Insider's Eye

発売まで秒読み段階に入ったSQL Server 2005

―― 米MSが製品構成と価格を発表。中小規模システム向けの安価なエディションを新たに追加 ――

デジタルアドバンテージ 小川 誉久
2005/03/09

 米Microsoftは、2005年2月24日、次世代のデータベース・システムとして開発中のSQL Server 2005(開発コード名=Yukon)のパッケージ構成と価格について発表した。

 発売時期については今なお明らかにされていないものの、今回の発表は、発売準備が秒読み段階に入ったことを意味している。日本語版については、原稿執筆時点では何も発表されていないが、米国版と同時期に発売されるものと思われる。以下本稿では、今回新たに追加されたWorkgroup Editionを中心に、各パッケージ構成と機能差について概観する。

Workgroup Editionを新規投入。SQL Server 2000版も発売予定

 今回の発表で最も注目される点の1つは、Workgroup Editionの新規投入だろう。従来のSQL Server 2000では、開発者向けの製品を除けば、デスクトップ・クライアント/サーバ向け製品はStandard EditionとEnterprise Editionの2種類のみだった(ほかにモバイル向けのPersonal Editionがある)。中小規模システムを想定したStandard Editionの価格はサーバ・ライセンスで20万円弱(5CAL付き)、プロセッサ・ライセンスで50万円強、大規模システム向けのEnterprise Editionの価格はサーバ・ライセンスで120万円弱、プロセッサ・ライセンスでは200万円強である(価格は編集部調べ。いずれも32bit版)。

 マイクロソフトは、SQL Server 2000から、管理ツールなどを除いたデータベース・エンジンのみを取り出し、一部機能制限を加えてMSDE(Microsoft SQL 2000 Desktop Eigine)という名称で無償提供している。MSDEは、エンド・ユーザーが単独で同社のダウンロード・センターから入手することもできるし、サードパーティのソフトウェア開発ベンダが自社製品用のデータ・ストレージ用コンポーネントとして使い、製品にバンドルして再配布することもできる。マイクロソフトのサーバ・ソフトウェアでも、例えばSharePoint Portal Server(エンタープライズ・ポータル・サーバ向けソフトウェア)、MOM(Microsoft Operations Manager:システム管理ソフトウェア)など、MSDEをデータ・ストレージ・コンポーネントとして利用できるものが少なくない。まずは敷居の低いMSDEでサーバ・ソフトウェアを導入してもらい、データベースの本格的な管理や可用性が必要になったところで、有償製品に移行してもらおうという戦略だ。

MSDEとSQL Server 2000の違い(Insider's Eye)

 管理できるデータ・サイズが制限されること(通常は2Gybtesまで)、バックアップなどを支援する管理ツールが提供されないことを除けば、MSDEとSQL Server 2000のエンジンは共通なので、データの移行などは特に問題なく行える。

 しかしこれまでは、無償版のMSDEから有償版に切り替えるには、下位パッケージのStandard Editionに移行するにも20万円弱〜50万円の投資が必要だった。中小規模の情報システム案件では、この価格的なハードルは低くなかった。

 もう1つ。データベース分野ではマイクロソフトの最大のライバルであるオラクルが、最新版のOracle 10gでStandard Edition One(SE One)と呼ばれる中小規模向けの安価なパッケージを発表した(2004年4月出荷開始)。Oracle 10g SE Oneの最小構成(5ユーザー版)は10万円を切る価格で、低予算を余儀なくされる中小規模システム開発では魅力的な存在で、販売も好調だという。

 今回新たに設定されたWorkgroup Editionは、MSDEとStandard Editionの隙間で、一部をOracle 10g SE Oneに奪われていた市場を強く意識したパッケージでもある。Oracle 10g SE One対策は一刻の猶予も許さないという事情かどうか、Workgoroup Editionは、今後発売されるSQL Server 2005だけでなく、現行製品であるSQL Server 2000についても追加投入される。

SQL Server 2005製品構成と機能比較

 それでは、SQL Server 2005の各パッケージと、価格および機能比較を詳しく見てみよう。

機能
Express
Workgroup
Standard
Enterprise
価格
(サーバ・ライセンス)*1
無償
739ドル(5CAL)
(7万7000円)
2799ドル(10 CAL)
(29万3000円)
1万3499ドル(25CAL)
(141万7000円)
価格
(プロセッサ・ライセンス)*1
無償
3899ドル
(40万9000円)
5999ドル
(62万9000円)
2万4999ドル
(262万4000円)
サポートCPU
1個
2個
4個
無制限
最大サポート・メモリ
1 Gbytes
3 Gbytes
無制限
無制限
64bitサポート
WOW
WOW
データベース・サイズ制限
4 Gbytes
無制限
無制限
無制限
可用性
データベースのミラーリング
×
×

(2CPU/サーバ)
フェイルオーバー・クラスタリング
×
×

(2ノードのみ)
バックアップ・ログ転送
×
オンラインでのシステムの変更
オンラインでのインデックス作成
×
×
×
オンラインでのページ/ファイル復元
×
×
×
高速リドゥ
×
×
×
管理
Express Manager
Management Studio
×
データベース・チューニング・アドバイザ
×
フルテキスト検索
×
セキュリティ機能
プログラマビリティ
CLRサポート/.NET統合
XMLネイティブ・サポート
XQueryサポート
通知サービス
×
統合/相互運用
インポート/エクスポート
マージ・レプリケーション

(サブスクライバのみ)
*2
トランザクション・レプリケーション

(サブスクライバのみ)
*3
Oracleレプリケーション
×
×
×
Web Services対応
×
×
BIサポート
×
×
DWH、BI 向け開発環境、OLAPエンジンなど、一部をサポート
フルサポート
SQL Server 2005パッケージの機能比較
*1 米国での推定小売価格。カッコ内は1ドル=105円として算出し、1000円未満を切り捨てたもの。
*2 最大25サブスクライバまでパブリッシュ可能。
*3 最大5サブスクライバまでパブリッシュ可能。

■製品価格
 表中の製品価格は、米国での推定小売価格である。分かりやすくするために、1ドル105円と仮定してドル→円換算した金額も併記した。ただし冒頭で述べたとおり、これらは米国での発表であり、日本語版の正式発表ではないので注意すること。

 SQL Server 2005についても、データベース・エンジンが切り離されて無償提供される。これは従来のMSDEの後継にあたるものだが、名称はMSDEではなく、SQL Server 2005 Express Editionと正式に“SQL Server”の冠が付いた。Express Editionは完全な無償版で、MSDE同様、サード・ベンダが自社製品にバンドルして再配布することも可能である。

■最大プロセッサ数、最大サポート・メモリ

気になるプロセッサのマルチコア化とプロセッサ・ライセンスの関係(Insider's Eye)

 サポートされる最大プロセッサ数はExpressで1個、Workgroupで2個、Standardで4個と制限される。大量のトランザクションが同時発生するような場合には、マルチ・プロセッサによるスケール・アップが必要になる。しかし、これはかなり大規模なトランザクション・システムの場合で、それほど負荷の大きくない非基幹系システムや、情報系システムなどでは、1プロセッサ構成でも問題なく稼働しているケースが少なくない。なお表中のサポート・プロセッサ数は、プロセッサの物理的な数である。現在インテルは、1個のプロセッサで複数のスレッドを処理するハイパースレッディングや、プロセッサ内部に複数のコアを含めるマルチコア化を進めているが、これらを使った場合でも、プロセッサ・ライセンスはコアの数ではなく、プロセッサの物理的な数で計算されることになっている。

 ExpressとWorkgroupは最大メモリがそれぞれ1Gbytes、3Gbytesと制限されているが、こちらも、かなり負荷の高い処理でなければ深刻な問題にはならないだろう。

■データベース・サイズ制限
 無償のExpressを使うか、有償のWorkgroupにするかの選択を迫られる1つのポイントは、このデータベースのサイズ制限だ。

 現在のMSDEでは、最大データベース・サイズが2Gbytesに制限されている(一部でサイズ制限を緩和したMSDEも提供されている)。これに比較すると、Expressでは、最大サイズが4Gbytesと2倍になった。しかし現在では、サイズの大きなバイナリ・データなどもデータベース内部に格納することが一般化しているので、当初は無償のExpress Editionでスタートしても、運用途中でこのサイズ制限に突き当たるシステムは多いはずだ。こうした問題をあらかじめ排除したい場合、サイズ無制限のWorkgroup Editionは魅力的な存在である。

■可用性
 中小規模向けのExpress/Workgroupと、エンタープライズ領域をカバーするStandard/Enterpriseの違いが明確なのは可用性に関する機能である。Express/Workgroupでは、ミラーリングやフェイルオーバー・クラスタリングはサポートされない。従ってわずかなサービス停止も避けたいというなら、Standard/Enterpriseの導入を検討すべきだ。

 しかしデータのバックアップ手段を用意しておき、万一の障害発生時には、一定時間のサービス停止と手作業による対応をいとわないというなら、Express/Workgroupを利用することも可能だ。決済などに直結しない情報系のサーバなどでは、この程度の運用でも差し支えのないケースは少なくない。

■管理機能
 現行のMSDEには管理ツール(Enterprise Manager)が提供されておらず、データベースのメンテナンスなどが困難だ。これを理由にMSDEからSQL Server 2000 Standardなどの製品に乗り換えるケースもあったが、SQL Server 2005では、無償のExpress Editionでも“Express Manager”と呼ばれる簡易管理ツールが付属している。さらに有償のWorkgroup Edition以上なら、“Management Studio”と呼ばれるフル機能の管理ツールが提供される。

■プログラマビリティ

Yukonで革新されるDBサーバ・プログラミング(Insider's Eye)

 SQL Server 2005の特徴の1つは、データベース・システム自体がCLR(Common Language Runtime)と呼ばれる言語エンジンを持ち、C#やVB.NETなどの.NET対応言語を利用してストアド・プロシージャを記述できることだ。これにより、データベースを利用するアプリケーション開発の生産性が大幅に向上すると期待されている。

SQL Server 2005の新機能「SQL CLR」(Insider.NET)

 表の「CLRサポート/.NET統合」がこの機能を表している。表から分かるとおり、CLRサポートは最下位のExpress Editionから提供されている。つまり、アプリケーション側で対応しなくても、ExpressからWorkgroupなどのエディション変更が容易にできる。とりあえずはExpress Editionで運用を開始し、必要になった時点でWorkgroup Editionなどに移行する場合でも、アプリケーションはそのまま使えるわけだ。

幅広い活用が可能なWorkgroup Edition

 プログラム開発者の視点からすれば、単なる機能制限版で技術的に見るところはないだろうが、今回新規投入されたWorkgroup Editionは、無償のMSDEから、有償のStandard Editionとの間に大きなギャップを感じていた中小規模のシステム開発者、エンドユーザーにとっては願ったり叶ったりの製品である。Workgroup Editionでは、プロセッサ数や利用可能メモリなどに制限はあるものの、データベース・サイズは無制限で、フル機能の管理ツールであるManagement Studioも提供される。製品としては中小規模を意識したものだが、前述したとおり、万一システムが停止しても、リーズナブルな時間で復帰できるなら構わないといった、可用性要求がそれほど高くないシステム向けなら、ある程度の規模でもWorkgroup Editionで対応できる可能性がある。仮にWorkgroup Editionでカバーできなくなったら、StandardやEnterpriseなどにシームレスにアップグレードできる。

 いずれにせよ、データベース・ソリューションの選択肢が広がることは歓迎すべきだ。まもなくなされるだろう日本語版の発表に期待したい。End of Article

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