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イベントに見る次世代リッチクライアント像

ナレッジオンデマンド
宮下知起
2006/4/14

@IT編集部は、2006年3月3日、「@ITリッチクライアントカンファレンスIII」を開催した。「SOA」と「エクスペリエンス」は。異なる領域の言葉だが、突き詰めていくと「ユーザー主導」という将来像につながっていくようだ。(編集局)
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エクスペリエンスとSOAを指向し始めたリッチクライアント

 基調講演に立った野村総合研究所 主任研究員 田中達雄氏は、2006年をリッチクライアントの2次成長期だと位置づけ、Webクライアントが抱える課題を解決するソリューションとして誕生したリッチクライアントは、「ユーザーエクスペリエンス」と「SOA」を指向して進化すると述べた。

 田中氏は「今後Webが最大の顧客コンタクトチャネルとなる。企業はより多くの顧客を獲得するためにはWeb上で“よりよいユーザー体験”を提供することが重要だ」と強調する(ユーザーエクスペリエンス=ユーザー体験)。

 さらに、企業システムのトレンドとして「ユーザーインターフェイスはアプリケーションから分離され、アプリケーションに依存しないユーザーエクスペリエンスを実現する方向へ向かっている」とも述べた。ユーザーインターフェイスとアプリケーションのロジックをモノリシックに作り込むのではなく、ユーザーが求める体験に応じてユーザーインターフェイスを用意。サービスとして提供されるアプリケーションを、クライアント側で束ねてビジネスロジックを構築する。すなわち、リッチクライアントで実現する「SOA」である。

お互いの得意分野を伺いはじめたリッチクライアント

 日本にリッチクライアントのキーワードが普及するきっかけとなった製品といっても過言ではないBiz/Browser。開発者にとっての生産性の高さを追及してきたBiz/Browserについてアクシスソフト Biz/Browser開発者の田中康興氏は「将来的には利用者自身がユーザーインターフェイスをカスタマイズできるインターフェイスを目指している」と述べた。

基調講演には前回を上回る総勢400名を超える参加者があった。リッチクライアントへの関心は高まる一方のようだ

 一方で、これまでFlashで表現力の高いユーザーインターフェイスを追求してきたアドビシステムズは、Flexで開発者にとっての生産性を追求する。アドビシステムズ(旧マクロメディア)は、2004年、開発者がFlashをインターフェイスに用いたアプリケーションを容易に開発できるプレゼンテーションサーバとしてFlexを世に送り出した。そしてFlexは今年登場するFlex 2.0で画面設計のためのEclipseベースの開発ツール「FlexBuilder」とサーバ側のミドルウェアとに分けて提供されることになる。アドビシステムズ マーケティング本部 公共・法人市場部部長 小島英輝氏は「これまで平面だけだったPDFに動的3Dモデルを実現するAdobe Acrobat 3D、より高速な描画を実現し表現力を増したFlash 8.5、Flex 2.0が融合されることで、より豊かなWebアプリケーション開発が可能になる」と述べた。

 このように「これまで表現力を追求した技術と生産性を追及した技術が、お互いの領域を伺いはじめている」(前述の田中氏)。リッチクライアントは表現力と生産性、そしてSOAという新たな領域に向かいつつあるようだ。

SOAを強く指向するカールとサイオ

 カールのリッチクライアントは、Flashに似て豊かな表現力をもつが、マサチューセッツ工科大学生まれのCurl言語を開発言語にもつアカデミック色が異彩を放つ。カール セールスサポート・コンサルティンググループ 梅村知正氏はSOAクライアントとしてのカールを強調した。SOAはこれまでサーバ側でのサービスの結合のことを言われてきたが、リッチクライアントのSOAはクライアント側でサービスを束ねる。「CurlはWeb上に分散したサービスをユーザーが自在に利用できるエージェントだ。サービスを組み合わせ、そこから得た情報を必要に応じて加工、画面に表示する」(梅村氏)。

 具体的には、CurlプログラムがWSDLを読み込み、Webサービスの利用に必要なCurlコードを自動生成するためのSDKが用意されている。今後CurlはSOAを指向し、さらにテクノロジを進化させていくという。

 カールと同様にSOAを指向する国産のリッチクラインはサイオのIdbAだ。サイオ 取締役営業・マーケティング 担当副社長 吉政忠志氏は「IdbAを利用すれば、ユーザーは必要なコンポーネントをドラッグ&ドロップで選択し、必要なサービスの追加・変更が容易。すなわちユーザーはアプリケーションやベンダの影響を受けず、必要なサービスをクライアント側で利用できる」と述べた。利用者のニーズに合わせて複数のサービスを柔軟に組み合わせるアーキテクチャをSOAと捉えるなら、サイオのIdbAもクライアント型SOAと呼べるというわけだ。

 サイオは「Rimless Computing」の実現を標榜している。現在の、ユーザーがモノリシックに作られた複数のアプリケーションを利用する形態はベンダ主導であり、ユーザーにとってハッピーな姿ではないとサイオは主張する。さまざまなサービス(部品)を、ユーザーが必要に応じて自ら組み合わせ、自在に利用できるのがユーザーにとって最も幸せな姿。すなわちユーザー主導のコンピューティングであり、 アプリケーション間の壁を取り除いた「Rimless Computing」というわけだ。

Web標準にこだわるリッチクライアント

 プラグインを必要とせず、Webブラウザの標準機能のみでリッチクライアントを実現しようとするのがHOWS(ハウズ)とウイングアークテクノロジーズだ。

 HOWSはAjaxでエンタープライズアプリケーションの構築を目指す。同社は、Biz/Browserを生み出したアクシスソフトの設立者である大塚裕志氏とドリームワークスでCTOを勤めた庄司渉氏が設立した。海外の多くのベンダがコードベースのAjax統合開発環境の提供に走るのに対して、HOWSはコーディングレスでAjaxアプリケーションを構築できる「AjaxBuilder」を提供する。セッションではAjaxで構築したさまざまなアプリケーションを披露し、これまでGoogle MapやGoogle SuggestだけでしかAjaxアプリケーションを知らなかった聴衆を沸かせた。

 庄司氏は「コンピューティングの将来は、クライアントアプリケーションは必要なくなり、Webブラウザ上ですべてのアプリケーションニーズが満たせるようになる。我々はユーザーの本当のメリットはなにかを考えている」と述べる。

 ウイングアークは、Microsoft WordやExcel、HTML、PDF、SVFフォーム(ウイングアーク帳票ツール)、紙帳票を取り込み、HTMLベースのフォームを生成。生成フォームで情報の入出力を行えるStraForm-Xを披露した。StraForm-Xは、簡易なデータエントリー業務に適したリッチWebフォームソリューションを提供する。エンターキーによる入力項目の移動や、入力値チェック、IME自動起動、数値のカンマ区切り、四則演算、文字サイズ・フォント調整など、データ入力業務に必要なさまざまな機能を備える。最大の特長はフォームとデータを完全に分離できるフォームオーバーレイ機能だ。データをXMLファイルで格納できるため、データの2次利用の自由度が高まり、別のアプリケーションへのデータの流用も容易だ。部門レベルでのデータエントリーソリューションに向いている。

 ウイングアークテクノロジーズ プロフェッショナルサービス部 小池尚樹氏は「今後Ajaxにも注目している。Ajaxと組み合わせれば、より操作性やユーザビリティーを高められる」とし、Ajaxの非同期通信を有効活用したソリューションへの成長の可能性を述べた。

 これら2つのリッチクライアントは、本格的なシステム開発を前提にした他のリッチクライアントとは異色の技術ではあるが、ユーザーにとっての本当のメリットとはなにか? 使いやすさとはなにか? を追求している点は共通している。

Web 2.0時代のリッチクライアントはエンドユーザー主導型か?

 リッチクライアントは、ユーザーエクスペリエンス、SOAを指向しているようだ。そしてこれは、コンシューマで進展するWeb 2.0の流れとも無縁ではないかもしれない。リッチクライアントにおけるSOA、すなわちアプリケーションロジックとユーザーインターフェイスが分離し、ユーザーが独自に用意した画面で多くのサービスから必要なものを選択し利用する形態は、例えばポータルのTOPページから情報を探って収集するのではなく、RSSリーダでインターネット上に偏在するあらゆるWeb、ブログから情報を収集する形態に似てはいまいか。「今後コンシューマは企業が用意した画面以外を利用する比率が増える」と田中氏が語るように、ユーザーにとってもっともよいエクスペリエンスの画面を用い必要な情報に直接アクセスする。これは、企業やアプリケーション、サービスの都合ではなく、ユーザーを考えた姿だといえよう。

 リッチクライアントはWebクライアントによってダウングレードした使い安さや生産性を改善するソリューションとして登場した。今後のリッチクライアントは、田中氏が語るように2次成長期を向かえ、ユーザーエクスペリエンスやSOAを指向しながら、エンドユーザーにとっての本当の使いやすさを考えているとはいえまいか。リッチクライアントはユーザーのニーズを受け、単にWebクライアントの課題解決ソリューションではなく、真のエンドユーザー中心主義のソリューションとして成長をはじめたのかもしれない。




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