Webアプリケーションのユーザーインターフェイス[3]

UCD=利用者中心設計のプロセスとは?


ソシオメディア 上野 学
2005/8/9

 ユーザビリティの定義と課題

 ユーザーの要求を満たすデザインを知る方法は、ユーザビリティの研究分野です。ユーザビリティとは、簡単にいえば「使いやすさ」のことですが、もう少し厳密には、次の「ISO 9241-11」における定義のようにとらえることができます。

ISO 9241-11におけるユーザビリティの定義:
特定の目的を達成するために、特定の利用者が、特定の利用状況で、有効性、効率性、そして満足とともにある製品を利用することができる度合い

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 つまり、特定の目的を持ったユーザーがある製品を便利に使えるという状況を前提として、その便利さがどれぐらいなのかということを意味します。それを調べるためには、実際にユーザーがその製品を使っている様子を観察するといったことを行います。そこで発見された問題を分析し、デザイン改善の方策を立てていきます。方策を立てるには、人の身体的な特性を基準とした人間工学や、人の認知的な特性を基準とした認知心理学といった分野の研究を応用します。

 しかしユーザビリティ研究の中心は、「ある道具の便利さの度合いを調べる」という「評価手法」にあるため、評価結果から導かれる改善要件は抽出できても、そもそもどのようなデザインが理想的であるのかを根本的に導く方法を教えてくれません。使い勝手を阻害する原因を見つけることは重要ですが、システムの設計を最初から見直さなければいけないような問題が発見された場合はどうすればよいのでしょうか。タイトなスケジュールと予算の中で進められるプロジェクトで、一から設計をやり直すのは現実的に無理でしょう。

 デザインメソッドの必要性

 一方、複雑な製品をいかに効率よく設計し製造していくかといった課題に対しては、メーカーやシステム開発の現場でそのプロセスをメソッド化するという方向でノウハウが蓄積されています。そこでは、求められる機能要件を明らかにし、技術的な実現方法を定義して、一定品質の製品を完成させるための作業工程をあらかじめ規定しておくという方法が取られています。そうすれば、作るものは毎回違っても、パターン化された手順を踏襲することで、計画的に開発プロセスを貫徹することができるようになるからです。

 このようなノウハウをユーザビリティのノウハウと融合すれば、複雑な仕組みを持った製品を、ユーザーにとっての利便性を常に設計思想の中心に置きながら、計画的に製造できるようになるはずです。つまり UCDの取り組みとは、ユーザーのことをきちんと考えてデザイン作業を行うという精神的な活動を指すと同時に、ユーザビリティの高いシステムを実現するためのメソッド化された設計開発プロセス全体を指しています。具体的には、デザインプロセスのすべての段階において、ユーザーからのフィードバック(ユーザーインタビューの結果やユーザビリティテストの結果など)を反映していくようにするのです。

 従来の開発プロセスとUCDプロセスの関係

 従来の開発プロセスに対する、UCDプロセスの第1の特徴は、システムがユーザーにとってどのように振る舞うべきかを最初に検討し、その次に技術的な実現方法を検討するということです。従来の考え方では、技術自体の新規性やデータの処理効率といった視点でまず基本的なアーキテクチャが決定され、それにどのようなユーザーインターフェイスをかぶせれば使い勝手が良くなるか、という順序でデザイン作業が進められていました。しかし UCDの考え方では、技術的な実現方法を検討する前に、まずユーザーの行動やタスクを分析し、ユーザーにとっての理想的なデザインを描くことから始めます。少々極端ですが、この考え方を概念図にすると次のようになります。

 GUIの特徴

図1 UCDの考え方

 このように、ユーザーの視点でシステムのアーキテクチャを組み立てていく方法は、ユースケースなどを使ったオブジェクト指向モデリングの考え方とよく似ています。違いは、UCDの場合、上流工程で分析された結果は、システムにとって都合の良いアーキテクチャではなく、ユーザーにとって都合の良いインターフェイスや画面遷移として反映されることです。

 従来の開発プロセスに対する、UCDプロセスの第2の特徴は、プログラムやグラフィックデザインの実装を開始する前に、プロトタイプを使って十分な反復デザイン(評価と修正)を行うことです。ユーザーのニーズが適切に分析できていたとしても、それをユーザーインターフェイスや画面遷移にうまく落とし込むのは難しいことなので、途中でプロトタイプを作成します。それに対してユーザビリティの評価を行い、問題を修正した次のプロトタイプを作り、再び評価をする、ということをできるだけ多く繰り返します。そうすれば、実装を始めてからの後戻りが少なく済みますし、完成してから問題が見つかるといった深刻な状況を回避することができます。

 とはいえ、UCDプロセスは、従来の一般的なシステム開発プロセスに反目するものではありません。従来のプロセスでも、要求分析を行う上流工程は重視されていたはずなので、そこにユーザーの視点から導出したタスクの分析や、実装に入る前のプロトタイプ評価といった作業を組み込んでいけばよいのです。

図2 UCDのプロセス

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 INDEX

Webアプリケーションのユーザーインターフェイス(3)
  Page1<ユーザーの目的を意識する>
システムの複雑化とジレンマ/UCD(User-Centered Design)とは?
  Page2<ユーザビリティの定義と課題>
デザインメソッドの必要性/デザインメソッドの必要性/従来の開発プロセスとUCDプロセスの関係/GUIの特徴
  Page3<UCDのプロセス>
データの収集/ペルソナとシナリオ/タスクと機能の分析/画面遷移の設計/プロトタイピング/ユーザビリティ評価/システムの最終的な評価者

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最終更新 2006/10/20


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