Insider's Eye

Windows XPの新ユーザー・インターフェイスに異状あり

1.いわゆるスキンについて

山崎俊一+デジタルアドバンテージ
2001/04/19

 スキン(Skin:皮膚)という仕掛けは、たとえばWindowsに添付されるマルチメディア・プレイヤーのMedia Playerにも採用されている。これにより、そのウィンドウの見た目を変更できるようになる。

スキンの切り替えによって好みの見映えを選択できるWindows Media Player
Media Playerでは、スキンと変更することで、プレイヤーの見た目を自由に変更できるようになった。画面はMedia Playerに標準で添付されるスキンの1つ“Headspace”。

 この「スキン」の語源は、シューティング・ゲームの大ヒット作、Quake(クウェイク)にさかのぼる(1996年、id Software社。id Software社のホームページ)。そのコンストラクション・キットは、既存のゲームキャラクタに「表皮」のイメージ・ファイルを選んで被せることができた。

 続いて、代表的なMP3プレイヤーであるWinamp(Nullsoft社)もスキンを採用した。“Chrome Dream”などのWinampスキンが大人気となり(1998年)、「スキン」という言葉を一般に定着させた。

 前出の「Windows XPもどき」の画面は、Stardock社のスキン・ツール、WindowBlindsを利用したものだ。WindowBlindsは、Microsoft Windowsのウィンドウ基本形を変更することができる。この種のツールは、デスクトップ・スキンとも呼ばれているようだ。

 ここではWindowBlindsに、XP風のスキンを読み込ませている。ただし、それだけではWindows XPの新しいユーザー・インターフェイスを真似ることはできない。なぜなら、XPのユーザー・インターフェイス拡張は、見かけだけの問題ではない。Smalltalk風な言い方をすると、MVCフレームワークの“V”(=View)や“C”(=Control)の変更はもちろんだが、加えて切り替えが可能になっている。つまり、ユーザー・インターフェイスの枠組み、フレームワークに変更があるからだ。

デスクトップ・スキンとGUIシェル

 Microsoft Windowsの構成は、他のウィンドウ・システムと少し異なるところがある。

 たとえばUNIXでは、OS本体にウィンドウ・システムが固定されていない。このためシェルを選択することで、ウィンドウ・システムを変更できる。すぐ次で述べるとおり、IBMのOS/2も同様に、WorkPlace Shellを備えていた。が、Microsoft Windowsは、固定スタイルのウィンドウがOSと一体化していて、エクスプローラがシェルに近い役割を担っている(このような構成が、一面閉鎖的とされ、一連のMicrosoft訴訟でも問題とされていた)。

 「机の上(デスクトップ)」という名前にもかかわらず、実質は[スタート]ボタンやタスク・バーなどという、Windowsで独自に考案された操作対象が並ぶ空間になっている。たとえば、消しゴムやブラシといった文房具を備えた作業空間になっているわけではない。何か仕事をしようと思えば、アプリケーションを起動して、そのウィンドウへ移動することになる。

 これに飽き足りない人は、Windows OS上で動作するシェル風なプログラム、いわゆるWin32GUI SHELLといったものを開発し、自分なりに使いやすい環境をMicrosoft Windows上に構築していた。たとえばUNIXユーザーには、LiteStepなどが好まれているらしい(LiteStepのホームページ、日本語ページはこちら。一方、ゲームやホビー・ユーザーには、Mac風やAmiga風のSHELLツールに人気があるようだ。これらも最近は、デスクトップ・スキンと呼ばれているらしい。

OpenDocでデスクトップを再構成する

 一方、Stardock社は、もともとOS/2上のプロダクティビティ・ツールとして、“Object Desktop”を開発していた(1995年)。これもデスクトップ環境を拡張するツールだが、発想の原点は、IBMやAppleが「OLEの次世代コンポーネントウェア」と呼んでいたOpenDocにあるという。OpenDocは、テキストやグラフィック、音声、動画など、さまざまなデータを1つにまとめた複合文書を扱うためのフレームワークである。

 同社は、1997年ごろから“Object Desktop”のWindows対応を始め、まず1998年にWindowBlindsを発表した。並行して、OS/2のWorkPlace Shellに相当するレイヤの構築を目指し、その結果生まれたのがDesktopXである(2000年10月公開)。

 結果として、Stardock社がスキン・ツール群をセットにして提供している現在の“Object Desktop”スイートは、Microsoft Windowsのデスクトップをオブジェクト指向モデルで再構成するツール群と言った構成になっている。

製品名 機能
WindowBlinds Window機能、スタイルの拡張。狭義のスキン管理
DesktopX Windows上にオブジェクト・フレームワークを構築するプログラム。いわゆるテーマに近い
IconPackager アイコン(オブジェクト)の管理
ObjectBar バー(オブジェクト)の管理
WebBlinds Windows Explorerの拡張
ControlCenter デスクトップ拡張やリソース・モニタ、プログラムの起動など、同社曰く、何でもできる!?
WindowFX Win32 GUIの隠しAPIなどを利用可能にするプログラム。たとえば、アルファ・ブレンドによるウィンドウの半透明効果などを利用できる
Object Desktopの製品構成
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  関連リンク
  id Software社のホームページ (id Software社)
  LiteStepのホームページ、日本語ページはこちら(LiteStep)
  DesktopXのホワイト・ペーパー(Stardock社)
  「GUIs Just Want to Have Fun」の記事(WIRED社)
  WindowBlindsのダウンロードのページ(CNET)
  WindowBlinds対応スキンを一覧したページ(Stardock社)
  WinCustomizeのホームページ(WinCustomize)
  DesktopXのホームページ(Stardock社)
  2001年4月16日付けの「WindowBlinds XPベータ版配布」に関するニュース・リリース)(msdn business connection)
     

 INDEX
  [Insider's Eye]Windows XPの新ユーザー・インターフェイスに異状あり
  1.いわゆるスキンについて
    2.DesktopXの構成概念
    3.恐い物見たさでインストール
 
「Insider's Eye」


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