特集　Windows Server 2003完全ガイド Windows SharePoint Servicesがもたらす次世代チーム・コラボレーション 3．WSSの制約と検討事項
Chris Alliegro 2003/07/03 Copyright(C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

　WSSは要するにSTSを徹底的に書き直したもので、新テクノロジ（ASP.NETおよびWebパーツ）を基盤にしており、従来SPSに含まれていた機能を内包している。したがって、顧客はこの製品がある程度未完成だと見なすかもしれない。

　さらに、潜在顧客はWSSを評価する際に次の制約や懸念を考慮すべきである。

●異なる作業モデル
　Microsoftはこれまで、Office中心のコラボレーション・パラダイムを試みて苦戦しているため、顧客にWSSとOffice 2003 Systemの作業モデルの利用を説得する際も苦労するだろう。顧客はWSSの採用に抵抗を示すかもしれない。

　例えば会議ワークスペースは、詳細な議題と参考資料が必要な大規模で複雑な会議や、課題の追跡に焦点を絞り、決まった計画表の下で反復開催されるプロジェクト会議に便利であることを実感するかもしれない。しかし、よりシンプルな議題と少人数の参加者による、これほど複雑ではない大半の会議や、同僚同士の即席の会議には機能過剰だろう。そうした会議には、Outlookの既存の機能が最適だ。

●サイト・ナビゲーション
　WSSはユーザーに対し、チーム・サイトの階層全体を表示して、画面を移動する手段としては限られたものしか用意していない。すべてのチーム・サイトとページは1レベル上のサイトへの明確なリンクを備えており、ユーザーは1レベル下のサイトやワークスペースを列挙したページに進むことができるが、チーム・サイトはその下にあるすべてのサブサイトへのリンクを備えていない。例えば会議ワークスペースへの最も直接的な経路は、ワークスペースの作成時に送付された会議出席依頼に含まれたリンクをクリックすることである。これは会議の議事録やアクション・アイテムを確認したいが、会議に呼ばれなかったり、最初の会議出席依頼を辞退したり、削除してしまったチーム・メンバーにとっては不便かもしれない。

●サイトの拡散を管理
　基本的なサーバ・インフラが整備されれば、ワークスペースのようなコンセプトはチーム・サイトの構築をきわめて容易にする（Microsoft自体、社内に2万以上のSTSサイトがある）。このため、IT部門は一時的なメンテナンスされないサイトのとめどない拡散に直面するかもしれない。WSSはIT管理者によるサイトの発展管理を支援するためにサイトの割り当てや休眠サイトの通知機能などを用意しているが、サイト・ナビゲーション機能の制約のせいでこれは管理者にとって難題となるかもしれない。

　例えば、あるチーム・サイトとすべての関連サブサイトを削除することは可能だが、サイト全体の階層を眺め渡し（例えばファイル・サーバのディレクトリ構造の視覚化に用いるツリー・コントロールのようなビューによって）、その階層の中の一群のサイトを選択的に削除することはできない。IT管理者やチーム管理者は、割り当てが陳腐な、あるいは無関係なサイトやデータですぐにいっぱいになり、他の正常なサイト・ユーザーをブロックしないよう積極的に管理する必要がある。

　チーム・サイトが広く普及している組織にとっては、Office SharePoint Portal Server 2003（SPS 2003）が答えになるかもしれない。SPS 2003は、管理者やIT管理者が多数のチーム・サイトとそれに付随する潜在的問題（例えばサイトのとめどない拡散）を制御しやすいように設計されている。例えばサイト・ナビゲーションと可視性は、管理者にWSS設備内のすべてのチーム・サイトの構造的ビューを提供するSPSサイト・ディレクトリによって改善される。しかしWSSとは異なり、SPSは無料製品ではない。

●MSDEの制約
　WSSを用い、（無料の）MSDEオプションで単純なサイトを構築することは可能だが、WSSの機能は限られる。例えばMSDEには、データベースのバックアップとリストア用のツールが含まれていない（とはいえ、MicrosoftはWSSに付属するバージョンのMSDEでは、2GBytesのストレージ制限を取り除くという）。

　さらに、このコンフィギュレーションではWSSはチーム・サイトを検索できない。WSSに検索を実装するには、顧客はSQL ServerまたはSPS 2003を必要とする。しかし、たとえSQL Serverがあっても、まだ制約はある。例えば、クロス・サイト検索や、Exchangeやファイル・シェアといったほかのストアを検索することはできない。したがって、多数のユーザーと全社規模の検索機能をサポートする、より複雑なチーム・インフラを築く大企業の顧客はSPS 2003を検討すべきである。

参考資料

• WSSは2003年夏頃に出荷予定で、Windows Server 2003の顧客向けの無料アドオンとなる。WSSを稼働するサーバはWebサーバとして設定し（ワーカー・プロセス分離モードでIIS 6.0を稼働させ）、ASP.NETを稼働する必要がある。

• IE 5.01以降（Macintoshの場合はIE 5.2以降）またはNavigator 6.2以降を稼働するWindowsとMacintosh、UNIXクライアントは、WSSサイトをブラウズし、その機能を利用できる。

• WSSに関する追加情報については以下を参照。
  Microsoft SharePoint Portal Server 2003のホームページ
  

Directions on Microsoft日本語版 本記事は、（株）メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。Directions on Microsoftは、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。

　

	関連リンク
		＠IT FYI　SharePoint Portal Serverで実現する新しいワークスタイルの形

INDEX
	［特集］Windows .NET Server 2003完全ガイド
	Windows SharePoint Servicesがもたらす次世代チーム・コラボレーション
	1．チーム・コラボレーションの簡略化とOffice 2003の位置付け
	コラム：SharePointテクノロジの構造
	2．管理機能の改善
	コラム：WSSとOffice 2003の効果的な統合
	3．WSSの制約と検討事項

　

Windows Server 2003完全ガイド

＠ITメールマガジン　新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます（無料）