Insider's Eye
最新Microsoft Operations Managerの実力(後編)

4.サードパーティ製品との統合性を改善

Peter Pawlak
2004/08/03
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 Microsoftは、MOM 2000 SP1のリリースに続くフィーチャーパックで、MOMをサードパーティ製の管理プラットフォームと統合するテクノロジであるMOM Connector Framework(MCF)を導入した。MCFは一方向と双方向のアラート転送および同期を可能にするので、LinuxサーバやCiscoルータなどの各種の異種混在システムからのアラートを、統一コンソールで確認できるようになる。MOM 2000は理論的にはHP OpenViewやCA Unicenterなどのほかの管理システムから転送されたアラートを受け取ることができたが、MOM 2000には本格的なオペレータ用コンソールがなかったので、これは実用的ではなかった。大多数の顧客はMCFを用いてMOMアラートをほかの管理システムに送り、それをヘルプ・デスクおよびトラブル・チケット生成アプリケーションと統合して、オペレータがMOMアラートからチケットを開き、作業完了時にチケット生成アプリケーションの中からアラートを閉じられるようにしている。

 MCFテクノロジは2つの異なるコンポーネントを含んでいる。MOMアラート・インフラの一般的抽象化を提供するMOM Connector Framework WebサービスAPIと、Webサービスを各管理システムの固有のAPIにマッピングする1つ以上の製品コネクタである。このコネクタを作成するためのSDKもリリースされ、一部のベンダはそれを用いてAprismaのSpectrum、HP OpenView、IBMのTivoliなど、ほかの管理製品向けの商用コネクタを作成している。

 MOM 2005にはMCFの改良版が組み込まれており、新型のオペレータ用コンソールのおかげでMOMは高度にWindows中心の環境で「マスター・コンソール」(「マネージャの中のマネージャ」とも呼ばれる)として機能し、ほかの監視システムのアラートを収集することができる。

システム管理の敷居を下げるMOM 2005 Express

 小規模企業(あるいはそのサービス・プロバイダ)も自社システムの稼働状態を知る必要があるが、MOM 2000はそのコストと複雑さによって事実上、ローエンドの市場から遠ざけられていた。MOM 2005では、Microsoftは同市場をターゲットとするよりシンプルで安価な新バージョン(仮称MOM 2005 Express)を提供する。

 MOM Expressは要するに、MOM 2005のフル・バージョンからレポーティング・サービスとデータ・ウェアハウス、MCFを取り除いたものである。フル・バージョンと同様にSQL Serverベースのデータベースを必要とするが、能力が限られた無料のMSDEデータベースを利用することもできる。しかし、MOM Expressは1台の管理サーバにしかインストールできず、限られた台数のサーバしか管理できない(本稿執筆時点ではMicrosoftは正確な数字を示してないが、同社によれば約10台となる見込みだ)。また、MOM Expressはフル・バージョンよりも簡単にインストールできる。

 MOM ExpressにはMOM本体と同じMPが付属する。MOM 2005 MPは設計が改良されているので、追加設定なしでも間違ったアラートの発生がかなり少なくなっており、Microsoftは小規模企業がその複雑さにたじろぐことはないと考えている。

 しかし、システムを微調整して問題に対応するには、MOM Expressはやはりアラートとそれを引き起こしたイベントを理解する人間を必要とするので、これは決してエンド・ユーザー・ツールではない。

積み残された課題

 MOMは10年近く前の製品(1997年にServerwareが当初開発したSeNTryがベース。Mission Critical SoftwareがSeNTryを基にOnePoint Operations Managerを開発、2000年8月にMission Critical SoftwareとNetIQが合併している。MicrosoftはNetIQと提携し、MOMを開発した)の発展型なので、堅牢で成熟した製品であり、Windows環境でのパフォーマンスと拡張性が優れている。

 しかし、MOM 2005は改良されたものの、完全に理解して使いこなすのは大変な製品かもしれない。理由の1つは、管理と監視が相変わらず追加テクノロジだからである。OSとアプリケーション・レベルの条件と依存関係がDSIの一部として組み込まれない限り、MPの作成者は類似するすべてのシステム・コンフィグレーションとステータスを網羅する設計上の前提条件を定めることができない。さらに、MOM 2005は複数のアラートをうまく統合するが、1つの根本的原因に関係した異なるアラートを依然として大量に送る可能性がある。根本的原因の確実な識別は、DSIテクノロジをさらに生かした将来版を待たなければいけない。

 MOM 2005にはほかにも以下のようないくつかの特記すべき制約がある。

■WebサイトまたはWebサービス対応のMPがない
 
MOMにはIISを監視するMPはあるが、基本的IISサービスしか監視せず、Webアプリケーション(TealeafのWeb監視製品「RealiTea」など、ほかの製品はこの機能を備えている)やWebサービスは監視しない。こうした管理パックはアプリケーション固有の知識を必要とする。

 MicrosoftはWebサイトとWebサービスを監視する汎用MPに取り組んでおり、これはWebアプリケーション用の専用カスタムMPを開発する第一歩となるかもしれない。このMPには顧客のカスタマイズ作業を助けるウィザードが含まれるが、開発者は依然として、サイトとそれに依存するコンポーネント(バックエンド・データベースなど)が正しく動作しているかを確認する模擬トランザクションを作る必要がある。このMPはMOM 2005の出荷後間もなくダウンロード可能になる。

 ActionalとNetIQも現在、Webサービス監視用のMOM 2000 MPを提供しており、両社がこれらの製品をアップグレードさせてMOM 2005の新機能をサポートする可能性は高い。

■非Windowsエージェントがない
 
MOM 2005は依然として、Linux/UNIXサーバやメインフレーム、あるいはルータなどのネットワーク機器といった非Windowsコンピュータ用のネイティブ・エージェントを用意していない。これらのシステムの多く、特にLinuxはeXc SoftwareやMetiLinx、NetIQといった会社のMCF互換監視システムによってカバーされているが、これらのソリューションは追加コストが必要な上、複雑だ。

■ミッション・クリティカル・アプリケーション用のMPが乏しい
 
Microsoftは自社の主要サーバ・アプリケーション用のMPをすべて提供しており、サードパーティはOracleデータベース・エンジンなどのアプリケーション用のMOM MPを提供しているが、大半のサードパーティ製MPはインフラ・コンポーネント(OSコンポーネントやバックアップ・サービスなどのユーティリティ・ソフト)を監視するためのものだ。SAPとPeoplesoftのERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)アプリケーションや、SiebelのCRM(Customer Relationship Management)ソフト、SCM(Supply Chain Management)ソフトといった大規模なビジネス・クリティカル・アプリケーションを監視するための既製品のMPはまだ不足している。MicrosoftのBusiness Solutions製品(Great Plains、Axapta、Navision)にもMPは含まれていない。

 MicrosoftはMOM 2005の出荷とともにこの状況が改善されると考えており、SiebelはすでににCRM製品Siebel 7.7向けのMOM MPを開発する意向を発表している。Microsoftによればさらに多くのベンダがMOM 2005の出荷後にMPを発表する計画という。

開発の進捗と価格

 MOM 2005およびMOM 2005 Expressは2004年秋に完成予定だ。Microsoftは価格とライセンス情報をまだ明らかにしていないが、フル・バージョンは現行のMOM 2000(価格は各管理対象サーバのCPU当たり349ドル)と同程度になる見込みだ。

 MOM 2005管理サーバはWindows 2000 Server(以上)を必要とし、MOMはSQL Server 2000データベース(MOM ExpressはMSDEを使用可能)へのアクセスを必要とする。新しいオペレータ用コンソールは.NET FrameworkをインストールしたWindows 2000以降の任意のシステムで稼働する。End of Article

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。

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 INDEX
  Insider's Eye
  最新Microsoft Operations Managerの実力(前編)
    1.MOM2005の概要
    2.MOM2005の新機能
        コラム:システム監視の必要性
  最新Microsoft Operations Managerの実力(後編) New!
    3.管理インフラを構築する管理パックの機能 New!
        コラム:なぜシステム監視は難しいのか? New!
  4.サードパーティ製品との統合性を改善 New!
 
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