Webアプリケーションのユーザーインターフェイス[9]

売りたいなら、
“販売”でなく“購入”ツールを準備せよ
「経験則その5:ガイドとレコメンデーション」


ソシオメディア 上野 学
2006/4/22
システムが積極的にユーザーの行動を支援するとどうなるか。人とコンピュータのコラボレーションを実現させよう。インクリメンタルサーチやタスクコヒーレンスの指針を説明(編集部)

 経験則その5:ガイドとレコメンデーション

 前回の「ユーザーが間違えても間違えなくてもエラーは回避せよ」では、エラーメッセージの在り方と、エラーを未然に回避するための方法について考察しました。タスクが中断されずに前進し続けるようにするためには、人の苦手とする「正確な動き」や「大量の記憶」をシステムが適切に補助することが大切であるという話でした。

 今回は、システムがユーザーのタスクを補助するという考え方を発展させて、「経験則その5:ガイドとレコメンデーション」を紹介します。

 これまでの経験則1〜4では、ユーザーに対して寛容で、操作に正しく反応し、そして操作ミスという問題に献身的に対応する、従順なシステムをデザインするためのものでした。経験則その5は、その視点を少し変えて、「システムは積極的にユーザーの行動を支援するべきである」という考えに基づくものです。いってみれば、単なる道具としての扱いやすさではなく、対話型システムならではのインテリジェントな振る舞いに関する指針です。

 特にシステムからの積極的な支援が重視されるのは、システムに慣れていないユーザーが複雑な(もしくはクリティカルな)作業をしなければならないような場面であったり、Eコマースサイトなどでシステムがユーザーの購買行動を積極的に促す必要があるような場面です。

 ユーザーの意思決定を支援する

 市場の競争にさらされているオンラインサービスでは、純粋にそこで扱うコンテンツ(情報や商品)の価値だけでなく、サービスを提供するツールとしての有効性を考えなければなりません。例えばオンラインストアであれば、ユーザーがそこで商品を見つけ、比較検討し、注文手続きを行う、といった各場面における意思決定をいかに簡単にするかがデザインの課題になります。

 対話型のシステムでは、画面上に提示されたオブジェクトの中からユーザーが1つ(または複数)を選ぶという操作の繰り返しでタスクが進行していきますから、意思決定を促すためには次のようなことがポイントになります。

・適切な判断材料を十分に提供する

 選択肢の中で、どれが自分にとって一番適しているのかを判断しやすくする必要があります。そのためには、選択肢それぞれの特徴をユーザーにとって意味のある脈絡で表現することが大切です。オブジェクトの性質を的確に視覚化することや、選択肢の中の各項目の違いが利用者にとってどのような意味を持つのかを明示することが望まれます。例えば携帯音楽プレーヤーの商品リストがあった場合、そのうちの1つの属性(スペック)として容量が「60GB」とだけ示されているよりも「60GB:1万5000曲」と表現されていた方がユーザーの意思決定に役立ちます。

画面1 ユーザーにとって重要なのはバイト数ではなく曲数(store.apple.com

・選択肢の見せ方を調節できるようにする

 選択肢が少なければユーザーは不満を感じ、選択肢が多過ぎれば適切な選択を行えません。ユーザーにとって重要な判断材料を提示し、選択肢の検索、フィルタリング、並べ替え、比較などができるようにします。GUIのコンセプトとしては、「すべての選択肢を目に見えるようにする」ということが基本にありますが、膨大な情報を扱うシステムにおいては、適宜選択肢に優先度を付けて、いまそのユーザーにとって最も価値のあるものから順に数を限定して提示するという方法を取ることが有効であることも多いのです。さらに、その優先度の付け方をユーザーが自分で制御できることが理想です。



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 INDEX

Webアプリケーションのユーザーインターフェイス(9)
Page1<経験則その5:ガイドとレコメンデーション/ユーザーは間違える/エラーメッセージを分かりやすく/選択肢の見せ方を調節できるようにする>
  Page2<サービスとしてのエラー回避/ユーザーのアクションを予測して提示する>
  Page3<1度行われた行動や入力の内容を覚える/初心者を導くウィザード機能を設ける>
  Page4<必要とされたときにすぐにヘルプを出す/関連の強いコンテンツを見せる>
  Page5<似通ったユーザーの行動から好みを推測する/ポピュラリティの高い項目を示す/日付に基づいて活動を促す/経験則から実践へ>

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