にソートしたり、グラフを挿入したりして、レポートを自由に作成できる。Interactive ViewerやBusinessReportを利用すれば、IT部門が現場からデータ提供の依頼があるたびに対応しなくても、エンドユーザーが欲しいときに欲しい形でデータ分析ができるようになるというわけなのである。

画面3 Business Reportsでのデザイン画面
画面3 BusinessReportでのデザイン画面 (クリックして拡大表示)

Excel互換のWebスプレッドシート、e.Spreadsheet

 Actuate 9シリーズのもう1つ特徴的な製品に、e.Spreadsheetというものがある。これは、Excel互換のWebスプレッドシートである。クライアントのExcelで表示できる互換ファイルをWebサーバで一元管理できるために、データの信頼性やバージョン管理の問題を解決でき、セキュリティ面を強化できる。

 スプレッドシートの参照するために必要なクライアント環境は、Microsoft Excelのみであり、プラグインや特別なアダプタは必要ない。データ改変を許さないセルロック機能が付加できるほか、サーバ側でダウンロード履歴を記録できる。行、列、そしてワークシートのそれぞれを展開して使用できる、Excelのフル機能を備えており、各ワークシートには、チャートやグラフ、データフィルタ、ピボットテーブル、そしてExcel計算式を記載できる。Visual Basicマクロも記述可能だ。そのため、既存のExcelシートをActuateサーバにアップロードして、広く共有するという使い方もできる。

画面4 e.SpreadsheetのスプレッドシートデータをExcelで表示
画面4 e.SpreadsheetのスプレッドシートデータをExcelで表示 (クリックして拡大表示)

“コラボレーティブ レポーティング アーキテクチャ”とは?

 このように、Actuate 9シリーズではIT部門と現場のエンドユーザー部門が、お互いの要望を損ねることなくデータ分析が行える環境を構築できることをセールスポイントとしている。同社はこれを“コラボレーティブ レポーティング アーキテクチャ”と呼んでいる。

図2 PrintGen for Serverのシステム構成
図2 “コラボレーティブ レポーティング アーキテクチャ”出典:アクチュエイトジャパン

 IT部門がデザインツールを使ってさくさく作成したレポートを、エンドユーザーがそのレベルに応じてカスタマイズしたり、業務に密着した形で自らデザインでき、そこで作り上げたものを再びIT部門が集めて配布するといういわゆるPDCA(plan-do-check-act)のサイクルが回せるのだ。

 

 「リニアにスケールアップ可能なのは、
  マルチプロセス構成だから」

 Actuate 9シリーズではほかに、Webレポートではなく、印刷品質の美麗なレポートを作成したいというニーズに対して用意しているのが、e.Reportである。業務の進行に応じて発行する必要のある明細書や請求書といった定型帳票類を、画像やグラフを交えながら高速に生成できるとしている。

 「Actuate 9シリーズのレポート生成能力は、1CPUから64CPUまでCPUの数に応じてリニアにスケールアップできるのが特徴です」と三浦氏は語る。

 「これは、Actuate 9シリーズのアプリケーションサーバであるiServerで、Web環境と親和性の高いJavaをベースにマルチプロセスで動く仕組みを作り上げているからです。データソースからデータを取得するクエリの機能、レポートをレンダリングする機能、レンダリングしたものとデータをマージして最終形のレポートを作成するファクトリーと呼ばれる機能、そのレポートをHTMLやPDFに変換する機能、生成したレポートをエンドユーザーが見るためのセッション管理の機能、これらがそれぞれ独立したプロセスで動かせ、多重化できるので、ハードウェアのスケールアップに応じた高速化が可能です」

   Actuate 9シリーズにおける価格体系

 Actuate 9 シリーズでは、上記機能などのうち、1つまたは複数を組み合わせて購入する形になっている。ライセンス体系としては、25ユーザー単位のユーザーライセンス体系とCore単位のサーバライセンス体系の2つが用意されているが、三浦氏によると、小さく生んで大きく育てることができ、割安感のある前者の方がお勧めだそうだ。


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