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WCR Watch [2]


ビジネスFlashはWebを変革する、マクロメディア


宮下知起
2005/1/13


 マクロメディアは近年、従来まで手掛けてこなかったサーバ事業に注力している。2003年以降のFlashをベースとしたサーバ製品として、ビジネスユーザーをターゲットとしたコミュニケーションツール「Macromedia Breeze」、リッチクライアントを実現するサーバ製品「Macromedia Flex」といった製品を出荷している。

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 「Dreameweaver」「Fireworks」「Director」「Authoware」といったデザイナーのためのツールを提供してきたマクロメディアがサーバ製品に注力する背景には、同社のコアコンピタンスがインターネット上に“リッチな体験”を実現する「ツール」と「プラットフォーム」の提供にシフトしたことが挙げられる。“リッチな体験”には、インターネット上で日常の体験と同様のリアルな体験を得られるということ以外に、リッチなユーザーインターフェイスを持ったWebアプリケーションの提供という意味も含まれる。

 このリッチなWebアプリケーションをマクロメディアはRIA(Rich Internet Application)と呼んでいる。RIAとは、HTMLベースのWebアプリケーションの貧弱なユーザーインターフェイスを改善する。例えば従来の「クリックして待つ」ユーザー体験が「流れの良い」ユーザー体験に変わる。あるいはデータの表示のためにページを更新する必要がなくなり、スムーズな作業が可能になる。メリットの例としては、ECサイトにおいて必要な情報が待たずして表示されるため、使い勝手とともに購買率も向上することが期待できる。

RIAを実現するためのビジネスFlash

米マクロメディア ジェネラルマネージャ兼シニア・バイス・プレジデントのトム・ヘイル氏

 マクロメディアはFlashで実現するRIAを推進している。多くの開発者はFlashをコンシューマ向けのムービーコンテンツを作成するための道具と認識してきたと思うが、マクロメディアのソリューションは業務系アプリケーションのユーザーインターフェイスまでもFlashで実装しようというものである。米マクロメディア ジェネラルマネージャ兼シニア・バイス・プレジデントのトム・ヘイル氏は、「マクロメディアはFlashを軸に、PCからノンPCに至るまで、ユビキタスにユーザーにリッチな体験を提供するビジネスを展開する」と今後の方向性を語る。

 RIAはユーザーにとって導入しやすいものである必要がある。この点、マクロメディアはFlashプラグインの普及率を引き合いに優位性を強調する。実際、インターネットに接続されたPCの実に98%がFlash Player 7をインストール済みという統計があり、この普及率はFlash Player 7の登場からわずか1年で到達した数字だという。へイル氏は、「Windows XPの普及率が登場後42カ月でやっと53%を超えたことに比べると非常に高い」と説明する。

 ビジネス用途を意識したFlashの適用をビジネスFlashと呼ぶなら、ビジネスFlashを支える主要製品はMacromedia Flexだ(国内ではすでにバージョン1.5がリリースされている)。国内の事例としては富士写真フイルムの「FUJICOLORネットサービス」がある。Macromedia Flexの特長は@ITのほかの記事でもすでに紹介されているように、J2EE開発者のスキルや、従来のWebアプリケーション開発のノウハウを生かすことができる点にある。

 Flashがビジネス用途から敬遠されていた理由に、開発者には適さない作成のスタイルがあった。Flashの作成ツール「Macromedia Flash MX」はデザイナー向けに提供されたもので、タイムラインを意識しながらムービーを作成するという非常にクリエイティビティを要求されるものである。それに対しMacromedia FlexはXMLのタグでユーザーインターフェイスを定義できるため、JavaのJSPを使ったコーディングに慣れたプログラマーであれば誰にでも記述できる。

RIAのユビキタスな展開を目指すマクロメディア

 ここで、マクロメディアのツールを整理しよう。図1は、Flashを軸に提供されるマクロメディア製品とユーザーの相関図だ。右3分の1が従来からのマクロメディア製品である。左3分の2がFlashをプラットフォームとした近年の製品群だ。Flashベースの製品の上側がビジネスユーザー向けのWebコミュニケーションを目的とした製品群。下側がアプリケーションのユーザーインターフェイス部分を作成するための製品群だ。Flash対応のデバイスはPCだけでなく携帯電話やPDA等にもユビキタスに展開されていることが分かる。

図1 Flashを軸に提供されるマクロメディア製品とユーザーの相関図(図をクリックすると拡大表示します)

 ここで本フォーラムの読者に関係の深い製品は図1のエンタープライズで囲まれる製品群だ。プラットフォームの中核にはFlexが位置する。Flexの下のColdFusionは、CFMLと呼ばれる簡易なタグで本格的なWebアプリケーションを実現できる製品だ。Flash Communication ServerはFlashをユーザーインターフェイスに用いたマルチユーザーコンテンツを実現するためのプラットフォーム製品である。Breezeは、ビジネスユーザーのためのWebコミュニケーションツールだ。PowerPointで作成したプレゼンテーション資料をインターネットに配信でき、さらにはマルチユーザーでのWeb会議も開催できる。このように、マクロメディアの製品はFlashを核としてリッチな体験、そしてRIAを提供するものへと大きく変わってきている。

米マクロメディアプレジデント兼モバイル&デバイス担当のユーハ・クリステンセン氏

 ところで、去る2004年11月に開催されたMacromedia MAX 2004では基調講演の前日に「モバイルデー」が設けられた。PCだけでなく携帯電話をはじめとするノンPCデバイスにまで、今後マクロメディアのソリューションはユビキタスに展開されていくことが強調された。プレス向けのラウンドテーブルの中で、米マクロメディアプレジデント兼モバイル&デバイス担当のユーハ・クリステンセン氏は、「日本国内の携帯電話人口の約13%がすでにFlash搭載の携帯電話を利用している。日本はモバイルFlash分野で世界のリーディングマーケットであり、われわれも注目している」と述べた。

 Flash対応のNTTドコモやKDDIの携帯電話には、Flash Liteと呼ばれるFlash Playerが搭載されている。携帯電話のような狭い画面の端末には、高いユーザビリティと操作性を提供するFlashは非常に有効だ。また、近年の携帯電話の処理性能向上が、ノンPCにもPCと同様のリッチな体験を提供する可能性をもたらしている。

 マクロメディアは2005年度中をめどに、携帯キャリア向けに「FlashCast」と呼ばれるPush型の携帯コンテンツ配信システムを提供する予定だ。これは携帯版のケーブルテレビチャンネルのようなものであり、月々数百円で利用できる基本チャンネルと、基本チャンネルより高めの料金設定で利用できるプレミアチャンネルとが組み合わさって提供される予定だ。

Blackstoneの登場

 マクロメディアが本年出荷予定の目玉はコードネーム「Blackstone」と呼ばれる次期ColdFusionだ。Blackstoneはタグを<flash>に変更するだけでHTMLベースのユーザーインターフェイスをFlash化することができる製品だ。従来のColdFusion開発者が容易にFlashアプリケーションを開発することができるため、RIA開発をずっと容易にできるようになる。

 Blackstoneは、Flashベースの帳票を出力する機能を標準で搭載している。現在国内ではPDFベースの帳票製品が多い中、Flashベースの帳票製品としての観点から注目を集める可能性が高いだろう。

ビジネスFlashは使いやすさを提供する

 従来のシステム開発は、システム開発者の観点からアーキテクチャを決定し、ユーザーインターフェイスを開発した。ユーザーの意見を取り入れているとはいえ、それは十分なものとはいえなかっただろう。

 マクロメディアが提供するビジネスFlashは、使いづらかったアプリケーションに、ユーザーの立場からの使いやすさを提供することをコンセプトにしている。エンドユーザーの意思決定層にユーザー主導のシステム導入という意識が強くなる中、ビジネスFlashはシステム屋の都合ではなく、ユーザーの使いやすさを考えたシステム作りのムーブメントを起こす1要素となり得ると考えられている。



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