Insider's Eye

WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?(2)

Rob Helm
2006/01/26
Copyright (C) 2006, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

作業効率を重視したクエリと同期サービス

 WinFSはデータの整理や検索の機能を提供するだけでなく、さまざまなデバイスやアプリケーション間で自動的にデータを組織化し、その整合性を保つ各種サービスも提供する。これらのサービスは、汎用的なデータ管理タスクを処理することで、ユーザーが使用しなければならず、また開発者が記述しなければならないデータ管理インターフェイスを減らすことを目的としている。

 ベータ1に含まれるこれらのサービスの中では次の2つが最も重要だ。

■ストアド・クエリとルール
 WinFSは「ストアド・クエリ」を格納することができる。ストアド・クエリとは、WinFSストアを監視して、特定の条件を満たすWinFSアイテムが追加または削除された場合にアプリケーションに通知するコンポーネントだ。ストアド・クエリはOutlookの検索フォルダと概念的に似ており、ユーザーに重要な変更(例えば、ユーザーのレビューを受けることを想定したドキュメントの追加など)を通知するために利用できる。また、WinFSは「ルール」もサポートする。ルールは、計算を自動化する(例えば、連絡先の姓と名から自動的に氏名を特定するなど)ためのストアド・クエリだ。ただし、Outlookのルールやデータベースのトリガとは異なり、WinFSのルールは計算を行うだけであり、ストアに変更を加えない。

■同期
 このサービスは、WinFSストア間でアイテムの同期を取る。変更されたデータだけを移動して効率を確保したり、ストア間でのデータの矛盾をアプリケーションに通知したりする機能を持つ。開発者は、データの矛盾を解決するためのアプリケーション固有のルールや、WinFSとほかのデータ・ソースを同期させるための「アダプタ」によって、同期サービスを拡張できる。例えば、アダプタを使って、WinFS内の連絡先と、電話に保存された連絡先を、あるいは既存のデスクトップ用連絡先管理アプリケーション内の連絡先リストを同期させる、といったことが可能だ。

 ただしWinFSのベータ1は、ストアド・クエリやルール、同期といったサービスのWindowsユーザー・インターフェイスを提供していない。サンプル・アプリケーションやツール(コマンドラインの同期ユーティリティなど)が用意されているにとどまっている。また、ベータ1はバックアップや復元、デフラグ、容量レポートといったストレージ管理作業用のツールも備えていない。このため、WinFSの汎用サービスや、特定の目的から見たWinFSの有用性を評価することは、アプリケーション開発者以外には困難だろう。また、開発者はWinFSの汎用サービスを既存のデータベース・エンジンのそうしたサービスと比較しなければならない。例えば、(Accessで使われる)Microsoft JetエンジンとSQL Serverエンジンは、いずれも各種の同期機能を提供し、SQL Serverは、WinFSのルールによって処理されるタスクを実行する機能と同等のトリガも提供する。

WindowsファイルやAPIとの互換性

 ユーザーの目には触れないが、WinFSはNTFS上に保持されている。WinFSファイルのプロパティはWinFSに保存されるが、WinFSファイルのデータは、WinFSストアかNTFSファイルに保存される。後者(ファイルベース)の場合、WinFSとともにインストールされるNTFSの拡張が、WinFS内のすべてのファイルベース・アイテムと、それぞれに対応するNTFSデータ・ファイルの間の一貫性を維持し、例えば、NTFS上のデータ・ファイルを移動しても、ファイルベース・アイテムへのリンクが壊れないようにする。

 アプリケーションは2つのAPIセットのいずれかによってWinFSにアクセスできる。まず、WinFSにはADO.NETを介してアクセスできる。ADO.NETは、.NET Framework開発プラットフォームの標準データアクセスAPIだ。さらに、WinFSはファイルベース・アイテムへのアクセスを可能にするため、従来のWin32ファイルAPIを実装している。これにより、既存のWin32アプリケーションやユーティリティはWinFSストア内のファイルベース・アイテムを扱える。例えば、Windowsのエクスプローラを使ってNTFSファイルとWinFSファイルベース・アイテムを相互にコピーすることが可能だ。だが、Win32 APIはWinFSへのフルアクセスは提供しない。Win32 APIを使ってアクセスできるのはファイルベース・アイテムとコンテナに限られるほか、Win32 APIは、NTFSの標準プロパティ以外のアイテム・プロパティやクエリをサポートしておらず、同期などのサービスも提供しない。これに対し、ADO.NET APIはフルアクセスを提供する(これらの関係の図解については、コラムの「WinFSとNTFSの互換性」を参照)。

WinFSとNTFSの互換性

 WinFSはWindowsのNTFS(NT File System)を補強し、共通のAPIを通じてある程度の下位互換性を提供する。WinFSのデータベース(ストアと呼ばれる)はNTFSファイルだ。また、WinFSストアは、WinFSストア自体かNTFSに保存されているファイルを表す「ファイルベース・アイテム」を格納できる。アプリケーションやユーティリティ(Windowsシェルなど)は、NTFSファイルへのアクセスに使われるのと同じWin32 APIによってWinFS内のファイルベース・アイテムにアクセスできる。WinFSのほかのタイプのアイテム(連絡先レコードなど)には、新しいアプリケーション(図のカスタム・アプリケーションなど)がADO.NETのアップデート版を使ってアクセスする。ADO.NETはデータベースなどのデータ・ストア用のMicrosoftの基本APIだ。

ユーザー評価は今後に持ち越し

 全体的に見て、WinFSは現時点では開発のごく初期の段階にあるため、IT開発者やエンドユーザーよりもアプリケーション開発者の興味を引くだろう。

■開発者
 開発者はベータ1により、WinFSをアプリケーションでどのように利用できるかを検討できる。いまの段階なら、開発者が検討結果に基づいて、WinFSに求める追加機能についてMicrosoftにフィードバックする時間はたっぷりある。Microsoftにとっても、開発者の要望に対応する時間はまだ十分にある。また、開発者はWinFSのデータ・モデルとサービスをJetやSQL Serverなどの既存データ・エンジンと比較することもできる。

■IT管理者
 IT管理者は現在のベータ1では、WinFSを十分に評価できない。バックアップや復元などの管理作業用のユーティリティが用意されておらず、WinFSがEFS(暗号化ファイル・システム)やDFS(分散ファイル・システム)、レプリケーション・エンジンなどのファイル・サーバ技術をどのようにサポートするかについても分からない現状では、WinFSが現在のファイル・システムやデータベースよりも管理しやすいかどうかを判断するのは困難だ。

■エンドユーザー
 エンドユーザーは、WinFSが対象課題を現在の技術よりもうまく解決するかどうかを見極めるには、より完全なベータ版を待たなければならないだろう。WinFSストアを検索、整理するためのユーザー・インターフェイスが提供されていないため、WinFSが検索や整理機能の面で、従来のファイル・システムと全文インデックス検索ツールの組み合わせよりも格段に優れているかどうかは分からない。インデックス検索コンポーネントであるWindowsデスクトップ・サーチがすでに配布されており、2006年に出荷予定のWindows Vistaに統合されるだけに、この問題はとりわけ重要だ。

 ユーザー・インターフェイスと管理ユーティリティを備えたWinFSは、早ければWindows Longhorn Server(2007年出荷予定)で初めてWindowsの標準機能になる可能性がある。だが、Longhorn Serverのベータ1はWinFSをサポートしていない。より現実的には、WinFSが初めて搭載されるWindowsは、暫定的に2008年に出荷が予定されているクライアントOSのWindows Vista R2かもしれない。

 結局のところ、WinFSが有益なのは、アプリケーションが対応している場合に限られる。Microsoftは自社アプリケーション、中でも広く普及しているOfficeスイートでWinFSを採用することで、対応アプリケーションの増加を促すことができるかもしれない。だが、2006年出荷予定のOffice 12では、WinFSを採用することは不可能だ。WinFSをサポートするOfficeが登場するのは2008年以降と見られ、より確実には2009年以降だろう。End of Article

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
 

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    WinFSでWindowsのデータ/ファイル管理はどう変わる?(1)
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