Webアプリケーションのユーザーインターフェイス[5]

入力情報を預かる責任を果たせる画面デザインとは?
「ユーザーを尊重するということ」


ソシオメディア 上野 学
2005/10/19


 理想主義的な視点の重要性

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 どんなシステムであっても、ユーザーを第一に尊重しなければなりません。具体的には、ユーザーのさまざまな権利、ユーザーの心身の健康、ユーザーの労力、ユーザーの時間、そしてユーザーの意思を常に尊重し、それらを正当な理由なく妨げたり、それらが妨げられるのを看過してはいけません。この基本的なユーザー中心の考え方は、あらゆる経験則の土台となる価値観です。エンジニアは、プログラムの精度と明瞭さを求めて、存在する制約事項や定義事項の厳密さに意識を向けるので、どうしても現実主義的になりがちです。それはプログラムをきちんと動かすためには重要なことですが、デザインをするうえでは、まず極端な成功シナリオを思い描く理想主義的な視点が重要になるのです。

 ユーザーの権利を不当に制限しない

 システムは、ユーザーがそのシステムを利用する権利を不当に制限しないようにします。よくウェブアプリケーションの動作環境として「Internet Explorer 6以上」といった条件が設けられていますが、これは、その条件を満たさないユーザーの権利をはく奪していることになります。もちろんあらゆる環境で利用できるものを作ることは不可能であり、ビジネス上は新技術の採用や対応コストの関係で動作保証環境についての現実的な制限を設けざるを得ませんが、この「権利をはく奪する」ということが、権利をはく奪されたユーザーにとってどれだけ深刻な心理的ストレスを与えるのかということを、利用条件を決定する際によく考える必要があります。

 コンピュータをメディアプラットフォームとしてとらえた場合、そこで再生されるコンテンツの表現力は、メディアのフォーマットや再生機器の性能に依存します。つまり、表現力を高めて情報量を増やすということは、同時に、利用環境を制限していくということです。この交換条件は、通常、システムの制作者によって決定されますが、あるコンテンツをどの程度豊かに再生するかの度合いは、プラットフォームの提供者ではなく、ユーザーが判断できるようにするべきでしょう。

 例えば、あるウェブアプリケーションが持つ機能を十分に利用するために Internet Explorer 6が必要だったとしても、あえてそれ以外のブラウザーから一切アクセスできなくするべきではありません。Internet Explorer 6以外のブラウザーで利用したときに、どのような制限が生じるのか、どのような問題が発生する恐れがあるのかをユーザーに伝えて、それでも利用するかどうかをユーザーが判断できるようにすればよいのです。もちろんその場合はクリティカルな損害が生じないようなセーフティネットが必要になりますが、そもそもブラウザーのバージョンの違いによって致命的な問題(サーバのクラッシュやデータベースの喪失など)が発生する恐れがあるのであれば、システムのアーキテクチャを見直す必要があるでしょう。

画面1 このような注意書きは一見ユーザーをガイドしているように見えるが、実際にはユーザーの状況を一切考慮せず、単に門前払いしているにすぎない

 ユーザーの健康に配慮する

 ユーザーの心身の健康を害するようなことを、システムはしてはなりません。特に、リッチクライアントでの閲覧を前提としたシステムでは、アニメーションや動画、音声などのあらゆる手段を用いた演出が行われるため、ユーザーの健康に影響を与える可能性が高く、注意が必要です。

 突然、耳を裂くような音声が鳴り響いたり、目の回るような高速なアニメーションが始まったりすれば、ユーザーは生理的にショックを受けるでしょう。タスクを進めるために、極度に身体的な疲労を伴うような操作を強要するのも問題です。

 身体的な影響以外にも、心理的なダメージについての配慮が欠かせません。例えば、検索エンジンの「イメージ検索」の結果一覧で、目的の画像とは関係のない、暴力的または性的な刺激の強い写真が混在してユーザーを不快にさせる恐れがあるような場合、それを防止できるような仕組みを考えるべきです。

 刺激的な演出に価値があるエンターテインメント性の高いコンテンツであっても、不用意な用い方をするべきではありません。ユーザーの健康への影響をよく理解して安全を確保することは、デザインの経験則の中でも優先的に守られるべきものだといえます。

 ユーザーの労力を無駄にしない

 システムはまた、ユーザーの労力を無駄にしてはなりません。1万人の顧客の名前を正確に覚えておくことは、どんなに優秀なコンシェルジュであってもなかなかできないでしょう。しかしコンピュータならば簡単にできます。コンピュータであるからこそ可能なユーザーの記憶や作業の手助けを、システムはきちんと全うすべきです。

 フォームの入力作業やエラー画面に悩まされるユーザーは多く、ただ普通に作業をしているだけなのに、システムの都合でエラー画面が表示された結果、それまでに入力した情報がすべて消えてしまうことはしばしばです。なぜ、ユーザーは、同じ苦労を一からやり直さなくてはならないのでしょうか。システムは貴重な入力内容を預かっておく責任を果たすべきです。

 そもそも、ユーザーが苦労して行った操作が後になってから意味がなかったということがあってはならないのです。これは、再入力の問題にとどまらず、必要のない作業を要求してはならないということです。例えば、商品の購入に当たってアンケートへの回答が必須である場合などが該当します。これでは顧客の利益が優先されているとはいえません。ユーザーが目的の商品やサービスを得るために必要な作業以外は要求しないようにして、同じ結果を得るためにはより作業が少なくて済むデザインを採用する必要があります。この問題は、ゲーム性を持たせたコンテンツであっても同様であり、単純作業を増やすことで難易度を高めたり、振る舞いの一貫性をわざと失わせたりして、ユーザーの労力を無駄にしてはいけません。

画面2 生年月日を入力させるなら、年齢を入力させる必要はない。このように入力の手間を増やしてはいけない。紙の帳票をそのままウェブフォームにしたような場合にこういった問題は発生しやすい

画面3 郵便番号を入力させるのに、なぜ都道府県を尋ねる必要があるのだろう。郵便番号が分からない場合のため? そうであればなぜ郵便番号を入力させるのだろう。もし入力された郵便番号と住所の対応が間違っていた場合、システムはどちらを信用するのだろう

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 INDEX

Webアプリケーションのユーザーインターフェイス(5)
  Page1<デザインの経験則/ユーザーのためにシステムがある/経験則その1:「ユーザーを尊重する」>
  Page2<理想主義的な視点の重要性/ユーザーの権利を不当に制限しない/ユーザーの健康に配慮する/ユーザーの労力を無駄にしない>
  Page3<ユーザーの時間を大切にする/ユーザーの意思を優先する/さらに具体的な経験則へ>

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最終更新 2006/10/20


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