帳票ベンダ・インタビュー 第20回

帳票上でFlashが動く
Crystal Reports最新版とは?


吉田育代
2007/12/6

世界的に知られる帳票ツールの最新版「2008」が間もなくリリース。その新機能を徹底解剖するとともにSAPに買収される影響を聞いてみた
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 オープン環境の企業情報システムにおいて、帳票ニーズはいまどのような状況になっており、それに対して帳票ベンダはどのようなソリューションを提供しているのか。帳票ベンダへの直接取材でその解を探るシリーズ。第20回は、日本ビジネスオブジェクツの「Crystal Reports」を取り上げる。この製品は世界に1500万ユーザーのインストールベースを持つという世界的に知られたレポートツールで、間もなくリリースされるという最新版では、“「見た目」のさらなる改善”“レポートユーザーの利便性向上”“製品の合理化”をコンセプトに開発が行われたという。本稿では、新機能を中心に製品を見ていくことにする。

 

世界的に知られたCrystal Reports、
間もなく最新版が登場

 2007年12月、世界に1500万ユーザーのインストールベースを持つというCrystal Reportsの最新バージョン、「Crystal Reports 2008」がリリースされる。

 この製品はこれまで、レポートを作成したいと望むエンドユーザーが、簡単に情報へアクセスでき、そこから必要なものを抽出し、適切な形で表示できることをコンセプトとして開発されてきた。そして実現したのが、容易かつ多様なDBへのアクセス機能、分かりやすいデータ項目の抽出機能を提供するとともに、紙や電子書類、Webブラウザ、電子メールなどさまざまな媒体でのレポート配布機能などだ。

 さらに、相手を説得する材料であるレポートには優れた「見た目」が求められるということで、グラフやリストなどの表示機能、レポートの仕様などに力を注ぐとともに、マーケティング部門や経理部門、経営トップなど、企業内のあらゆるエンドユーザーが簡単にレポートを作成できるようなユーザビリティの実現も積極的に行ってきたという。

 最新版では、それらのコンセプトをさらに一歩進める形で、具体的には以下のような3つの項目を実現することが主眼となった。

  1. 「見た目」のさらなる改善
  2. レポートユーザーの利便性向上
  3. 製品の合理化

 以下、新機能を中心に、1つずつ順番に見ていくことにしよう。

 

視覚に訴える“動くレポート”を目指して、
Flash動画機能を搭載


 レポートの世界でも、動画サポートが進みつつあるようだ。レポートの「見た目」にはこだわりを見せてきた同社が、Crystal Reports 2008で実現したのは、Adobe Flashの取り込みだった。作成するレポートに拡張子swfファイルを配置でき、これを例えばPDFにエクスポートすると、それを動画として再生できる。いわば“動くレポート”だ。

“動くレポート”はどう使うか

 取材時には、このようなレポートの用途例として、カタログとして利用するデモンストレーションが示された。乗用車の仕様が記載されたPDFファイル上に、乗用車の映像が添付されている。一見、写真に見えるのだがその下には再生ボタンがあり、それをクリックすると、その乗用車が360度回転して全体像を見せてくれるというものだ。確かに静止画として見せられるよりかなり臨場感がある。

 日本ビジネスオブジェクツ株式会社 セールスコンサルティング部 マネージャー 福地 厚氏は、この新しいレポートに関してそのほかの用途を以下のように語る。

日本ビジネスオブジェクツ株式会社 セールスコンサルティング部 マネージャー 福地 厚氏
日本ビジネスオブジェクツ株式会社 セールスコンサルティング部 マネージャー 福地 厚氏

 「財務レポートや講義録のような分野にも適用できると考えています。詳細な財務データが記述されたレポートの中に、企業の経営トップあるいは財務アナリストなどといった立場の人が動画でデータについてのコメントを語ったり、論文などとともにそれを執筆した大学教授の講義風景を動画で収めたりと、これまでにない斬新なレポートジャンルを開拓できると考えています」

データ「見える化」ツールとの連携

 Flashを使った新機能は、実はもう1つある。これは、Crystal製品グループの1つで、データの「見える化」ツールである「Crystal Xcelsius」との統合で実現するものだ。

 例えば、レポート上に配置したあるデータフィールドを、円グラフでも表示したいと考えたとする。そのときは、「Crystal Xcelsius」で作成したFlashの円グラフをそのままドラッグ&ドロップし、続けてデータフィールドをドラッグ&ドロップすればよい。それだけで、レポートの中にデータフィールドのデータが反映されたFlash製の円グラフを表示させることができる(図1)。

図1 「Crystal Xcelsius」で生成したFlash部品を搭載したPDFの例
図1 「Crystal Xcelsius」で生成したFlash部品を搭載したPDFの例 出典:日本ビジネスオブジェクツ(クリックして拡大表示)

 

レポートを利用するユーザーの
利便性向上を優先的に推進

 Crystal Reports 2008は、ビジネスの最前線でレポートを利用するユーザーの使い勝手を向上させる改善が行われている。

「ReportDesigner」の対話型のパラメータ設定機能

 その1つが対話型のパラメータ設定機能だ。これまではレポートを表示させようとすると、どの国の、どの地域の、どのようなレポートといった具合に、データを絞り込むパラメータ設定を、ダイアログボックスを開いて全部入力を終えなければ、見たいレポートを見ることができなかった。

 新製品では、「ReportDesigner」の拡張機能として「パラメータパネル」というフィールドがレポートビューア上に登場し、いくつかのパラメータはデータベースに接続せず、この画面上で修正できるようになった。このアクションによる変更は、保存されたデータに反映される(図2)。

図2 「ReportDesigner」の対話型のパラメータ設定機能の使用例
図2 「ReportDesigner」の対話型のパラメータ設定機能の使用例 出典:日本ビジネスオブジェクツ(クリックして拡大表示)

 また、ビューア内でより多くの機能を実行できるため、いちいちReportDesignerを使用することなくレポートを作成することが可能である。さらに1つのレポートで複数パターンのデータを表示させることができるため、データセットの数だけレポートを作成するといった作業からも解放される。

対話型機能はデータの並べ替えでも

 この対話型の機能はまた、データの並べ替えにおいても採用されている。「Java DHTMLビューア」および「.NET Webformビューア」でサポートされている機能なのだが、レポート上にデータ並べ替えのためのボタンを置くことができ、これを利用すると、レポート内のデータをデータベースに接続することなくオンデマンドで並べ替えができる。エンドユーザーの思考の流れに合わせて、例えばデータを昇順で見たり、降順で見たりといったことが可能になるというわけだ。

ユーザー定義の式が追加できるクロス集計機能

 クロス集計機能も強化された。福地氏によると、Crystal Reportsはどちらかというと定型レポートの出力に適しており、データの軸をダイナミックに入れ替えて見せるようなクロス集計は、ビジネスオブジェクツのグループ製品であるクエリー分析ツールである「Web Intelligence」の方が得意だという。

 しかし、Crystal Reportsでも、月ごとや国ごとの売り上げをまとめた行を挿入といったような単純なクロス集計だけではなく、例えば“すべての売り上げの中から米国の売り上げを除いた金額を表示させたい”といったようなユーザー定義の集計行を、簡単な式を記述することで追加できるようになった(図3)。

図3 クロス集計機能の使用例
図3 クロス集計機能の使用例 出典:日本ビジネスオブジェクツ(クリックして拡大表示)

XMLとXSLTによる幅広い出力機能

 データのXML形式での流通は、近年、幅広い業界においてますますニーズが増えているが、それに応えるべくCrystal Reports 2008では、1つのレポートからさまざまなXML形式でのエクスポートが可能になる。これは、業界標準のXSLTを使って変換することにより提供するもので、幅広い出力機能を実現することができるという。

書式制御や四則演算もワンタッチ

 レポート作成において、書式制御を行ったり、四則演算などをはじめとした計算式を挿入したりしたいときに利用するのが、「X2」ボタンである。このボタンを押すと式を書く画面が開くので、ここにベーシックライクな言語を使ってデフォルトのページ設定だけでは困難な細かい制御を記述していく。

レポートの共有用の無償ビューアを提供

 Crystal Reportsでは、レポートの共有にも力を入れていて、ビジネスオブジェクツが管理するサーバに作成するレポートをアップでき、それを保存したり公開したりできる。また、そのレポートを見るユーザー用に無償のスタンドアロンビューアが提供される。それが「Crystal Reports Viewer XI」だ。

 また米国では、OnDemandでのCrystal Reportsの利用も進んでおり、すでに日本でも英語版でCrystal ReportsをOnDemandで利用している顧客がいる。このOnDemandサービスの日本語版は2008年の上半期に利用可能になる予定だ。「OnDemandでのサービス提供はレポート作成の負荷軽減につながる。利用を勧めたい」と福地氏は語る。

バーコードのビルトインサポート

 エンドユーザーの利便性を高めるための新機能、最後はバーコードのビルトインサポートだ。レポートにおけるバーコードの扱いは、フォントを購入してイメージとして張り付けるというスタイルが一般的だが、この製品では、Code39のバーコード・フォントが同梱されており、イメージとして張り付けるのではなく、ReportDesignerのワークフロー上で、データそのままをバーコードに変換する。

 

製品ラインおよび製品ボリュームを
大胆にスリム化

 Crystal Reports 2008では、製品ラインとともに製品そのものの容量が大幅にスリム化された。

製品ラインを一本化し容量もスリムに

 まず製品ラインだが、これまで、「Standard」「Professional」「Developer」と3本あったエディションが、Crystal Reportsに一本化された。エディションが3本あったのは、ユーザーによって利用ニーズが異なるだろうという判断によるものだったが、実際にはこの製品を購入するユーザーの8割以上が「Developer」を選んでいたという。それなら、いたずらに迷うことがないよう、このエディションへ製品をそろえようということになったようだ。

 また、「ReportDesigner」の容量が最大75%削減され、製品全体でCD-ROMにして250Mbytes程度のボリュームになった。これはDBや エクスポートドライバ、チャート機能、マッピング機能などのコア製品、オンラインヘルプ、全言語テンプレートRPTファイル、全言語Visual Studio integration for .NET 1.1および2.0などを含んでのサイズらしい。昨今はPCやサーバのハードディスク容量は格段に大きくなっているからサイズは大きくてもいいようなものだが、やはり本体が軽量であれば、それだけ動作が軽快になるということなのだろう。

1つの製品で多言語化も

 さらに、1つの製品で多言語に対応する。製品の中のインストール済みの言語パックから使いたい言語を自由に選択できるようになる。例えばユーザーは、ドイツ語のWindows上で、フランス語の製品インターフェイスとフランス語のレポートを扱うことができる。

アドインも追加可能

 これは合理化と呼べるのかどうか分からないが、Crystal Reports 2008のメニューの中にアプリケーション(DLL形式のもの)をアドインすることもできる。インストール時に、インストールディレクトリのあるフォルダにアプリケーションを置き、アイコンを定義すると、この製品のメニュー上でアプリケーションから使えるようになる。

対応DBの増加

 そのほか、このバージョンでは、iSeries 5.4、Windows/UNIX 9.1、zSeries 9といったOSで動くIBM DB2の最新バージョンをサポートするほか、Access(.accdb)やExcel(.xlsx、.xlsb)、OutlookなどMicrosoft Office 2007やMySQL 5.0、Teradata V2R6.2、Sybase ASE 15といったDBへも、新たに接続機能を提供する。

 

買収が完了しても、
Crystal Reportsはこのまま残る

 2007年10月、ビジネスオブジェクツが、SAPに買収されることが発表された(参照:「SAP、Business Objectsを友好的買収へ」)。そうなると、このように新製品を発表されても、今後も継続的にサポートされるのか、事業売却する可能性はまったくないのか、製品選定を行う立場としては、気になるところである。“その懸念はありません”と、日本ビジネスオブジェクツ株式会社 マーケティング部 プロダクトマーケティングスペシャリスト 久保 良太氏は語る。

 「弊社アジアパシフィックジャパンの責任者が、先日製品セミナーのために来日したのですが、Crystal Reportsはこのまま残すと明言しました。どこかへ売却するようなことはありません。ただSAPの製品と何らかの形で統合される可能性はあります。その点はわれわれにもいまのところ予測不能なのですが、前向きの改善が行われるものと期待しています」

 どうやら大きな変化はないらしい。そうであれば、安心して機能の吟味ができるというものである。

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