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技術解説 Windows Server 2003がサポートする.NETとは？ 3. .NETとWindows Server Systemの関係 溝端二三雄 2003/06/19

1-2-2　Windows Server System

　.NETプラットフォーム上で実行されるアプリケーションの開発者のための強力な開発ツールとしてVisual Studio .NETがあり、アプリケーションを構成する部品を提供する .NET Frameworkクラスライブラリがあります。これらはWindows Server 2003のWebアプリケーションサーバの機能を大幅に強化します。しかし、この両者だけで業務アプリケーションを構築するのは非常に困難です。例えば、データを格納するためのデータベースシステムの機能をすべて開発するのは、非効率的であるのは誰もが理解できると思います。とはいえ、データベースの機能をすべてのサーバコンピュータで提供する必要はないはずです。.NET Frameworkクラスライブラリが提供するのは、どんなサーバコンピュータでも必要な部品です。したがって、ある特定の機能を提供する部品を利用するためには、別途その機能を提供するサーバ製品をインストールし、Webアプリケーションサーバの機能を拡張する必要があります（図1-6）。

図1-6 Windows Server Systemの位置付け

　このためにマイクロソフトは、以下のサーバ製品をWindows Server Systemとして提供します。これでアプリケーション開発者は、.NETプラットフォーム上のアプリケーションをさらに効率的に開発することが可能になります。ご存知の方も多いと思いますが、これらのサーバ製品は強力な管理ツールを提供するので、設定や構成、さらには運用管理までもが効率化されます。

• Microsoft Application Center
• Microsoft BizTalk Server
• Microsoft Commerce Server
• Microsoft Content Management Server
• Microsoft Exchange Server
• Microsoft Host Integration Server
• Microsoft Internet Security and Acceleration Server
• Microsoft Mobile Information Server
• Microsoft SharePoint Portal Server
• Microsoft SQL Server

　これらのサーバ製品に関する解説は割愛します。ただ、Webアプリケーションサーバとしての機能を追加するために非常に便利で重要な製品なので、これらの製品が提供する機能はぜひ理解してください。

1-2-3　ビルディングブロックサービス

　ビルディングブロックサービスをひと言で表現すると「Webサービスである」といえます（XML Webサービスではありません）。Webサービスは、インターネット標準技術を使用して、分散アプリケーションを構築するための方法であることは説明しましたが、言い換えると、あるアプリケーションの機能をほかのコンピュータに公開する方法です（もちろん、その機能を利用するための方法でもあります）。.NETプラットフォーム上のアプリケーションは、これらの機能を必要に応じて利用して業務処理を実現することができます。つまり、Webサービスもアプリケーションの部品の1つなのです。.NET Frameworkを用いて提供されるWebサービスを「XML Webサービス」と呼びますが、ビルディングブロックサービスは、単なるWebサービスです。つまり、Windows以外のシステムが提供するWebサービスを利用することも、.NETプラットフォームに含まれます（図1-7）。まさに

「業務アプリケーションの基盤をWindowsから .NETへ移行する」

という表現が実現されるわけです。

図1-7 ビルディングブロックサービスの位置付け

　.NET Frameworkクラスライブラリの解説でも“部品”という言葉に例えましたが、ビルディングブロックサービスを“部品”と例えると、少しだけニュアンスが違います。.NET Frameworkクラスライブラリを組み合わせて作成されたXML Webサービスが、ビルディングブロックです。つまり、ビルディングブロックサービスは、細かな部品を組み合わせた少し大きな部品なのです。この少し大きな部品を「サービス」と呼んでいます。

　.NETプラットフォーム上のアプリケーションは、さまざまな部品を組み合わせて提供されるサービスを利用して作成、実行することが可能です。実際は .NET Frameworkクラスライブラリを組み合わせるだけで、かなり高度なアプリケーションを短時間で作成することもできるため、必ずしもビルディングブロックサービスを利用するわけではありません。利用することが可能であるだけです。

1-2-4　オーケストレーション

　業務アプリケーションは、複数の業務ロジックを組み合わせて1つの処理（業務フロー）を実行するシステムです。1つ1つの業務ロジックは、Visual Basic .NETやC#といった開発言語で .NET Frameworkを利用して作成します。また、ビルディングブロックサービスを利用することもあれば、Windows Server Systemを利用することもあるでしょう。では、これらの各業務ロジックはどうやって組み合わせるのでしょう？ これらの各ロジックを組み合わせる機能のことを「オーケストレーション」と呼びます（図1-8）。

図1-8 オーケストレーションの位置付け

　実際には、Visual Basic .NETやC#を使用してオーケストレーションの機能を実現することが多いかもしれません。しかし、業務処理の流れ（業務フロー）は変更されることが多いのではないでしょうか？ 企業内の組織変更や人事異動によって新しい業務ロジックが追加されたり、法律改正によって追加の業務ロジックが必要になることもあります。しかも、XML Webサービスを使用して、ほかの企業のWebサービスを利用した場合、自社の業務フローに変化がなくても相手先企業の変更に対応する必要があるかもしれません。このように業務フローの変更があった場合、当然アプリケーションもその変更に対応する必要があります。

　しかし、実際のアプリケーションのどこをどう変更すれば、業務フローに対応できるかを導き出すのは容易ではないことがあります。場合によっては、アプリケーションを再構築した方が早く対応できることもあるかもしれません。その原因として、いいかげんなアプリケーション設計や、アプリケーション設計を文書や図に残していないなどが考えられます。また、アプリケーションが大規模になるとさらに困難になるでしょう。

　マイクロソフトは、この問題を解決するためにWindows Server Systemとして、BizTalk Serverを提供しています。BizTalk Serverには、オーケストレーション・デザイナーというツールを使用して業務フローを図に表現し、その図のフローどおりに処理を実行することができる機能があります（図1-9）。プログラミングコードではなく、図で処理を定義するので視覚的に業務フローを把握することができ、プログラミング言語を理解しなくてもツールの操作だけでフローを変更することができます。

図1-9 BizTalk Server 2002オーケストレーション・デザイナー

INDEX
	[技術解説] Windows Server 2003がサポートする.NETとは？
	1．.NET戦略の概要
	2．.NETプラットフォームとは
	3．.NETとWindows Server Systemの関係
	4．.NET Frameworkのメリット

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