パズルのピースを少しずつ組み上げ、信頼を勝ち得る

Steven C.Guggenheimer(スティーブン・グッゲンハイマー)
General Manager
Application Platform & Dev Marketing

聞き手:Windows Server Insider編集長 小川 誉久
2006/08/03


―― エンタープライズ・アプリケーション開発向けの新製品が発表されました。

 

グッゲンハイマー:今回(2006年6月)発表したのは、Visual Studio 2005 Team Foundation Server(以下TFS)とBizTalk Server 2006(BTS2006)の2つだ(マイクロソフトのニュース・リリース)。このうちTFSは、開発者だけでなく、アナリストやアーキテクト、テスト担当者などが、共通のプラットフォームでコード管理やプロセス管理を統合的に行えるようにするサーバである。主に中規模から大規模のソフトウェア開発の生産性を向上させる。一方BTS2006はビジネス・プロセス管理やEAI(Enterprise Application Integration)構築用のサーバ・ソフトウェアで、SOA(Service Oriented Architecture)ベースのエンタープライズ・ビジネス・アプリケーション基盤を提供する。

―― もう少し具体的に、TFSについて教えてください。

 

グッゲンハイマー:企業のビジネス・アプリケーション開発では、プログラム・コードを作成する開発者だけでなく、ビジネス分析を行うアナリストやシステムの全体設計を行うアーキテクト、プログラムのテストを実施するテスターなど、さまざまな立場の人たちが開発プロジェクトに参加する。複数のプログラマ間で、ソース・コードを共有するためのシステムは数多くあるが、これら立場の異なるメンバーが、共通のインフラとして利用できるようなプロジェクト管理システムはなかった。TFSはこれを可能にする。TFSを導入することで、プログラマやアーキテクトといった異なるロール(役割)の人たちが、Visual Studio や Microsoft Office Excel、Microsoft Office Project などを使って共通のリポジトリを利用しながら協働作業を進められるようになる。

―― NUnitやNAntなどのオープンソース・ツールを含めて、開発支援ソフトウェアはすでにいくつか存在しています。これらとTFSの違いは何でしょうか。

 

グッゲンハイマー:ビジネス・アプリケーション開発のライフサイクル全体を統合的に管理できることだ。オープン・ソース製品にせよ有償製品にせよ、単機能のツールはいくつかあるが、ライフサイクル全体を統合的に管理できるツールは少ない。

―― 「統合の利点」は認めます。しかしそれは、裏を返せば「囲い込み」ではないかという疑問を持つ開発者がいます。

 

グッゲンハイマー:XML対応を積極的に進めるなどして、非マイクロソフト製品とのインターオペラビリティには最大限配慮している。しかしわれわれが第一に目指すのは、生産性向上など、ユーザーの要求に応えられる優れたテクノロジを開発し、それをユーザーに認めてもらって、製品を採用してもらえるように努力することだ。

―― 特にエンタープライズ・ビジネス・アプリケーションの市場では、マイクロソフトは後発です。パーソナルコンピュータ用ソフトウェアから発展してきた同社に対し、信頼性や拡張性などに厳しい目を向けるビジネス・ユーザーがいます。

 

グッゲンハイマー:マイクロソフトが本格的にエンタープライズ・ビジネス・アプリケーション分野に進出したのはたった10年前からであり、他社と単純に実績を比較されれば不利な点があることは事実だ。しかしデータベース管理システムのSQL Serverなどは、急速にエンタープライズ市場に浸透しつつあり、ユニット単位ではシェアが50%を超えたという数字もある。実際、他社製品を使っているエンタープライズ・ユーザーの中にも、製品価格やサービス内容、消極的な新技術開発などの点で不満を持っている人は少なくない。超えるべきハードルがあることは認めるが、こうしたユーザーは、チャンスがあればマイクロソフト製品を評価したいと考えている。

―― 慎重なエンタープライズ・ユーザーの信用を勝ち取るのは簡単ではありません。

 

グッゲンハイマー:まったくそのとおりだ。優れた新技術や新製品を発表したからといって、一朝一夕に印象が変わるものではない。これまでも、新技術や新製品開発に加え、パートナー支援やコンサルティングの強化など、パズルのピースを1つずつ増やしてきた。少しずつ、しかし確実に、これからもパズルのピースを少しずつ組み上げて、将来の大きな信頼獲得につなげたい。

―― BTS2006で新たに追加された機能は。

 

グッゲンハイマー:前版BizTalk Server 2004に対するカスタマー・フィードバックでは、「複雑すぎる」という声が多かった。BTS2006では、ビジネス・プロセス管理のトラッキングとレポーティングをより簡単にできるように工夫した。また従来はサードパーティ製品を追加購入する必要があったアダプタのいくつかをBTS2006では標準サポートとした。具体的には、CRMミドルウェアのPeopleSoftやSiebelをはじめとする12種類のアダプタを標準搭載した。これにより、追加投資なしで主要な他社製ソフトウェアと連携可能になる。

―― BizTalk Serverの日本国内での販売は苦戦という声もあります。

 

グッゲンハイマー:そうした議論の多くは、たいてい売上総額を比較している。他社製EAI製品と比較すると、BizTalk Serverはけた違いに安価だ。とある調査によれば、ユニット・ベースのシェアでは、国内EAI製品市場の35%がBizTalk Serverという数字もある。単価が安いために、売上総額は大きくないかもしれないが、一定のシェアはすでに獲得しており、拡大傾向にあると理解している。

―― 今後の展望は。

 

グッゲンハイマー:ビジネス・アプリケーション開発者は、顧客や自社のビジネスに役立つ情報システムを開発するために日夜努力をしている。私たちマイクロソフトは、テクノロジやツールを提供することで、そうしたアプリケーション開発者を支援する。多様化と変化を続けるビジネス・ニーズと、ITをつなげられるテクノロジとツールを今後もさらに積極的に開発していきたい。End of Article

 
 「IT PRO POWER INTERVIEW」

 



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