Competition

[Competition]

小中規模サーバ統合向け仮想化ソフトウェア

―― Hyper-V、VMware、Xenを比較する ――

デジタルアドバンテージ 島田 広道
2009/03/05
2009/03/10更新

「Competition」は、特定ジャンル/テーマのWindows対応製品をスペックで横並び比較するコーナーです。

スペック表インデックス
マイクロソフト
Hyper-V Server 2008
マイクロソフト
Windows Server 2008 with Hyper-V
ヴイエムウェア
VMware ESXi 3.5
ヴイエムウェア
VMware Infrastructure 3 v.3.5 Foundation
シトリックス
Citrix XenServer 5.0 Express Edition
シトリックス
Citrix XenServer 5.0 Standard Edition
日商エレクトロニクス
Virtual Iron 4.4 Single Server Edition
日商エレクトロニクス
Virtual Iron 4.5 Extended Enterprise Edition
スペック比較表へ

 近年の企業ITシステムにおける課題として、サーバの乱立による運用効率悪化やTCOの増大が挙げられる。サーバの台数が多いほど、故障の可能性は高まり、メンテナンス・コストが増大することになる。またサーバの乱立は、リソースの有効利用という点でも問題になることが多い。あるサーバでは性能が足りない一方、別のサーバでは余っているといったことが容易に起こる。昨今の経済環境の悪化から、こうした問題は経営面からも放置できなくなってきている。

 これに対し、仮想化技術とハードウェア性能の向上などにより、現実的な性能を維持しつつ、従来の物理サーバ環境を仮想環境に置き換えることが可能になってきている。仮想環境への移行で物理サーバを統合すれば、リソースの有効利用が可能になり、結果としてTCOも削減できる。仮想化技術の導入にはそれなりの初期投資が必要だが、中長期的に見れば大幅なITシステムの管理コスト削減が可能であり、急速に関心が高まっている。

仮想化技術はじめの一歩(基礎解説)

 また仮想化を利用したサーバ統合などでシステム全体の見通しをよくすれば、将来の拡張や強化も容易になる。さらに昨今では、システムの環境負荷低減を目指す「グリーンIT」という観点でも、仮想化によるサーバの利用効率向上と電力消費低減が注目されている。

  本稿の目的は、小〜中規模クラスの業務アプリケーション・サーバの統合を念頭に、現時点(2009年3月時点)で利用可能な仮想化ソフトウェア製品をリストアップし、主要な機能比較を行うことだ(BtoC向けの大規模なサーバなどは含まない)。サーバの仮想化を実現する製品は複数提供されており、製品により仮想化の実現方式も異なる。このうち今回は、仮想化によるオーバーヘッドが小さく、比較的高性能な仮想化環境を構築できるハイパーバイザ型(ハイブリッド型を含む)の製品を取り上げる。ホストOS上で仮想環境を実行するVirtual Serverなどのホスト型製品については、条件が大きく異なるので今回は割愛した。

今回比較した3種類の製品

 今回比較対象とした製品はHyper-V(マイクロソフト)、VMware ESXi/Infrastructure(ヴイエムウェア)、Xen(シトリックス/オープン・ソース)の3種類である。各製品に複数のエディションがあり、エディションによる違いを明確化する意味もあってスペック比較表のエントリは合計8製品となった。ただし、今回は小〜中規模向けシステムを前提にしたので、原則として上位のエンタープライズ向け製品/エディションは除外している。

■マイクロソフト Hyper-V
 Hyper-Vはマイクロソフト初のハイパーバイザ型の仮想化エンジンである(ハイブリッド型に分類されることもある)。現在はWindows Server 2008に標準で組み込まれているほか、単体でHyper-V Server 2008として無償でも提供されている。

 これらの製品にはP2V(物理マシンからVMへの移行機能)やV2V(別種のVMから当該製品用VMへの移行機能)といった管理機能が含まれていないが、別途提供されている統合管理製品のSystem Center Virtual Machine Manager 2008(SCVMM、リテール版で29万8000円)によって利用できるようになる(SCVMMにはHyper-Vは含まれない)。SCVMMは比較的高額な製品だが、大規模環境向けを含めた全管理機能が提供される。前述したとおり、今回は「中小規模のサーバ統合」を前提にするので、SCVMMを組み合わせた場合については扱わないが、特に管理機能などで、SCVMMが必要な機能についてスペック表に明記している。

 なおWindows Server 2008の場合、エディション(Standard/Enterprise/Datacenter)によって仮想化関連のスペックが若干異なる。そこで、Hyper-V Server 2008と、小〜中規模向けのWindows Server 2008 Standard Edition+Hyper-Vの2構成をスペック比較表に加えている。

■ヴイエムウェアのVMware ESXi/Infrastructure
 仮想化ソフトウェアの分野では老舗といえるヴイエムウェアは、サーバ統合に適したハイパーバイザ型仮想化ソフトウェア製品としてVMware ESXiとVMware Infrastructure3をラインアップしている。このうちESXiは、前身のVMware ESXから管理機能を提供するサービス・コンソール(LinuxベースのコンソールOS)が省かれ、無償版として提供されたものだ。ほかのベンダも、有償版から管理機能を減らした無償版のエディションを用意しており、無償版の提供は最近のトレンドといえる。

 またInfrastructureは、ESX/ESXiに各種機能を追加した有償製品として提供されているものだ。今回は、対象規模などに応じた3種類(Foundation/Standard/Enterprise)のエディションから小中規模向けのFoundationエディションと、ESXi単体を選んだ。

■Xenベースの製品
 Xenは、XenSource(Citrixに買収)が開発し、オープン・ソースとしても提供されている仮想化エンジンである。現在、これをベースに各種管理機能などを加えた仮想化ソフトウェアが複数のベンダからリリースされている。Xenベースの製品には、Linuxディストリビューションと一体化している製品もある。しかし今回はWindowsサーバ主体で使うことを想定し、Linuxでの管理を前提としない仮想化ソフトウェアとして、シトリックスのXenServer 5と日商エレクトロニクスのVirtual Ironを取り上げている。

 XenServer 5には4種類(Express/Standard/Enterprise/Platinum)のエディションがあり、そのうち無償のExpressと小〜中規模向けのStandardをそれぞれ選んだ。一方Virtual Ironのエディションは無償のSingle Serverと有償のExtended Enterpriseの2種類のみのため、両方とも掲載している。

スペックにおける製品の注目ポイント

■仮想マシンの互換性
 仮想化ソフトウェアでは、ソフトウェアでサーバ・マシンのハードウェアをエミュレートする「仮想マシン(VM)」を作り出し、その上でOSやアプリケーションを実行する。つまりサーバ統合では、物理的なサーバ・ハードウェアを、ソフトウェアによるVMで置き換えることになる。

仮想化技術はじめの一歩 3.仮想マシン・モニタの概要(基礎解説)

 サーバ統合では現在稼働している物理環境の移行が主目的であるから、互換性は何より重要だ。一般的なアプリケーションやデバイスについては、ほとんどの製品が高い互換性を確保しているが、100%完全というわけではない。VMの構成や仮想化ソフトウェア・ベンダのサポート・ポリシーの差によって多少の違いがある。例えば、同じOSでも特定のエディションやService PackレベルがゲストOSのサポート対象から外れている場合がある(スペック表の「ゲストOSのサポート」)。またVMから利用できないハードウェアも製品によって異なる(スペック表の「VMから利用可能な物理USBデバイス」「VMから利用可能な物理プリンタI/F」「サポートしている共有ストレージ」など)。事前のスペック比較はもちろんだが、評価版を利用したユーザー自身による互換性評価も不可欠だろう(次ページ以降のスペック表やスペック比較表には、各製品の評価版入手先も示してある)。

■仮想マシンの実行性能
 あらためて述べるまでもなく、仮想化環境の実行性能も非常に重要だ。しかしVMの性能は、ホストするサーバの性能/リソースと、その上で動かすVMの数、アプリケーションなど個別の条件に大きく依存する。互換性同様、こちらも最終的には、評価版などを利用したテストが必要だろう。

 ただし一般論として、物理サーバを仮想環境に移行するには、物理サーバと同等以上の性能がVM向けに必要だ。このためには、ホスト・マシンに高い性能が求められる。こうした性能にかかわるスペック上のポイントとしては、スペック表の「物理プロセッサ最大数」や「物理メモリ最大容量」「VM1つ当たりの仮想プロセッサ最大数」「VM1つ当たりのメモリ最大容量」などが挙げられる。特に最大メモリ容量は、ホスト・マシン1台に統合可能なサーバの最大数の限界に直結しやすく、コストに影響を与える。ただし、VMware ESXi/Infrastructureのようにメモリ使用効率を高めることで、物理メモリ最大容量より全VMへの割り当てメモリ総容量を大きく設定できる製品もあるので、実際の評価前の目安としてとらえるのがよい。

■仮想マシンおよびホスト・マシンの管理機能
 仮想化により物理サーバを減らせば、自動的にTCOを削減できると考えがちだが、複数の仮想環境とホスト・マシンを効率よく管理できなければ、管理の手間は仮想化以前と大して変わらない。そこで今回は管理機能についても注目した(スペック表の「管理機能」以下の各項目)。ただ小〜中規模サーバ統合向けの製品では、ライブ・マイグレーション(稼働中のVMをそのまま別のホスト・マシンに移動する機能)や自動的なプロビジョニング(リソースの動的な再割り当て)といった高度な機能には非対応のことが多い。それでも、オプションや統合管理製品を別途購入すれば利用できる製品もある。

ベンダ 製品名 提供形態 価格 リリース時期 詳細スペック表へ
マイクロソフト Hyper-V Server 2008 無償ダウンロード 無償 2008年7月  この製品のスペック表へ
マイクロソフト Windows Server 2008 with Hyper-V リセラー / プレインストール 18万8000円(Standard、5CAL付き、リテール版) 2008年7月  この製品のスペック表へ
ヴイエムウェア VMware ESXi 3.5 無償ダウンロード / プレインストール 無償 2008年7月  この製品のスペック表へ
ヴイエムウェア VMware Infrastructure 3 v.3.5 Foundation 直販 / リセラー / プレインストール 20万円(市場予想価格) 2008年7月  この製品のスペック表へ
シトリックス・システムズ・ジャパン Citrix XenServer 5.0 Express Edition 無償ダウンロード 無償 2008年10月  この製品のスペック表へ
シトリックス・システムズ・ジャパン Citrix XenServer 5.0 Standard Edition リセラー 16万8300円 2008年10月  この製品のスペック表へ
Virtual Iron(日商エレクトロニクス) Virtual Iron 4.4 Single Server Edition 無償ダウンロード 無償 2008年10月  この製品のスペック表へ
Virtual Iron(日商エレクトロニクス) Virtual Iron 4.5 Extended Enterprise Edition リセラー 24万8000円/プロセッサ・ソケット 2009年3月  この製品のスペック表へ
比較対象の製品一覧
(各スペック表は2009年3月5日の情報に基づいています)
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 INDEX
  Competition
小中規模サーバ統合向け仮想化ソフトウェア
    1.スペック表の各項目について
    2.スペック表: マイクロソフト Hyper-V Server 2008
    3.スペック表: マイクロソフト Windows Server 2008 with Hyper-V
    4.スペック表: ヴイエムウェア VMware ESXi 3.5
    5.スペック表: ヴイエムウェア VMware Infrastructure 3 v.3.5 Foundation
    6.スペック表: シトリックス Citrix XenServer 5.0 Express Edition
    7.スペック表: シトリックス Citrix XenServer 5.0 Standard Edition
    8.スペック表: 日商エレクトロニクス Virtual Iron 4.4 Single Server Edition
    9.スペック表: 日商エレクトロニクス Virtual Iron 4.5 Extended Enterprise Edition

更新履歴

【2009/03/10】
公開当初、本記事では、Windows Server 2008とSystem Center Virtual Machine Manager 2008(以下SCVMM)(いずれもマイクロソフト製品)を組み合わせた場合について、「Windows Server 2008 with Hyper-V+System Center Virtual Machine Manager 2008(SCVMM)」として製品の1つとして扱っていました。しかし記事公開後、フルスペックの統合管理機能を持つSCVMMを組み合わせた場合には、「小中規模のサーバ統合」という記事の主旨を超えた多数の機能が提供されることになり、それらを「スペック表」という単純化された表現手段で、他社製品と比較するということについては、誤解を招く恐れがあり、公正さを欠く可能性があるという指摘を受けました。編集部で検討した結果、中立性や公正性の観点から見て、指摘には合理性があり、記事の修正が必要と判断しました。具体的には、前出の「Windows Server 2008 with Hyper-V+System Center Virtual Machine Manager 2008」の情報を記事中から削除するとともに、SCVMMがなければ利用できない機能(P2V、V2V移行機能など)について明示しました。読者のみなさまおよび関係者の方々には、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

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