第3回 OSI参照モデル詳説 TCP/IPプロトコル(2/5 ページ)

» 2000年07月19日 00時00分 公開
[岡部泰一]

 「OSI参照モデル(OSI reference model)」とは、OSIのプロトコルを定めるにあたって、さまざまなネットワークやプロトコルを研究し、OSIのベースとするために作成された基本的なモデルであり、ネットワーク システムがどのような構成要素によって成り立つのか、各構成要素の間のインターフェイスをどのようにするのかなどを表わしている。そのためOSI参照モデルは、ネットワークやプロトコルの概念、機能などの理解に役立ち、さまざまなプロトコルを識別するための基準にもなるため、広く利用されている。

 OSI参照モデルは、パケット交換ネットワークを前提としたモデルで、ネットワークシステムの概念の複雑さを減らすために、7つの層に分けられている。

階層 名称 機能
第7層 アプリケーション層 アプリケーション間でのデータのやり取りを規定する
第6層 プレゼンテーション層 データの表現方法を規定する
第5層 セッション層 セッションの手順を規定する
第4層 トランスポート層 各コンピュータ上で実行されている、2つのアプリケーション間での通信方法を規定する
第3層 ネットワーク層 ネットワーク上の2つのコンピュータ間での通信方法を規定する
第2層 データリンク層 1つのネットワーク媒体に接続された複数のコンピュータの間でデータを伝送する方法を規定する
第1層 物理層 コンピュータのデータとネットワーク媒体上を流れる電気的な信号を変換する方法を規定する
OSI参照モデル

 このOSI参照モデルに従って、実際のWebブラウザとWebサーバ アプリケーション間でのやりとりを当てはめると、次のようになる。ここでは、Internet ExplorerなどのWebブラウザで、Windows 2000 Insiderのトップページを表示する例を示している。

  1. Webブラウザは、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)というアプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層にまたがるプロトコルを利用して、「www.atmarkit.co.jp(@ITのWebサーバ用コンピュータ)」のWebサーバに対して、「/fwin2k/index.html(Windows 2000 Insiderのトップページ)」の内容を要求する。
  2. 実際の要求は、「GET /fwin2k/index.html」というコマンドをWebサーバに対して送ることによって行う。「GET」は、指定したファイルの内容を送り返すように指示するコマンドである。Webブラウザは、このコマンドを繰り返し発行することにより、1つのページを構成するHTMLファイルや画像データなどをすべて収集して、ページの内容をレンダリング(描画)し、表示する。
  3. WebブラウザとWebサーバの間の通信は、トランスポート層が提供する仮想的な通信回線を利用して行う。仮想的な回線とはパイプのようなもので、一方のプログラムが書き込んだデータは、そのままの形で(書き込まれたバイト列の並びの順のままで)、もう一方のプログラムに自動的に届き、また逆に、反対側から書き込まれたデータも同じように相手側に届く(どちら側のアプリケーションからでも同じように書き込んで利用することができる。このような通信方式を全二重通信方式という)。Webサーバへの要求も、この仮想的な回線を使ってコマンドを送ることで行う。
  4. 仮想的な回線を経由してWebサーバに要求が届くと、Webサーバはそれを処理し、その応答として「/fwin2k/index.html」の内容を仮想的な回線を使って送り返す。
  5. 仮想的な回線からWebブラウザに応答が届き、Webブラウザはそれをレンダリングして表示する。ここまでが、WebブラウザとWebサーバ間でのやり取りであり、セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層の機能を使って行われている。
  6. ユーザのコンピュータとwww.atmarkit.co.jpの間の実際の通信(パイプを使った通信)は、ネットワーク層が提供する機能によって実現されている。2つのコンピュータは別々のネットワークに属し、間にいくつものネットワークが介しているが、各ルータが経路を決定し、データを順次転送することで、2台のコンピュータ間での通信を実現している。仮想的な通信回線(パイプ)はこの機能を利用して実現されている。
  7. コンピュータやルータといった各機器間の通信は、実際には、物理層とデータリンク層が提供する機能によって実現されている。

OSI参照モデルに基づく通信の例

OSI参照モデルは7つの層からなっていて、ネットワークシステムの概念や機能の枠組みを与えている。実際の通信がこのモデルにどのように対応するか、Internet ExplorerなどのWebブラウザで、Windows 2000 Insiderのトップページを表示する例を示す。

(1)Webブラウザは、HTTPというアプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層にまたがるプロトコルを利用して、「www.atmarkit.co.jp」のWebサーバに対して「/fwin2k/index.html」を要求する。

(2)「GET /fwin2k/index.html」というコマンドをWebサーバに送る。

(3)WebブラウザとWebサーバの間の通信(要求の送信や応答の受信など)は、トランスポート層が提供する仮想的な回線を利用して行われる。

(4)仮想的な回線からWebサーバに要求が届くと、Webサーバはそれを処理し、その応答として「/fwin2k/index.html」の内容を仮想的な回線を使って送り返す。

(5)仮想的な回線からWebブラウザに応答が届き、Webブラウザはそれを表示する。

(6)ユーザのコンピュータとwww.atmarkit.co.jpの間の実際の通信は、ネットワーク層が提供する機能によって実現されている。2つのコンピュータは別々のネットワークに属し、間にいくつものネットワークが介しているが、途中にある各ルータが経路を決定し、データを順次転送することで、2台のコンピュータ間での通信を実現している。

(7)コンピュータやルータといった各機器間の通信は、実際には、物理層とデータリンク層が提供する機能によって実現されている。


  

Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。