Insider's Eye

Virtual Server 2005の有用性と投資コストを見極める(2)

Michael Cherry
2004/12/01
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

仮想環境内の製品にも正規ライセンスが必要

 仮想化技術を使用する場合は、ライセンスに関して注意が必要だ。以下に示すように、仮想サーバを構成する3層のアプリケーションそれぞれに、正規のライセンスが必要になる(コラムの「仮想OS環境のライセンス要件」を参照)。

●ホストOS
 ホスト・ハードウェアに対するWindows Server 2003またはWindows XP Professionalのライセンスが必要。

●Virtual Server 2005
 ホスト・ハードウェアに対するVirtual Server 2005のサーバ・ライセンスが必要。Virtual Server 2005のStandard Editionは4プロセッサまで、Enterprise Editionは32プロセッサまでのサーバをサポートする。

●ゲストOSおよびゲスト・アプリケーション
 仮想サーバ上で実行される各ゲストOSのライセンスが必要になる。また、ゲストOSへのアクセスに必要なクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)は、ホストOS対応のものに更新する必要がある。従って、例えばWindows NT 4.0用のレガシー・アプリケーションを仮想サーバに移行する場合は、Windows NT 4.0のサーバ・ライセンスが必要になるだけでなく、たとえこのゲストOS(Windows NT 4.0)にアクセスするクライアントにWindows NT 4.0用のCALがあったとしても、新たにWindows Server 2003用のCALも用意する必要がある。

 また、プロセッサ・ベースでライセンスを取得しているサーバ・アプリケーションをゲスト・アプリケーションとして実行する場合は、仮想マシン自体はそれぞれ1プロセッサしか使用しないとしても、ホスト・コンピュータに搭載されているすべての物理プロセッサの数だけライセンスが必要になる。

コラム
仮想OS環境のライセンス要件


 環境は仮想であったとしても、Virtual Server 2005上で実行されるゲストOSおよびゲスト・アプリケーションには正規のライセンスが必要だ。例として、次の場合を考えてみよう。アプリケーション開発チームが、SQL Server 2000データベースを使用する自社向けの業務アプリケーションに加えた変更をテストするために、仮想サーバを利用するとする。このテストでは、新しいデュアル・プロセッサのサーバを使用する。この場合は、以下のように、仮想サーバを構成する3層のアプリケーションそれぞれに、正規のライセンスが必要になる。

●ホストOS
 ホストOSであるWindows Server 2003のサーバ・ライセンス(ホスト・ハードウェア専用)が必要になる。

●Virtual Server 2005
 Virtual Server 2005のサーバ・ライセンスが必要。

●「Virtual Server 1」仮想OS環境のゲストOS
 テスト対象のアプリケーションがWindows 2000 Serverを使用するため、この例のような仮想サーバを作成する場合は、Windows 2000 Serverのライセンスが必要になる。

●「Virtual Server 1」仮想OS環境のSQL Server 2000
 テスト対象のアプリケーションにはSQL Server 2000が必要である。SQL Server 2000のライセンスがプロセッサ・ライセンス(プロセッサの個数ベースのライセンス)であるとすると、この例では、ホスト・ハードウェアに2基のプロセッサが搭載されているので、「Virtual Server 1」にはSQL Server 2000のプロセッサ・ライセンスを2本取得する必要がある。

 このほか、ホスト・サーバではWindows Server 2003が実行されているため、このサーバにアクセスするクライアントごとに、Windows Server 2003のクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)が必要になる。

 また、新たにほかの仮想サーバを作成する場合は、その仮想OS環境で実行するゲストOSやゲスト・アプリケーションごとに、「Virtual Server 1」とは別に、専用のライセンスが必要になる。


Virtual Server利用時の必要ライセンスの例

CECとDSI構想によるVirtual Serverの位置付け

 2004年5月に開催されたTech・Edで、MicrosoftはCommon Engineering Criteria(CEC)を発表した。CECは、Windows Server System製品ラインの製品間での整合性を確保し、統合を実現するための製品を対象とした、一連のリリース・クライテリア(リリース計画)である。Virtual Server 2005は、CEC for 2005に基づいて初めて提供される製品の1つであり、2004年末までには、初年度のクライテリアのほとんどが達成される見込みである。

 例えば、Systems Management Server(SMS) Service Pack 1では、Virtual ServerのホストOSだけでなく、仮想サーバのゲストOSとゲスト・アプリケーションの構成情報をインベントリに追加し、管理できるようになった。また、システムの稼働状況を監視する製品「Microsoft Operations Manager(MOM)」は、2004年末にリリース予定の管理パックを導入すればVirtual Serverの状態を監視できるようになる。そのほか、Exchange ServerやSQL Serverなど、Windows Server System製品ラインのすべてのアプリケーション製品が仮想サーバ対応となる。

 CECのクライテリアの1つ、64bitのサポートの達成率については、評価は難しい。Virtual Server 2005は、AMD64およびEM64Tをサポートした64bitプロセッサであれば、Windows Serverの64bit版で実行できる。これらのプロセッサでは、32bitアプリケーションの実行がネイティブでサポートされているためだ。IntelのItaniumプロセッサには対応しない見込みだ。また、上記の2種類の64bitプロセッサを使用した場合でも、Virtual Serverは32bitアプリケーションとして実行されるため、パフォーマンスの向上やメモリ容量の増大など、これらの64bitプロセッサの持つ性能上のメリットは得られない。

 またMicrosoftは、Virtual ServerをDynamic Systems Initiative(DSI)構想における主要製品としても普及を図っている。DSIは、Windowsシステムおよびアプリケーションの管理性の向上を目指す同社の遠大な計画である。DSI構想のうち、同社がユーザーにとって有益であると考える機能の1つに、「ダイナミック・データ・センター」がある。これは、OSサービスやハードウェア・リソースを集積し、それらを特定のアプリケーションにバインドするのではなく、ポリシーに従って動的に割り当てるようにするものだ。仮想化技術は、ダイナミック・データ・センター機能を提供する方法として、1つの選択肢となり得る。

 現在はベータ段階にあり、2004年末までにリリースされる予定のMicrosoft Virtual Server Migration Toolkit(VSMT)が提供されれば、Automated Deployment Service(サーバのデプロイメントを支援するWindows Server 2003の機能パック)を利用して、物理サーバを仮想サーバに移行できるようになる(編集部注:2004年10月末に公開済み。英語版のみの提供だが、日本語環境でもそのまま利用できる。入手先サイト)。これにより、ダイナミック・データ・センターの実現に向けて1歩前進することになるが、VMWareの仮想化製品では、これと同等の機能がすでに提供されている。

 Microsoftは、Virtual Serverの今後のバージョンの詳細については発表を控えているが、コンピュータに直接インストールできるような、つまり、仮想サーバの起動とロードを行い、さらに余分な機能を省いたホストOSを組み込んだものが開発されれば、大型サーバ・コンピュータを有効活用する一手段として仮想化技術を訴求できる可能性がある。Virtual Serverは、DSI構想を推進するうえでさらに有用なツールとなるだろう。End of Article

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
 

 INDEX
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  Virtual Server 2005の有用性と投資コストを見極める(1)
Virtual Server 2005の有用性と投資コストを見極める(2)
 
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