Insider's Eye

Windowsシステム管理の近未来図

MOM 2005、SMS 2003、そしてSystem Center 2005へ

デジタルアドバンテージ
2004/10/07

 ネットワーク・テクノロジの急速な高度化と普及が進むに従って、情報システム管理は混迷を深めつつある。いまや多くの情報システムは、TCP/IPやWebサービスなどの標準プロトコルを介して外部とコミュニケーションできる。そうした新しいインターフェイスを持たない旧来のシステムに対しては、両者の仲立ちをするEAI(Enterprise Application Integration)が登場した。いまや情報システムは、社内外を問わずネットワークで接続された巨大な複合情報システムになっている。

 これは必然的な流れだが、そうした複雑な情報システムを停止することなく安全に運用し続けるのは並大抵のことではない。もはや現在のシステム管理は、百戦錬磨のシステム管理者の経験と勘で乗り切れるスケールを大きく超えている。

 システム管理の昨今の流れは、情報システム自体が自身をモニタし、必要があれば設定変更やリソースの再配分などを自動的に実行するような自律型のシステム管理である。IBMが提唱するオートノミック・コンピューティング、HPが提唱するAdaptive Infrastructureは、いずれもシステムの自律的な運用管理の実現を目指している。自律して機能できる情報システムを連携させるSOA(Service Oriented Architecture)を推進するためのアプローチだ。

Microsoftがシステム管理製品のロードマップを大幅変更、System Centerへ一本化
ベールを脱いだマイクロソフトの次世代システム・マネジメント戦略

 このゴールに向けてマイクロソフトが提唱しているのがDSI(Dynamic Systems Initiative)である。DSIでは、システムの設計→開発→展開→運用というフェイズ全体を情報システムのライフ・サイクルとしてとらえ、これら全般を共通した管理プラットフォーム上で制御できるようにすることを目指す。DSIでは、SDM(Systems Definition Model)と呼ばれるXML標準スキーマを用いて各ライフ・サイクル・フェイズでの情報交換を実現し、統合的なシステム設計・構築・管理を可能にする(DSIの詳細については関連記事を参照)。

 DSIの全貌は必ずしもまだ明らかになっていないが、マイクロソフトが展望する将来の情報システム管理環境は、関連製品の登場や発表されたロードマップからかなり明確になってきた。本稿では、現時点におけるマイクロソフトのシステム管理戦略と、それを支えるテクノロジと製品計画についてまとめてみよう。

MOM 2005日本語版がまもなく登場

 Microsoft Operations Manager(MOM、モム)は、関連するいくつかのイベントをモニタすることでシステムの稼働状況を監視し、重大なパフォーマンスの低下やシステムの停止などをレポートすると同時に、必要な処理を自動的に実行するシステム管理ソフトウェアである。特定のイベントに対し、何を実行するかは、ルールとスクリプトによって記述できる。米国では、MOM 2000というバージョンが以前から販売されており、先ごろ最新版のMOM 2005が発売されたところだ(米Microsoftのニュース・リリース[英文])。このMOM 2005の日本語対応版がまもなく登場する予定だ(発表時期は未定)。前版のMOM 2000は日本語化されなかったので、MOM 2005は日本で初めて発表されるMOMになる。

MOM 2005のオペレーション・コンソール画面
MOM 2005を使えば、ネットワーク上のコンピュータを一望にして、それらが正常動作しているかどうかを監視できる。また各システムにおいて、設定したルールに従い、スクリプトなどを自動的に実行できる。
(Microsoft社のWebページより転載)

最新Microsoft Operations Managerの実力

 MOM 2005の詳細については、すでに公開している関連記事を参照されたい。MOMでは、単純に低レベルなイベントを収集するだけでなく、複数のイベントの発生パターンからシステムの稼働状況を高度に判別することができる。こうした管理上のノウハウは、従来は熟練したシステム管理者に頼るしかなかったが、MOMではこれを「管理パック(Management Pack)」と呼ばれるコンポーネント群にパッケージ化し、管理ノウハウをソフトウェアとして配布可能にしている。

 管理パックは、Active Directoryなどのシステム・サービス、Exchange ServerやSQL Server、BizTalkなどのマイクロソフト製サーバ・ソフトウェアごとに提供され、必要な管理パックを組み合わせて利用できる。またこの管理パックは、マイクロソフト以外のサードパーティが開発することも可能だ。最新のMOM 2005に対応したものはまだ少ないが、マイクロソフトは自社のサイトで管理パック・カタログを公開している。今後はこれらのMOM 2005対応が進むだろう。

MOMとSMSを統合し、System Centerへ

 すでにマイクロソフトは、ハードウェアやソフトウェアの資産管理やライセンス管理、ソフトウェアの配布(修正プログラムを含む)、システム設定の集中的な管理を行うシステム管理製品として、Systems Management Server(SMS)を販売している。現行版はSMS 2003である。

 このSMS 2003に対して、先ごろService Pack 1(SP1)が公開された。このSP1では、ドメインに参加しないコンピュータの管理(ワークグループ環境のサポート)、Virtual server 2005/Virtual PC 2004サポートなどの新機能追加、パフォーマンスの向上などがなされる。

 現在は別々の製品として提供されるMOMとSMSだが、将来これらはSystem Centerとして統合される予定だ。これにより、SMSによって提供される資産管理/変更管理機能と、MOMによって提供される監視機能を組み合わせたシステム管理が可能になる。具体的にいえば、例えばSMSで実行したシステムの構成変更によって障害やパフォーマンスの低下が発生した場合に、MOMでこれを検出し、SMSでの処理と突き合わせて障害の原因を素早く特定できるようになる。

 現在でもマイクロソフトは、システム管理者を支援するさまざまなテクノロジや管理ツールを提供している。Windowsの標準機能や、無償公開ツールとして提供されているものも多い。システム管理者は、WSH(Windows Script Host)を使って作業をバッチ的に実行するためのスクリプトを作成できる。この際Windowsが提供するWindows Management Instrumentation(WMI)を使えば、WSHスクリプトなどから、Windowsの各種システム情報にアクセスできる。このほか、サポート・ツールやリソース・キット・ツール、単体ツールとして、数多くのコマンドライン/GUIツールを利用できる。しかしこれらはそれぞれ必要に応じてアドホックに提供されたもので、管理作業には複数のツールやテクノロジを組み合わせなければならない場面も多い。しかもこの際のツールの組み合わせ方や作業手順、注目すべきデータなどは、管理者の経験と勘に頼っていた。これに対し統合管理ツールであるSystem Center(およびその将来版)では、DSIというゴールに向けて、これら散在するツールやテクノロジを段階的に統合化していくことになるだろう。

 ソフトウェアの開発から運用管理までを共通した基盤上で扱えるようにするDSI構想において、プログラマやシステム・デザイナーが使用するIDE(Integrated Development Environment)としては、Visual Studioの将来版が対応する予定だ。System Centerの将来版では、Visual Studioも統合され、開発者から運用担当者までが、共通する統合環境を使って情報システムのライフ・サイクルをデザインし、管理できるようになる。

SMSとMOMを統合するSystem Center
現在は別々に提供されているSMSとMOMは、将来はSystem Centerとして統合される。双方の機能を組み合わせたシステム管理、障害診断、情報分析などが可能になる。さらに将来版のSystem Centerでは、IDEとしてVisual Studioの将来版が統合される。

System Center 2005の概要

 初期版のSystem CenterとなるのがSystem Center 2005である。マイクロソフトの製品命名規則に則って考えれば、2005年前半には発売されるはずだ(マイクロソフトは、その年の後半に発売されたものには、翌年の年号を付ける慣例がある。例えば、MOM 2005がその一例である)。ごく簡単なものだが、日本語のホームページも用意されている。

 このページの情報によれば、System Center 2005の構成は次のようになる。

System Center 2005の構成
SMS 2003とMOM 2005に加え、これら両者から得られた情報を統合的に表示するSystem Center Reporting Serverが同梱される。

 System Center 2005に統合されるSMS 2003には、SMS 2003の機能を強化する3つのFeature Packが追加される。このうちOperating System Deployment Feature Packは、SMSが管理するクライアントに対するOSイメージのリモート展開を可能にするものである。現在、大量のクライアントに対するOSの展開には膨大な時間がかかるが、この機能により、展開にかかる時間を大幅に短縮できるようになる。新規のOSインストールだけでなく、既存OSのアップグレードにも対応可能だ。

 Device Management Feature Packは、SMSの各種機能をモバイル・デバイスに拡張する。マイクロソフトは、Pocket PCやWindows CE、Smartphoneなどのモバイル・デバイス向けソフトウェアを提供している。Device Management Feature Packを追加することにより、これらのモバイル・デバイスをSMSで管理できるようになる。マイクロソフトは、サードパーティによる対応も促しており、ベンダが対応すれば、マイクロソフト以外のモバイル・デバイスも管理可能になる。

 以前から提供されているAdministration Feature Packは、サイト・アカウント管理、サイト設定の転送ウィザード、システム権限での再起動が必要なソフトウェア(Windows NT 4.0 SP6aなど)を展開可能にするツール、Webベースのレポートツールをセットにしたものである。

 System Center Reporting Serverは、SMSから取得した構成情報と、MOMから取得したシステムの監視情報を統合し、一元管理できるようにする。別途提供中のSQL Server Reporting Servicesと組み合わせることで、System Center Reporting Serverで得られた結果から、多角的に分析可能なレポートを生成できる。

System Center Reporting Server
System Center Reporting Serverは、SMS 2003/MOM 2005から得られた情報を統合し、一元管理する。

明日のシステム管理に目を向けよう

 情報システムがさらに発展するには、その足かせとなりつつあるシステム管理を抜本的に見直さなければならない。このためにマイクロソフトが提唱するテクノロジがDSIである。DSIの全貌はまだ明らかでないが、今回述べたとおり、製品ロードマップは徐々に明らかになってきた。マイクロソフトの伝統的なアプローチとして、使える製品を提供し、これをバージョンアップなどでブラッシュアップしながら、方向修正を加えつつ目標に向かって進むことになるだろう。

 従来、SMSなどのシステム管理製品は、エンタープライズ・レベルのシステム管理者を対象にしたもので、小〜中規模レベルのシステムでは、Windowsの標準機能や無償ツールを組み合わせて、現場の管理者が工夫して管理するのが一般的だった。しかし今後は、現時点で中小規模のシステムであっても、企業内LANやインターネットというさらに大きなくくりの中の1単位として機能しなければならなくなる。こうした進歩を促すには、システムをトータルに管理できる環境が不可欠だ。次世代のシステム管理について、目を向ける時期がきている。End of Article

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