ネットの進化で広がるSaaSと
エンタープライズ2.0


Interop Tokyo 2008 セミナーレポート

@IT編集部
平田 修
2008/6/20


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 2008年6月11〜13日、千葉県幕張メッセにてネットワークを主要テーマとする展示会/イベント、「Interop Tokyo 2008」(以下、Interop)が開催された。今年は「SaaS」がキーワードとして盛り上がっていることもあり、大手ベンダの各ブースやセミナーでも「SaaS」という単語を多く見掛けた。また、展示会場には「エンタープライズ2.0パビリオン」も設置され、「エンタープライズ2.0」というキーワードのセミナーもいくつか開催されていた。

 そこで本稿では、SaaSとエンタープライズ2.0に関するセミナー/講演の模様を中心にSaaSとエンタープライズ2.0の話題をお届けしよう。

SaaSの歴史・現状・これから

 「インターネットの歴史には大きく3つの変化があった」

 こう述べるのはネットコンピューティングアライアンス 会長/電気通信大学 大学院 情報システム学研究科 津田邦和氏。津田氏は、「ネットコンピューティングの進展とASP・SaaSのイノベーション」という講演を行い、SaaSのインターネットの歴史やSaaSの現状と今後について熱弁を振るった。

ネットコンピューティングアライアンス 会長/電気通信大学 大学院 情報システム学研究科 津田邦和氏
ネットコンピューティングアライアンス 会長/電気通信大学 大学院 情報システム学研究科 津田邦和氏

 津田氏のいう3つの変化とは、以下のものだ。まず、1989年にティム・バーナーズ・リー氏による、いわゆるWWW(World Wide Web)の提案があり、インターネットが単なる通信方式から変化を始め、ホームページとメールが出現した。次に、1998年にセルゲイ・ブリン氏とラリー・ページ氏による論文「ハイパーテキスト対応大規模Web検索エンジンの分析」が発表され、Yahoo!やGoogleといった検索エンジンによって希望するコンテンツにたどり着く確率が高まった。これにより、インターネットは「情報伝達のみの通信」から「情報基盤+知の基盤+コミュニティ」へと変化を遂げることとなった。そして、3つ目は2005年のJ.J.ギャレット氏による発表を景気としたAjaxの普及。これによって、Webアプリケーションのユーザビリティがデスクトップ並みになり、インターネットとWebは従来のOSに代わるプラットフォーム、つまりASP・SaaSの基盤へと変化したという。また、ブロードバンドの普及などネットワークのインフラが進化したことによって、デスクトップ並みのアプリケーションをWeb上で動かせるRIAが普及してきたことも見逃せない。

 津田氏は、ASPを「特定の技術に限らずネットワークを通じてコンピュータを使うこと」と位置付け、SaaSやクラウドコンピューティング、古くからのユーティリティコンピューティングやオンデマンドコンピューティング、さらにAjaxによるWebマッシュアップもほとんど同じ意味であるという。津田氏は、その利点を「主要部分の集中化による効率化」とした。

 例えば、ネットワークによりサーバ(データベースやWebアプリケーション)を1カ所に集め、サーバの専門家たちが高度なノウハウで保守することによってセキュリティの心配も減り、運用コストが低減できる。また、共通化可能なアプリケーションやシステムを共同利用することによって、開発コストも低減できる。共通化できない個別アプリケーション・システムでも、サーバのホスティングでデータセンターの共同利用が可能だという。これらの利点に加え、2007年2月の経済財政諮問会議で日本政府がASP・SaaSは中小企業の底上げや日本の社会的基盤に必要だという認識を持ったこともあり、ASP・SaaSが国内市場で広大すると予測される。

ASP・SaaSの活用展開
ASP・SaaSの活用展開

 「OSやISP、検索エンジン、ソフト/ハードウェア、SI、キャリアなどのさまざまなITベンダのほとんどは境目がなくなり、データセンターホスティング/ASP・SaaSベンダになるだろう。2006〜2007年にコンピュータの世界は一変したのだ。これからは、端末販売以外にハウジング・ホスティング・ASP/SaaSの3つのビジネスが展開される。活用分野としては、電子自治体、学校教育、医療・介護、土木工事、中小企業、サービス業などがある。特に、学校教育現場はほとんどIT化されていないので、これから急激に始まるだろう。さらに、ASP・SaaSを活用すると、データセンターに機能を集中することでCO2の削減も可能だ」(津田氏)

SaaSによって日本の“企業”や“現場”はどう変わる?

 SaaSによって企業や開発現場、使用するユーザーはどのように変わるのだろうか? 野村総合研究所 情報技術本部 技術調査部 主任研究員 城田真琴氏の講演「SaaSの現状と将来展望〜ベンダー、ユーザーはSaaSにどう取り組むべきか〜」で、そのヒントを垣間見られたので、お伝えしよう。

 まず、SaaSの現在の市場動向について。代表的なSaaS専業ベンダとしては、セールスフォース・ドットコムやネットスイートが挙げられた。これらのベンダはいままでは、CRMERPといったアプリケーションをSaaSで提供していたが、最近はそれに加え、ユーザーやプログラマーがWeb上で開発できるプラットフォームを、インフラも含めて提供するサービスに力を入れている。いわゆるPaaS(Platform as a Service)だ。現在のところ、ネットスイートはあくまでもCRMありきのカスタマイズ・アプリケーションの開発を主として提供しているが、セールスフォース・ドットコムはJavaに似ている独自オンデマンド言語「Apex」を使って、CRMに限らず自由にアプリケーションを開発できるプラットフォームを提供している(参考:新しいWebの潮流「クラウドコンピューティング」とRIA)。

 大手パッケージベンダの戦略としては、パッケージソフトのお試し版としてSaaS版を提供し、その後ライセンス版への移行を促す場合が多い。これについて、城田氏は次のように付け加えた。「移行のうたい文句としては、『長期的に使う場合はライセンス版の方がトータルコストで安くなる』というものだが、コストの考え方はいろいろあるので、意見が分かれるだろう」。

 それでは、SaaSは今後、ビジネスとしてどう展開されるのだろうか。SI事業はSaaSでどう変わるのか。そして、SaaSを実際に使うユーザー企業はどのようにSaaSを活用するべきなのか。次ページでお届けしよう。

コラム 「今夏、日本発売開始のウィジェット端末Chumbyを発見!」

Interopの併設展、「IMC(Interop Media Convergence) TOKYO 2008」(以下、IMC)をのぞいてみると、とあるブースでいま話題の「Chumby」が展示されていた。

IMCで展示されていた「Chumby」 IMCで展示されていた「Chumby」
IMCで展示されていた「Chumby」


「Chumby」は目覚まし時計の形をしたタッチパネルのディスプレイ付き小型情報端末で、LinuxベースのOSが組み込まれ、さまざまなFlash Liteウィジェット無線LAN経由でインストールできる(参考:chumby――米国生まれの情報端末に家電の未来を見る)。ウィジェットはインターネットラジオやYouTube、簡単なゲームなどが用意されていて、自分で開発も可能だ。USBケーブル端子も付いていて、iPodをつなぐと「Chumby」のディスプレイからiPodの操作も可能だという。

2008年6月現在、日本発売はされていないが、今夏リリースに向けて現在調整中とのことだ。

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 INDEX   Interop Tokyo 2008 セミナーレポート
ネットの進化で広がるSaaSとエンタープライズ2.0
Page1
SaaSの歴史・現状・これから
SaaSによって日本の“企業”や“現場”はどう変わる?
コラム 「今夏、日本発売開始のウィジェット端末Chumbyを発見!」
  Page2
「エンタープライズ2.0」と、3つの誤解
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