技術解説

Windows Server 2003に実装されたIPv6機能

吉田 かおる
2003/06/10

 
 本記事は、@ITハイブックスシリーズ『Windows Server 2003 ネットワーク構築ガイドブック』(インプレス発行)の第10章「IPv6」を、許可を得て転載したものです。同書籍に関する詳しい情報については、本記事の最後に掲載しています。

1-1 IPv6とは?

 現在のTCP/IPネットワークで使用されているIP(IPv4)は、20年以上前に開発されたプロトコルです。移り変わりの激しいコンピュータの世界において、20年以上前に開発されたプロトコルが現在も使用されていることは驚異的といえます。これは、IPがいかに優れた設計であったかを意味します。しかし、爆発的なインターネットの普及により、優れたIPにも限界がきています。現在、IPは以下のような問題を抱えています(図1-1)。

図1-1 IPv4の限界

■アドレス空間の不足
 IPアドレスは、32ビットであり、その数は約43億です。当初は妥当な数とされていたIPアドレスですが、インターネットの爆発的な普及により、不足気味となっています。現在、プライベートIPアドレスを使用することで、IPアドレスの使用数を減らすことに成功していますが、プライベートIPアドレスを使用すると、インターネットの基本原則といえる「エンドツーエンドの通信」や「双方向性」が阻害されてしまうなどの問題があります。

■デフォルトツリールータへの負荷
 アドレスの割り当てに対してルールを設けなかったため、経路の集約ができず、ルーティングテーブルのサイズが肥大化した結果、インターネットのバックボーンに接続されているルータ(デフォルトツリールータ)に対して高い負荷がかかっています。現在、CIDR(Classless Inter-Domain Routing)により、ある程度の集約は可能となりましたが、それでもデフォルトツリールータには70,000以上のルートが格納されています。

 このような問題に対処し、さらに今後のインターネットで必要な機能を追加したものがIPv6です。IPv6には、以下の特徴があります。

■アドレス空間の拡張
 IPアドレスを128ビットとしたことで、その数は2の128乗という膨大な数となっています。これは、地球の陸地に均等に割り当てると、1平方センチメールあたり、2.2×10の20乗という膨大なアドレスを割り当てられる計算となります。これにより、世界上のあらゆるデバイスにIPアドレスを割り当ててもIPアドレスが不足することはありません。また、アドレス空間を階層化し、ネットワークに合わせてアドレスを計画的に配布することで、完全なアドレスの集約を可能とします。

■ルータの負荷の軽減
 ルータの負荷を減らすために、現在、IPヘッダの中で活用されていないフィールドを削除したり、オプションとしたりすることで、ルータでの処理を軽減します。また、ヘッダのサイズを固定長にし、ルータでのルーティング処理を高速化します。

■プラグアンドプレイ
 IPv6におけるプラグアンドプレイとは、ノードにIPv6アドレスを自動的に割り当てる機能です。IPv6では、DHCPサーバを使用することなく、ノード自身がIPv6アドレスを生成して割り当てることができます。

■IPSec
 IPSecはパケットの暗号化と認証を実現するセキュリティ機能です。IPv4では、IPSecがオプションとして定義されていましたが、IPv6では標準となります。そのため、IPv6の普及とともにIPSecが普及することが予想されます。

■QoS
 QoS(Quality-of-Service)は、音声や映像などをスムーズに転送するための仕組みです。IPv6では、IPヘッダ内でQoSのためのラベルを用意しているため、QoSの実現が容易です。

 

 INDEX
[技術解説] Windows Server 2003に実装されたIPv6機能
    1.Windows Server 2003に実装されたIPv6機能
    2.IPv6対応ルータの役割
    3.IPv6のIPv4ネットワークとの相互運用性
 
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