Insider's Eye
見えてきたWindows XP SP1
―― 最新SPとWindowsのロードマップ ――

デジタルアドバンテージ
2002/06/21


 先ごろ米国では、Windows XP Service Pack 1(以下SP1と略)のベータ・テストが開始された模様だ。周知のとおりService Packは、セキュリティ・ホールやバグを修正するhotfix(修正モジュール)や、そのほかの機能追加など、OSのアップデート・モジュールをひとまとめにしたパッケージである。

 システムの脆弱性につながるhotfixについては、新しいものが公表され次第、対応パッチを適用するか、Windows Updateを使って、常に最新の修正モジュールを適用するのが理想である。しかし現実には、連日のように公開される修正モジュールに随時対応するのは不可能だ。また、信頼性を十分に確保するより、重大なセキュリティ・ホールやバグの早期修正を優先させるhotfixやWindows Updateと比較すると、SPに収録されるモジュールは、より信頼性を重視して念入りなテストが実施されているとされる(このあたりの詳細については、別稿「Windows TIPS:セキュリティ・パッチの3つのレベル」を参照されたい)。

 このため、日々公開されるhotfixやWindows Updateなどは組織的には適用せず、新しいSPが発表された段階で、hotfixをまとめて適用するというユーザーも少なくないものと思われる。

 本稿では、現時点で分かっているWindows XP SP1の情報についてまとめ、併せてWindows関連製品の現時点でのロードマップについても触れることにする。

Windows 2000 SP3は夏までに公開

 Windows XP SP1の前に、遅れに遅れているWindows 2000 SP3について述べよう。Windows 2000 SP2が2001年6月に公開されてから、SP3の発表は何度も噂されながらも、結局1年が過ぎてしまった。しかし今度こそ、間違いなく公開されそうだ。マイクロソフトの担当者によれば、Windows 2000 SP3は「夏までには公開予定」とのことで、米国では2002年7月公開との認識が一般的となっている。

 この遅延の原因が何なのか、正確なところは分からない。しかし米Microsoftに対する反トラスト法(独占禁止法)裁判が和解に達したこと(一部の州ではいまなお係争中)、および2002年初頭よりビル・ゲイツ氏が大号令をかけたTrustworthy Computing(信頼できるコンピューティング)が影響しているのではないかと思われる(Trustworthy Computingの詳細は「Insider's Eye:「信頼できるコンピューティング」への長い道のり」を参照)。

 Windows 2000 SP3に関する情報は非常に少ないのだが、セキュリティ・パッチやバグフィックスのための修正プログラム群に加え、反トラスト法裁判の和解案に沿った対応が加えられる予定だ。詳細は次のWindows XP SP1のところで述べるが、簡単にいえば、Internet Explorer(IE:Webブラウザ)やOutlook Express(OE:メール・ソフトウェア)などといったWindowsに標準添付されるアプリケーションを、OEMベンダやユーザーが必要に応じて使わないように隠したり、同等の機能を提供するほかのアプリケーションに置き換えたりできる機能が追加される。

Windows XP SP1は年末商戦前に公開

 いま述べたとおり、Windows XP SP1のポイントの1つは、反トラスト法裁判の和解案への対応である。この和解案では、Webブラウザ(IE)、メール・ソフトウェア(OE)、マルチメディア・プレイヤー(Media Player)、インスタント・メッセージング用ソフトウェア(Windows Messenger)の各ソフトウェア(和解案の中では、これらをまとめてミドルウェアと呼んでいる)を、OEMベンダやユーザーの判断により、システムから取り外し、必要なら同等の機能を提供する別のソフトウェア(Netscape NavigatorやReal Playerなど)に置き換え可能にすること、とされている。従来のWindows 2000/Windows XPでは、これらのミドルウェアはWindowsと一体化しており、OEMベンダが選択的に取り外すことは簡単ではなかった。これに対しWindows 2000 SP3およびWindows XP SP1では、これらのミドルウェアをシステムとして取り外して使用することを保証している。ミドルウェアの選択は、コントロール・パネルから簡単に行えるようになる。取り外されたミドルウェアは、[スタート]メニューやデスクトップからアイコンが削除され、ユーザーからすれば、システム上に存在しないように見える(ただしミドルウェアのファイル自身が削除されるわけではなく、必要に応じて再度セットアップすることが可能)。

 Windows XP SP1には、Windows XPの製品版向けコードが確定してから、これまでに発見されたセキュリティ・ホールやシステムのバグを修正するためのhotfixがまとめて収録されている。前述したとおり、このSP1では、「Trustworthy Computing」の一環として、2002年2月の1カ月をかけて開催された「Security Push」の成果が含まれている。Security Pushは、Microsoftのすべてのプログラマーが新規開発を一時停止し、既存のコードに潜むセキュリティ・ホールをたたき出し、これを修正するというキャンペーンである。

 Windows XP SP1では、Windows XP OSをベースとして開発される家庭向けコンピュータ用OSのMira(ミラ)およびFreestyle(フリースタイル、いずれも開発コード名)のサポート機能が追加される(MiraおよびFreestyleの詳細はすぐ次で述べる)。例えばSP1では、無線通信のBluetoothサポートが追加される。リビングルームにあってAV機器の制御を目的とするFreestyleでは、Bluetoothを使ってキーボードやマウスを接続する予定のようだ。すでにマイクロソフトは、Bluetooth対応のキーボードとマウスを披露している(この件に関するニュース・リリース[英文])ただしこれは、あくまでMiraやFreestyleを実装するためのベースとなる機能をサポートするというだけで、MiraやFreestyle自体がSP1に組み込まれるわけではない。

 すでにWindows Updateでの提供が開始されている.NET Frameworkは、SP1の一部として提供されるが、システムへの組み込みは標準ではなく、ユーザーが選択するようになっている。特に企業ユーザーなど、取り急ぎ.NET Frameworkを使う予定もなく、システムの安定性のために、なるべく不要なソフトウェアはシステムに組み込みたくないと考えるユーザーを考慮しての仕様であろう。

 冒頭で述べたとおり、Windows XP SP1のベータ・テストは、先ごろ(2002年6月中旬)米国でが開始された。最終版が発表されるまでにはまだ時間がかかりそうだが、マイクロソフトの発表では、2002年の年末商戦には間に合わせ、OEMベンダがWindow XP+SP1をマシンにプリインストールして販売できるようにするという。ここから逆算すれば、インターネットなどでWindows XP SP1が公開されるのは10月くらいになるだろう。

コンシューマをターゲットとするMiraとFreestyle

 MiraとFreestyleは、いずれも家庭での利用を想定したコンシューマ向けOSで、いずれも、2002年1月初頭に開催されたCES(International Consumer Electronics Show)で発表された(CESで発表されたFreestyleとMiraのニュース・リリース[米リリースの参考訳])。以下で述べるとおり、どちらも家庭の居間などで使われることを想定しており、ビジネス・ユーザーには無関係の製品と考えてよい。

■Mira:家中で自由に持ち運んで使えるコンピュータ
 Miraは、Windows XPのリモート・デスクトップ機能と、ワイヤレス・ネットワーク機能を利用し、家庭内のどの部屋からも自由に持ち運んで使えることを目指したOSである(マイクロソフトのMiraのホームページ)。具体的には、リモート・デスクトップのサーバ機能を提供するホストPCと、ワイヤレス・ネットワークで接続された液晶ディスプレイ型コンピュータで構成される。液晶ディスプレイとホストPCとセットにして、通常のデスクトップ型コンピュータと同じように使えると同時に、必要ならディスプレイ部分だけを取り外して自由に持ち運んで使える。ディスプレイ部分はタッチパッドになっており、スタイラス・ペンで操作することができる。このディスプレイ側には、Windows CE .NETをベースとするOSが使用されており、ハードディスクは内蔵しない(データ・ストレージはすべてホストPC内にあるハードディスクを利用する)。

 このように、一見するとMiraはタブレット型PCのようにも見えるが、ディスプレイ側ではデータを保存しないこと(タブレットPCはノートPCの発展形であり、自身のハードディスクにデータを保存する)、ホストPCを必要とすること、コンシューマ用途であること(タブレットPCは基本的にビジネス用途)が異なる。

 マイクロソフトの説明では、Miraを搭載した製品は、今年(2002年)の年末(年末商戦時期)には発売されるとのことである。国内では、NECや富士通、松下電器産業、ソーテックなどが対応製品を開発中である。

■Freestyle:メディア・センターPC
 システム構成は通常のPCとは異なるものの、Miraを通して触れる情報は、従来型PCのそれとあまり違いはない。逆にいえば、これまでは居間などに常設されたデスクトップPCやノートPCで行っていた作業を、場所を選ばず操作できるようにしようとするのがMiraといってよいだろう。これに対しFreestyleは、ビデオやテレビ、ステレオなどいったAV機器と並べて設置し、近年デジタル化とPCでの管理が急速に進みつつある写真や音楽、映像などのメディア・データを管理、再生することを想定したOSである(マイクロソフトのFreestyleのホームページ)。このためマイクロソフトは、Freestyleを搭載するPCを「メディア・センターPC」と呼んでいる。

 Freestyleは、表示デバイスとして家庭用のテレビを使用する。このためFreestyleでは、Windows XPのユーザー・インターフェイスを踏襲しながら、解像度が低い家庭用テレビでも実用的に使えるようにインターフェイスが変更される。

 ユーザーによっては、PCにビデオ・キャプチャ・カードを追加してテレビ番組を録画したり、音楽CDをMP3やWindows Media Audio(WMA)などのオーディオ形式でPCにリッピングしたりしているかもしれない。このようなPCは居間のAVラックに置きたいところだが、表示デバイス(基本的にはコンピュータ用ディスプレイが必要)や入力デバイスの問題(マウスやキーボードを置く場所がない)がある。Freestyleは、こうした用途向けに特化されたPCだと考えればよいだろう。Mira対応ディスプレイとは違い、Freestyle対応PCはハードディスクを備えている。すでに述べたとおり、FreestyleにはBluetoothインターフェイスを通してマウスやキーボードを接続できる。

Windows .NET Server、そしてLonghornへ

 マイクロソフトは、Windows 2000 Serverの後継となるWindows .NET Serverを開発中である。未確認情報ではあるが、製品発売は2003年初頭説が有力だ。Windows .NET Serverについては、別稿「Windows Q&A:Windows .NET Server」が詳しい。

 さらにその次のOSとして、マイクロソフトは、Longhorn(ロングホーン:開発コード名)を開発中である。製品発売時期を含め、Longhornに関する情報は非常に少ない。一説によれば、SQL Serverの技術を一部に取り込んだ新しいストレージ・システムが導入されるという話もあるが、定かではない。発売時期については、2004年以降だと噂されている。

 しかし最も気になるのは、Longhornはデスクトップ向け(現在のWindows XP Professional/Home Editionの後継OS)だけでなく、サーバ向け(Windows .NET Serverの後継OS)も同時期に発売される予定ということだ。これが本当だとすれば、2003年にWindows .NET Serverが発売されてから、1年ほどで次バージョンが発売されることになる。

 サーバは、機能よりも信頼性や安定性が重視されるものだ。また企業での導入では、予算の確保やシステム導入・移行に向けて長期の準備が必要である。OS開発がスケジュールどおり進んだ試しはないので、2004年というのは怪しいとしても、サーバOSの導入を検討している管理者にとっては気になるところだろう。当面は、マイクロソフトから発信されるシグナルに注意しながら、慎重に導入するシステムを検討する必要がありそうだ。End of Article

Windows関連製品のロードマップ
 
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