帳票ベンダ・インタビュー 第19回

EoD指向のエンタープライズJava用
帳票ツール


吉田育代
2007/10/30

既存のJavaシステムに少ない工数で帳票機能を付加でき、帳票を速くたくさん作りたいというニーズに応えてくれるツールとはどんなものか?
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 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第19回は、グレープシティのElixir Report(エリクサー・レポート)を取り上げる。これは、エンタープライズJavaのための帳票ツール。既存のJavaシステムに少ない工数で帳票機能を付加できるのが特徴で、帳票を速くたくさん作りたいというニーズに応えてくれる。

 

帳票ニーズは日々変化する
現場の要望にスピーディーに対応するには?

 企業における帳票ニーズは、意外と栄枯盛衰が激しい。納品書、請求書といったいわゆる定番の業務帳票であっても、取り巻く環境の変化が激しい現代では、記載項目が増えたり、変更になったりすることが頻繁にある。また、従来にはなかった帳票を、現場の誰かが思い付くという側面もある。

 「データをこういう形で見たい」「取引先に見せられる資料を作りたい」と発案されると、情報システム部門としては、むげに「それは要らないでしょう」とはいえない。個人的な要望が強く、その人が異動すると使われなくなるかもしれないと思ったとしても、取りあえず作ってみせないわけにはいかない。あるいは、現場が自分で作成できる環境を提供する必要がある。WordやExcelでも一通りのものは作れるが、それなりに体裁を整えたいと思ったら、何か専用ツールの導入を考えることになる。

 ここでの製品選びのポイントは、要望された帳票が適度な品質でささっと素早く作れるということだろう。グレープシティが販売しているエンタープライズJavaのための帳票ツールElixir Reportのキャッチコピーは、“EoD(Ease of Development)指向の開発スタイルを実現するPureJavaの帳票ツール”。既存のJavaシステムに少ない工数で帳票機能を付加できるのが特徴とうたい、速くたくさん作りたいというニーズに応えてくれるらしい。

 開発元はシンガポールのElixir Technology社である。企業情報システム環境として日本にもJavaが普及し始めていた2000年代前半、ここで利用できる帳票ソリューションを探していたグレープシティが取り扱いを始めた。インドのチームが製品テストを担当し、日本のチームがより日本市場にフィットした製品に仕上げたというのが、2007年4月から販売されている現在のバージョン6Jだ。

 

Javaシステム環境に帳票環境を付加できる
Elixir Report、4つの特徴


【1】プログラミングレスで行える帳票設計

 EoD指向の開発スタイルを志向しており、帳票設計をコーディングなしで行えることを目指している。下図は、このツールのGUIデザイナの画面だ(図1)。

図1 ElixirReportのデザイン画面
図1 Elixir Reportのデザイン画面 出典:グレープシティ(クリックして拡大表示)

 真ん中の大きなペインがデザインウィンドウと呼ばれ、ここに帳票要素をドラッグ&ドロップしてデザインしていく。その帳票要素の1つが大きなウィンドウのすぐ左側にある細い縦長のバーでエレメントと呼ばれる。ここに、チャート(チャート&グラフの出力)、テーブル(データ項目をテーブル形式で出力)、ラベル(固定文字の出力)など、デザインを行うための部品が配置されている。

 大きなウィンドウの右側に配置されているのが、エレメントの情報を表示する[プロパティ]ペインで、色、大きさなど変更したい場合は、ここで操作を行う。

 一番左にあるWindowsエクスプローラライクなペインはリポジトリと呼ばれる設計した帳票(デザイン、データソース)の格納場所である。デザインに読み込ませるデータを選ぶとき、あるいは既存の帳票を基にデザインするとき、ここから該当するデータをピックアップする。

 大きなウィンドウの上部に[レポート][レイアウト][スクリプト]という3つのタブがあるが、これは帳票に関する情報を表示させたり([レポート])、直接JavaScriptを書いてデザインを充実させたいというときに切り替えて利用する。グレープシティ株式会社 ツール事業部 門馬 美奈子氏は、帳票設計機能の長所を次のように語る。

グレープシティ株式会社 ツール事業部 門馬 美奈子氏
グレープシティ株式会社 ツール事業部
門馬 美奈子氏

 「ウィザード形式で対話しながら開発できるので、プログラミングはしないという方も、手順に慣れてさえいただければ簡単に帳票デザインを行っていただけます。6Jからエレメントの配置位置など、よりきめ細かく制御できるようになったので、日本の複雑な帳票要件にも対応しやすくなっています」

【2】きめ細かく設定できるセキュリティ

 セキュリティ機能は、グレープシティが必要性を重視して盛り込んだものだ。Elixir Reportでは、“データアクセス”と“ファイルアクセス”という2つのレベルでセキュリティ機能を発揮する。

 “データアクセス”というのは、“Elixirレポートサーバー”が、帳票ファイルを任意の単位で管理し、ユーザーが権限を持つファイルだけ出力できるというもの。一方、“ファイルアクセス”というのは、ファイルそのものに対して権限を持たせることができ、出力したユーザー以外はファイルを閲覧することすらできない。

 加えて、このツールが出力形態の1つとしているPDFファイルへの128bit暗号化を容易に設定できる。帳票の内容により、正しいパスワードを知らない人は出力したPDFファイルの中身をのぞけないユーザーパスワード(閲覧パスワード)、あるいは出力した電子帳票の機能制限を設定または変更するときに必要なオーナーパスワード(編集パスワード)を設定できる。

 この暗号化機能によって抑制できるのは、印刷や内容(テキストや画像)のコピー、抽出だ。さらに、ログ管理ツールを内在しており、“Elixirレポートサーバー”上で起こったすべてのログを記録、万一不測の事態が発生してしまった場合には、ログを分析することにより問題を追究できる。

【3】スケーラビリティと安定性

 このバージョンから、Webアプリケーションサーバと分離して動かす独立エンジン方式が利用できるようになった。帳票専用サーバというシステム構成が取れるようになったのだ。サーバを帳票生成に集中させることによって、より安定した稼働が実現するとともに、帳票の大量出力というニーズにも応える。帳票生成のボリュームに合わせて、“デュアルエンジン”と“マルチエンジン”のどちらかを選べる。“デュアルエンジン”では同時に帳票生成できる数が2つだが、“マルチエンジン”ではそれが任意に設定できる。

 「常に複数の帳票生成要求が来るようなら、“デュアルエンジン”では待ちが生じてしまいますが、その点、“マルチエンジン”なら来た要求をすべて同時に処理できます。しかし、数が大きくなればなるほどハードウェアリソースの消費も大きいため、帳票の出力状況をよく調査して設定することが大切です。ただ、どれぐらいが適正値か分からないというお客さまも多いので、当社がヒヤリングして、『これぐらいでいかがでしょうか』というアドバイスは差し上げています」(門馬氏)

 どれぐらいの大量出力が可能なのか? いままでの実績では、PCサーバ利用で1回1万枚というのが最高だが、これを実現するに当たっては、ハードウェアスペックを上げる、5000枚の出力ジョブを2つとして実行するなど、少し工夫が必要だったのは事実だったようだ。数万枚規模の帳票生成を常時行いたいという企業は、導入前によく相談した方がいいだろう。

【4】幅広いニーズを満たす帳票生成力

 これも6Jからの新機能だが、JDBC、Javaオブジェクト、テキスト、XMLといったマルチデータソースに対応できるようになった。また、1枚の帳票に複数のデータソースからのデータを混在させた複合帳票の作成も可能だ(図2)。

図2 ElixirReport運用構成図
図2 ElixirReport運用構成図 出典:グレープシティ

 さらに、1つの帳票の中に別の帳票部分をインサートして1つの帳票としたり(“サブレポート”機能)、1つの帳票を複数セクションから構成させたり(“複数セクション”機能)など、複数帳票を結合させて新たな帳票を作成するニーズにも応えられるようになっている。

 加えて、Elixir Reportは、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、レーダーチャートなどチャートの種類も一通りそろっており、ビジュアルな帳票の作成もこれ1つで行える。ただ、バーコードは1次元のみのサポートなので、2次元コードを利用したいとなると、グレープシティの「JBarCode」など別製品と組み合わせることになる。

 出力形態が豊富なのも、このツールの大きな特徴だろう。前に触れたPDFのほかに、XHTML、HTML、CSV、XML、XLS(Excel)、Glint、PNG、JPEG、SVGなどがある。“Glint”というファイルフォーマットは聞き慣れないだろうが、これはElixir Reportの独自形式でJavaのSwing技術を使っていて、配布フリーな専用ビューアで閲覧する。このほかに、画面表示なしのDirect(直接)印刷も可能だ。このDirect印刷に関しては、クライアントおよびサーバの両方から可能になっている。

 

ユーザーの立場で発想した
良心的な価格体系も差別化の1つ

 こうした帳票関連製品の場合、出力形態のサポートはオプション対応されていることも多いが、このツールはそうではない。製品ライセンスを購入すれば、これら多彩な出力形式がすべてサポートされるという。

 価格という点では、Elixir Reportはライセンス体系でも良心的な設定をしている。帳票設計ツールは、“デザイナライセンス”で販売され、価格は21万円。作成した帳票を運用するサーバ、つまり“運用サーバーライセンス”の価格は84万円(“デュアルエンジン”の場合)。だが、開発目的で利用するテスト用サーバには、“テストサーバライセンス”という体系があり、価格は36万7500円(“デュアルエンジン”の場合)。グレープシティによると、もろもろ合計して比較すると導入コストは競合製品の1/2、といったケースもままあるとのことだ。

 帳票への要望は、たゆみなく生み出され変化する。Elixir Reportはそれをさらっと受け止め実現することを使命として、いまも進化を続けているようだ。

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