Insider's Eye
最新Microsoft Operations Managerの実力(前編)

コラム
システム監視の必要性

Peter Pawlak
2004/07/28
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 ほぼすべての大規模、中規模組織では、故障が重大な金銭的損失に直結し、顧客の信頼とマーケット・シェアの喪失を招きかねないミッション・クリティカルな業務の遂行にUNIX、Linux、Windows Serverを用いている。IT部門は、それらのサービス・レベル契約における順守の度合いを測定し、機能停止を事前に防止し、問題が発生した場合には瞬時に、できればユーザーが気付く前に対応する必要がある。

複雑な問題に対応する複雑なソリューション

 分散システムの高可用性の実現は、システムの複雑さと相互依存性のために難しい。例えば、DNS(ドメイン・ネーム・システム)サーバの故障は、ほかの多くのサーバと、それらがホスティングしているアプリケーションの機能を損なう可能性がある。

 これらの複雑なシステムを効率的に監視するために、組織はMicrosoft(MOM)やBMC(Patrol)、Computer Associates(Unicenter)、Heroix(Robomon)、Hewlett-Packard(OpenView)、IBM(Tivoli TME)、NetIQ(AppManager)などの会社が出荷している総合システム監視製品に頼ってきた。これらはすべて、監視対象サーバで稼働し、ローカル・アクションを開始して中央の集中システムやコンソールに情報やイベント、アラートを転送するインテリジェントなソフトウェア・エージェントを備えている。これらの製品の多くはWindowsおよびUNIX、Linuxのサーバを監視でき、一部はメインフレームやSNMP(簡易ネットワーク管理プロトコル)対応ネットワーク機器さえ監視できる。

 たいていのシステム監視ソリューションは多数のマシンに分散しており、さまつな事柄と重要な事柄を選別する高度なインテリジェンスを搭載する必要があるため、最新の監視システムは管理対象システムに迫るほど複雑である。さらに、業界標準が存在しないため、監視ソリューションを導入する企業は独自技術に大きく依存せざるを得ない。しかし、こうした障害は乗り越える必要がある。分散システムは効果的で自動化された監視システムを備えない限り、旧来のメインフレームと同様の信頼性と可用性を実現できないからだ。

装備標準の欠如

 最近まで、ソフトウェアを監視して故障を検知する機能をOSやアプリケーションに装備させる標準は存在せず、既存技術は目的が狭すぎ、互換性がなかった。コンピュータなどのネットワーク機器は、SNMP規格を用いてネットワーク関連情報をHP OpenView Network Node Managerなどの監視システムに伝送できる。しかし、SNMPはコンピュータ・ハードウェアやOS、アプリケーションが必要とする高度な監視タスクを遂行するにはあまりに制約があり不安定だ。

 稼働状況情報のログの記録方法は、OSの種類ごとに異なる。UNIX OSにはSyslogというテキスト・ベースのイベント・ログ・サービスがあり、WindowsシステムにはEvent Logとパフォーマンス・モニタ(OSとアプリケーションのパフォーマンス・データを収集できる汎用のパフォーマンス監視システム)がある。アプリケーション開発者はこうした機能を利用できる。だが、多くの開発者はこれらをまったく使わないか、オペレータや管理システムがアプリケーションを稼働し続けるうえで役立つ十分な情報を提供しない。

 開発者がアプリケーションに機能を装備する場合の伝統的方法は、活動を外部のログに記録するというものだ。例えば、誰かがアプリケーションとのトランザクションを完了するたびに、時刻とユーザー名、イベント識別子を記録するファイルなどである。この方式の問題点は、各アプリケーション・ログでスキーマが異なっており、ログに新規データが書き込まれたことを簡単に知る方法がなく、アプリケーション監視プログラムにそれらの所在が分からないことである。

 インスツルメンテーション(システム監視の機能装備)の標準が存在せず、またどのみちたいていの職場にはアプリケーション・レベルの監視ソフトウェアがないことから、開発者はインスツルメンテーションに顧客が望むほど多くの努力を払ってこなかった。

 大手のOS、ハードウェア、ネットワーク・ベンダは、標準が存在しなかったため、共同で抽象化したレイヤを定義し、環境や基盤とする管理プロトコルに左右されず、それを通じてすべての管理データへのアクセスを統一できるようにした。この取り組みを推進する力となっているのはWBEM(Web-Based Enterprise Management)構想である。WBEMは、プロバイダと呼ばれる専用モジュール経由で各種のインスツルメンテーション・データにアクセスできる統一的なスキーム(Common Information Model、略称CIM)を定義する。しかし、WBEMはベンダがCIMに使用すべき実装方法やアクセス方式を指示することはない。MicrosoftのWBEM実装はWMI(Windows Management Instrumentation)と呼ばれ、Windows 98以降のWindowsに含まれている。現在はCOM+プロトコルを用いてCIMに接続するが、CIMへのWebサービス・インターフェイスを構築する方向性が打ち出されている。End of Article

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
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 INDEX
  Insider's Eye
  最新Microsoft Operations Managerの実力(前編)
    1.MOM2005の概要
    2.MOM2005の新機能
      コラム:システム監視の必要性
  最新Microsoft Operations Managerの実力(後編) New!
    3.管理インフラを構築する管理パックの機能 New!
        コラム:なぜシステム監視は難しいのか? New!
    4.サードパーティ製品との統合性を改善 New!
 
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