リッチクライアント導入事例(3) 

OCR帳票へスマートに情報を付加するには?
データの自動取り込み、
容易な印字設定、高度な帳票品質という
解を示したCreate!Form

吉田育代
2009/3/26
らでぃっしゅぼーやは、会員へ配布する注文書としてA3判のOCR帳票を利用。5種類の帳票開発・出力管理製品を比較検討した結果、同社はインフォテック・アーキテクツのCreate!Formを選択した。これにより、OCR帳票への付加印刷体制が大きく改善したようだ
サマリー

 らでぃっしゅぼーやは、有機野菜・低農薬野菜、無添加食品の会員制宅配を展開するサービス事業者である。同社では、会員へ配布する注文書としてA3判のOCR帳票を利用していたが、会員の利便性への配慮から、会員番号、氏名、配送条件などといった特定のデータを社内で事前に印刷していた。

 従来の帳票出力体制では、これを実施する作業コスト、作業負荷が大きく、帳票出力品質にも不満があったことから、体制の見直しを決断。5種類の帳票開発・出力管理製品を比較検討した結果、同社はインフォテック・アーキテクツのCreate!Formを選択した。これにより、OCR帳票への付加印刷体制が大きく改善したようだ。



 畑の土からこだわった野菜を中心に品質の高い食品宅配事業

 英語に「You are what you eat.」という言葉がある。“あなたはあなたが食べているものからできている”というぐらいの意味だろうか。食べものは命の基本だ。このところ食品に関する事件が多発してその安全・安心が危ぶまれているが、こういうときだからこそ、その大切さが身に染みてもくる。

 そうした中、早くから有機野菜・低農薬野菜、無添加食品に着目し、会員制宅配サービスを事業として展開している会社がある、らでぃっしゅぼーやだ。

企業データ(2009年3月現在)
らでぃっしゅぼーや
設立:1988年5月17日
資本金:8億5570万5千円
従業員:226名
事業内容:有機低農薬野菜および無添加食品等の宅配事業

 同社は、「持続可能(サスティナブル)な社会の実現」を理念に掲げた環境NPOを母体に誕生。1988年の創業以来、畑の土からこだわった野菜を中心に品質の高い食品の提供を通じて、豊かで上質な暮らしを提案している。会員は現在約10万人。社名の「らでぃっしゅ」は、語源に物事の根源を意味するラテン語「ラディックス」を含む二十日大根から、「ぼーや」は子供たち、次の世代を象徴して付けたそうだ。

 OCR帳票への“事前印刷”で生じていた問題


らでぃっしゅぼーや 管理本部 情報システム部 システム課長 鈴木康信氏

 同社の宅配サービスは「ぱれっと」と呼ばれる野菜の詰め合わせセットを基本としている。さらに必要な品があれば、会員はカタログから商品を選んで注文する仕組みになっている。注文した商品は毎週定期的に届けられる。

 そうした会員とのやりとりの中で発生するのが帳票だ。注文書、納品書、請求書など会員向けに発行される帳票は10種類ほどあるという。

 中でも同社で特別な存在となっているのが、注文書となっているOCR帳票だ。これはA縦長両面シートにカタログ掲載商品の一覧が記載されており、会員はそれに数量を記入して提出するようになっている。同社はこれを毎週10万枚印刷会社へ依頼を出して印刷し、注文品を届ける際に配布しているのだが、その際に行っているのが“事前印刷”だ。会員の手間を省き、注文の正確性を期するために、会員番号、氏名、配送条件などをあらかじめOCR帳票に社内で記入しておくのである。

 ここで利用していたのがAccessだった。同社の基幹システムAS/400に格納された会員情報を取り込み、プログラムを作成してOCR帳票上に出力するのだが、実行には大きな負荷が掛かっていた。

 というのも、OCR帳票は商品一覧を表示するという特性上、頻繁に変更が入る。また、場合によっては事前印刷する内容も変わる。そうするとAccessのプログラムを改修しなければならないのだが、もともとそれを記述したプログラマーは異動してしまったため、そのたびに外部協力会社へ発注していた。また、プログラムの改修がないとしても、AS/400からAccessの搭載されたPCへデータを転送、それをAccessにインポートし、取り込み結果を確認するという作業だけに、つまり出力準備に専任スタッフが当たって常に1時間から1時間半もかかった。

 そして、いざ印刷してみると、どうしても印字がずれる。Accessプログラムを利用して微妙な調整に挑戦するものの、ぴたりと合わせるのは難しかった。“会員に配布する帳票に印字のずれがあるのはかっこ悪い”という声は社内外から聞こえてきた。

 折しも、同社で利用しているメインプリンタのリプレイスが2008年9月に迫っていた。それまでは、北海道センター、首都圏センターなど、全国に5つある地区担当のセンターで、会員向け帳票類をそれぞれ印刷していたのだが、それを機に2拠点に集約してはどうかという案が持ち上がった。それによりコスト削減と印刷スピード向上が図れる可能性がある。また、2008年9月は新しいサービスの立ち上げを予定している時期でもあった。そこで、OCR帳票の事前印刷の体制も抜本的に見直すことになった。

 出力準備、帳票開発の容易さから選択

 らでぃっしゅぼーや 管理本部 情報システム部 システム課長 鈴木康信氏は、主要なプリンタメーカーに対して、OCR帳票出力をめぐる従来システムのトータル改善案の提出を依頼した。その結果、5社から5つの提案が上がってきた。それを、コスト、作業時間、操作性、プログラムのメンテナンス性、耐久性、作業体制の変化、考えられるリスク、従来システムに加わる変更度合いなどの側面からなどの観点で比較検討した結果、選択したのがインフォテック・アーキテクツのCreate!Formだった。選定の理由を鈴木氏は次のように語る。

「決め手は大きく2つありました。

 1つは、この製品にはCreate! FormMagicfolderという出力サーバ製品があって、AS/400上のメニューから直接データをこのフォルダ上へ自動転送でき、また、このフォルダは設定時に、帳票種別と印刷先をあらかじめ指定しておくことで、フォルダにデータが転送されたことを検知したタイミングで帳票出力を行えます。これにより、AS/400からPCにデータを移して、その都度、設定するという手作業をなくすことができました。

 もう1つは、帳票開発製品であるCreate! FormDesignにスキャナで取り込んだ帳票画像ファイルをテンプレートとして表示し、これを基に帳票作成を行う機能があり、これを使って事前印刷したい文字情報を思いどおりに配置することができ、ずれのない印字を実現することができました。

 私たちが重要と考えていたこれら2つの問題を解決してくれ、導入コストや社内でプログラムメンテナンスができる点などを評価してこの製品を選ぶことにしました」

■OCR名入れシステム改善

OCR印刷システムに対して、AS作成されたOCR情報(会員属性・契約情報)の転送から印刷までの仕組みについて、拠点集中切替を行うため1.操作性の向上、2.新規・変更に対するメンテナンス性向上を目的に改善を行う。
1.CreateForm(フォルダ)機能により、ASからPCへのデータ転送が不要となり、ASからの印刷指示が可能となった
2.CreateForm機能により、AS操作のみで済み、作業工程も簡素化された
3.CreateFormにより、OCR変更・新規作成の印字位置メンテナンス性が向上した


インフォテック・アーキテクツ ビジネスグループ
ゼネラルセールス 米田俊之氏

 Create! Formの開発元であるインフォテック・アーキテクツ ビジネスグループ ゼネラルセールス 米田俊之氏は、鈴木氏の言葉を補足して次のように語る。「Create! Formには、コンマ何ミリ単位の印字位置合わせ機能、またプリンタで生じるずれを内部で吸収する機能があり、イメージしたとおりの帳票を出力していただけます」

 この製品を試用して出力テストを行った結果、OCR帳票に関する限りプリンタのリプレイスは必要ないということになり、結果的に、Create! FormシリーズのCreate! FormDesign、Create! FormMagicfolder、Windowsプリンタへの出力管理を行うCreate! FormPrintStageの3製品だけが導入されることになった。

 導入を決定したのが8月初め。9月に新しいサービスをスタートさせるなら、中旬までにはOCR帳票の出力を完成させなければならない。焦り気味の導入となったが、製品のインストール、および既存OCR帳票のテンプレート化までの作業は1日で完了した。翌日、鈴木氏自らが、インフォテック・アーキテクツに電話でサポートを受けながら事前印刷部分の出力イメージを設計。それは半日ほどで完成したそうだ。続いて、4種の関連OCR帳票を設計、それらも各3時間ほどで出来上がってしまった。無事、お盆期間に入る前に必要な帳票枚数を刷り終えることができたという。

 事前印刷を実現するためのコスト、作業負荷を軽減

 現在、同社は帳票出力体制の首都圏センター、大阪センターへの2拠点集中体制を実現させた。OCR帳票に関しては、本社で開発を行い、事前印刷の出力だけをそれぞれの拠点で実施するという形を取っている。

 導入前と導入後では何が変わったのか。ポイントは3つあるという。

 まずは、帳票出力の準備作業がなくなったことだ。AS/400からプリンタまでのデータフローを自動化できたことで、全社規模で毎週30時間は費やしていた作業コストを削減することができた。

 次は、プログラム改修費の削減だ。OCR帳票の変更で事前印刷部分を変える必要が生じても、いまなら協力会社へ出さずに鈴木氏をはじめ社内でCreate! FormDesignを使って対応できるようになった。それにより年間約50万円の開発コストが節約できている。

 加えて、出力拠点を2拠点に集中させることで、これまで5拠点に12台設置していたプリンタ台数を2拠点8台に減らすことができた。このことによる直接的なコスト削減は15万円ほどだが、余剰となったプリンタを別の業務に転用できるなど定量的には表れない効果があるようだ。

 そして帳票出力の品質が上がった。プリンタ8台を駆使する状況でも、それぞれ画面上で簡単に修正できるため、印字位置のずれが発生することはまったくなくなった。

 さらに、導入前には想定していなかった利用法も生じている。例えば、あるときオーダーミスにより、印刷会社から届いたOCR帳票に必要な記述が入っていなかった。そこで、Create! FormDesignを使って、その情報を事前印刷という形で盛り込み、事なきを得たという。またあるときは、会員へのお知らせをやはり急きょ開発したこともある。“帳票設計の自由度の高さが魅力”と、鈴木氏は語る。

 今後は会員に特化した販促情報の出力も

 ここにきて、同社では会員が日常目にする注文書であるOCR帳票を、コミュニケーションツールとしてもっと活用していこうという動きが活発になっている。お買い得情報や販促情報、その会員に特化した情報をこの帳票に搭載することで、会員との関係をさらに活性化させていこうというのだ。

 また、会員の注文書入力の手間を省きたいという考えから、例えば、何らかの理由で注文できない商品には記入が行えないようにするといった事前印刷のさらなる高度化も考えている。これはプリンタのアップグレードのタイミングで実現させていきたいという。

 つまり、ビジネスの現場にはプレ印刷帳票だけでは対応できないアドホックなニーズが数々あり、それらを実現しようと思ったら、社内で扱える柔軟性の高い帳票開発・出力体制が必要ということらしい。これらを可能にするのが、Create! Form製品群で構成する現在の帳票出力の体制だろうと鈴木氏は大きな期待を寄せている。

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