Insider's Eye

テープ・バックアップの限界を打破するData Protection Serverの開発を表明

―― 初期リリースは限定的なバックアップ・ソリューションに ――

Peter Pawlak
2004/12/07
Copyright (C) 2004, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2004年12月号 p.42の「テープ・バックアップの限界を打破Data Protection Serverの開発を表明」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 2005年第2四半期にMicrosoftは新しいサーバ製品「Data Protection Server(DPS)」の提供を開始する予定だ。DPSは、Windowsベースのファイル・サーバを対象とするバックアップ/復元機能を提供する。この機能はハードディスク・ベースで実装され、テープへのバックアップに先立つ中間ストレージとして利用される。DPSの使用により、1日に複数回のバックアップが可能になるほか、ファイルの復元回数を劇的に削減して、ユーザー自身がITスタッフの支援なしでファイルを復元できるようになる。ただし、初期のリリースでは、対象サーバの一部のデータはバックアップできない見込みだ。保護対象となるのは一般的なファイルのみで、WindowsレジストリやExchange、SQL Serverなどのデータベースのデータは含まれない予定だ。DPSの一般のベータ公開は、2005年の第1四半期に予定されている。

 DPSは、次のような従来のテープ・バックアップにおける問題の軽減を目的としている。

テープ・バックアップの問題点

●長時間を要する復元、ITスタッフへの負担
 バックアップ・テープのデータを復元する場合は、データ・センターのスタッフが、まず適切なテープを見つけてこれをマウントする。そして、問題のファイルまたはディレクトリを検索して、バックアップ元の場所もしくは代わりの場所に復元する。このようなプロセスでは、ユーザー、ヘルプ・デスク、データ・センターのスタッフの生産性が削がれることになる。

●最新のデータの喪失
 テープ・バックアップは、1日1回以上実行されることはまずない。従って、最後のバックアップ以降に変更されたデータは、テープからデータの復元操作を実行した場合は失われる。

 この結果、さらに生産性が低下し、業務に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

●バックアップ時のサーバおよびネットワークへの高負荷
 テープへのバックアップを行う際は、バックアップ対象となるサーバのプロセッサにかなりの負荷がかかる。このため、バックアップが就業時間内に行われた場合は、このサーバのユーザーが影響を受ける可能性がある。また、バックアップ対象のサーバとバックアップ処理を行うサーバ間のネットワークも、特にWANを介してバックアップを行う場合は、トラフィックが増加し、ユーザーに影響を及ぼす場合がある。

 最初の2つの問題については、Windows Server 2003の新機能「Volume Shadow Copy Service(VSS)」が有用だ。しかし、VSSはWindows 2000 Serverシステムには組み込むことができない。また、Windows Server 2003への移行をすぐに実行するユーザーは少数であることが予想されるため、DPSを提供することで、Windows 2000サーバのファイルのバックアップを可能にし、VSSのメリットをある程度提供できる。

DPSのバックアップ・テクノロジ

 DPSシステムは、大容量のディスク・ストレージが搭載されDPSを実行しているWindows Server 2003サーバと、保護対象となるサーバ上で実行されるDPSエージェントで構成される。

 DPSエージェントは、運用サーバのファイルに施されたバイト・レベルの変更を監視し、これをコピーする。その後、変更されたデータをDPSサーバに定期的にレプリケートする。レプリケートされたデータは、DPSサーバ側でディスク・ベースのリポジトリに格納される。そして、DPSサーバのVSSシステムが、定期的(例えば1時間ごと)にDPSサーバのファイル・システムのスナップショットをとる。Microsoftによれば、VSSのスナップショットに使われるストレージ容量は変更されたデータ分しか増加しないため、DPSサーバ上で90日分のデータを保持する場合でも、保護対象となる全サーバのデータの合計の2〜3倍に相当する格納領域しか必要ないとしている。

 DPSサーバのデータは複製データ(レプリカ)であるため、運用サーバに影響を与えることなく、いつでもデータをテープにバックアップできる。DPS対応のテープ・バックアップ製品は、Computer AssociatesやCommVaultなどのベンダから提供される予定だ。DPSサーバは、テープ・バックアップ・サーバとして実行したり、リモート・バックアップ・エージェントとして実行できる。リモート・エージェントとして実行する場合は、選択したスナップショットをネットワーク上の別のバックアップ・サーバにコピーすることになるが、コピー先のネットワークは運用ネットワークと同じである必要はない。

 DPSには、ポリシー・オプションやスケジュール、レプリケーション設定などを設定するための管理インターフェイスが実装される予定である。魅力的な機能として、Windows XPやWindows 2000 Workstationのエクスプローラの拡張機能や、Office 2003の「ファイルを開く」ダイアログ・ボックスからDPSサーバにアクセスして、DPSサーバ上にあるデータの復元に必要なレプリカを参照したり、読み取り権限があるファイルのスナップショットのコピーや読み取りが可能になる(DPSシステムの仕組みについては、コラム「Data Protection Serverのアーキテクチャ」を参照)。

初期リリースにおける深刻な機能制限

 DPSはテープ・バックアップに代わる手段となることを意図したものではない。テープは、依然として障害復旧用のオフサイトのデータ・ストレージとして必要だ。また、長期のデータ保存や、政府の規制に見合うデータ保存ポリシー要件を満たすためにも必要である。

 テープの必要性はいずれにしてもなくならないが、DPSの最初のリリースでは、ほかにも製品としての魅力を削ぐ制限がある。DPSがレプリケートできるのは一般的なファイルのみで、ExchangeやSQL Server、Windowsレジストリなど運用データベースは含まれない。つまり、レジストリやそのほかのOSファイルに格納されているシステム状態データを保存できないため、DPSだけでサーバ全体を完全にバックアップすることはできない。このため、テープ・バックアップ・エージェントを実行して、DPSでバックアップできない情報をキャプチャし、これをテープ・バックアップ・サーバに送る必要がある。

 また、DPSを使用してWAN経由でリモート・ネットワーク内のサーバをバックアップする場合にも制限がある。バックアップ対象のサーバとDPSサーバは、同じActive Directoryドメインに所属していなければならないのだ。つまり、フォレストを構築し、その中で各リモート・ネットワークを別個のドメインとして管理している場合は、中央のDPSサーバから一元的なバックアップを行うことはできない。

 なお、将来のリリースでは、これらの制限は修正される見込みだ。End of Article

Data Protection Serverのアーキテクチャ
 Data Protection Server(DPS)は、運用ファイル・サーバと長期保存用のテープ・バックアップやアーカイブを中継するストレージ機能を提供する。DPSシステムは、DPSの保護対象となる各サーバにインストールされたエージェントで構成される。DPSエージェントは、変更されたデータのレプリカをDPSサーバに作成する。一方、DPSサーバはVolume Shadow Copy Service(VSS)を使用して、複製されたデータのスナップショットを定期的に作成する。

 サード・パーティのバックアップ・ソフトウェアを使用すると、オフサイト保存用に任意の複製データのスナップショットをテープにバックアップできる。

 各組織のポリシー次第であるが、クライアント側でユーザー自身が復元操作を実行することもできる。この場合は、クライアントからDPSサーバにアクセスして、読み取り権限のあるファイルのスナップショットをコピーする。

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
 「Insider's Eye」


Windows Server Insider フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Windows Server Insider 記事ランキング

本日 月間